製品の信頼性を高める技術=「熱設計」について徹底解説した注目の1冊、「最新の熱設計・熱対策手法 -冷却デバイス・放熱材料・シミュレーション-」2025年7月31日発売予定!
株式会社シーエムシー出版は、『最新の熱設計・熱対策手法』(定価:税込77,000 円)を、2025年7月31日に発売予定です。 当社ECサイトおよび全国の書店にてご購入頂けます。

刊行にあたって
エレクトロニクスの熱問題は,最初の真空管コンピュータの発明以来,現在まで続いている。
以前より,熱設計は製品の信頼性を高める重要な技術であり,熱設計を怠ると温度が高くなり部品が故障しやすくなると言われてきた。これは現在に至るまで変わらない。しかし,この数十年で熱設計のありかた,存在意義は大きく変わってきた。
ムーアの法則に従って半導体の集積度が上がり,その性能は飛躍的に向上した。しかし,これをスマホのような小さい筐体に入れると温度によって制限され,100%の性能を発揮できなくなる。同じチップを使っても他社より冷却能力が高ければその分性能を引き出すことができる。つまり冷却技術が製品の性能に直結するようになってきた。
電動化が進むカーエレクトロニクス分野では「熱を制するはEV 制す」(デンソー)と言われるほど重要な技術になっている。バッテリーの加熱冷却にエネルギーを使うと走行距離が短くなってしまうため,温度管理に使用するエネルギーを最小化する「サーマルマネジメント」が不可欠な技術になっている。
コンピュータ機器ではAI 技術の急激な普及により,データセンター,サーバーの消費電力が問題になってきた。経産省はデータセンターにPUE(施設全体の消費電力をサーバーなどのIT機器の消費電力を割った値)を1.4 以下にする目標を課し,いかに冷却に使用する電力を低減するかが最大の課題となっている。このように「機器の発熱処理」は,機器信頼性の問題だけでなく,もはや社会問題にすらなっているといって過言ではない。
一方,放熱,冷却技術の進展は半導体や車の進歩に比べ,遅々としている。デバイスの消費電力増大と小型化(冷却能力低下)に対して,いまだに扇風機とヒートシンクが冷却の主体である。物理現象としての「伝熱」は普遍的なメカニズムであり,突飛な方式は考えにくい。もし画期的な方法があったとしても,コストがかかってしまったら広く普及することはない。
冷却技術に大きなステップアップは少ないが,その基盤は着実に進歩している。TIM やヒートスプレッダを中心とした高放熱材料,ヒートパイプ,ベーパーチャンバーなどの相変化デバイス,冷却ファンやヒートシンクの小型高性能化など,またこれらを組み合わせた熱設計技術,熱流体シミュレーション利用技術など,日々更新されている。
これらをキャッチアップして製品開発に採り入れない限り,世の中に遅れをとってしまうことになりかねない。
(中略)
本書は,厳しい熱設計要件に直面され冷却手段を検討されている方,熱設計手法やプロセスの変革を推進されている方,シミュレーションの活用や熱特性計測の導入を考えられている方,もちろん熱設計・熱対策の最新状況を知りたい方,電子機器の熱に関わる多くの皆様にとって有効なヒントが与えられるものと確信している。
目次
総論
【第Ⅰ編 最新の熱設計と熱対策】
第1章 熱設計手法とプロセス
1 製品開発における熱設計手法
2 デジタルデザインによる熱設計と開発フロントローディング
第2章 放熱材料による熱対策
1 放熱材料のトレンドと今後の展望
2 シリコーン放熱グリースの開発
3 放熱材料の機能と特性EV バッテリーへの適用事例
4 革新的蓄熱技術と超熱伝導デバイスによるサーマルコントロール
5 高熱伝導放熱シートに求められる技術と製品事例
6 グラフェン放熱塗料の開発
第3章 半導体の放熱対策
1 集積回路やパワー半導体の発熱メカニズムおよび熱設計
2 チップレットにおける熱問題とその対策
第4章 プリント基板の放熱対策
1 電子機器のための基板放熱設計
2 基板冷却:サーマルビアと内層パターンの伝熱
3 FR-4で実現する高放熱基板設計の構造的アプローチ
第5章 冷却デバイス
1 超薄型ループヒートパイプの研究開発
2 ペルチェ素子の新熱等価回路および自己発熱を低減し効率向上した冷却技術
3 超薄型ベイパーチャンバー用ウィックの商品開発と事業展開
【第Ⅱ編 製品における熱設計・熱対策手法】
第1章 車載機器
1 EV/HEVにおける熱対策事例
2 電子制御の時間変化に同期した高精度な熱抵抗・熱容量の半導体モデル
3 機電一体型・電動ポンプECUの熱設計とシミュレーション
4 車載用LED照明の熱設計
第2章 情報・通信機器
1 スマートフォンの熱対策動向
2 冷却ファンモータの最新技術動向と実装技術
【第Ⅲ編 シミュレーションと計測技術】
第1章 最新のシミュレーション技術
1 デバイスモデルの潮流実測によるモデル較正と低次元化モデル(ROM)
2 スマートフォンの熱設計プロセスとシミュレーションの活用
3 パワーエレクトロニクスシステムにおける損失と熱のシミュレーション
4 電子機器の熱流体シミュレーションにおける最適化技術
5 AI を活用した基板熱設計ツール
6 アルミ電解コンデンサの電気・熱マルチドメインモデル検討(1DCAE)
第2章 計測・評価技術
1 小形部品の温度管理方法(表面実装抵抗器の端子部温度規定国際規格化)
2 小形部品の温度測定(熱電対と赤外線サーモグラフ)
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