DATAFLUCT、衛星データ分析による水田マッピングおよび稲作状況を推定するアルゴリズムを開発
衛星データから稲の移植日と収穫日を推定、水田由来のメタン排出削減貢献を目指す
データサイエンスで企業と社会の課題を解決する株式会社DATAFLUCT(本社所在地:東京都渋谷区、代表取締役CEO:久米村 隼人、以下「DATAFLUCT」)は、衛星データ分析による水田モニタリングに取り組んでいます。本プロジェクトの一部は、国立研究開発法人 国立環境研究所(理事長:木本昌秀、以下「国立環境研究所」)の依頼を受けて実装を進める取り組みで、気候変動の一因であるメタンガス排出の中でも「水田由来の排出」に着目し、水田の分布や状況を正確にモニタリングすることで、排出量の削減に貢献することを目指しています。当社では、本プロジェクトを通して開発した技術をスマートシティ関連のデータ活用事業でも活用します。
この度、プロジェクトのフェーズ2として、新たに「広範囲かつ高分解能の水田マッピング」および「稲作状況を推定するアルゴリズム」を開発しました。
この度、プロジェクトのフェーズ2として、新たに「広範囲かつ高分解能の水田マッピング」および「稲作状況を推定するアルゴリズム」を開発しました。
- プロジェクトの背景 温室効果ガス「メタン」の排出源である水田
メタン収支を計算するために、水田の分布を把握できる高精度の水田マッピング技術や、稲作の状況を推定する技術が求められてきましたが、統計データをもとにした従来の分析は、マッピングのメッシュが粗いことや、広範囲のモニタリングができないことが課題でした。衛星データはそうした課題をクリアできますが、コストや分析技術のハードルの高さから、水田モニタリングにおける活用は発展途上です。
アジアでは今後も人口が増加すると考えられており、主食となる米を生産するための水田も増加する可能性があります。国立環境研究所は、地球温暖化問題への取り組みの一環として、水田からのメタン排出の高精度予測、およびメタン排出の緩和に関する研究を進めています。
DATAFLUCTは、データ活用で社会課題を解決することを目指し、持続可能なまちづくりを支援する地理空間情報プラットフォーム「TOWNEAR」や、生活者を含むあらゆるステークホルダーがカーボンニュートラルに向けた取り組みに参加するための“環境価値”流通プラットフォーム「becoz」を展開しています。
※1 環境省ホームページhttp://www.env.go.jp/press/110696.html
- プロジェクトの概要
フェーズ2では、空間分解能250m相当までメッシュを細かくした水田マッピングと、稲作状況を把握するための「稲作カレンダー」を開発しました。時系列の衛星データを活用して稲の生育状態を把握し、移植日と収穫日を推定するこの稲作カレンダーは、これまでの研究にはない新たな取り組み(※2)です。
1.アジアモンスーン地域の、広範囲かつ高分解能の水田マッピング技術を開発
稲作が盛んなアジアモンスーン地域は、水田由来のメタン排出の把握において重要な地域であり、本プロジェクトのフェーズ2では、フェーズ1で開発した水田マッピングのさらなる精緻化・広域展開を実現しました。
入力データとして、移植・収穫時期前後の地表面変化を検知するSAR画像や、地表の植生や水面などに反応する光学画像から計算できる物理変数などを使用。畳み込みニューラルネットワーク(※3)を応用したモデルの推定結果に基づいて、アジアモンスーン地域における空間分解能250m相当の水田マッピングを開発しました。既存研究(※4)やフェーズ1の空間分解能350mと比較し、100m分解能が向上したことで、水田の分布をより正確に把握することができます。
水田マッピングの精度については、今回開発したアルゴリズムおよび既存研究(※4)による水田マップから得られた水田域の面積と、農水省の作物統計調査から取得した統計値を比較することで検証しました。本プロジェクトで作成した水田マップのMSE(合計水田面積と統計値との二乗誤差平均)は23,257平方km、既存研究で作成された水田マップのMSEは26,480平方kmであり、3,223平方kmの精度改善がみられました。本プロジェクトでは、インドを含めアジアモンスーン地域の広範囲を網羅した水田マップの中でも、高分解能の水田マッピング技術を開発したといえます。
※2 当社および国立環境研究所調べ
※3 画像に含まれる物、場所、人を検知するなどの画像解析に有効な、ディープラーニングの手法の一つ。
※4 Zhang, Geli, et al. "Fingerprint of rice paddies in spatial–temporal dynamics of atmospheric methane concentration in monsoon Asia." Nature communications 11.1 (2020): 1-11.
2.衛星画像から取得した3種類の時系列データを活用し、稲の移植日と収穫日を推定
SAR画像から取得した後方散乱係数(VH)(※5)と、光学画像から取得したEVI(※6)・NDYI(※7)それぞれの時系列データを用いて、稲の移植日と収穫日を推定する「稲作カレンダー」を作成しました。
既存の稲作カレンダー(※8)は、統計データなどをもとにした「国単位」のもので、水田由来のメタン排出を推定するためにはより細かいメッシュの水田状況を把握する必要があります。本プロジェクトでは、衛星データを活用することで、メッシュ間隔0.5°×0.5°のより細かい稲作カレンダーを開発しました。1期作はもちろん、2/3期作にも対応した水田管理を推定するアルゴリズムの開発は、これまでにない新しい試みです。
※5 後方散乱係数(VH) レーダーより照射され、アンテナに戻ってくるマイクロ波の強度。VHは垂直偏波で発信、水平偏波で受信するという意味
※6 Enhanced Vegetation Index(強調植生指数) 植生活性度の指標で、大気中の雲や土壌の影響を受けにくい
※7 Normalized Difference Yellowness Index(正規化差分黄色指数)稲の生育や収量にとって感度の高い指標
※8 Sacks, William J., et al. "Crop planting dates: an analysis of global patterns." Global ecology and biogeography 19.5 (2010): 607-620.
- 今後の展開
今後も開発を続け、2022-2023年度では、アジアモンスーン地域にとどまらず、アメリカやヨーロッパなどの水田マッピングならびに稲作状況の推定技術をグローバル展開することを目指します。
- 国立環境研究所 地球システム領域 物質循環モデリング・解析研究室 仁科 一哉氏より本プロジェクトへのコメント
- 参考情報:DATAFLUCTが展開する「TOWNEAR」について
詳細に関するお問い合わせはWebサイトをご確認ください(https://lp.townear.ai/)
- 株式会社DATAFLUCTについて
需要予測によるロスの削減、持続可能な都市計画、脱炭素に向けた行動変容など世界基準の課題に着目した自社サービスも展開し、誰もがデータを有効活用することで持続可能な意思決定をすることができる世界の実現を目指しています。2019年JAXAベンチャー※認定企業。
※ 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の知的財産・業務での知見を利用して事業を行う、JAXA職員が出資・設立したベンチャー企業。
<企業概要>
本社所在地:東京都渋谷区道玄坂一丁目19番9号 第一暁ビル6階
代表者:代表取締役 久米村 隼人
設立:2019年1月29日
電話番号:03-6822-5590(代表)
資本金(5月末時点):13億4,712万円(資本準備金含む)
事業内容 :マルチモーダルデータ活用サービス(AI/機械学習/ビッグデータ解析)の提供、企業のDX支援
Webサイト:https://datafluct.com/
Twitter:https://twitter.com/datafluct
Facebook:https://www.facebook.com/datafluct/
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