『食品小売業のサステナビリティ取り組みランキング2025』発表~ 1位はファミリーマート ~推進の鍵は“専門人材” 約6割が「育っていない」と回答
サステナビリティ推進の最大の課題として「専門知識を備えた人材がいない・育っていない」が58.6%、施策の継続性・体系化を妨げる大きな要因に

公益財団法人流通経済研究所(東京都千代田区:理事長 加藤 弘貴)は、食品小売業の企業111社を対象に、サステナビリティの取り組みに関するアンケート調査を実施しました。その結果、取り組みランキング1位はファミリーマートとなりました。
今年度の調査で最も特徴的だったのは、サステナビリティ推進の最大の課題として「専門知識を備えた人材がいない・育っていない」が約6割(58.6%)と最も多く挙げられた点です。この傾向は「多忙」(43.2%)や「予算不足」(38.7%)を上回り、専門人材の不足が施策の継続性・体系化を妨げる大きな要因となっていることを示しています。本調査の結果公表を通じて、食品小売企業のサステナブルな取り組みの推進の一助となることを目指します。

調査の背景・目的
近年、サステナビリティをめぐる企業の取り組みは、気候変動対応や人権尊重、地域共生など多岐にわたり、その経営戦略上の重要性が一層高まっています。特に2024年には、ISSB基準(国際サステナビリティ基準審議会)に基づく情報開示が日本でも本格的に導入され、企業のサステナビリティ経営が一層問われる時代となっています。また、Z世代をはじめとする消費者層の意識変化により、環境・社会への配慮が日常の選択基準の一つとなりつつあります。
調査結果
こうした潮流を踏まえ、公益財団法人流通経済研究所は、食品小売業を対象にサステナビリティへの取り組み状況を調査しました。その結果、ランキング1位ファミリーマート、2位セブン&アイ・ホールディングス、3位ローソンとなりました。全体として、企業の約7割が「サステナビリティへの取り組みが経営に良い影響を与えている」と回答しており、環境対応のみならず、従業員や顧客との関係強化、地域との連携拡大など、多面的な成果が広がっています。
サステナビリティへの取り組み-現在の注力度(N=111)

サステナビリティへの取り組み推進に「とても力を入れている」のは22.5%、「どちらかというと力を入れている」のは36.9%であり、合わせて59.4%と取り組みが広がっていることがうかがえます。ただし、「とても力を入れている」だけ見ると2割強にとどまっており、依然として積極的に取り組んでいる企業は限られています。
サステナビリティへの取り組み-今後の拡大意向(N=111)

今後、サステナビリティへの取り組みを「拡大する予定である」と回答した企業は62.2%にのぼり、多くの企業が取り組みの強化を進めていることがわかります。
個別テーマ別の注力度(N=111)

「とても力を入れている」と「どちらかというと力を入れている」の回答を合計すると、「地域社会への貢献」(85.6%)が最も多く、それに次いで「食品ロス削減とリサイクル率の向上」(73.8%)が続き、どちらも7割を超えています。
一方で、「サステナビリティへの取り組み推進の体制整備」、「イノベーションと技術の活用状況」、「持続可能な物流への貢献」に関しては、回答率が3~4割にとどまり、今後の改善や推進が求められる領域といえます。
サステナビリティへの取り組みが事業・経営に与える良い影響(N=111)

サステナビリティへの取り組みが事業や経営に良い影響を与えていると感じている企業は、「とても感じる」「どちらかというと感じる」と回答した企業を合わせて67.5%にのぼり、多くの企業がその効果を実感しています。
具体的な良い影響としては、「リサイクル率の向上」「プラスチック使用量の削減」「CO2排出量の削減」「顧客満足度の向上」「従業員満足度の向上」「自治体やNPOなどからの連携要請の増加」などが挙げられました。
サステナビリティへの取り組みを推進する上での障壁や課題(N=111)

サステナビリティへの取り組みを推進する上での障壁や課題として、「専門的な知識・能力を有する人材がいない/育っていないこと」(57.7%)が最も多く、専門性に課題を感じている企業が多いことがわかります。次いで、「業務が忙しく、対応が難しいこと」(55.0%)、「予算や資金の不足」(44.1%)が挙げられており、人手やコストの面でも課題が存在しています。
担当者総括コメント
今年度の調査では、食品小売業のサステナビリティ推進が「拡大期」から「定着・再構築期」へと移行する中で、専門人材の不足が最大の課題として顕在化しました。
サステナビリティへの注力度はやや落ち着きを見せる一方、「食品ロス削減」「環境・気候変動対策」「持続可能な調達」など実務的な分野では着実な前進が見られます。
しかし、専門知識を持つ人材が不足していることで、施策の企画・運用・評価を担う人が限られ、組織的な継続性や体系性の確保に課題が残っています。
今後は、サステナビリティの専門人材の育成と推進体制の強化が求められます。そのためには、経営層から現場までを含めた従業員への教育・研修の充実が不可欠です。
人材育成を通じて組織全体のサステナビリティに関する知識を高め、専門人材が中心となって体制や制度を整備し、経営層と現場が一体となってサステナビリティを推進する――こうしたプロセスを経て、企業は「サステナビリティを組織文化として根づかせる」段階へと進むことが期待されます。これらを進めた結果、業界全体として持続可能な経営への移行が一層確実に進展していくでしょう。
本調査の結果詳細はこちらからご確認ください。
調査概要

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調査対象者 |
総合スーパー、食品スーパー、生協、ドラッグストア、コンビニエンスストアなど、食品の販売比率が高い小売業態 |
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調査期間 |
2025年6月2日~8月15日 |
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配布方法 |
郵送、メール |
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回収方法 |
Web回答フォームもしくはExcelファイルのメール送付(配布数:994社 回収数:111社) |
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回答者属性 |
総合スーパー9社、食品スーパー60社、生活協同組合29社、コンビニエンスストア4社、ドラッグストア2社、各種食品小売業(食肉、鮮魚、野菜、酒類、菓子、パン、牛乳など)4社、その他4社 |
なお本調査では、できるだけ多くの意見を反映させるため、アンケートの全設問に回答しなかった回答者も含めて集計を行いました。その結果、設問によっては回答がない場合があり、グラフに表示されているn数も設問によって異なる可能性があります。この点を考慮して、集計データを解釈してください。
※注記 「N=87」などの表記は、当該設問への回答者数を示しています。
■ランキング掲載の基準
上位30社を公表しています。ただし、回答者にHDと事業会社が重複して含まれる場合はHDを掲載することとし、事業会社は掲載せず、それにより社数が減じた場合は31社以降を追加しています。
■採点の基準
以下の設問(139問)の合計得点で評価しています。
サステナビリティ推進の方針策定・体制整備(18問)
サステナビリティへの取り組みの実践や報告の実施(12問)
持続可能な調達(8問)
環境・気候変動対策(18問)
食品ロス削減とリサイクル向上(8問)
地域社会への貢献(13問)
持続可能性に配慮した商品(13問)
持続可能な働き方の創造(29問)
サステナビリティ推進のためのイノベーションと技術の活用(8問)
持続可能な物流(12問)
■その他
ランキング上位で社名公表候補となる企業には予め公表許諾を得ています。
なお、本年度は調査およびランキング公表時期を前年より前倒しし、より迅速な情報発信と企業の取組促進を図っています。
■参考
昨年度の調査結果プレスリリース:
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