〈開催レポート〉伝統技術とモダンデザインの可能性とは? 深澤直人氏がボスニアの家具ブランド「ZANAT」とトークセッション
ユネスコ無形文化遺産に登録された伝統木彫技法を継承する家具ブランド「ZANAT」の企画展を、アクタス・青山店で12月14日(日)まで開催中。

インテリアを販売する株式会社アクタス(東京都新宿区/代表取締役社長 村田 謙)は、12月14日(日)まで、アクタス・青山店にて、ボスニア・ヘルツェゴビナの手彫り木工家具ブランド「ZANAT(ザナット)」の企画展を開催中です。
企画展に合わせて、10月31日(金)には、ZANATの魅力を紐解くトークセッションを行いました。ZANATのオーナーであるオルハン・ニクシッチ氏、同ブランドでプロダクトデザインを手掛ける深澤直人氏をお迎えし、デザインジャーナリストの山田泰巨氏とアクタスの家具バイヤー野口礼を進行役に、ZANATとモダンデザインの幸運な出会い、そしてAI時代におけるモノづくりの可能性について語り合いました。
当日の模様をご報告いたします。
ユネスコ無形文化遺産の伝統木彫りブランド「ZANAT」
ZANATの歴史は、19世紀末に創設者の曾祖父ガノ・ニクシッチが先駆的な木彫り技術を習得したことから始まります。その技術と伝統は4世代にわたって受け継がれ、卓越した品質と独自性は国際的に高く評価され、2017年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
現在、ZANATは深澤直人、モニカ・フォスター、パトリック・ノルゲという世界的に著名なデザイナーと積極的にコラボレーションし、伝統的な職人技とモダンデザインが融合した、革新的なプロダクトを生み出しています。




紛争を越えて、伝統工芸を再興したZANAT

日本でのなじみは薄いものの、ボスニア・ヘルツェゴビナはバルカン半島に位置し、クロアチア、セルビア、モンテネグロと国境を接しています。トークセッションでは、まずZANATのオーナーを務めるニクシッチ氏から、ブランドの紹介が語られました。
曾祖父がバルカン半島に伝わる木彫技術を国内に広めたこと、一家は第二次世界大戦や1990年代のボスニア紛争といった困難に見舞われながらも、家業として木彫り工芸を続けてきたこと。そして、国が再建される中で人々の暮らし方は変化し、現代の生活様式と伝統的な木彫り工芸品との相性は悪くなっていたと話します。家業はニクシッチ氏の兄が継ぎ、彼自身は銀行員として働いていましたが、「モダンな暮らしに合わせるために、伝統工芸を捨てる必要があるのか? いや、伝統工芸の中にこそモダンさを見出し、取り込めるはずだ」という強い想いから、2016年に銀行を退職。兄と共に「ZANAT」を立ち上げました。


深澤氏が共鳴した「Made in Local」の姿勢と、手に触れたくなる造形美
ブランド立ち上げ後、ニクシッチ氏たちは新たなプロダクト制作に向けてデザイナーを探すなか、深澤直人氏へ打診し、2022年の「ミラノ・サローネ」開催中にミラノ市内で行った展示会へ招待しました。そこで深澤氏は、ZANATが持つ独自の世界観や魅力に深く興味を持ち、その後、ボスニアを訪れ、コラボレーションすることを決めたといいます。
「少し違うことができそうだと思ったのです」と話す深澤氏。
制作過程では、デザインを図面で渡すだけでなく「彫り方」まで指定するなど、深澤氏にとっても今までにない新しいモノづくりの経験となりました。

深澤氏は、ZANATの木彫技術の素晴らしさだけでなく、そのモノづくりに対する姿勢にも強く心を動かされたと語ります。多くの企業が世界中で素材の調達や加工、流通に多大なエネルギーが使われる中、ZANATはボスニア産のウォールナットやチェリー、アッシュなどの木材を使用し、地元の職人が加工・製作を行う「Made in Local」を徹底しています。深澤氏は、このサステナブルかつ理にかなった姿勢に共感をおぼえました。
また深澤氏は、「AIを始めとする頭を使う情報が溢れる現代において、手仕事で表現されたフォルムには、感覚的に人の心に訴えかける力がある」と指摘。ZANATとの協業で生まれたプロダクトは、まさに「つい触れたくなる」ような造形を創り出せたと振り返りました。モノづくりの過程で、デザイナーの意図を職人が技術を通じて形にした瞬間、その創造性に感動することこそがデザインのやりがいであると語り、今回のプロジェクトはそれを体現する取り組みであったことを強調しました。

