都心3区の中古マンション市場は調整局面へ――在庫・成約価格・値引率から 見る今後の動向
本調査の概要
対象期間:2024年1月から2026年9月まで
実施機関:マンションリサーチ株式会社
分析対象:東京都都心3区所在の中古分譲マンション
事例総数:51,744件
算出手法:市場に流通している中古物件の売り出しデータを網羅的に収集し、独自の統計ロジックに基づき集計・分析を行いました。
都心3区の中古マンション市場に変化の兆し
現在、都心部の中古マンション市場では、これまで続いてきた価格上昇局面から、徐々に価格調整局面へと移行しつつあると言われています。特に、港区・千代田区・中央区のいわゆる「都心3区」においては、その傾向がより顕著に表れています。都心3区は、都心居住ニーズや投資需要が強く、これまで中古マンション価格の上昇を牽引してきたエリアであることから、同エリアのマーケット動向を確認することは、今後の都心中古マンション市場全体の方向性を考える上でも重要です。
今回は、都心3区における中古マンションの平均新規登録坪単価、在庫坪単価、成約坪単価、販売日数、成約までの値引率、さらに在庫数の推移を確認することで、現在の市場がどのような局面にあるのかを整理し、その先にマーケットがどのように動く可能性があるのかを考察します。
新規登録価格と在庫価格に表れる変化
まず、都心3区における中古マンションの平均新規登録坪単価と在庫坪単価の推移を見てみます。

在庫坪単価については、2026年前半をピークとして、その後は概ね横ばいの動きとなっています。一方、新規登録坪単価については2025年後半頃から減少傾向が見られます。これは、売主がこれまでの相場水準をそのまま維持して売り出すのではなく、市場の反応を踏まえて、徐々に売出価格を引き下げ始めている可能性を示しています。
成約坪単価にも価格調整の兆候

また、実際に取引が成立した成約坪単価についても、2026年初旬以降は微減傾向が確認されます。つまり、売出価格だけではなく、実際の取引価格についても、これまでの上昇基調から変化が生じ始めていると考えられます。
ここで重要なのが、新規登録価格、在庫価格、成約価格の3つの関係です。一般的に、相場が上昇している局面では、売主はより高い価格での売却を期待して新規登録価格を引き上げ、それでも買い手が付くことで成約価格も上昇していきます。しかし、現在の都心3区では、新規登録価格が低下し、さらに成約価格も微減していることから、売主と買主の価格認識に変化が生じていると考えられます。
販売日数と値引率から見る市場環境

次に、都心3区における販売日数と、成約までに発生した値引率を確認します。
値引率、販売日数ともに2024年中盤頃から上昇傾向に入り、特に直近の2026年9月においては、いずれも非常に高い水準となっています。これは、物件を売り出せば比較的短期間で成約するというこれまでの市場環境から、売却までに時間を要し、さらに成約に至るためには売出価格から一定程度の価格調整が必要となる市場へと変化していることを示しています。
買主の価格選別が強まる可能性
この点からも、現在のマーケットでは買主側の価格選別がより厳しくなっていると考えられます。価格が高い物件については購入判断が先送りされやすく、一方で、立地・築年数・専有面積・眺望・管理状態などの条件に対して価格が割安と判断された物件については、相対的に成約しやすくなります。
在庫坪単価が横ばいとなる理由
この状況が続くと、成約するのは比較的価格の低い物件が中心となるため、本来であれば市場に残る在庫は価格の高い物件に偏ります。その結果、在庫の平均坪単価は上昇する方向に働くようにも考えられます。
しかし、実際には在庫坪単価は2026年前半をピークに横ばいとなっています。これは、単純に高価格帯の物件だけが在庫として残っているのではなく、在庫物件に対する値引き幅が拡大していることに加え、新たに市場へ登録される物件の価格自体が低下しているためと考えられます。すなわち、「高い物件が残る」という上昇圧力と、「新規登録価格や既存在庫価格が調整される」という下落圧力が同時に発生することで、在庫の平均坪単価が横ばいとなっていると考えられます。
在庫増加から見る需給バランスの変化

