【2025年7月住宅ローン金利と中古マンション市場】「東京だけ別世界」!?マンション価格もローン金利も、買い手を選ぶ時代に突入

マンションリサーチ株式会社

マンションリサーチ株式会社(東京都千代田区神田美土代町5-2)はホームローンドクター株式会社(東京都中央区八丁堀2-19-6)代表取締役 淡河範明(おごう のりあき)氏への聞き取り調査による住宅ローン金利の推移の予測と、マンションリサーチ株式会社保有データを用いて中古マンション市場の現況について調査しました。

金利から見る、中古マンション市場

グラフ1:DH住宅ローン指数の推移

出典:ホームローンドクター(株)

※DH住宅ローン指数:ダイヤモンド不動産研究所とホームローンドクター株式会社が共同で作成している住宅ローン金利の参考指標。主要な銀行の住宅ローン商品をもとに、変動金利・固定金利・全期間固定型などの代表的な金利水準を算出したもので、市場の金利動向を把握するための目安として用いられています。

一都三県に見る中古マンション市場の分岐点

近年、日本の不動産市場における最大の注目ポイントの一つは、東京都を中心とした一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)における中古マンション市場の動向です。特にコロナ禍以降の数年間は、超低金利政策や都市回帰の動き、そしてリモートワークの普及など、複数の要因が重なり合い、首都圏全体のマンション価格は上昇基調を続けてきました。

しかし、ここに来て一都三県の市場に明確な「二極化」の兆しが表れ始めています。

グラフ2:一都三県中古マンション成約坪単価推移

出典:ホームローンドクター(株)

中古マンションの成約坪単価の推移をみると、その動きは顕著です。東京都は依然として力強い価格上昇トレンドを維持しており、高値圏での取引が続いています。特に東京都心3区(千代田区・中央区・港区)をはじめとする都心部では、需要が一段と強まっており、過熱感すら漂っています。

一方で、神奈川県・埼玉県・千葉県では、状況が異なります。これらの県では、2024年初頭を境に、実に10年以上にわたって続いてきた上昇トレンドがやや鈍化し、現在では横ばいまたは微減傾向へと転じつつあるのが実情です。つまり、東京都とそれ以外の三県では、不動産市場の温度感に大きな差が出てきているというわけです。

この分岐をより具体的に示すデータの一つが、「販売日数」と「値下げの回数」の推移です。

下記のグラフ3で一都三県の中古マンションの販売における実態を時系列を可視化しました。

ここで重要なのは、「販売日数」が短ければ短いほど、物件の流動性が高く、すなわち購入需要が強いことを示す点です。また「値下げの回数」が少なければ、それは売主が強気の価格設定をしている、すなわち価格交渉の余地が少ない状況を意味します。

グラフ3:一都三県 中古マンションの販売期間と値下回数

出典:福嶋総研

この二つの指標で見ると、東京都では「販売日数の短縮」と「値下げ回数の減少」が同時進行しています。つまり、市場に出された物件はすぐに売れ、しかも売主は高い価格で成約に至っているというわけです。これこそが、東京都の中古マンション市場が現在も高い購入意欲に支えられており、需給バランスが売主優位にある証拠といえるでしょう。

対照的に、神奈川県・埼玉県・千葉県においては、2023年以降、「販売日数」がやや伸び、「値下げ回数」も微増する傾向が見られました。現在ではそれらは横ばいで推移していますが、これは明らかに、購入者側の勢いがやや落ち着き、売主側も強気一辺倒では売却が難しくなっているという構造変化を示しています。つまり、需給のバランスが緩やかに買い手寄りにシフトしているのです。

首都圏マンション市場に変化の兆し──東京都と周辺県で明暗分かれる構図

この背景には、複数の要因が重なっていると考えられます。一つは、2023年以降、徐々に上昇の兆しを見せ始めた住宅ローン金利の影響です。特に固定型金利についてはすでに複数の金融機関で引き上げが実施されており、変動型においても今後の政策金利の動向次第では大きく上昇する可能性があります。金利が上がれば、当然ながら住宅ローンの月々の返済額が増え、買い控えや価格交渉姿勢の強まりへとつながります。

