【企業のGRC調査】規程整備の遅れは、業務担当者負担大が原因か〜ハラスメント防止規程の整備43.2%、内部通報規程は27.9%と整備遅れ。規程業務の負担大72.6%、業務時間は前年度より増加〜
企業のGRC推進に課題。社内規程の整備が追いつかず、法改正対応遅れによる「法的リスク」の認識は54.6%。規程の周知は13.2%にとどまり、4割以上の企業で従業員が規程を参照できる環境も未整備。
「安心して働ける世界をつくる」をミッションに掲げ、社内規程DXサービス「KiteRa Biz(キテラビズ)」と社労士向けサービス「KiteRa Pro(キテラプロ)」を提供する株式会社KiteRa(代表取締役 執行役員 CEO:植松隆史、本社:東京都港区、読み:キテラ、以下「当社」)は、社内規程(就業規則など)の作成・編集・管理・周知などに携わる全国のビジネスパーソン687名を対象に「企業のGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)に関する実態調査 vol.1」を実施しました。
近年、頻繁な法改正や変化の速い事業環境のもと、企業のGRC強化は、企業にとって避けて通れない経営課題となっています。GRCの実効性を高めるためには、現場で守るべき基準や行動指針を明文化し、全社に徹底することが不可欠です。その基盤となるのが社内規程の整備と適切な運用であり、規程がしっかりと機能してはじめて、GRCの実現が可能となります。
本調査では、企業におけるGRC体制や社内規程の整備・運用の実態を可視化しました。その結果、社内規程の作成・管理・運用・周知といった現場運用において、依然としてさまざまな課題が顕在化していることが明らかとなりました。

調査サマリー
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社内規程専任部署ありは全体で71.2%、大企業(1,001名以上)で88.5%、50名以下では37.7%。企業規模で専任体制に大きな差
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規程業務を1人で担当は全体で5.2%、大企業で1.6%、50名以下で18.2%。企業規模が大きいほど大人数で担当
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規程業務に十分な時間があると感じる人は全体で56.2%、大企業で60.4%、50名以下で50.3%。多くの現場でリソースの制約
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規程業務が「負担大」との回答は全体で72.6%、大企業で82.4%。企業規模が大きいほど「負担が大きい」と感じる傾向に
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前年度より規程業務時間が増加したとの回答は全体で56.0%、50名以下は30.2%、大企業で68.1%。小規模企業では「変化なし」が67.9%
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就業規則77.0%、給与規程59.2%など規程の整備は一定数進むが、ハラスメント防止規程43.2%や内部通報規程27.9%と整備は進まず。法規制の準拠に遅れがある企業も
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法改正時に施行日までに適切な規程更新ができているのは全体で67.5%、大企業で78.6%、50名以下で56.6%。法改正対応の確実性にばらつき
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法改正対応遅れによる法的リスクを感じる人は全体で54.6%、大企業で72.5%。法改正の影響を広く認識
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規程の「十分な周知・浸透」は全体で13.2%、大企業で17.0%。多くの企業で浸透不足
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従業員が自ら規程を参照できる環境が整っていない企業は全体で41.6%、大企業で37.9%。情報アクセスに課題
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管理体制強化策として現場から望まれているのは、DXサービス導入45.1%、専任部署設置38.7%
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管理・運用体制強化により期待される効果は「コンプライアンス遵守の強化」23.0%、「安心感・エンゲージメント向上」23.6%
調査結果
【Q1】社内規程専任部署ありは全体で71.2%、大企業(1,001名以上)で88.5%、50名以下では37.7%。企業規模で専任体制に大きな差
「あなたの会社には、社内規程の作成・管理・運用・周知などを担当する専任の部署がありますか(単一回答)」の質問に対し回答は、「はい」が71.2%、「いいえ」が28.8%でした。
回答者が勤務する企業の社員規模別で見ると、従業員数1,001名以上の企業(大企業)では88.5%が「はい」、301〜1,000名の企業では85.7%が「はい」と回答しているのに対し、〜50名の企業では37.7%が「はい」と回答しており、企業規模で専任部署の設置状況に大きな差が見られました。

【Q2】規程業務を1人で担当は全体で5.2%、大企業で1.6%、50名以下で18.2%。企業規模が大きいほど大人数で担当
「社内規程に関する業務は、あなたを含め何名で担当していますか(単一回答)」の質問では、「2~3人」が30.3%で最も多く、次いで「4~5人」が24.9%、「6人以上」が20.7%、「特定の人数は決まっていない」が18.9%、「1人」が5.2%という結果でした。
企業規模別では、50名以下の企業では「1人」が18.2%と高く、大企業(1,001名以上)では「6人以上」は42.9%と、規模企業が大きいほど大人数で担当する傾向が強いことが明らかになりました。

