【プレスリリース】企業の働き方改革に関する実態調査(2024年度版)
【企業の働き方改革に関する実態調査(2024年度版)サマリー】
1. 長時間労働志向は限定的 ―「この先、より長い時間働きたくは“ない”」が3割強と最多
「この先、より長い時間働きたいか」という問いに対し、最も多かった回答は「働きたいと思ったことはない」(31.6%)であった。長時間労働志向は限定的であり、持続可能な働き方への志向が強まっていることがうかがえる。
2. 長時間労働の動機は「報酬重視」―ポジティブな意欲を回答した人は少数
「もっと働きたい」と感じた理由の第1位は「残業代を稼ぎたい」(41.3%)であった。一方、「業務が楽しいため」は7.3%にとどまり、前向きな動機による長時間労働希望者は少数であることが明らかとなった。
3. 残業の実態は“受動的” ―キャリア形成目的の残業はごく一部
短期的に残業を余儀なくされている従業員は42.7%にのぼった。主な理由は業務の積み残し(16.9%)や残業代の確保(9.4%)であり、キャリアアップ(2.0%)や業務の充実感(2.0%)による積極的な残業は少数にとどまった。受動的な残業文化の存在が顕在化したといえる。
4. 成長戦略に世代差 ―企業に求められるのは「成長機会の設計と支援」
労働時間削減要請への対応として、若手は私生活における自己研鑽(独学・資格取得等)を重視し、ベテラン層は業務時間内の効率化を志向する傾向が見られた。一方で、全世代の約2割(18.5%)が「長時間労働以外の成長方法が分からない」と回答しており、企業には成長機会の設計と支援が急務といえる。
2006年創業以来、これまでに働き方改革コンサルティングを3,000社以上に提供してきた株式会社ワーク・ライフバランス(本社:東京都港区、代表取締役:小室淑恵) は、2025年1月に「第6回働き方改革に関するアンケート」(以下「本調査」)を実施し、このほど調査結果をまとめました。
本調査は、2019年度より継続しており、働き方改革をより推進していくことを目的に、働き方改革に効果的な施策や課題、新たな環境変化への対応方法といった知恵を探るべく、全国の20代以上のビジネスパーソンを対象に働き方改革の実態について調査したものです。
第6回の調査結果によると、「もっと長い時間働きたい」のは「業務が楽しいため」(7%)ではなく「より残業代を稼ぎたいため」(41%)と答える人が多く、「日常的により長い時間働きたい」と思わない人は31.6%にのぼりました。また、全世代を通じて「長時間労働以外での成長方法がわからない」と感じている人が約2割となり、成長のための手段や機会設計について情報や学びを求めている人が多いことが予想される結果となりました。
<調査結果 詳細>
1. 「この先の人生、日常的により長い時間働きたいとしたらその理由は何か」という問いに、最も多かったのは「もっと長い時間働きたいと思ったことはない」(31.6%)
「この先の人生、日常的により長い時間働きたいとしたらその理由は何か」という問いに、「もっと長い時間働きたいと思ったことはない」と回答した人が31.6%と最も多い結果となりました。「残業したい」「長時間働きたいという希望があると聞いている」といった声が耳に入りやすいですが、実際には、今よりも長い時間で日常的に働くことを希望する人は少ないことが明らかとなりました。
このことから、長時間労働を前提とするのではなく、仕事と私生活の両立を実現するため、仕事の進め方をさらに工夫する必要があります。たとえば、DXやAIの活用を推進するには、まず現在の業務内容を整理する“業務の棚卸し”が重要です。朝に業務を洗い出し、優先順位や時間帯も含めてスケジュールを立て、退勤時に振り返ることを習慣化すると、2週間~1か月で棚卸しに近い効果が得られます。
また、単なるIT化ではなく、理想の業務プロセスを設定して改善することも効果的です。その際には、理想の働き方をチーム単位で議論し、実際に使いやすい仕組みを作ることが重要です。議論の場がない組織では、まずざっくばらんに心理的安全性高く話し合える場を設けることが求められます。

2. 「もっと長い時間働きたい」と感じたことがある人の理由の第1位は「より残業代を稼ぎたいため」(41.3%)。「業務が楽しいため」と答えた人は7.3%にとどまり、企業経営にとって前向きな理由で長時間働くことを希望する人は極端に少ない結果となった
長い時間働くことを希望する人の理由は、「より残業代を稼ぎたいため」が第1位(41.3%)、その後「新しい知識や技術を学び成長・キャリアアップしたいため」(25.3%)と続き、「業務が楽しいため」と答えた人は7.3%にとどまりました。自己研鑽やキャリアアップ(25.3%)といった企業経営にとって前向きな理由で長時間働くことを希望する人よりも、残業代を稼ぐこと(41.3%)が目的である人が多い結果となりました。
このことから、企業経営において長時間労働は、成長やキャリアアップといった効果よりも、残業代や光熱費のコスト増、メンタルヘルス疾患のリスク増などのリスクが高く、安易な残業は有効な経営戦略とは言えない可能性が示唆されます。
また、自己研鑽やキャリアアップの促進は重要ですが、従業員任せでは優先順位が上がらない場合も多いため、ライフスタイルやスキルに応じた個別の声がけや機会提供が求められます。そのため、上司・管理職による部下の観察や理解、適切なコミュニケーションがこれまで以上に重要となるでしょう。
今後、企業はこうしたシチュエーションにあわせ、管理職等にコミュニケーションスキル、たとえばコーチングスキルやファシリテーションスキルなどといった具体的なノウハウを伝え、活用できる研修などの提供に注目が集まることが予想されます。

