シミュレーションで次世代半導体パッケージ向け低熱膨張銅張積層板を開発
~材料ごとの設計指針を可視化できる独自システムを開発し、社内へ導入~
株式会社レゾナック(社長:髙橋秀仁、以下、当社)は、半導体パッケージ大型化に伴う課題のひとつである「反り」を抑制した、次世代半導体パッケージ向け低熱膨張銅張積層板を開発しました。本製品の温度サイクル試験における寿命は従来比の4倍を実現し、100mm x 100mmを超える半導体パッケージにも対応しています。2026年の量産開始を目指します。
なお、本製品は、計算科学技術のひとつである「マルチスケール解析(*1)」の応用により、銅張積層板を形成する各材料個別の設計指針を明確にし、開発しました。当社は、本技術を汎用的に利用できる物性可視化システムとして構築し、このたび社内へ導入しました。
近年、次世代半導体のパッケージ基板は大型化する傾向にありますが、大型化に伴い、基板の反りが信頼性へ与える影響はより大きくなります。通常、基板の反りを抑制するため、基板のコア材料である銅張積層板の熱膨張係数(*2)を小さくすることが有効ですが、この場合、温度サイクル試験の冷却時に、基板を構成する他の材料との熱膨張差により、クラックが発生しやすくなります。クラック低減にあたり、銅張積層板の設計指針(例えば、弾性率(*3)を低くする)は示すことができますが、銅張積層板は樹脂や無機材(ガラスクロス)など複数の材料から構成されており、各材料個別の設計指針にまで落とし込むことはできていませんでした。
そこで、当社計算情報科学研究センターでは、銅張積層板の樹脂とガラスクロスから成るコア層に、スケールの異なる構造体同士の物性や挙動の相互作用を考慮できる「マルチスケールFEM解析(*4)」を適用しました。これにより、クラックが発生しやすい、コア層の樹脂にかかる局所的な応力を詳細に解析し、樹脂の特定の物性を制御することで、発生する応力を低減した銅張積層板を開発しました。
また、当社は、本技術を活用して、汎用的な物性可視化システムを構築し、社内展開を開始しました。このシステムでは、ユーザーが材料の物性を入力すると、目的特性(例えば、反り)がどのように変化するのか、その傾向を可視化することができます。銅張積層板に限らず、封止材やフィルム材料など複数材料から成る幅広い製品に対応しており、当社が強みとする半導体後工程製品を中心に活用を開始しています。
半導体の技術革新加速に伴い、高性能な材料を迅速に提案することが求められている中、当社は、計算情報科学研究センターのリソースの7割を半導体材料開発に投下し、成果を上げています。
今後も時代が求める機能をいち早く創出することにより、グローバル社会の持続的な発展に貢献します。
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*1 スケールの異なる構造物双方の物性、もしくは挙動を連成させる解析のこと。複数の異種材料から成る複合材料の材料特性を均質化することで、材料全体の挙動を容易に把握できるようにする。
*2 物体は、温度の上昇によって体積や長さが膨張する(熱膨張)。熱膨張係数は、温度が1℃上昇すると体積や長さがどれくらい膨張するかを表したもので、材料固有の特性。
*3 材料の変形のしにくさ(材料のかたさ)を表す値。
*4 物体や構造物を小さな要素に分割し、それらの要素の性質を数値化して計算を行うことで、全体の挙動を解析する有限要素法(FEM:Finite Element Method)を、マルチスケール解析に適用したもの。
以上
【Resonac(レゾナック)グループについて】
レゾナックグループは、2023年1月に昭和電工グループと昭和電工マテリアルズグループ(旧日立化成グループ)が統合してできた新会社です。半導体・電子材料の売上高は、約3,400億円に上り、特に半導体の「後工程」材料では世界No.1の企業です。2社統合により、材料の機能設計はもちろん、自社内で原料にまでさかのぼって開発を進めています。新社名の「Resonac」は、英語の「RESONATE:共鳴する・響き渡る」と、Chemistryの「C」の組み合せです。今後さらに共創プラットフォームを生かし、国内外の半導体メーカー、材料・装置メーカーとともに技術革新を加速させます。詳しくはウェブサイトをご覧ください。
株式会社レゾナック・ホールディングス https://www.resonac.com/jp/
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