医療的ケア児とその家族が、安心して“旅行を楽しめる”社会へ ~対話から見えた旅行実態と、受け入れ環境の課題~
医療的ケア児とその家族を対象とした試泊イベントと意見交換会を実施

“みんなで泊まる”を楽しむアパートメントホテル「MIMARU」を運営する株式会社コスモスホテルマネジメントは、2025年5月、医療的ケア児のお出かけを支援する一般社団法人Try Angleおよび医療的ケアが必要な子どもたちのための放課後等デイサービスや小規模保育園等を運営するNPO法人こども未来と連携し、京都市内のアパートメントホテル「MIMARU京都 河原町五条」「MIMARU京都 新町三条」にて、医療的ケア児とその家族を対象とした試泊イベントと意見交換会を実施しました。
MIMARUでは、<みんなが安心して泊まれる>ホテルをめざし、障がい者の受け入れ体制強化やバリアフリーガイドブックの発行などを行ってまいりました。本イベントは、医療的ケアが必要な子どもたちとそのご家族が安心して宿泊体験を楽しめる環境づくりに向けて、当事者・宿泊施設・支援団体が対話を重ね、より良い共生社会の実現に向けた第一歩となることを目的としています。

■ 医療的ケア児とその家族が直面する“旅行の壁”
医療技術の進展により、在宅で生活する医療的ケア児は増加しており、2021年には「医療的ケア児支援法」が施行され、国や自治体による支援体制の整備が進められています。しかしながら、外出や旅行に関しては、以下のような課題が依然として存在しています。
・使用するバギーが大きく、医療機器を使ったケアも必要なため、外出先の設備や対応体制が不安
・街中の駐車場や飲食店の利用にもハードルがある
・情報が不足しており、事前の準備やイメージが難しい
・きょうだいの外出機会が限られている
・修学旅行など学校行事に参加しづらい
※医療的ケア児とは:日常的に人口呼吸器やたんの吸引、経管栄養などの医療的ケアが必要な児童を指し、医療技術の向上などにより、国内の医療的ケア児人口は、2005年9,987人から、2021年20,180人と倍増しています。
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/000981371.pdf
■ 試泊イベントと意見交換会の実施内容
今回は、修学旅行を控えた医療的ケア児を含む2組のご家族に、水回りがバリアフリー対応になっているアクセシブルルームにご宿泊いただきました。宿泊体験後には、当事者・福祉事業者・宿泊施設の三者による意見交換会を開催。それぞれの立場から課題や気づきが共有されました。
【対話で見えてきたこと】
・外出先の受入状況や周囲に迷惑をかけないか心配で、外出を躊躇することが多い
・医療的ケア児のバギーが成長とともに大型化し、車いす対応だけでは不十分
・「設備・備品」だけでなく、「受入の姿勢」「事前情報の提供」が大きな安心材料
・自分たちだけで解決しようとせず、お互いが声を出し合うことでより柔軟で快適な滞在が実現できる
・宿泊先のほか、街中の駐車場・飲食店・店舗での困りごとなど当事者ならではの視点があるため、実体験の共有が他のご家族の外出・旅行の後押しになる
・修学旅行は数年前から企画され、普通学校では医療的ケア児を想定した準備ができていないことも多く、別行動になったり、参加を見合わせるケースもある
■ 試泊会の様子
宿泊当日は、医療機器や生活用品、タオルや着替えなど多くの荷物を持参する必要があることから、ご家族は自家用車で来館されました。移動には常にこうした荷物が伴うため、周辺の駐車場情報や、バギーでの乗り降りがしやすい環境であるかどうかは、重要なポイントであることが改めて明らかになりました。チェックイン後は、事前に「コミュニケーションシート」を通じて伺っていたご要望に基づき、備品の確認やベッドの配置調整などを行い、滞在をスタート。MIMARUの客室は広々とした設計が特長で、中学生のお子さまが利用される大きめのバギーでも移動することができました。また、室内に備え付けられたキッチンや洗濯機も、ご家族にとって心強い存在となったようです。滞在中は、日常とは異なる環境に少し戸惑いながらも、久しぶりの家族旅行を心から楽しまれる様子が随所に見られ、笑顔あふれるひとときとなりました。