3. 「長期的な残業を希望していないが短期的に残業せざるをえない人」の割合は42.7%で、残業理由は業務の積み残し(16.9%)、残業代を稼ぐため(9.4%)と続き、キャリアアップ(2.0%)や業務の楽しさ(2.0%)などポジティブな残業理由の人の割合は少なく、希望した残業ではない“受け身の残業”がうかがえる結果となった
「長期的な残業を希望していないが短期的に残業せざるをえない人」の割合は42.7%で、残業理由は「業務の積み残し」(16.9%)、「残業代を稼ぐため」(9.4%)と続きました。他方、「キャリアアップ」(2.0%)や「業務の楽しさ」(2.0%)などポジティブな残業理由の人の割合は少ない結果となりました。
本来は残業を希望していないものの、やむを得ず“受け身の残業”をしている状況がうかがえます。これが習慣化すると「定時内に終わらないもの」と諦めたり、「どうせ残業だから」と日中の集中力が下がる要因にもなります。また、「残業代を稼ぐため」と考える人は、必要のない業務でも残業を選ぶことで、生産性向上への意欲が薄れる可能性があります。“ぶら下がり社員”を放置することは、中長期的に経営に悪影響を及ぼす懸念もあります。
こうした意識改革には、定時内で仕事が終わる仕組みづくりや、残業が見込まれる際に声をかけ合う環境づくりが重要です。さらに、業務の“見える化”と定期的なチェック体制も効果的でしょう。

4. 会社から労働時間の削減を求められた場合、若い世代は自己研鑽(社外)を通じて成長しようとする傾向が強く、ベテラン層は業務時間内での業務効率化(社内)を重視する傾向が見られた。他方、全世代にわたって約2割の人が「長時間労働以外での成長方法が分からない」と感じていることから、成長するための方法を模索している様子も見受けられた
「今後、労働時間削減を求められた場合」の問いに対し、「私生活の時間で自己研鑽を行う」と答えた人が31.2%と最多で、「限られた時間内で効率よく成長を目指す」が27.7%と続きました。年代別では、20代は「私生活の時間で自己研鑽」が42.9%と高く、50代は「限られた時間内で効率よく成長」が40.0%と最も多く、世代間で成長方法に違いが見られました。また、全世代で約18.5%が「長時間労働以外の成長方法がわからない」と回答しており、模索する姿も浮かび上がっています。
この結果から、自己成長やキャリアアップに対する考え方や働き方のニーズが世代によって多様化していることが推測されます。世代間の違いが対立ではなく相互理解につながるよう、企業の働きかけが重要です。さらに、長時間労働に依存してきた企業では、「成長=残業」という固定観念が根付いている可能性があり、残業に頼らない成長戦略や取り組みが求められています。“可処分時間”といったキーワードも登場する昨今、多様化する社員のニーズにあわせた研修プログラムの構築のみならず、マネジメントやリーダーシップ等についても、時代に応じたアップデートを行う必要があります。長時間労働に頼らない働き方や、多様な人同士がチームになって働くために必要なスキルの獲得を後押しすることが急がれます。


【調査概要】
調査名:株式会社ワーク・ライフバランス/第6回働き方改革に関する実態調査(2024年度)
調査対象:インターネットリサーチモニター 年齢:20歳~59歳 性別:男女 居住地:全国
調査期間:事前調査 2025年1月24日~2025年1月3日
本調査 2025年2月7日~2025年2月10日
調査方法:インターネット調査
有効回答数:有効回答数:事前調査 6,613件、本調査1,109件
※回答率(%)は小数点第1位を四捨五入して表示しており、合計数値は必ずしも100%とはならない場合があります。
■株式会社ワーク・ライフバランスについて
2006年創業、以来17年以上にわたり企業の働き方改革により業績と従業員のモチベーションの双方を向上させることにこだわり、働き方改革コンサルティング事業を中心に展開。これまでに自治体・官公庁も含め企業3,000社以上を支援。残業30%削減に成功し、営業利益18%増加した企業や、残業81%削減し有給取得率4倍、利益率3倍になった企業など、長時間労働体質の企業への組織改革が強み。
会社名:株式会社ワーク・ライフバランス
代表者:代表取締役社長 小室 淑恵
サイト:https://work-life-b.co.jp/
創立年月:2006年7月
資本金:1,000万円
主な事業内容:
働き方改革コンサルティング事業・講演・研修事業
コンテンツビジネス事業・コンサルタント養成事業
働き方改革支援のためのITサービス開発・提供
「朝メールドットコム」「ワーク・ライフバランス組織診断」「介護と仕事の両立ナビ」
カードゲーム体験型研修「ライフ・スイッチ」
実績:3,000社以上(国土交通省、鹿島建設中部支店、住友生命保険相互会社、株式会社アイシン、内閣府、三重県、埼玉県教育委員会など)

・代表 小室 淑恵プロフィール
2014年9月より安倍内閣「産業競争力会議」民間議員を務め、働き方改革関連法案施行に向けて活動し、2019年の国会審議で答弁。2019年4月の施行に貢献。国政とビジネスサイドの両面から働き方改革を推進している。年間200回の講演依頼を受けながら、自身も残業ゼロ、二児の母として両立している。
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