「事業責任者の人・組織課題解決の支援ニーズに関する調査(事業局面別支援ニーズ編)」の分析結果を発表
事業や直接部門の組織責任者は人事に何を期待しているのか
現場の課題認識は、人材獲得、ミドルマネジメントの過重負担、中堅・若手・次世代リーダー育成
要変革局面事業では社内人事の支援、成長局面事業では社外専門家の支援へのニーズが特徴
要変革局面事業では社内人事の支援、成長局面事業では社外専門家の支援へのニーズが特徴
企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都品川区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、2022年3月に事業統括責任者または直接部門・部署(営業、販売、製造、開発など)の責任者361名に対し、「人・組織課題解決の支援ニーズに関する調査」を実施し、調査結果を公表しました。
なお「事業責任者の人・組織課題解決の支援ニーズに関する調査(HRBPの存在意義編)」を5月30日に公開予定です。
1. 調査の背景
昨今の社会環境の変化を受けて、企業における人と組織の課題とその解決についての重要性が増しています。それらは人事部門だけが担うのではなく、ラインの管理職、従業員、社外専門家などが協同で担うものであることは1980年代当時から議論されてきています。種々の議論を整理すると、企業内の人事機能は下の図のように描くことができます。4つの機能のいずれも、人事部門や社外専門家などの人事専門家が、事業現場の戦略や人をよく理解し、連携することの重要性を示唆しています。そして、昨今、人事部門や専門家の側が現場に寄り添うことの重要性はより強まっていると言えます。
このような人事機能の分担や連携の在り方は、人事部門や社外専門家の側からはよく議論されてきました。では、事業現場の責任者の側はどのような課題認識や連携・支援ニーズを持っているのでしょうか。そこで今回、事業責任者の課題認識や連携・支援ニーズに関心を向けた調査を実施しました。
人・組織の課題認識、人事スタッフ・人事部門からの積極的な関与がほしいもの、社外専門家の知見提供や支援がほしいものについて、担当事業領域の事業局面ごとに「成長重視局面」「効率重視局面」「要変革局面」の3群に分類し、集計したのが図表1である。
●現場の課題認識は、人材獲得、ミドルマネジメントの過重負担、中堅・若手・次世代リーダー育成(図表1)
現場の課題認識は、いずれの事業局面においても、人材獲得・育成の課題において選択率が高い。要変革局面では、「優秀な人材が流出している」「難しい仕事に挑戦する人が少ない」「メンバーの自発的な活動が少ない」など、優秀人材・自律人材の活躍の課題に特徴がみられる。
●要変革局面事業では社内人事の支援、成長局面事業では社外専門家の支援へのニーズが特徴(図表1)
人事/社外専門家への支援ニーズは概ね課題認識の高さと連動している。成長重視局面と要変革局面の特徴の違いについて見てみると、「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」「次世代の事業経営を担う人材が育っていない」といった課題解決の支援ニーズに関して、要変革局面では自社人事の支援のみを選択する傾向があるのに比べ、成長重視局面では社外専門家支援も期待する傾向がみられる。
図表1 人・組織の課題認識と支援ニーズ(選択率上位の項目のみ掲載)〈 複数回答/n=330/%〉
人材マネジメント施策について、人事スタッフ・人事部門からの積極的な関与・支援、または社外の専門家の知見提供や支援がほしいものをたずねた結果(図表2)からも、社内人事および社外専門家への支援ニーズやその事業局面ごとの違いを読み取ることができる。
●社内人事には中途採用、要員計画への支援、社外専門家には能力開発、中途採用、メンタルヘルス対策への支援ニーズが共通してみられる(図表2)
人事スタッフ・人事部門に対しては、「中途採用者の募集・採用の交渉・決定」「要員計画の策定」へのニーズがいずれの事業局面においても3割を超える。
社外専門家に対しては、「メンバーの能力開発(Off-JT)」「中途採用者の募集・採用の交渉・決定」「メンタルヘルス対策」など専門知識が求められる場面のほか、「メンバーの能力開発(OJT)」「次世代リーダーの育成」「管轄組織内の異動や配置の交渉・決定」など、組織内の人材マネジメント場面での支援にも期待が及んでいる。従来の自社のやり方とは異なる方法を取り入れるニーズが示唆される。
●事業局面別では、成長重視局面事業では異動・配置への社内人事支援ニーズと能力開発への社外専門家支援ニーズが、要変革局面事業では能力開発や次世代リーダー育成に支援ニーズがみられた(図表2)
成長重視局面では、「管轄組織をまたぐ異動や配置の交渉・決定」への人事支援ニーズが高く(31.2%)、「メンバーの能力開発(Off-JT)」への社外専門家支援ニーズが高い(25.8%)。事業の成長のための組織改編や人材の配置転換、人材の抜擢や早期育成の場面で、人事や社外専門家の支援が期待されている。