さらに、都心3区の在庫数の推移を見ると、在庫は増加傾向にあります。これは市場に供給される物件数に対して、現在の価格水準で購入を希望する需要が追いついていないことを示唆しています。価格が上昇している局面では、多少高い価格であっても買主が現れることで在庫が消化されますが、現在は価格上昇に対する買主の許容度が低下し、売却までに時間を要する物件が増えていると考えられます。
現在は「価格下落」よりも「価格認識の調整」局面
このように考えると、現在の都心3区の中古マンション市場は、単純な「価格下落局面」というよりも、これまでの価格上昇によって拡大した売主の価格期待と、現在の買主が受け入れられる価格との間に乖離が生じ、その乖離を販売期間の長期化や値引きによって調整している局面と捉えることができます。
今後はさらなる価格調整圧力が強まる可能性
今後、在庫の増加傾向が継続すれば、需給バランスを改善するための価格調整圧力はさらに強まる可能性があります。特に、販売日数の長期化が続けば、売主は一定期間を経過した段階で価格の見直しを行うケースが増えると考えられます。また、新規登録価格についても、現在の成約価格や市場の反応を踏まえて、さらに現実的な水準へと修正される可能性があります。
物件ごとの価格差が拡大する可能性
一方で、都心3区は都心居住需要や投資需要、希少性の高い立地などを背景として、すべての物件が一律に価格調整するとは限りません。物件の立地、築年数、グレード、眺望、管理状態などによって市場での評価には大きな差が生じるため、今後は「都心3区全体の相場」だけではなく、個別物件ごとの価格差がより鮮明になる可能性があります。
今後注目すべき市場指標
以上を踏まえると、現在の都心3区の中古マンション市場では、新規登録価格の低下、成約坪単価の微減、販売日数の長期化、値引率の上昇、在庫の増加という複数の指標から、需給バランスが徐々に買主側へと変化していることが読み取れます。
したがって、今後のマーケットでは、まず新規登録価格のさらなる調整と値引率の拡大が進み、それでも在庫の増加が続く場合には、成約価格についても追加的な調整が発生する可能性があります。現時点では在庫坪単価が横ばいを維持していますが、これは市場が安定しているというよりも、新規登録価格の低下と既存在庫の価格調整によって、平均値が横ばいに保たれている状態と見ることができます。
都心3区の動向が今後の市場を占う
今後注目すべきポイントは、在庫数がピークアウトするか、販売日数の上昇が止まるか、そして成約坪単価の下落が一時的なものにとどまるかという点です。これらの指標が改善し始めれば需給調整が進んだと判断する材料となります。一方、在庫増加と販売期間の長期化が続く場合には、現在の価格調整がさらに一段進む可能性を考える必要があります。
都心3区はこれまでの価格上昇局面を牽引してきたエリアだからこそ、今後の価格調整がどの程度進むのか、そしてその変化が都心5区、23区全体へどのように波及していくのかについても、引き続き各指標を追いながら確認していく必要があります。
筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
福嶋総研代表研究員。早稲田大学理工学部卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
福嶋総研 公式ページ
https://mansionresearch.co.jp/fri/
メルマガ配信申込フォーム
https://forms.gle/bQizYbozk35QoMJ67
【マンションリサーチ株式会社その他サービスURL】
■全国14万棟 分譲マンション価格相場公開サイト『マンションナビ』
■不動産データクラウド
■ロボ査定
■分譲マンション、土地、戸建てデータ販売
https://mansionresearch.co.jp/re-data/
【不動産市場解説動画チャンネル】
https://www.youtube.com/@mansionresearch/videos
【マンションリサーチ株式会社について】
マンションリサーチ株式会社では、 不動産売却一括査定サイトを運営しており、 2011年創業以来「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」「約3億件の不動産売出事例データ」及び「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」の収集してまいりました。 当社ではこれらのデータを基に集客支援・業務効率化支援及び不動産関連データ販売等を行っております。
会社名: マンションリサーチ株式会社
代表取締役社長: 山田力
所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
設立年月日: 2011年4月
資本金 : 1億円
すべての画像
