物価高の中で新需要も 「2025年、売れたものランキング」
1位・米、3位・5位はコーヒー。インバウンド影響も強い中、食品・飲料に新顔が
株式会社インテージ(本社:東京都千代田区、取締役社長:檜垣 歩、以下インテージ)は、全国約6,000店舗より収集している小売店販売データ、SRI+®(全国小売店パネル調査)をもとに、日用消費財の中で何がより売れたかを、推定販売金額の伸びから振り返る「2025年、売れたものランキング」を発表しました。(データは10月分まで使用)
[ポイント]
◆ 米が前年比162%で断トツ1位。3位・インスタントコーヒー、5位レギュラーコーヒーと値上げが影響
◆ 食品、飲料が上位15位までに9つ。ココアやトマトジュースなどとともに、流行りの鍋に使う麺も
◆ 2位・カルシウム剤はインバウンド需要が後押し。化粧品、雑貨を中心に訪日旅行客が押し上げる
◆ 販売苦戦ランキングは1位・検査薬、2位・オートミールなど、コロナ禍で伸びた商品が上位
図表1

データ:SRI+ 集計期間:2025年1-10月 指標:販売金額の前年同期比、2019年比(1-10月)
対象:食品・飲料・日用雑貨品などのインテージ標準カテゴリー
※小数点以下も加味したランキング、100以上を青色で表示
1位は断トツで、米。昨年に比べ販売金額は1.5倍以上で、物価高の代表商品に
円安の流れも続き、物価上昇が顕著になっている日本。それを象徴するように、1位は国民の主食ともいえる米でした(図表1)。販売金額は前年同時期に比べ162%となり、コロナ禍前の2019年に比べると2倍近くまで上昇しています(図表2)。以前はスーパーなどでの価格は5キロ2,000円ほどと安定していましたが、今や4,000円程度まであがっていることが日々報道されています。販売数量は大きく変化していないともいわれる中で、価格の上昇分がそのまま跳ね返っているようです。
図表2

データ:SRI+ 集計期間:2019~2025年(各年1-10月) 指標:販売金額の2019年比
朝の一杯、食後の一杯、生活に密着するコーヒーが3位と5位に同時ランクイン
米同様に、値上げの流れが販売金額を押し上げたのがコーヒーです。気候変動や輸送コストの増加など、様々な要因が複雑に絡み合う中、3位・インスタントコーヒー(119%)、5位・レギュラーコーヒー(117%)がトップ5に入ってきました。前年に比べると価格はインスタントコーヒーが29%、レギュラーコーヒーが25%も上昇(図表3)。販売数量はそれぞれ8%、6%落ちていましたが、値上げの影響が大きく上回りました。
図表3

データ:SRI+ 集計期間:2025年1~10月 指標:販売金額・数量・価格の前年同期比
※数量は容量(グラム)単位、価格は容量当たり平均単価
昨年に続き、食品・飲料多数。その様々な理由は?
今年は昨年を1つ上回り、食品・飲料が15位までに9つランクインしました、4位の玩具メーカー菓子(118%)は2年連続のトップ10入り。昨今のアニメや漫画人気などのIPコンテンツ需要に乗り、コロナ禍前の3倍近くまで市場は膨らんでいます。7位・ココア(115%)は、機能性に言及した商品が好調でした。昨年4位だった10位・トマトジュース(113%)は引き続き健康志向の高まりや、天候などによりトマトの価格が乱高下する中での代替需要も取り込みました。そして15位は、春雨・くずきり(111%)。今年大ブレイクしたマーラータンの麺としても使われる春雨は、コスパのよさや健康需要にも後押しされ、ランクインしました。
強いインバウンド需要。医薬品や雑貨などにも影響。猛暑も後押し
食品・飲料が強い中、堂々の2位に入ったのがカルシウム剤(123%)です。2015年頃に訪日旅行客による電化製品の爆買いが起きてから、お菓子や医薬品、雑貨など様々な商品が急激に売れることがありましたが、今年はカルシウム剤が人気となりました。また猛暑の紫外線対策に化粧の上から塗りなおせるものが人気だった6位・おしろい(116%)などの化粧品や、8位・リップクリーム(114%)などの雑貨も国内のセルフケア需要とともに、海外からのニーズもつかみ人気となっています。雑貨で目をひくのが14位・使い捨てカイロ(112%)。気温が急激に下がった月に需要が伸びたほか、海外からの旅行客にも受け入れられて数字が伸びました。
コロナ禍以降、短いスパンで変わるトレンド。今年は値上げ、そしてインバウンド
2020年以降、売れたものの傾向は毎年のように大きく変わってきました。コロナ1年目は衛生用品が大きく伸長し、翌年は巣ごもりを需要を背景に健康訴求した食品などが上位に入りました。2022年は「1位・検査薬、2位・オートミール、3位・鎮暈剤(酔い止めなど)」とWithコロナという幅広いカテゴリーがランクインし、2023年は訪日旅行客の復活を背景に「1位・強心剤」などのインバウンド需要商品、マスク要件の緩和などで「2位・口紅」などが上位に入っていました。そして昨年は大きくトレンドが変わり、猛暑や集中豪雨などの気候変動に対応した「靴クリーナー」や、物価高に起因する米などが上位。今年は値上げがさらに猛威を振るう形になりました。
図表4

