2025年上半期、中古マンション価格の上昇は「異常加速」か!?―東京都23区における価格動向の実態分析―
2025年も折り返し地点を迎えました。不動産市場において、特に注目されるのが首都・東京、そしてその中核をなす「東京都23区」におけるマンション市場の動向です。
「マンション価格が高騰している」といった報道や分析は依然として数多く見受けられますが、その“スピード”や“質”について、深掘りされることは多くありません。単に「上がっている」のではなく、「どのくらいの速さで」「どのエリアが特に目立っているのか」「どの価格帯に変化が集中しているのか」といった点を、定量的な視点で捉えることが重要です。
今回のレポートでは、東京都23区における中古マンションの価格動向を半年ごとの成約坪単価(※1坪=約3.3㎡)という視点から分析し、2025年上半期に起きている“異常な加速”の実態を明らかにします。
23区全体で見ても急加速している価格上昇
グラフ1:東京都23区:半期ごとの中古マンション平均坪単価上昇率

まず注目すべきは、東京都23区全体での平均成約坪単価の推移です。過去の半年ごとのデータと比較すると、2025年上半期の平均坪単価は、前の半期から 7.5%上昇 という非常に高い伸び率を記録しました。
これは、過去数年間の上昇幅と比較しても異例の水準であり、「高騰」という表現では足りないほどの“価格上昇の加速”が見られる状況です。物価上昇や建築コストの上昇、都心集中のトレンドなどが複合的に絡み合っており、単なる市況の強さ以上の構造的な動因が働いているといえるでしょう。
都心5区の価格上昇が異次元レベルに
グラフ2:東京都都心5区:半期ごとの中古マンション平均坪単価上昇率

この“異常加速”の主戦場となっているのが、いわゆる「都心5区」――千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区です。
2025年上半期の都心5区の平均坪単価は、前半期間から 15.5%の上昇 を記録しました。これは通常の市況では考えにくいスピードであり、今までの価格上昇のトレンドとは一線を画しています。
この傾向は一時的なブレや季節要因ではなく、過去の半年ごとの推移と比較しても「突出して高い上昇率」となっており、需給の均衡が崩れている可能性も示唆されます。特に港区や渋谷区では、再開発による高付加価値エリアの創出がこの動きを後押ししているようです。
グラフ3:東京都都心5区以外の区部:半期ごとの中古マンション平均坪単価上昇率

一方、都心5区以外の18区では、同時期の上昇率は 3.2% にとどまっており、価格上昇は続いているものの、そのスピードは比較的安定しています。つまり、東京全体で一様に高騰しているのではなく、“超局地的な加速”が起きているという点が、2025年の最も大きな特徴といえるでしょう。
注目のエリア:品川・目黒は別格の加速
注目すべきは都心5区に加え「品川区」「目黒区」です。これらのエリアでは、地価やマンション価格の上昇が、過去数年と比較しても顕著に進行しており、今や東京のマンション市場における“ホットスポット”といっても過言ではありません。
品川区
リニア中央新幹線の開業を見据えた「品川駅」周辺の再開発が本格化しており、国際都市としての機能強化やビジネス拠点の形成が進んでいます。高輪ゲートウェイ駅の開業を契機に、エリア全体が大きく刷新されつつあり、それに伴って住宅ニーズや富裕層の注目度も急上昇。住宅だけでなく、商業・業務機能との複合開発が進んでいることから、マンション価格にも強い追い風となっています。
目黒区
住宅街としての成熟度の高さとともに、「中目黒」や「自由が丘」といった人気エリアを抱えており、居住環境の良さが際立ちます。都心へのアクセスも良好でありながら、自然環境や文化的雰囲気が残るバランスの良さから、特にファミリー層や富裕層の実需需要が旺盛です。加えて、目黒川沿いや駒沢通り周辺では、築浅かつ高級仕様のマンションが増加しており、坪単価の水準も年々上昇しています。
2025年上半期の成約データを見ても、これらのエリアは過去数年で最も急激な価格上昇を記録しており、今後も強い注目を集めることが予想されます。特に、第一次取得層にとっては価格が限界水準に近づいており、資金計画や購入タイミングが一段と重要になってきています。
「2億円の壁」から見える投資・投機的色合い
グラフ4:2億円以上中古マンション:半期ごとの中古マンション平均坪単価上昇率

次に、価格帯別の動向を見てみましょう。今回は、成約価格が「2億円以上」と「2億円未満」の中古マンションを対象に比較を行いました。
まず、2億円未満の物件については、2025年上半期の平均坪単価は前半から 2.0%上昇 しており、これは過去の平均とほぼ同等の“安定した上昇”といえます。実需目的の需要層による取引が中心であり、堅調な市場推移を示しているといえるでしょう。
グラフ5:2億円未満中古マンション:半期ごとの中古マンション平均坪単価上昇率

一方で、2億円以上の物件は、同期間に 9.2%という急激な上昇 を示しました。加えて、過去の推移を見ると「上昇率の振れ幅(ボラティリティ)」が非常に大きく、価格変動が激しい傾向にあります。
これは、富裕層の投資対象としてこの価格帯の物件が選ばれやすく、マーケットの需給バランスが「居住ニーズ」よりも「資産運用」「転売」「相続対策」といった目的で動いているためだと考えられます。
実需層よりも、投資家・投機家の動向がダイレクトに影響するため、地政学的なリスク、為替の動き、税制の変化といったマクロ要因にも敏感に反応しやすく、不安定な動きになっているのです。
高価格帯市場と一般市場の「二層構造」が加速
今回の分析から明らかになったのは、「東京都23区のマンション価格は一律で高騰しているわけではない」ということです。
むしろ、以下の3つの構図が見えてきました:
1:都心5区の突出した価格上昇
2:品川・目黒といった特定エリアでの異常加速
3:2億円以上の高価格帯でのボラティリティ拡大
このように、2025年の東京都マンション市場は、“二層構造”あるいは“三層構造”とも呼べるような複雑な様相を呈しています。とりわけ、高価格帯市場では実需よりも資産運用目的の取引が急増しており、それが価格の不安定さにつながっています。
今後の展望:投資と実需、どちらの需要が勝るか
2025年下半期以降、この価格加速トレンドがどこまで続くかは依然として不透明です。
金利動向、円安の進行、都心部での供給計画、外国人投資家の動向、国内の景況感など、数多くの要素が絡み合いながら市場を形作っていきます。
特に、一般消費者がアクセスできる価格帯の“実需ニーズ”が今後も維持されるか、あるいは投資主導でさらに価格が乖離していくのかは、今後の東京不動産市場の鍵を握るテーマです。
結論
2025年上半期は、東京都23区のマンション価格がこれまでにないスピードで上昇した“異常加速”の時期であり、とりわけ都心・高価格帯・特定エリアに集中していることがわかりました。
このような状況下では、単に「価格が上がっている」という情報にとどまらず、「どこで」「どの価格帯が」「どのくらいの速さで」動いているのかという視点が、今後の投資判断・購買行動にとって一層重要になっていくでしょう。

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
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マンションリサーチ株式会社では、 不動産売却一括査定サイトを運営しており、 2011年創業以来「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」「約3億件の不動産売出事例データ」及び「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」の収集してまいりました。 当社ではこれらのデータを基に集客支援・業務効率化支援及び不動産関連データ販売等を行っております。
会社名: マンションリサーチ株式会社
代表取締役社長: 山田力
所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
設立年月日: 2011年4月
資本金 : 1億円
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