BtoB企業のデジタルマーケティングにおけるWeb広告運用体制に関する調査
広告運用体制は「代理店委託」と「自社運用」がほぼ同程度。「運用経験者の採用・確保」の課題解決が事業フェーズにマッチした柔軟な体制選択の鍵に。
【調査結果サマリー】
運用体制は「自社運用」「代理店運用」はほぼ同程度の結果に。「自社運用と代理店運用の併用」で、部分的に自社運用をしている企業も多い。
途中で運用体制を切り替えているケースは少なく、自社の事業フェーズにマッチした運用体制を選択していくことへのハードルは非常に高い。
運用体制を切り替えない理由は「運用経験者の採用・確保ができないこと」が最も多く、代理店運用の「プロの広告運用経験者」を供給してくれるメリットとリンクする結果に。
代理店から自社運用に切り替えた企業では、「運用スピードの改善」や「自社へのノウハウ蓄積」やという課題は解決ができたと回答。
事業フェーズにマッチした運用体制の柔軟な構築は、「運用経験者の採用・確保」が鍵に。
自社運用の割合は高いものの、運用体制を柔軟に変更するハードルは非常に高く、自社の事業フェーズにマッチした運用体制の構築をしていくことに課題があることがわかりました。
そこには「広告運用経験者の確保・維持」が要因となっており、運用経験者のノウハウの再現性や、生産性の向上などがより一層大事なポイントになってくるかもしれません。
【調査結果詳細】
「代理店運用」と「自社運用」がほぼ同じ割合の結果となりました。また「代理店運用と自社運用を併用した運用」も上位2つと比較して僅差となっており、部分的な運用も含めると半数以上の会社が、自社で広告運用しているという結果になりました。
なお、Q1で「自社運用」を選択した30名に、運用スタッフについて聞いたところ、「経験者による運用」が6割以上と高い割合を示しています。広告運用の経験者を確保できるかが、自社で広告運用を実施できるかが大事なポイントになっているようです。
これまでの広告運用体制の変遷を聞いたところ、運用開始時の体制からそのまま継続する企業が多く、途中で体制を入れ替える企業が少ないと言えます。
開始時の体制から切り替えて、新しい運用体制を構築することに対するハードルの高さが感じられます。
自社運用体制について
Q4〜Q9 は、Q3で「代理店運用から自社運用へ以降したことがある」と回答した10名に質問しました。
「広告代理店に支払う手数料を削減したかったから」「ノウハウを社内に蓄積したいから」「広告運用の経験者あるいは副業人材を採用できたから」はそれぞれ3人の方が、「運用のスピード感を高めたい」は2人の方が選択しました。
「ノウハウの蓄積」「運用スピード」といった成果面や、「手数料削減」という資金面でのニーズが切り替え理由になる一方、実際に広告運用の経験者が採用・確保できたかどうかも理由となっているようです。
自社運用開始時の懸念点として、「マーケティング施策の客観的な評価が難しい」「広告代理店のようなプロの専門知識を活用できない」といった「ノウハウ」面を選ぶ人、そして「前金制になるのでキャッシュフローに悪影響がある」といった「キャッシュ・フロー」面を選ぶ人が多い結果となりました。
その他、「マーケティングトレンドを情報収集する時間がない」や「十分にリソースを確保できないと作業にばかり時間が取られる」といった他の業務と兼任しているが故に「リソース(時間)が足りない」という側面も見られました。
代理店運用から自社運用に切り替えたメリットとして最も多かったのは「PDCAを回すスピードが上がる」でした。「日々動く事業判断をスピーディーに広告に反映できる」も1人が選択しており、「運用のスピード感」という要素にメリットを感じるケースがあるようです。
また3人が選択した「自社に広告のノウハウが蓄積される」をはじめ、「代理店に支払う手数料を広告費にあてられる」、「代理店とのコミュニケーションの中で発生するストレスの減少」のように、代理店への不満を抱えており、自社運用への切り替えを検討していた企業も多いと考えられます。
Q4「自社運用に切り替えた理由」とQ6「代理店運用から自社運用に切り替えたときに感じたメリット」がリンクしており、元々代理店運用時代に課題として感じられていた「自社へのノウハウの蓄積」及び「運用スピードの改善」という点においては、クリアした企業が多いと言えそうです。
自社運用中に発生した課題として、「運用に工数がかかりすぎている」という「リソース」面の課題が一番多く選択されました。また「広告運用経験者の採用が難しい」「広告運用経験者が退職してしまった」といった、運用経験者の採用・離職などの「人材」面での課題が大きいようです。
自社で運用する場合、「人材の確保・体制の維持」など運用体制を維持し続けることに課題があることが見受けられます。
自社運用に切り替えた後に感じた、代理店運用のメリットとしては、「運用を任せることで空いた時間を他の業務に費やせる」という「リソース」面が最も多く選択されました。結果にQ4の自社運用開始当初の懸念は、「プロの運用ノウハウ」が一番高い結果であり、開始前と後で感じるメリットの内容に違いがあることがわかります。
代理店運用体制について
Q9は、Q3で「運用開始以来、継続して代理店に運用を委託」を選択した、一度も自社運用を経験していない16名に質問しました。
「自社運用の場合、最新のノウハウを収集することが難しいため」といった「ノウハウ面」、また「自社で担当者を育成する必要があるため」や「社内でリソースを割く必要がなく、広告の効果が得られるため」といった、「リソース面」に関する項目が多く選択されました。広告運用ができる人材の確保が自社で難しい場合、外部の代理店に依頼するケースが多いようです。
Q10ではQ9とは逆に、Q3で「運用開始以来、継続して自社運用」「あてはまるものがない」以外を選択した、1度でも代理店運用を経験したことがある47名に質問しました。
半数以上の企業で代理店を切り替えたことがあると回答。なかでも「5回以上」と回答した企業が約1割もいるなど、自社に合う代理店を見つけることはなかなか難しい様子が伺えます。
今回の調査において、BtoB企業におけるWeb広告運用体制の割合は「自社運用」「代理店運用」「自社運用と代理店運用の併用」の順でほぼ並ぶ形となり、部分的にでも「自社運用」を実施している企業が多いことがわかりました。
しかし、「運用開始当初は代理店運用」していた企業が自社運用への移行(内製化)に成功するなど、途中で体制を切り替えている割合はどのパターンでも低く、自社にマッチした運用体制を柔軟に選択することへのハードルは非常に高いようです。
その理由として、「運用経験者の採用・確保」が大きなポイントになっており、代理店への期待値としても「プロの広告運用経験者」を供給してくれる点が最も大きなポイントのようです。
今回の調査を踏まえ、運用体制の選択肢として自社運用での比率は一定割合高いことがわかりましたが、運用体制を柔軟に変更することのハードルは非常に高く、自社の事業フェーズにマッチした運用体制の構築を選択していくことに課題があることがわかりました。
またそのポイントとして、「広告運用経験者の確保・維持」が課題となっており、運用経験者のノウハウの再現性・生産性の向上などがより一層大事なポイントになってくるかもしれません。
【調査概要】
調査機関:株式会社キャスター(調査委託先)
調査方法:インターネットリサーチ
調査時期:2023年1月23日 ~ 2023年1月31日
調査対象:全国の23~60歳の男女、BtoBの事業会社におけるマーケティング職、広告・販促職
有効回答数:109名
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