要変革局面では、人事支援ニーズが「メンバーの能力開発(Off-JT)」、「次世代リーダーの育成」、「中堅社員のモチベーション向上」で高く、横の異動というよりは、縦方向のマネジメントを強化する人材育成が社内人事に期待されている。社外の専門家に対しては「メンバーの能力開発(Off-JT)」(34.2%)だけでなく、「メンバーの能力開発(OJT)」(25.2%)でも高いのが特徴で、専門家の風を入れて、職場における人材育成を変革・強化したいという意図が推察される。
図表2 支援ニーズのある人材マネジメント施策ランキング(選択率上位の項目のみ掲載)〈 複数回答/n=330/%〉
人事への期待を、専門能力面からたずねた結果が図表3である。情報面では「自社の戦略・ビジネスについての精通」「従業員個々人の情報についての精通」が、いずれの事業局面でも多く選択されている。「自社の戦略・ビジネスについての精通」は、特に効率重視局面で50.8%と高く、重視されている。
知識・技術面では、「人事制度の設計や運用への精通」が共通の期待として挙げられる。「コーチング、カウンセリング、ファシリテーションなどの実践スキル」は、効率重視局面ではさほどでないが、成長重視局面、要変革局面では3分の1以上が選択している。他に、成長重視局面では「リーダーシップや人の心理に関する専門知識」「英語などの語学力・異文化マネジメントの知識」への期待、要変革局面では「人事関連データを集計・分析するための統計解析に関する専門知識」への期待に特徴がみられる。
図表3 人事に求める専門性〈 複数回答/n=330/%〉
3. 調査担当研究員
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所 主任研究員 藤澤 理恵
4. 調査担当研究員のコメント
今回の調査は、事業責任者の人・組織課題の認識と人事支援ニーズを理解することを目的に、分析と考察を行いました。調査結果から、事業責任者には直面する事業局面などの影響を受け、それぞれ異なる人・組織課題の認識があり、支援ニーズがあることが分かりました。
社内人事スタッフや社外の人事専門家の専門性は人と組織の側面にあり、事業の戦略的側面に明るいとは限らないかもしれません。しかし本調査の結果からは、事業の戦略的局面を理解し、その文脈にあうように人・組織課題の解決を図ることの重要性が示唆されており、そのための工夫や努力が求められることが示されました。
5. 調査概要
なお「事業責任者の人・組織課題解決の支援ニーズに関する調査(HRBPの存在意義編)」を5月30日に公開予定です。
1. 調査の背景
昨今の社会環境の変化を受けて、企業における人と組織の課題とその解決についての重要性が増しています。それらは人事部門だけが担うのではなく、ラインの管理職、従業員、社外専門家などが協同で担うものであることは1980年代当時から議論されてきています。種々の議論を整理すると、企業内の人事機能は下の図のように描くことができます。4つの機能のいずれも、人事部門や社外専門家などの人事専門家が、事業現場の戦略や人をよく理解し、連携することの重要性を示唆しています。そして、昨今、人事部門や専門家の側が現場に寄り添うことの重要性はより強まっていると言えます。
このような人事機能の分担や連携の在り方は、人事部門や社外専門家の側からはよく議論されてきました。では、事業現場の責任者の側はどのような課題認識や連携・支援ニーズを持っているのでしょうか。そこで今回、事業責任者の課題認識や連携・支援ニーズに関心を向けた調査を実施しました。
2. 調査の結果
人・組織の課題認識、人事スタッフ・人事部門からの積極的な関与がほしいもの、社外専門家の知見提供や支援がほしいものについて、担当事業領域の事業局面ごとに「成長重視局面」「効率重視局面」「要変革局面」の3群に分類し、集計したのが図表1である。
●現場の課題認識は、人材獲得、ミドルマネジメントの過重負担、中堅・若手・次世代リーダー育成(図表1)
現場の課題認識は、いずれの事業局面においても、人材獲得・育成の課題において選択率が高い。要変革局面では、「優秀な人材が流出している」「難しい仕事に挑戦する人が少ない」「メンバーの自発的な活動が少ない」など、優秀人材・自律人材の活躍の課題に特徴がみられる。
●要変革局面事業では社内人事の支援、成長局面事業では社外専門家の支援へのニーズが特徴(図表1)
人事/社外専門家への支援ニーズは概ね課題認識の高さと連動している。成長重視局面と要変革局面の特徴の違いについて見てみると、「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」「次世代の事業経営を担う人材が育っていない」といった課題解決の支援ニーズに関して、要変革局面では自社人事の支援のみを選択する傾向があるのに比べ、成長重視局面では社外専門家支援も期待する傾向がみられる。