・外食には広いスペースが必要で、たんの吸引音が発生することから個室やテイクアウトの利用が多い
・ミキサーの利用や保冷・加熱をするため、大きな洗い場や冷蔵庫、電子レンジが必要
・お風呂は介助者と一緒に入れるスペースが必要
・移動できるベッドの方が個々のニーズに合わせることができる
● イベント参加者のコメント
・医療的ケア児ご家族:これまで、ホテルにさまざまな確認や特別な希望を求める事は最小限の方が良いのではないか?と思っていました。しかし、旅行という良い経験の為には、ホテルと利用者の双方でコミュニケーションをしっかり取ることは大切なのだと考えました。当事者でないとわからない事、想像もつかない事がある。それをお伝えし情報を積み上げる事で、利用者の期待を超える満足度の高い宿泊経験に繋がるのだと思いました。
・医療的ケア児ご家族:”家族みんなで旅行したいね”といつも話はしているものの「周囲に迷惑をかけるのでは」との心配がありなかなか実現できませんでした。今回の企画は準備段階からコミュニケーションシートのやり取りなどを通じて、MIMARUさんの受け入れ姿勢を感じることができ、安心して宿泊に臨むことができました。関係者の方々に心から感謝しております。
・支援団体(Try Angle):修学旅行や観光の目的地として多くの人に親しまれている京都で、宿泊体験の機会をいただけたことを嬉しく思います。観光産業は、交通機関・飲食店・宿泊施設・体験施設・お土産店など、多様な担い手によって支えられています。だからこそ、このテーマに関心を持ち、関わる人が一層広がっていくことを願っています。本取り組みが、そのきっかけのひとつになれば幸いです。
・福祉事業者(こども未来):今回参加させて頂いたことで、日々の支援の中だけでは気付けていなかったお子さまやご家族の生活の中にある課題を知ることができました。私たち福祉事業者や専門職は、支援を制度や既存のサービスの枠にはめて考えがちですが、制度の外側にあるご家族のニーズや課題解決にも寄り添えるよう、柔軟に活動を展開していきたいと思いました。
・宿泊施設(MIMARU):東京に続き2回目の試泊会でしたが、ホテル内の設備や準備していた備品では対応できないこともありました。お話しを伺うと個々のご家族でニーズも異なり、事前の情報共有のほか、当日の調整やニーズを踏まえた提案も重要だと感じました。これまでも車いすの方などのご利用は多いですが、ご要望を頂くことは少ない印象があります。負担を減らせることもあるため、積極的にご要望をお伝えいただき、みんなで楽しんで頂きたいと思います。
■ 医療的ケア児のお出かけ環境
医療技術の向上などにより、医療機関の外で生活できる児童が増えた一方、お出かけや旅行のハードルはまだ高いのが実情です。2020年の調査によると、調査回答者の96.8%が家族一緒に外出や旅行をしたいと回答する一方、「問題なく行えている」と回答した人は17.2%にとどまっています。移動や設備などの物理的な問題のほか、情報の不足や外出先でのサポート体制や外出に対する心理的な不安も要因と考えられ、また、きょうだい児の外出機会も少なくなっているという声もあります。

出典:https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2020/05/koukai_200520_1_1.pdf
■ MIMARUのバリアフリーの取り組み
アパートメントホテル「MIMARU」では、<みんなが安心して泊まれる>ホテルをめざし、障がい者、医療的ケア児の家族旅行を応援する取り組みを行ってまいりました。
MIMARUのバリアフリーの取り組みついて:https://mimaruhotels.com/news/accessible-tourism/
<これまでの取り組み>
・医療的ケア児ご家族の意見を基に、宿泊時に必要なお風呂マットやおむつ入れなどの備品を用意
・車いすでも移動しやすいルートを案内したアクセスマップ・客室等をHPで紹介
・予約時に「コミュニケーションシート」を提供、障がい者ご家族のご要望の確認を開始
・京セラの「matoil(マトイル)」の食物アレルギーやグルテンフリー対応の食事提供サービスを開始
・バリアフリーの視点で厳選した日本の楽しみ方、交通や街中の移動情報をまとめたフリーペーパー『地球の歩き方 みんなで楽しむ東京・京都・大阪』を発行