また、神奈川県・埼玉県・千葉県は、価格上昇の余地を比較的残していたがゆえに、過去数年間で急激な価格高騰を経験しました。その結果、現在では「価格と実需の乖離」が生まれやすくなり、購買意欲が萎み始めているとも言えます。こうしたエリアでは、実需層──すなわち、自己居住を目的としたファミリー層などの買い手の動向が、市場全体に与える影響が大きいのです。

今後を展望すると、特に神奈川県・埼玉県・千葉県では金利上昇や購買意欲の減退によって、さらに「価格調整圧力」が高まる可能性があります。過熱していた需給バランスが落ち着きを見せることで、価格も一定の調整局面に入ると考えるのが自然です。

一方、東京都の特に都心部においては、国内の高所得層に加えて、海外からの投資マネーも引き続き流入しており、市場構造が根本的に異なっています。円安環境や安定した都市インフラ、国際ビジネス拠点としての地位、インバウンド観光復活による短期貸しニーズなど、複合的な要因が価格の支えとなっているため、単純に金利上昇だけで需給が冷える構図ではありません。

こうした背景から、中古マンション市場は一都三県という地理的なまとまりで見られる一方、その実態は「東京都」と「周辺県」で大きく様相が異なっています。とりわけ、今後も投資対象としての東京、居住用不動産としての外縁部という性質の違いが鮮明になっていく中で、それぞれのエリアに応じたマーケット分析がますます重要になるでしょう。

金利動向のまとめ

【変動金利】

2025年6月、変動金利に大きな動きはなく、日銀は政策金利の引き上げを「当面見送る」と明言するも、市場もこれに同調し様子見姿勢が強まる一方、物価や景気次第で将来的な利上げの可能性も示唆しています。特に今月の参議院選挙において自公連立政権が衆参両院で過半数を割ったこともあり、政権運営や経済政策の行方に不透明感が増している状況です。今後の景気動向に注目が集まっています。

【10年固定金利】

2025年6月、10年固定金利型ローンの取り扱いは、金利上昇を背景に一部で縮小傾向にあります。10年国債利回りの低下を受け、DH住宅ローン指数の10年固定金利は1.680%と前月から下落。しかし1年前よりは高水準で、全体としては上昇局面にあります。13金融機関中、8社が金利を引き下げ、4社が引き上げるなど、動きは分かれました。中東情勢や米経済への懸念もあり、今後は安定的ながら狭い範囲での推移が見込まれます。

【全期間固定金利】

全期間固定型金利は変動型に比べ割高とされ敬遠されてきましたが、変動金利の上昇傾向を受けて選択者が増加傾向にあります。6月のDH住宅ローン指数では2.321%と前月より低下しましたが、前年同月の1.984%と比べると上昇が続いています。14行中3行と「フラット35」が金利を引き下げた一方、2行は引き上げました。今後は政治・経済情勢次第で、さらなる金利変動や円安進行の可能性もあり、動向に注視が必要です。

変動金利について

【変動金利の現況】

2025年6月、短期金利には大きな動きは見られず、多くの銀行が変動金利を据え置きました。今月のDH住宅ローン指数における変動金利は0.847%で、前月の1.056%と比べると大幅な下落となりました。ただし、前年同月の0.487%と比較すると、依然として高水準にあります。なお、今月の金利引き下げは、優遇制度の適用方法の変更によるものであり、実質的な金利水準としては横ばいに近いものです。

グラフ4:DH住宅ローン指数の推移(変動金利)

出典:ホームローンドクター(株)

金利を引き上げた金融機関はなく、金利を引き下げたのはSBI新生銀行と楽天銀行の2行でした。特にSBI新生銀行は、休止していたキャンペーンを再開し、金利競争に再び参入した様子です。現在、金利競争の最前線は0.5%前後となっており、DH住宅ローン指数と比較しても非常に低い水準です。中でも、UI銀行や宮崎銀行といった地方銀行が積極的に競争を展開しています。

一方、楽天銀行は市場金利の動向に連動して細かく調整を行っており、従来どおりの「平常運転」といった印象です。全体として、金融機関の姿勢は様子見が中心となっており、変動金利に大きな動きは見られません。

【変動金利の今後の動向】

日銀の総裁も、政策金利の引き上げは「当面見送る」との見解を示しており、市場のコンセンサスもこれに沿っています。ただし、「関税の影響による景気悪化が後半にどの程度出るかを確認し、物価動向次第で利上げを判断する」という旨を述べており、将来的な金利上昇圧力の可能性は依然として存在します。