図表1 人・組織の課題認識と支援ニーズ(選択率上位の項目のみ掲載)〈 複数回答/n=330/%〉
人材マネジメント施策について、人事スタッフ・人事部門からの積極的な関与・支援、または社外の専門家の知見提供や支援がほしいものをたずねた結果(図表2)からも、社内人事および社外専門家への支援ニーズやその事業局面ごとの違いを読み取ることができる。
●社内人事には中途採用、要員計画への支援、社外専門家には能力開発、中途採用、メンタルヘルス対策への支援ニーズが共通してみられる(図表2)
人事スタッフ・人事部門に対しては、「中途採用者の募集・採用の交渉・決定」「要員計画の策定」へのニーズがいずれの事業局面においても3割を超える。
社外専門家に対しては、「メンバーの能力開発(Off-JT)」「中途採用者の募集・採用の交渉・決定」「メンタルヘルス対策」など専門知識が求められる場面のほか、「メンバーの能力開発(OJT)」「次世代リーダーの育成」「管轄組織内の異動や配置の交渉・決定」など、組織内の人材マネジメント場面での支援にも期待が及んでいる。従来の自社のやり方とは異なる方法を取り入れるニーズが示唆される。
●事業局面別では、成長重視局面事業では異動・配置への社内人事支援ニーズと能力開発への社外専門家支援ニーズが、要変革局面事業では能力開発や次世代リーダー育成に支援ニーズがみられた(図表2)
成長重視局面では、「管轄組織をまたぐ異動や配置の交渉・決定」への人事支援ニーズが高く(31.2%)、「メンバーの能力開発(Off-JT)」への社外専門家支援ニーズが高い(25.8%)。事業の成長のための組織改編や人材の配置転換、人材の抜擢や早期育成の場面で、人事や社外専門家の支援が期待されている。
要変革局面では、人事支援ニーズが「メンバーの能力開発(Off-JT)」、「次世代リーダーの育成」、「中堅社員のモチベーション向上」で高く、横の異動というよりは、縦方向のマネジメントを強化する人材育成が社内人事に期待されている。社外の専門家に対しては「メンバーの能力開発(Off-JT)」(34.2%)だけでなく、「メンバーの能力開発(OJT)」(25.2%)でも高いのが特徴で、専門家の風を入れて、職場における人材育成を変革・強化したいという意図が推察される。
図表2 支援ニーズのある人材マネジメント施策ランキング(選択率上位の項目のみ掲載)〈 複数回答/n=330/%〉
●人事に求める専門性は、自社の戦略・ビジネス/従業員個々人の情報/人事制度の設計や運用への精通(図表3)
人事への期待を、専門能力面からたずねた結果が図表3である。情報面では「自社の戦略・ビジネスについての精通」「従業員個々人の情報についての精通」が、いずれの事業局面でも多く選択されている。「自社の戦略・ビジネスについての精通」は、特に効率重視局面で50.8%と高く、重視されている。
知識・技術面では、「人事制度の設計や運用への精通」が共通の期待として挙げられる。「コーチング、カウンセリング、ファシリテーションなどの実践スキル」は、効率重視局面ではさほどでないが、成長重視局面、要変革局面では3分の1以上が選択している。他に、成長重視局面では「リーダーシップや人の心理に関する専門知識」「英語などの語学力・異文化マネジメントの知識」への期待、要変革局面では「人事関連データを集計・分析するための統計解析に関する専門知識」への期待に特徴がみられる。
図表3 人事に求める専門性〈 複数回答/n=330/%〉
3. 調査担当研究員
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所 主任研究員 藤澤 理恵
人事制度設計のコンサルティングや、研修開発、組織調査などに従事したのち現職。東京都立大学大学院 社会科学研究科 経営学専攻にて、2021年博士号授与。同大学博士研究員。“ビジネス”と”ソーシャル”のあいだの「越境」、仕事を自らリ・デザインする「ジョブ・クラフティング」、「HRM(人的資源管理)の柔軟性」などをテーマに研究を行っている。経営行動科学学会2020年度JAAS AWARD・奨励研究賞。人材育成学会2020年度学会賞・奨励賞。
4. 調査担当研究員のコメント
今回の調査は、事業責任者の人・組織課題の認識と人事支援ニーズを理解することを目的に、分析と考察を行いました。調査結果から、事業責任者には直面する事業局面などの影響を受け、それぞれ異なる人・組織課題の認識があり、支援ニーズがあることが分かりました。
社内人事スタッフや社外の人事専門家の専門性は人と組織の側面にあり、事業の戦略的側面に明るいとは限らないかもしれません。しかし本調査の結果からは、事業の戦略的局面を理解し、その文脈にあうように人・組織課題の解決を図ることの重要性が示唆されており、そのための工夫や努力が求められることが示されました。
5. 調査概要
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