【Q3】規程業務に十分な時間があると感じる人は全体で56.2%、大企業で60.4%、50名以下で50.3%。多くの現場でリソースの制約
「社内規程に関する業務を滞りなく進めるために、会社側から十分な時間が与えられていると思いますか(単一回答)」では、「はい」が56.2%、「いいえ」が43.8%でした。
企業規模別では、大企業(1,001名以上)で「はい」が60.4%、50名以下の企業では50.3%。企業規模が小さいほど十分なリソース確保が難しい傾向も示されました。

【Q4】規程業務が「負担大」との回答は全体で72.6%、大企業で82.4%。企業規模が大きいほど「負担が大きい」と感じる傾向に
「社内規程に関する業務は、負担が大きいと感じますか(単一回答)」では、「はい」が72.6%、「いいえ」が27.4%という結果でした。
企業規模別に見ると、大企業(1,001名以上)で82.4%、301〜1,000名で81.2%、51〜300名で73.2%、50名以下で53.5%。企業規模が大きいほど「負担が大きい」と感じる傾向があることがわかりました。

【Q5】前年度より規程業務時間が増加したとの回答は全体で56.0%、50名以下は30.2%、大企業で68.1%。小規模企業では「変化なし」が67.9%
「昨年度(2024年4月~2025年3月)におけるあなたの社内規程に関する業務時間は、前年度(2023年4月~2024年3月)と比較してどのように変化しましたか(単一回答)」と質問をしたところ、回答数が最も多かったのは「やや増えた(月1〜9時間増加)」が41.9%、「変化なし」が41.8%、「非常に増えた(月10時間以上増加)」が14.1%という結果でした。
企業規模別では、大企業(1,001名以上)で「やや増えた(45.6%)」「非常に増えた(22.5%)」の合計が68.1%、50名以下の企業では「変化なし」が67.9%と高く、企業規模による規程業務負荷の違いが見られました。

【Q6】就業規則77.0%、給与規程59.2%など規程の整備は一定数進むが、ハラスメント防止規程43.2%や内部通報規程27.9%と整備は進まず。法規制の準拠に遅れがある企業も
「あなたの会社が現在保有している社内規程に当てはまるものを全てお選びください(複数回答)」と質問をしたところ、最も多かったのは「就業規則」77.0%、次いで「給与規程」59.2%、「個人情報保護規程」40.5%、「コンプライアンス規程」39.2%、「情報セキュリティ規程」39.3%、「内部通報規程」27.9%と、GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)の基盤となる規程も一定割合で整備されている実態が示されました。
また、企業規模によって保有している規程の種類に大きな差があることがわかりました。「ハラスメント防止規程」は、大企業(1,001名以上)では62.1%が保有していますが、50名以下の企業では17.6%の保有にとどまりました。また、「内部通報規程」は、300名以上の企業で保有が義務化されていますが、301名以上1,000名以下の企業で30.1%、大企業(1,001名以上)でも52.2%の保有にとどまるなど、法規制への準拠に遅れがある企業も見られました。

【Q7】法改正時に施行日までに適切な規程更新ができているのは全体で67.5%、大企業で78.6%、50名以下で56.6%。法改正対応の確実性にばらつき
「法改正(労働関連法、個人情報保護法など)があった際、常に社内規程を施行日までに、かつ適切に更新できていますか(単一回答)」と質問したところ、67.5%が「はい」と回答しました。
企業規模別では、大企業(1,001名以上)で78.6%、50名以下の企業で56.6%。企業規模に比例して、法改正対応の確実性に差が見られました。

【Q8】法改正対応遅れによる法的リスクを感じる人は全体で54.6%、大企業で72.5%。法改正の影響を広く認識
「社内規程に関して法改正への対応が遅れることで、どのようなリスクや課題を感じていますか(複数回答)」と質問したところ、最多は「法的なリスク(訴訟、行政指導など)」が54.6%、次いで「従業員の不信感や士気の低下」が39.9%、「従業員からの問い合わせ増加」が39.2%という結果でした。
大企業(1,001名以上)では「法的なリスク(訴訟、行政指導など)」が72.5%と特に高い水準となりましたが、50名以下の企業では、リスクや課題は「特になし」が42.8%となり、企業規模によってリスクや課題認識に差があることがわかりました。