さらに、今月の参議院選挙において自公連立政権が衆参両院で過半数を割ったこともあり、政権運営や経済政策の行方に不透明感が増している状況です。今後の景気動向に注目が集まっています。

10年固定金利について

【10年固定金利の現況】

従来、多くの銀行が主力としていた10年固定金利型ローンですが、金利の上昇により取り扱いを縮小する傾向が見られます。10年が最長期間である銀行は別として、全期間固定型も取り扱う銀行では、10年固定を積極的に推進する姿勢はやや後退しています。

10年固定金利は、日本国債10年物の利回りを参考に設定されており、6月の国内債券市場では、中東情勢の不安定化や国債発行額の減額を背景に、金利がやや低下。前月末の利回り1.518%に対し、今月は1.462%まで下がりました。

グラフ5:DH住宅ローン指数の推移(10年固定金利)

出典:ホームローンドクター(株)

この動きを反映して、今月のDH住宅ローン指数における10年固定金利は1.680%と、前月の1.818%から大きく引き下げられました。しかし、1年前の1.288%と比べると依然として高く、全体的には金利の上昇局面にあると見られます。

定点観測対象の13金融機関のうち、8社が金利を引き下げ、4社が引き上げ、1社は据え置きでした。先月は金利を上方修正する動きが目立ちましたが、今月はその反動で一部金融機関が金利を引き下げたとも言えるでしょう。

【10年固定金利の今後の動向】

中東情勢の緊張やアメリカの景気先行きへの不透明感により、今月の金利は全体的に軟調な展開となりましたが、日銀の国債発行計画見直しや借り入れ減額幅の調整により、金利の動きは一定の安定を見せています。とはいえ、今後も通商政策や政権運営を巡る不確実性が残る中、急激な金利上昇は想定しづらく、当面は狭いレンジでの推移が続く見通しです。

全期間固定金利について

【全期間固定金利の現況】

全期間固定型金利は、変動金利と比較して割高感があることから、これまで敬遠される傾向がありました。しかし、変動金利の本格的な上昇が見え始めたことで、ようやく全期間固定を選択する人も増えつつあります。それでもなお、変動金利が多数派である状況は続いており、今後は「変動+固定」のミックスプランを選ぶ人が増えることも予想されます。

グラフ6:DH住宅ローン指数の推移(全期間固定金利)

出典:ホームローンドクター(株)

今月のDH住宅ローン指数による全期間固定金利は2.321%で、前月の2.429%からは下落しました。これは国内の金利低下をそのまま反映した形ですが、1年前の1.984%からは上昇が続いており、長期的には依然として上昇トレンドにあります。

調査対象となった14行のうち、3行と「フラット35」のすべてが金利を引き下げた一方で、2行が金利を引き上げました。

【全期間固定金利の今後の動向】

全期間固定金利の今後についても、10年固定金利と同様に、政策・経済の動向が注目されます。特に政権運営の不透明感が増している現状では、景気停滞への懸念から金利が下がる可能性も否定できず、これに伴ってドル高・円安が一段と進行するリスクもあります。今後の政治・経済の展開を注意深く見守る必要があります。

▼ホームローンドクター 代表 淡河氏と福嶋総研 代表研究員 福嶋 対談動画

住宅ローンの落とし穴!よくある思い込みと正しい対策とは?

https://youtu.be/vMFt1gQTPVE

リリース作成者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)

マンションリサーチ株式会社

データ事業開発室 

不動産データ分析責任者

福嶋総研

代表研究員

早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、

建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。

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【マンションリサーチ株式会社について】

マンションリサーチ株式会社では、 不動産売却一括査定サイトを運営しており、 2011年創業以来「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」「約3億件の不動産売出事例データ」及び「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」の収集してまいりました。 当社ではこれらのデータを基に集客支援・業務効率化支援及び不動産関連データ販売等を行っております。

会社名: マンションリサーチ株式会社

代表取締役社長: 山田力

所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階

設立年月日: 2011年4月

資本金 : 1億円

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会社概要

マンションリサーチ株式会社

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業種
サービス業
本社所在地
東京都千代田区神田美土代町5−2 第2日成ビル 5階
電話番号
03-5577-2041
代表者名
山田 力
上場
未上場
資本金
1億円
設立
2011年04月