MIMARUでは、今後もあらゆる家族がみんなで安心して泊まれるよう、障がいのある方や医療的ケア児にも宿泊を楽しんでもらえるホテルづくりを行い、旅行というかけがえのない体験を心から楽しんでいただきたいと考えています。海外と比較し、都市部でのバリアフリー対応は進んでいるため、ホテル内だけではなく、飲食店や観光施設等とも連携し、こうした取り組みが広がり、旅行しやすい環境づくりへの貢献をめざします。
●一般社団法人Try Angle(所在地:石川県金沢市、代表理事:須田 麻佑子)
一般社団法人Try Angle(トライアングル)は、”病気や障害の有無にかかわらず誰もが安心して旅行を楽しめる社会”をつくるというビジョンの元、主に医療的ケア児の外出・旅行の支援、観光事業者向けの研修などを実施。活動を通して、ユニバーサルツーリズムの発展を目指しています。現在は、人工呼吸器や胃ろうなど、医療デバイスと共に生きる医療的ケア児者の方が旅行しやすくなるよう、『医療的ケア児の旅行ガイドライン』の販売、医療的ケア児の旅行支援ポータルサイト『ててとて旅行舎』の運営をしています。
『ててとて旅行舎』WEBサイト:https://tetetote-travel.jp/
●NPO法人こども未来(所在地:京都市上京区、代表理事:岡本和徳)
私たちの活動は、2020年に医療的ケア児を育てるお父さんたちのグループを中心に、なかなか通い先のない医療的ケア児を預かれるよう看護師常駐の保育園を立ち上げた所から始まりました。医療的ケア児、重症心身障碍児のケアにとどまらずそのご家族へも寄り添える法人でありたいと願い、2025年現在では、小規模保育園、重心型の放課後等デイサービス、訪問看護ステーションの3事業所を運営しています。今後も率先垂範をモットーに、京都に足りない医ケア児さん達が泊まれるショートステイの運営やあらたな社会資源の開発に取り組んでいきます。
HP:https://npo.kodomo-mirai22.jp/

株式会社コスモスホテルマネジメント
(本社:東京都港区、社長:藤岡 英樹)
コスモスホテルマネジメントは、 “みんなで泊まる”を楽しむアパートメントホテル「MIMARU」を運営しています。ただ寝るためだけのホテルではなく、キッチン、リビング・ダイニングスペースを備えた約40㎡からの広い客室で、家族や仲間とみんなで団らんをしたり、一緒にくつろいだり、暮らすように過ごすことができます。旅をサポートするのは、世界中から集まった日本が大好きな多言語対応のスタッフたち。頼れる“旅先の友人”のように、一人ひとりの希望や思いに寄り添いながら、心に残る旅をつくっていきます。
MIMARUでは、”Unwinding time. Endearing ties.”をブランドメッセージに掲げ、MIMARUを拠点にすることで、一緒に旅する人との仲や、旅で出会う人との距離、旅先の街との関係が、もっと縮まり、深まっていくことをめざしています。
サステナビリティ:人から社会へ、未来を喜びでつなぐ。当社では、「人と働き方の多様性」「ゲスト・地域とのつながり」「環境配慮」の3つのテーマで、ゲストから地域、地域から世界、そして未来へ、喜びの連鎖が広がる社会をめざし、SDGsの達成へと実を結ぶよう着実に歩を進めてまいります。
MIMARU公式サイト:https://mimaruhotels.com/
サステナビリティページ:https://mimaruhotels.com/sustainability/
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