【Q9】規程の「十分な周知・浸透」は全体で13.2%、大企業で17.0%。多くの企業で浸透不足
「作成・更新された社内規程が、従業員に十分に周知・浸透されていると感じますか(単一回答)」と質問したところ、「全く周知・浸透されていない」が5.5%、「非常に周知・浸透されている」が13.2%、「あまり周知・浸透されていない」が24.6%、「ある程度周知・浸透されているが不足を感じる」が56.6%でした。「あまり/全く周知・浸透されていない」と感じている人は、30.1%にも上ります。
企業規模別では、「非常に周知・浸透されている」と答えた人は、大企業(1,001名以上)では17.0%、301~1,000名では12.8%、51~300名で9.9%、50名以下で13.8%という結果となり、多くの企業で規程の浸透に課題が残る状況が浮き彫りになりました。

【Q10】従業員が自ら規程を参照できる環境が整っていない企業は全体で41.6%、大企業で37.9%。情報アクセスに課題
「あなたの会社では、社内規程は従業員が疑問を感じた際に自ら確認できる、参照しやすい環境が整っていると思いますか(単一回答)」では、「はい」が58.4%、「いいえ」が41.6%という結果となりました。企業規模に関わらず、情報アクセス面の課題があることが浮き彫りになりました。

【Q11】管理体制強化策として現場から望まれているのは、DXサービス導入45.1%、専任部署設置38.7%
「社内規程の管理・運用体制が強化されるとしたら、以下のうちどのような体制が望ましいと思いますか(複数回答)」と質問したところ、最も多かったのは「規程の作成・管理・運用をサポートするDXサービスを導入する」が45.1%、次いで「規程業務を専門とする部署または担当者を専任で設ける」が38.7%でした。DX推進や専任体制強化が現場で望まれている実態が明らかになりました。

【Q12】管理・運用体制強化により期待される効果は「コンプライアンス遵守の強化」23.0%、「安心感・エンゲージメント向上」23.6%
「社内規程の管理・運用体制が強化されることで、あなたの会社にとって最も期待できる効果は何ですか(単一回答)」と質問したところ、回答数が多い順に「安心感・エンゲージメント向上」が23.6%、「コンプライアンス遵守の強化」が23.0%、「ハラスメント・トラブルリスクの低減」が17.3%という結果でした。

社会保険労務士法人 名南経営 特定社会保険労務士 宮武 貴美氏のコメント
近年、育児・介護休業法をはじめとする法令改正が頻繁に行われており、それに伴い社内規程の変更が求められるケースが増加しています。その結果、企業において社内規程の策定・改定を担当する部門の負担は大きくなっていると考えられます。
特に、Q8の調査結果において「法改正対応の遅れによる法的リスクを感じている」と回答した人が半数を超えていることから、法令改正の情報を迅速に把握し、それに対応した社内規程の整備を行うことが、担当者にとって重要な課題と認識されていることがうかがえます。
さらに、従業員の働き方が多様化する中で、その多様性に対応した規程の策定・改定の必要性も高まっており、これも担当者の業務負担を増加させる要因となっていると思われます。Q5の結果では、大企業において規程業務の時間が増加したと回答した人が約7割にのぼっており、大企業を中心に、人材採用の強化や離職防止策として、法令を上回る制度の構築を進めていること、そしてそれに伴う社内規程の策定・改定が行われていることが推察されます。
社内規程は単に整備するだけでは十分ではなく、従業員への周知・浸透が図られて初めて、実効性のある規程となります。Q9では「十分な周知・浸透が図られている」と回答した割合が13.2%にとどまっており、非常に低い水準の衝撃的な結果だと判断しています。従業員が自ら規程を参照し、理解を深めることを促進し、社内規程を適切に運用していくことは、今後の企業にとって大きな課題となるのでしょう。
なお、Q11の回答において多くの声が寄せられたDXサービスの導入については、単に法令対応を漏れなく効率的に行うことができるサービスではなく、例えば過半数代表者の選任(過半数組合がある企業を除く)から、規程の周知・浸透までを一貫して支援できるサービスを選定することで、利便性の向上と社内規程整備の効率化が期待できます。

