「非IT職のデジタルリスキリングに関する実態調査」の結果を発表
上司のDXリーダーシップが学習効果に強い影響を与えることが明らかに
【エグゼクティブサマリ】
●非IT職のデジタルリスキリングの取り組みは、製造・非製造で「学習のきっかけ」や「学習内容」、「活用する機会」が異なる
●学習をはじめたきっかけのトップは、製造で「現在の仕事に役立つから」43.8%、非製造で「経営層や上司からの要請があったから」44.0%
●「学習内容」のトップは、製造で「エクセルなどによるデータ管理、データ可視化」54.7%
非製造で「社会の変化とデータ・AI活用の意義」47.0%
●どのような機会を活用して学んだかについて、トップは製造・非製造ともに「仕事として取り組んだ」で、それぞれ75.8%、68.0%
●「上司のDXリーダーシップ」は、製造・非製造の両群において、学習効果に強い影響を与えている
*詳細は調査レポート(https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001163/)を参照ください。
1. 調査担当研究員のコメント
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所 研究員 佐藤 裕子
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みは、IT企業以外においても年々増加しています。DXは企業の価値創造の全プロセスにかかわるため、特定の高度専門人材やデジタル・IT 職人材を育成・獲得するだけでなく、非IT職も含めた全従業員が、それぞれに必要なデジタルリテラシーを新たに身につけていくことが重要です。
しかし、非IT職には、デジタル・IT分野のスキルを獲得することや、それを使って働くことを志向してこなかった人も多く、自社にとっての必要性を理解したとしても、主体的に学習に取り組み学習効果をあげていく人を増やすのは簡単ではありません。企業側の積極的な働きかけにも関わらず、思ったように進まないという声もよく聞かれます。そこで、今回、非IT職のデジタルリスキリング推進のヒントを得るべく、DXに関する取り組みを行っている企業で非IT職として働き、最近デジタルリスキリングの取り組みを行った人を対象とした調査を行いました。調査結果から示されたのは、上記エグゼクティブサマリに記載したとおりですが、特に上司のリーダーシップは学習成果に強い影響を与えていることがわかりました。
リスキリングが企業の人事戦略として行われる以上、上司には組織要請を明確に提示する役割が期待されます。ただ、非IT職も含めたDXの推進は、多くの上司にとって未経験であり、道筋を示すことは簡単ではないでしょう。
●デジタル・ITに興味関心をもっている部下の主体的で探索的な学習を支援し、職場の課題解決にどのようにつなげていけるかを一緒に検討する
●部下が受講する企業提供の学習プログラムを、個人の受講で終わらせず職場の業務に生かせる方法を一緒に考えていく
●部下と上司だけで考えず、職場ぐるみでどう進めるのが効果的か考えるなど、職場全体で話し合い、学び合える風土をつくっていく
といった上司の働きかけが、部下それぞれのデジタルリスキリングへの興味や意欲を高め、学習を促進するために有効なのではないでしょうか。
2.調査のポイント
●学習をはじめたきっかけとして最も多いのは、製造で「現在の仕事に役立つから」、非製造で「経営層や上司からの要請があったから」(図表1)
・「経営層や上司からの要請があったから」「昇給や昇進に役立つから」は、製造に比べ非製造で割合が高く、有意な差が見られた。
図表1 学習のきっかけ
●学習内容について最も多いのは、製造で「Excelなどによるデータ管理、データ可視化」、非製造で「社会の変化とデータ・AI活用の意義」(図表2・3)
・「Excelなどによるデータ管理、データ可視化」は製造が非製造に対して、逆に「社会の変化とデータ・AI活用の意義」は非製造が製造に対して、有意に選択率が高かった。
図表2 学習内容
図表3 業種・職種別の学習内容の特徴語分析
・図表4では、具体的な学習内容とその理由について、代表的なものを抜粋した。業種・職種の特徴を背景に、業務上の課題、経営層や上司からの要請、個人の興味関心に応じて、それぞれ異なる学習内容を選択していることが確認できる。
図表4 具体的な学習内容とその理由(自由記述結果を抜粋して分類)
●どのような機会を活用して学んだかについて、最も多いのは、製造・非製造ともに「仕事として取り組んだ」。非製造では「勤務先が提供・費用負担する学習プログラム」が多い(図表5)
・いずれの選択肢においても、製造・非製造の選択率に有意な差は見られなかった。選択率に最も差が見られたのは「勤務先が提供・費用補助する学習プログラム(全社員必修)」で、非製造が製造より高かった。
図表5 学習機会
●企業のリスキリング支援、上司のDXリーダーシップは、学習効果と関係が見られる。特に「上司のDXリーダーシップ」は、製造・非製造の両群において、学習効果に強い影響を与える(図表6、7)
・図表6のとおり、企業のリスキリング支援と上司のDXリーダーシップは、学習効果と関係が見られた。(学習効果は、「新しい知識やスキルを身につけられた」「今後の仕事に役立てられそうだと思った」など7項目6件法から構成(α=.90))
・学習効果の高群・低群別に見ると、「企業のリスキリング支援」では高群が2.74、低群が2.44、「上司のDXリーダーシップ」では高群が4.11、低群が3.48と、両者とも統計的に明確な差が見られた。
図表6 企業のリスキリング支援と上司のDXリーダーシップ(学習効果高・低群別)
・図表7は、「学習効果」を目的変数、「企業のリスキリング支援」と「上司のDXリーダーシップ」を説明変数として、「年齢」「役職」「本人のデジタル関心」を統制して行った重回帰分析の結果である。「上司のDXリーダーシップ」は、製造、非製造いずれにおいても、学習効果に対し有意に影響することが示された。
・「企業のリスキリング支援」は、非製造において、同じく学習効果に対し有意に影響することが示されたが、製造においては明確な影響は確認されなかった。
図表7 学習効果に影響を与える要因(学習効果に対する重回帰分析)
●学習を進めるのに重要だと思うこととして最も多いのは製造・非製造とも「学んだことがどのような課題解決に役立つかイメージできる」(図表8)
学習を進めるのに重要だと思うことについては、選択率には差が見られるものの、製造・非製造ともに「学んだことがどのような課題解決に役立つかイメージできる」が最も多く選択されている。
図表8 学習を進めるのに重要だと思うこと
3.調査概要
リクルートマネジメントソリューションズについて
ブランドスローガンに「個と組織を生かす」を掲げ、クライアントの経営・人事課題の解決と、事業・戦略推進する、リクルートグループのプロフェッショナルファームです。日本における業界のリーディングカンパニーとして、1963年の創業以来、領域の広さと知見の深さを強みに、人と組織のさまざまな課題に向き合い続けています。
●事業領域:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築
●ソリューション手法:アセスメント、トレーニング、コンサルティング、HRアナリティクス
また、社内に専門機関である「組織行動研究所」「測定技術研究所」を有し、理論と実践を元にした研究・開発・情報発信を行っております。
※WEBサイト:https://www.recruit-ms.co.jp
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像