データ:SRI+ 集計期間:2022年・2023年・2024年(各年1-10月) 指標:販売金額の前年同期比
対象:食品・飲料・日用雑貨品などのインテージ標準カテゴリー
※:検査薬に含まれる「コロナ用の抗原検査キット」は、医療用・一般用(OTC)で、弊社で判明できた製品のみ(研究用の抗原検査キットは除く)
※鎮暈剤(ちんうんざい):乗り物酔いに基づくめまい、吐き気および頭痛などの症状の予防または緩和を目的として調製された内服用薬剤
※口腔用薬(こうくうようやく):口腔内の殺菌、消毒、口臭の除去を目的として調製された噴霧液剤、またはトローチ
※鎮咳去痰剤(ちんがいきょたんざい):トローチ剤を除く鎮咳去痰に用いるために調製された内服薬、またはドロップ剤
販売苦戦は検査薬、オートミールなどコロナ禍に伸びたもの目立つ。3位は意外な商品
最後に、今年販売苦戦したランキングも見てみましょう(図表5)。1位・検査薬(73%)、2位・オートミール(84%)、4位・マスク(88%)、5位・体温計(88%)など、昨年同様にコロナ禍に大きく販売金額を伸ばしたものが上位に入っています。3位の防水・撥水材(88%)は全国的に少雨型の梅雨であったことなどが影響。7位に入った乳酸菌飲料もコロナ禍に需要を取り込んだ、睡眠に訴求する商品のブームがひと段落し数字を落としましたが、2019年の販売金額は大きく上回っています。
図表5

データ:SRI+ 集計期間:2025年1-10月 指標:販売金額の前年同期比、2019年比(1-10月)
対象:食品・飲料・日用雑貨品などのインテージ標準カテゴリー
※小数点以下も加味したランキング、100未満を赤字で表示
物価高・値上げの1年ともいうべき、世相を反映したランキング。景気や為替、国際情勢など、生活者の趣向の変化だけでは説明がつかない状況が続いています。世の中への影響が、どのように出ているかを広く多くの人に知らせるために、インテージでは今後も「売れたものランキング」を発表していく予定です。
「2025年、上半期売れたものランキング」をあわせてご参照ください。
「2024年、売れたものランキング」もあわせてご参照ください。
使用したデータ/関連プラットフォーム
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2025年12月現在
株式会社インテージは1960年に創業。インテージグループとしてアジアNo.1*であるマーケティングリサーチ/インサイト事業に加えてマーケティングソリューション事業を展開し、9か国の海外拠点とともに国内外の企業・団体のマーケティング活動を総合的に支援しています。事業ビジョンとして“Create Consumer-centric Values”を掲げ、深い生活者理解とデータ活用の高度化による顧客企業支援を通じ、生活者の幸せの実現を目指しています。
*「ESOMAR's Global Top-50 Insights Companies 2025」に基づく(グループ連結売上高ベース)
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