ニクシッチ氏は、ボスニアにおける職人の世代交代による若返りや、端材を燃料として活用する無駄のない取り組みについて説明しました。また、世界中のデザイナーに対応するために「パターンライブラリー」を体系化する試みも紹介し、ZANATの家具は実用性と「アートの要素」を兼ね備えており、世界各国のレストランで採用されるなど、その価値が広がりつつあると締めくくりました。
アクタスが伝えたい文化やデザインへの想い
最後に、アクタスの野口礼が、ZANATとのパートナーシップへの想いを語りました。
「アクタスはこれまで、国内外問わず、後世に残すべき文化やデザインをお客様や市場に発信してきました。今回のZANATとの出会いとパートナーシップは、その意義を改めて実感させるものです。今後も取り組むことを使命と捉えています」。
アクタスは今後も、物語や哲学を背景に持つブランドとの協業を通じ、生活を豊かにするインテリアの提案を続けてまいります。

企画展 ボスニアが育んだ、100年の手彫りの物語<ZANAT>
• 会期: 12月14日(日)まで開催中
• 会場: アクタス・青山店(東京都港区北青山2-12-28 1F)
• 営業時間: 11:00 – 19:00
手仕事の温もりと普遍的な美を兼ね備えたZANAT。企画展では、その代表的なコレクションを展示しています。見て美しく、触れて心に響くZANATの世界観をぜひご体感ください。
<関連プレスリリース>
ボスニアが育んだ ”100年続く手彫り工芸の世界" を開催。アクタス・青山店にて12月14日[日]まで
ZANAT(ザナット)について

ボスニア・ヘルツェゴビナ発のユネスコ無形文化遺産にも登録されている伝統的な木彫り技術を用いた歴史ある木工家具ブランド。
ブランド名の「ZANAT」は、ボスニア語で「工芸」を意味し、その名の通り、長年にわたる紛争の中で絶滅の危機に瀕した手彫りの技術を守り、次世代に受け継ぐ努力が続けられています。その卓越した品質と独自性は国際的に称賛されており、2017年にユネスコ無形文化遺産に正式に登録されました。
ZANATのルーツは、19世紀末に曾祖父ガノ・ニクシッチがオーストリア=ハンガリー帝国で先駆的な木彫り技術を習得し、家族の伝統を確立したことにあります。その後、彼の息子たちが1919年にコンジツに家族の工房を開設し、ZANATは現在、4世代にわたって手彫りの家具のデザインと製造を続けています。ZANATの製品は、単なる家具やオブジェではなく、歴史、芸術性、そして持続可能性を内包した「記憶に残る贈り物」です。
深い歴史、独特の職人技、そして革新的なアプローチによって、他とは一線を画し、手作業で木目を彫ることで木材に命を吹き込むような作業が彼らの最大の特徴になります。
公式HP https://zanat.org/
ACTUS【株式会社アクタス】会社概要

「豊かなくらしとはただ消費を繰り返すことではなく、作り手の顔が見える製品とできる限り長い時間を過ごすこと」創業メンバーが残したこの言葉を現在にも受け継ぎ、1969年の創業以来、欧州のモダンインテリアを日本のマーケットに広めてきました。
アクタスはライフスタイルストアという独自の立ち位置をとり、“丁寧なくらし”というテーマのもと、永く使い続けることのできる良質なデザインのヨーロッパの家具、オリジナル家具、インテリア小物、アパレル、グリーンの提供までライフスタイル全般をサポートします。また、環境負荷を最小限に抑えたサステナブルなサプライチェーンを運営し、独自のサーキュラーエコノミーの推進にも取り組んでいます。
会社名:株式会社アクタス
代表者:代表取締役社長 村田 謙
事業内容:オリジナル家具・雑貨の開発と小売、卸売、レストラン・カフェ、アパレル事業、公共施設、商業業施設等のインテリアデザイン・設計施工など
公式HP https://www.actus-interior.com/
公式オンラインショップ https://online.actus-interior.com
Instagram https://www.instagram.com/actus_press
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