持続可能な社会を支えるインフラ「浄化槽」。 能登震災における復旧の活動報告

ニッコー株式会社(本社:石川県白山市、代表取締役社長:三谷明子)は、埼玉県行田市の工場を拠点に、浄化槽の製造・開発・設計・施工・維持管理に至るまで、総合的な体制でサービスを提供しています。令和6年能登半島地震の被災地における復興対応や復旧作業をはじめ、持続可能な社会を支えるインフラとしての浄化槽を通し、環境や社会課題の解決に取り組んでいます。
このプレスリリースでは、令和6年能登半島地震の際の「仮設住宅への浄化槽の納品/設置」と「被害を受けた浄化槽の復旧」についての活動のご報告と、「持続可能なインフラ“浄化槽”」の特徴をご紹介します。
仮設住宅へ、一日も早く浄化槽を
2024年1月1日、令和6年能登半島地震が発生。石川県白山市に本社を置くニッコーでは、地元企業ならではの迅速な対応により、被災地で一番初めに建設された応急仮設住宅へ浄化槽を納品しました。災害対策本部を結成し、地震発生の翌週には図面の準備を開始。
一刻も早く部品を調達するため、いつもの船便ではなく空輸で取り寄せるなど、製造部門にとどまらず多くの部署が連携して総力を挙げた結果、1月中の納品を実現することができました。

本社のある白山市から被害の大きい能登北部まで、地震の影響で道路の陥没や隆起、ひび割れが発生しているなか130km〜150kmほどを移動しなければなりません。路面の積雪を溶かす融雪装置も機能しておらず、雪の降る日はさらに道路状況が悪化します。現地には宿泊施設もないため、普段でも片道3時間かかる道のりを5時間以上かけて移動する毎日が3ヶ月ほど続きました。
また、2024年9月には令和6年9月能登半島豪雨が発生。河川の氾濫や土砂崩れが起き、能登地方はまたも甚大な被害に見舞われました。
ニッコー株式会社・水創り事業部・災害対策本部リーダー・砂山部長
「とにかく時間の無い工期の短い現場、それが仮設住宅建設の実状です。施工計画や工程打ち合わせができないまま、その日現場にいる他の業種の方々と作業間調整をしながら譲り合って作業しなければいけません。心身ともに大変な現場ですが、そうしたなかでも皆の想いは同じ、『何とか一日も早く被災した方々にゆっくり眠れる住まいを提供してあげたい』その一心で取り組んできました。」

通常浄化槽は地中に設置するので、点検の際は地面にあるマンホールを開けて行いますが、応急仮設住宅の場合は地上に設置するため、足場を組む必要があります。ニッコーの中型浄化槽「NSA型」は、業界No.1※の浅さに設計されているため、通常よりも少ない足場で設置することができました。実際に作業にあたったニッコーの社員も「浅型浄化槽の利点を、身をもって感じることができた。」と言います。
2025年3月末には、能登半島地震や豪雨で被災した方向けの仮設住宅が全て完成し、ニッコーでの浄化槽の納品・設置も全て完了することができました。
※1:NSA-14~21型の全高1,580mmを他社と比較した場合
震災時、下水道より早く復旧できる「浄化槽」
震災の影響で上下水道が破損した場合、たとえ上水道(飲み水や生活用水)が復旧しても、下水道が使えなければ排水することはできません。今回の能登半島地震でも、被災者の方々は「水は使えるのに排水できない」という大変不便な生活を強いられました。
排水機能を担う「下水道」と「浄化槽」ですが、浄化槽は下水道に比べて復旧にかかる時間が短いという特徴があります。実際に、今回の震災でも浄化槽を利用している地域では、下水道を使用している地域よりも早い段階で復旧が完了し、住民の皆さんは安心して水を使えるようになりました。

令和6年能登半島地震における復旧活動では、現地で発生した産業廃棄物ごとに収集・運搬・処分の方法が異なるため、混乱の続く被災地での複雑かつ迅速な対応が求められました。
壊れた浄化槽やコンクリート片・瓦礫などの産業廃棄物を現場から持ち出すには、石川県の許可業者へ委託しなければならず、他県から応援に来ている工事業者に対応してもらうことはできません。そうしたなか、ニッコーは地元の収集運搬業者や処分業者、それぞれの業者と新たに契約を結ぶことで、産業廃棄物を適正に素早く処理するなど、状況に応じて臨機応変に対応してきました。

今回の震災では、各地で発生した液状化の影響で、地中に埋まっていた浄化槽が地上へ浮上してしまいました。
地盤は土や砂の粒子が地下水に支えられてできています。地震の振動で地下水の圧力が高まると、粒子の結合が失われて液状化が起こり、地盤が泥水のようになります。この状態では地盤の密度が浄化槽より高くなるため、強大な浮力が発生し、地上のコンクリートごと浄化槽が地上に押し上げられてしまうのです。

