「管理の質」は価格にも影響する時代へ――資産価値を守るマンション管理の現在地
分譲マンションの資産価値が「どのように決まり、何によって左右されるのか」。
この問いに対して、マンション市場の実態データを保有するマンションリサーチ株式会社は、マンション管理の専門機関である一般社団法人マンション管理業協会が保有するマンション管理評価データを活用して調査・分析を行いました。今回の調査では、近年注目を集める「マンション管理適正評価制度」と、実際の価格変動データとの関係性に焦点を当て、管理の質がいかに資産価値に直結するかを明らかにしています。
マンション価格を左右する三大要素とは
マンションの価格を決定する要素にはさまざまなものがありますが、大きく分類すると「エリア(立地)」「建物形態(構造や規模)」「管理状態」の3つに分けられます。
まずエリアは、交通利便性や周辺環境、行政サービス、将来的な再開発などの影響を受けやすく、資産価値に大きく関わります。次に建物形態としては、タワーマンション、低層の大規模マンション、小規模な集合住宅などがあり、それぞれに利点と課題があります。例えば、タワーマンションは眺望や共用設備に優れる一方で、修繕費や防災リスクが課題となります。
そしてもう一つが「管理状態」です。これは唯一居住者が自ら関与できる要素であり、資産価値を左右する極めて重要なファクターです。特に今後、建物の老朽化が進む時代においては、管理の質がマンションの将来を決定づけると言っても過言ではありません。
老朽化が進むマンションとその課題
マンションリサーチ株式会社によると、現在日本全国で分譲マンションは約14万棟あると推定されます。驚くべきことに、これらのうち約12万棟が2050年までに築40年を超える見通しです。
グラフ1:日本全国築年40年以上の分譲マンション棟数推移

すなわち、実に85%以上のマンションが「老朽化物件」となるのです。
築40年を超えたマンションでは、屋上防水や外壁修繕等は15年程度の周期で実施しているケースもありますが、建物の構造体や設備、外壁、配管などが本格的に劣化し始めます。耐震性能への懸念や、居住者の高齢化による管理組合の機能不全など、問題は多岐にわたります。
このような時代背景を踏まえれば、マンションの快適性や資産価値を維持するには、建物をどう「管理」していくかが極めて重要であることは、誰の目にも明らかです。
注目される「マンション管理適正評価制度」
このような中、昨今注目されているのが「マンション管理適正評価制度」です。これは、マンションの管理状態を6段階で評価し、「見える化」する仕組みで、マンション管理業協会で運営しています。
→ マンション管理適正評価制度公式サイト
この制度の目的は、管理状態を明確にし、区分所有者や居住者が将来に亘り安心して暮らしていける見通しや購入希望者が安心して購入を判断できる材料を提供する仕組みと言えます。制度に基づく評価を受けることで、管理組合にとっても自らの課題が早期発見できる為、改善のきっかけとなります。
管理状態の評価とマンション価格の関係
この評価制度が資産価値に与える影響は、具体的なデータからも確認できます。
以下の表は、全国の分譲マンションを対象に、築年帯別にマンション管理適正評価制度における評価点(6段階中)と、マンション価格の変化(2025年9月末対2023年末)を比較したものです。(星2つ、星1つ、星0評価は母数が少ない為調査対象から外しました。)
2006年以降築マンション:マンション適正評価制度評価点とマンション価格の比較

2006年以降築マンションでは評価が最も高い「星5つ」のマンション670棟のうち、約8割にあたる539棟で、平均7.3%の価格上昇が見られました。
一方で、評価が星4つ、3つと下がるにつれて、価格上昇数の割合はあまり変わらないものの上昇率は低下しています。
1983年以降2005年以前築マンション:マンション適正評価制度評価点とマンション価格の比較

1983年以降2005年以前築マンションでも、評価が最も高い「星5つ」のマンション583棟のうち、約6.5割にあたる390棟で、平均4.3%の価格上昇が見られました。
一方で、評価が星4つ、3つと下がるにつれて、価格上昇数の割合はあまり変わらないものの上昇率は低下しています。
1982年以前築マンション:マンション適正評価制度評価点とマンション価格の比較

1982年以前築マンションでも、評価が最も高い「星5つ」のマンション35棟のうち、約7割にあたる25棟で、平均6.8%の価格上昇が見られました。これは他の評価点と比較しても著しく高いです。
一方で、評価が星4つ、3つと下がるにつれて、価格上昇数の割合も上昇率も低下しています。
これらの結果から明らかなように、マンションの資産価値を維持・向上させるためには、管理状態が良好であることが極めて重要であり、この傾向は旧耐震で特に顕著に表れるという事実が浮かび上がってきます。
※本分析では、2025年(9月末迄)および2024年に実際に成約した中古マンションの価格データを基に、マンションごとの価格変動率を算出し、該当物件に付与されている「マンション管理適正評価制度」の評価点と突合する形で集計を行いました。同一物件同士の事例を比較する事で、年度ごとに集計される事例のエリアや築年数によるばらつきを無くし、適切に結果を反映する事を可能とします。
区分所有者ないし居住者と購入者に求められる意識の変化
老朽化マンションが大幅に増加していく中で、今後「管理が価値を左右する時代」が本格的に到来します。そうした中で、区分所有者の方などはまず自分たちのマンションの現状を正しく把握し、問題点を見つけ、必要な改善に向けて能動的に関与する姿勢が求められます。
たとえば、総会への積極的な参加、修繕計画や積立計画の見直し、管理費等の滞納者への機動的な対応など、管理状態の向上には日常的な努力と意思決定が不可欠です。些細なことのように思えても、それらの積み重ねが10年後、20年後の大きな差を生みます。
また、マンションの購入を検討している人にとっても、この評価制度を活用し、対象物件の管理状態を事前に確認することが、安心な購入と将来的な資産保全に直結します。「見た目がきれい」「駅に近い」といった表面的な条件だけでなく、管理の質という中身を重視する時代に変わりつつあるのです。
管理の質が未来の価値を決める
これからのマンション選び、そして住み続ける上で、管理の質はますます重要になります。マンション管理適正評価制度は、そうした時代のニーズに応える強力なツールです。単なる評価ではなく、資産の質を「見える化」し、改善の指針を示す制度として、多くの管理組合や住民が活用し始めています。
資産価値を守るためには、立地や建物のスペックだけでは不十分です。むしろ「どう管理されているか」「将来どのように維持されていくか」といったソフト面が、今後はますます重視されていくでしょう。
マンションという資産を長期的に守り、快適な住環境を維持するためにも、管理への意識改革が求められているのです。
本調査リリースでは、「マンション管理適正評価値」が単独でどの程度、資産価値の向上に寄与しているのかを明らかにすることを目的としています。今後はマンション管理適正評価の有無による価格高騰率の差をはじめ、不動産流通マーケットデータと多角的に掛け合わせた分析を実施してまいります。
なお、次回のレポートでは、首都圏における築年帯別の分譲マンション価格高騰率を加味し、より詳細な考察を行ってまいります。
り」ではなく「価値の二極化」が進む局面にあると言えるでしょう。
筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
早稲田大学理工学部卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
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【マンションリサーチ株式会社について】
マンションリサーチ株式会社では、 不動産売却一括査定サイトを運営しており、 2011年創業以来「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」「約3億件の不動産売出事例データ」及び「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」の収集してまいりました。 当社ではこれらのデータを基に集客支援・業務効率化支援及び不動産関連データ販売等を行っております。
会社名: マンションリサーチ株式会社
代表取締役社長: 山田力
所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
設立年月日: 2011年4月
資本金 : 1億円
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