【中古マンション】資産性に地域差、千葉県・埼玉県・神奈川県は顕著に弱まる。資産性が高いのは都心の極一部のエリア。

マンションリサーチ株式会社

バブル絶頂期水準の成約価格──東日本不動産流通機構レポートが示す最新トレンド

東日本不動産流通機構(REINS)が発行する「レインズタワー」の2025年6月のマーケットレポートによれば、首都圏一都三県における中古マンションの成約坪単価が、1990年10月、すなわちバブル経済の絶頂期の水準であることが明らかになりました。しかしながら、その内訳を詳細に見ていくと、地域間での温度差が鮮明になってきています。

東京都のみが高騰継続──三県は転換期へ

グラフ1:一都三県中古マンション成約価格坪単価推移

出典:福嶋総研

一都三県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)全体の平均ではバブル期を上回る水準となったものの、実際に価格高騰が続いているのは東京都だけです。神奈川県、千葉県、埼玉県では、すでに2023年後半から2024年前半にかけてピークを迎え、その後、成約価格が減少傾向に転じています。

特に千葉県・埼玉県では、2013年頃から続いてきたゆるやかな価格上昇トレンドが、ついに終焉を迎えつつある兆しが見られます。価格の下落は限定的ではあるものの、これまでの「右肩上がり」から「横ばい〜下落基調」へと明確に局面が変わってきているのです。

背景には、インフレや金利上昇といったマクロ経済的な要因のほか、都心部と比較した際のエリア的魅力の差や需給バランスの変化などが挙げられます。つまり、価格の調整が進んでいるのは、立地としての競争力がやや弱いエリアであると言えるでしょう。

エリア別の価格動向を可視化──「高騰率」と「上がりやすさ」で総合評価

こうした状況を踏まえ、筆者はエリアごとのマンション市場の「強さ」を定量的に比較するため、2024年の平均坪単価と2025年上期の平均坪単価の推移をもとに、各エリアの「価格の高騰率」と「価格の上がりやすさ(上昇棟数の多さ)」を指標としてランク分けを行いました。

評価基準のプロット分類:

赤プロット:評価A 価格高騰率も上昇棟数もともに高く、市場として非常に強いエリア

黄プロット:評価B いずれかが高い、もしくは両方が平均以上のバランス型エリア 

青プロット:評価C 価格の高騰が限定的であり、上昇棟数も少ないエリア 

 表1:評価基準表

この評価により、短期的な価格動向だけでなく、エリアとしての中長期的なポテンシャルをも明らかにすることが可能になりました。

評価Aエリア──都心の強さが際立つ

図1:首都圏エリア別評価

出典:福嶋総研

東京都内では、以下の区が評価Aに分類され、マンション立地として極めて強いエリアであることが再確認されました。

【評価Aエリア】

中央区、港区、渋谷区、千代田区、目黒区、江東区、文京区、品川区、豊島区、台東区、墨田区

これらのエリアに共通するのは、高いブランド力、継続的な再開発、商業利便性の高さ、交通アクセスの充実度、そして国内外からの資産性評価です。特に港区・渋谷区・中央区などは、富裕層の都心回帰や海外投資家による需要が集中することで、相場全体を引き上げる原動力となっています。

なかでも千代田区や港区では、1坪あたり1000万円を超えるような高級物件の取引も珍しくなく、これらが東京23区全体の平均価格を押し上げる構図になっています。

東京都23区の堅調さ──全エリアがA・B評価に

注目すべきは、東京都23区すべてがAまたはBの評価に入っているという点です。これは、東京23区内では一部エリアを除いて、依然としてマンション価格が堅調であること、つまり都市全体の地力の強さが裏付けられていると言えます。

再開発、インフラ整備、駅近立地の供給の限定性などが評価の底支えとなり、「東京都=強い市場」という図式は今後も継続していく可能性が高いでしょう。

東京都以外で光るエリア──川崎市中原区(武蔵小杉)

図2:神奈川県エリア別評価

出典:福嶋総研

東京都以外で唯一、評価Aとなったのが神奈川県の川崎市中原区、いわゆる武蔵小杉エリアです。タワーマンションが林立し、再開発が継続しているこのエリアは、東京都心と遜色ない人気を誇ります。

東急東横線・南武線・湘南新宿ラインなど複数路線が交差し、利便性が非常に高い一方で、生活利便施設や教育環境の整備も進んでいるため、ファミリー層からの需要も安定しています。ここでは、東京に比肩する価格上昇トレンドが確認されています。

評価B・Cのエリア──「地力の限界」が表面化

東京都の一部エリアが市場をけん引する中で、首都圏の他地域、特に神奈川県・埼玉県・千葉県における「評価B」「評価C」エリアでは、明らかに市場の伸び悩みが見られます。

神奈川県では、川崎市の川崎区幸区、さらに横浜市の中区西区といった、一般的には「人気エリア」として知られている地域であっても、今回の分析では「評価B」にとどまりました。これらのエリアは、かつては都心へのアクセスの良さや商業施設の集積度などを武器に、マンション価格を大きく押し上げてきました。しかし直近では、上昇ペースが鈍化しており、価格がピークアウトしつつある兆候が見られます。理由としては、再開発が一巡し、目新しさが薄れてきたことや、人口流入の勢いがやや落ち着いてきたことなどが挙げられます。

埼玉県や千葉県については、さらに厳しい状況です。今回の調査では、両県ともに評価Aに該当するエリアは皆無で、すべてが評価BまたはCにとどまりました。この結果からも明らかなように、価格上昇の勢いは既に頭打ちの様相を呈しています。

図3:埼玉県エリア評価

出典:福嶋総研

図4:千葉県エリア別評価

出典:福嶋総研

特に駅距離が遠い物件や、通勤時間が長くなる郊外エリア、典型的なベッドタウンなどにおいては、需要の鈍化が顕著です。テレワークの普及などにより、かつての「都心まで1時間でも構わない」という通勤感覚は変化しつつあり、利便性が相対的に劣るエリアは選ばれにくくなっています。また、物価や金利の上昇もあり、購入者が慎重になる中で、郊外エリアの高値維持はますます難しくなってきています。

今後もこの傾向が続くようであれば、千葉・埼玉では「価格調整」が本格化する可能性があります。これは一時的な値下がりではなく、数年間にわたってじわじわと下落する「中期的な調整局面」に入る可能性を含んでいます。

まとめ──「エリアの目利き」が資産価値を左右する時代へ 

今回の分析から明らかになったのは、マンション価格の推移はもはや「一律ではない」ということです。バブル絶頂期水準の相場とは言え、実際に価格が高騰し続けているのはごく一部のエリアに限られており、そのほとんどが東京都心の一等地に集中しています。

東京都23区のブランド力、再開発余地、グローバルな需要は今後もしばらく持続すると思われる一方で、近郊三県では一巡感が強まりつつあります。資産性を重視した不動産購入を検討する場合、今後は「立地評価」と「エリアの将来性」の見極めがより重要になると考えられます。

福嶋 真司(ふくしましんじ)

マンションリサーチ株式会社

データ事業開発室 

不動産データ分析責任者

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代表研究員

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代表取締役社長: 山田力

所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階

設立年月日: 2011年4月

資本金 : 1億円

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上場
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1億円
設立
2011年04月