このような浮上してしまった浄化槽の復旧について、自治体からニッコーへ要請があったのが3月。この時、自治体もニッコーも、何をすべきか何ができるのか誰にもわからない状況でした。宿泊所も確保できないなかで、「とにかく、できるところから」と準備を進め、4月に復旧作業をスタート。県外の施工業者の方々にも駆けつけていただき、5月には本格的に作業に取り掛かり、9月末にはほぼ全ての復旧を完了することができました。
ニッコー株式会社・水創り事業部・災害対策本部リーダー・砂山部長
「住民の方々には『地震が起きてから今まで、水を流せずとても不便でした。こうしてすぐに浄化槽を直していただけるなんて本当にありがたいです』と、とても喜んでいただきました。作業中も、飲み物を持って労いの言葉をかけに来てくださるなど温かなご配慮をいただき、かえって私たちの方が励ましていただきました。県外から応援に来てくれていた業者の方々が『ご自分たちが大変な時なのに、能登の皆さんは本当に優しい。』と驚いていたのが印象的です。」
持続可能なインフラとしての浄化槽

大規模な地震が発生し、下水道管やポンプなどが破損すると、本格的な下水道の復旧には年単位の長い時間がかかります。
実際に、能登各地では震災から1年半が経とうとしている2025年5月現在も下水道の完全復旧には至っておらず、能登半島中央部に位置する穴水町では、復旧完了は2026年3月末になる見込みと発表されています。さらに、復旧には時間だけでなく、莫大な建設費用と大規模な工事が必要です。
さらに近年では、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故が大きく報じられるなど、インフラ老朽化による災害や事故への危機意識が高まっています。国土交通省も、下水道管や下水処理場の老朽化が着実に進行していることを公表しており、その更新・改修は全国的に喫緊の課題となっています。
老朽化したインフラを放置すれば、安全性の低下や機能不全を招くだけでなく、地域の暮らしや環境にも深刻な影響を及ぼす恐れがあり、早急な対応が求められます。しかし、下水道の入れ替えには莫大な建設費用と大規模な工事が必要であり、簡単には進まないのが現状です。
こうした背景を受け、近年では浄化槽の有用性に注目が集まっています。浄化槽は、定期的な清掃や点検によって排水処理機能を維持できるほか、万が一地震などの影響で使用不能になった場合でも、着工から約1週間で復旧が可能です。
実際に、石川県では今回の震災を受け、下水道から浄化槽への切り替えを検討・準備している地区もあります。

より“災害に強い”体制づくりへ
ニッコーは、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震の際にも、被災地で最初に建設された応急仮設住宅へ迅速に浄化槽を納品した実績があります。今後も震災や緊急時を見据え、より迅速に対応できる体制を整えるべく、過去の被災地対応の資料整理や製品部品の備蓄、配送・施工体制の確認など、災害に強い仕組みづくりに向けた準備を進めています。また、より的確に地域に貢献できるよう、地方自治体との繋がりを深めていきたいと考えています。
住設事業に本格進出してから60年以上。水環境を通じて、お客さまや社会に豊かで安全・安心な住まいと暮らしを提供すること。それが私たちの使命であり、責任であると考えています。

浄化槽の役割とは?
地中に埋まっているため、普段の生活で目にする機会のない浄化槽。浄化槽とは、公共の下水道が配管されていない家庭に設置されている、汚水処理設備です。浄化槽の中に生息している微生物を利用して、各家庭のトイレやキッチン、お風呂場などから流れてくる生活排水をキレイにし、河川や海などに放流することで、水環境の改善に貢献しています。

浄化槽は、微生物の働きを利用しているため維持管理を行わないと機能が低下し、水質汚濁の原因となってしまいます。そのため、清掃、保守点検、法定検査の維持管理を行うよう法律で義務付けられています。水環境を守るため、浄化槽の正しい維持管理を行っていくことが大切です。
水処理の総合メーカーとして
ニッコー株式会社は、埼玉県行田市の自社工場を拠点に、浄化槽の材料開発にはじまり、研究開発・製造・販売・施工・維持管理に至るまで、総合的な体制で取り組んでいます。それはメーカーとして、各工程を自ら厳しくチェックし、高い品質の浄化槽を安定的に提供することが私たちの責任だと考えているからです。
また、維持管理などアフターサービスを行うことで、最適な解決方法をご提供しており、長い期間、製品の性能データを積み重ねていくことで、適切な改良や新技術の開発などに役立てています。皆さまに確かな安心を届けたい、それがニッコーの想いです。

ニッコー株式会社について

1908年(明治41年)石川県金沢市にて洋食器メーカーとして創業。現在、陶磁器事業に加え、地球環境を守るために、大切な水を守る水創り事業と環境プラント事業、健康を守り心身をリラックスさせる理想のバスルームを提供するバンクチュール事業、生活の安全・安心をサポートする商品、快適性や省エネに貢献する商品を提供する機能性セラミック商品事業、これらの事業を通して、日々の生活をより豊かに、より快適にするために役立つ商品を製造し、提供しています。
ニッコー公式サイト: https://www.nikko-company.co.jp/
また、ニッコーでは世界の水環境の改善を目指し、まずは汚水処理に対する意識を高めてもらうため、オリジナル絵本「水の王さま」の製作・配布を行なっています。また、社内に設置されている自販機の売上の一部は、「NPO法人ウォーターエイドジャパン」に寄付しており、世界の水・衛生問題の解決に役立てられます。
ニッコーのサステナビリティについて: https://www.nikko-company.co.jp/sdgs/


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