社会保険労務士法人 名南経営 特定社会保険労務士 宮武 貴美 氏
社会保険労務士法人 名南経営 特定社会保険労務士。 中小企業から東証プライム上場企業まで幅広い顧客を担当し、実務に即した人事労務管理の様々なアドバイスを行う。インターネット上の情報サイト「労務ドットコム」のメイン執筆者のひとりであり、人事労務分野での最新情報の収集・発信は日本屈指のレベル。企業担当者・社労士には多くのファンがいる。また、各地でセミナーの講師も担当。著書に「改訂2版 社会保険の手続きがひとりでミスなくできる本」、「改訂3版 総務担当者のための産休・育休の実務がわかる本」(日本実業出版社)、「増補版 こんなときどうする!? 社会保険・給与計算 ミスしたときの対処法と防止策31」(労務行政)等がある。
考察
近年、個人情報保護法や労働関連法の相次ぐ改正、大手企業のコンプライアンス違反による社会的な影響の大きさなどを背景に、企業のGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)体制の強化は、今の時代、企業が避けて通れない経営課題となりつつあります。
しかし今回の調査から、こうした時代の要請にも関わらず、現場で「規程」が十分に周知・浸透している企業はわずか13.2%にとどまり、約4割の企業では従業員が自ら規程を参照できる環境が整っていませんでした。また、法改正対応が追いつかないリスクや、規程業務の負担増加、人的リソースありきの管理・運営体制といった現場の課題が明らかとなりました。
特に大企業(1,001名以上)では、法改正対応の遅れが「法的リスク」につながると認識している割合が7割を超え、「従業員からの問い合わせ増加」や「従業員の不信感・士気の低下」「企業イメージの悪化、社会的な信用の低下」といった副次的なリスクも中小企業と比べ高くなっています。これは、現場で規程の運用や情報共有、社員教育の体制が十分に整っていない場合、単なる法令違反にとどまらず、従業員の信頼低下や企業イメージの悪化、社会的な信用の低下にもつながることが示されています。また、小規模企業(50名以下)では「何の規程があるかわからない」と答えた担当者が11.3%に上るなど、情報共有や全社的な徹底に大きな壁があることがうかがえます。
また、本調査では、就業規則(77.0%)、給与規程(59.2%)など、GRCの基盤となる規程も6割前後の企業で整備されている実態が明らかになりましたが、個人情報保護規程(40.5%)やコンプライアンス規程(39.2%)、内部通報規程(27.9%)など、整備が遅れている規程も明らかとなりました。
こうした現場の課題や負担感が、必ずしも経営層に十分に共有されていないことも、多くの企業に共通する“構造的な課題”と言えるでしょう。現場の声を経営層が的確に把握し、全社的な意識・体制変革につなげていくことが、今後ますます重要となります。
これまでのアナログな運用や属人的な社員教育だけでは、情報の行き渡りや正しい理解に限界があり、現場ごとにコンプライアンス意識やリスク対応力にも格差が生まれやすくなります。従業員一人ひとりが「正しい情報」を、必要なタイミングで確実に把握できる体制。そのためには、社内規程の整備・運用を“DX”によって根本から変革することが求められています。
さらに、2025年問題をはじめとする労働人口の減少や人材の流動化が進む中、現場の負担を軽減しつつ、高い水準のガバナンス・リスク管理・コンプライアンスを維持するためにも、「規程」がGRCの基盤であるという視点がより重要になっています。
今回の調査が、こうした課題や現場の“気づき”につながり、今後、社内規程のあり方や運用体制を再考し、GRC実効性向上に向けた社会全体での意識改革の一助となることを期待します。
調査概要
調査名:企業のGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)に関する実態調査 vol.1
調査方法:インターネットによるアンケート調査
調査期間:2025年7月8日〜7月9日
有効回答:『勤務先で、社内規程(就業規則など) に関する規程業務(作成/編集/管理/周知 など)に関わっているか』という質問に対し、「はい、主な業務として関わっています」もしくは「はい、一部の業務として関わっています(他の業務がメイン)」と回答した18〜65歳のビジネスパーソン 687名
調査企画:株式会社KiteRa
補足:構成比は小数点第2位を四捨五入
※本調査でいう「ビジネスパーソン」とは、正社員として勤務する「従業員(役職者含む)」および「経営者・役員」の方を指します。
株式会社KiteRaについて
「安心して働ける世界をつくる」をミッションに掲げ、安心して働くためのルール(仕組み)である社内規程をテクノロジーの力で簡単に正しく運用できる社内規程DXサービス、企業向けの「KiteRa Biz」と社労士向けの「KiteRa Pro」を展開しています。今後も社内規程を通じて誰もが安心して働くことのできる世界の実現を目指します。
名称:株式会社KiteRa
所在地:東京都港区北青山1-2-3 青山ビル7階
代表者:代表取締役 執行役員 CEO 植松隆史
設立:2019年4月1日
事業内容:社内規程クラウド「KiteRa」の企画・開発・運営
主要サービス:
企業向けSaaS「KiteRa Biz」 https://kitera-cloud.jp/biz/
社労士向けSaaS「KiteRa Pro」 https://kitera-cloud.jp/pro/
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