2四半期連続でアメリカの公共EV充電が着実に改善【J.D. パワー 2024年米国電気自動車エクスペリエンス(EVX)公共充電調査℠】
CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関であるJ.D. Power(本社:米国ミシガン州トロイ)は、現地時間8月14日に、J.D. Power 2024 U.S. Electric Vehicle Experience (EVX) Public Charging Study℠(2024年米国電気自動車エクスペリエンス(EVX)公共充電調査℠)の結果を発表した。本調査は「AC普通充電(レベル2)」と「DC急速充電」の2タイプの公共充電サービスに対する米国のEV所有者の満足度を聴取したものである。
公共充電インフラの問題が、米国での電気自動車(EV)普及を停滞させている原因の一つと言われているが、本年調査を見ると、四半期連続で総合満足度が向上している結果となった。未だ公共充電インフラには多くの課題が残っているのは事実であるが、本調査からは改善の兆しも見えてきている。
EVの販売台数増加には追いついていないものの、米国全土での公共充電ステーション数は増え続けている。過去数年間、EV台数の増加に対する公共充電ステーションの不足が、公共充電の満足度を低下させる一因となっていたが、本年調査では、主要な2タイプの公共充電サービスに対する満足度に明るい兆しが示された。DC急速充電の顧客満足度は、前年比+10ポイントの664ポイント(1,000ポイント満点)であった。一方、AC普通充電の顧客満足度は、直近の四半期での改善はあったものの、前年比-3ポイントの614ポイントだった。
DC急速充電の満足度向上の一因として、テスラ以外のEV所有者がテスラのスーパーチャージャー(NACS)を利用できるようになったことが挙げられる。世界最大級の急速充電ネットワークであるNACSは、これまでテスラの所有者のみに開放されていたが、数十億ドルに及ぶ政府の補助金の対象になる資格を得たことから、テスラは他社のEV所有者にもそのネットワークを開放することにした。
本調査によると、テスラの所有者もそれ以外のEV所有者も、全般的に、NACSでの充電に対する満足度が高かった。フォードやリヴィアンなど、NACSを利用できるようになったテスラ以外のブランドの所有者は、これまでは利用できなかったNACSで充電できるようになったことを高く評価している。一方、テスラの所有者は、最近テスラ以外のブランドの所有者がNACSを利用し始めたことに対し若干の不満を示してはいるものの、テスラのネットワークが実現している「充電のしやすさ」と「支払いのしやすさ」を高く評価している。
テスラの所有者のNACSへの満足度は前年比-2ポイントの743ポイントで高い満足度を示し続けている。対して、テスラ以外の所有者のNACSへの満足度は706ポイントとテスラ所有者よりも低いものの、DC急速充電の全体満足度よりも42ポイント高い満足度を示している。
この満足度スコアの差の主な要因は「支払いのしやすさ」と「充電のしやすさ」にある。テスラは同社の所有者に「プラグを差し込むだけで課金される」実質的な自動決済機能を提供しているが、テスラ以外のブランドの所有者はまだこの方法では利用できない。NACSはテスラの充電コネクターに対応しているが、現状ではテスラ以外の車両ではアダプターを使用する必要がある。
2024年調査の主なポイントは下記の通り:
充電器のタイプによって異なる「充電速度」の満足度
AC普通充電(レベル2)の充電速度に対する満足度は、前年比-4ポイントの451ポイントとなった。一方、DC急速充電の充電速度への満足度は大幅に向上し、前年比+34ポイントの622ポイントとなった。DC急速充電の充電速度は、今年業界にとって重要な改善分野である。特にテスラのネットワーク以外のすべての公共充電サービスでこの分野が改善すると、発展途上にある充電環境にとっては朗報となるだろう。
EV所有者は自動決済に好意的
従来のガソリン/ディーゼル車(ICE)の所有者は、クレジットカードやデビットカードでガソリンを購入することに満足しているが、EV所有者は別の決済方法に高い満足度を示している。最も満足度が高い決済方法は、Plug&Charge機能*¹ などの自動決済システムで、「支払いのしやすさ」に対する満足度スコアは886ポイント、「充電のしやすさ」に対する満足度スコアは806ポイントであった。メーカーのモバイルアプリは「支払いのしやすさ」が860ポイント、「充電のしやすさ」が787ポイントであった。クレジットカードやデビットカードの満足度は最も低く、「使いやすさ」では631ポイント、「充電のしやすさ」では596ポイントであった。急速充電は充電自体の速度だけでなく、自動決済システムを採用することにより充電プロセスを効率化して充電全体の時間を短縮し、EV所有者の貴重な時間を節約できることが分かった。自動決済システムを採用した急速充電の平均充電時間は27分で、クレジットカードやデビットカードでの決済よりも8分短く、サードパーティーや公共充電サービスのアプリを使用するよりも7分短かった。
*¹ 車両を識別して認証し直接請求に結び付ける機能。電気自動車に充電器のプラグを差し込むだけで認証され、直ちに充電が開始できる。
充電ステーションでの充電断念が引き続き課題
EV所有者の19%が、充電ステーションを訪れたが充電を断念したと回答している。前年から僅か1%の減少である。充電を断念した理由は地域によって若干異なるが、全米で最も多かった理由は「充電設備が故障中」もしくは「不具合があった」というものであり、充電を断念した人の61%がこれらを理由に挙げている。「使用できる充電器がなかった」または「待ち時間が長過ぎる」は、大西洋岸中部、太平洋および北東中央地域で充電を断念したEV所有者の2割以上が理由として挙げている。また断念した所有者の10%が「ケーブルやコネクターの損傷」を理由に挙げていた。
J.D. パワー ジャパン 代表取締役社長 兼 オートモーティブ部門 部門長 山本浩二のコメント
日本だけでなく米国でもEVの拡大には公共充電インフラの課題解決を求める声が多く挙がっています。J.D. パワー2024年米国EV検討意向調査SMでも、米国でEV購入を断念する最大の理由が10カ月連続で充電ステーションの不足という結果が出ています。
とは言え、公共充電の状況が完全に悲観的と言うわけではありません。テスラのスーパーチャージャー(NACS)が他のメーカーへ開放されたことにより、DC急速充電の全体の満足度は昨年と比べ改善されており、各メーカーのモデルが将来NACSのネィティブに対応することで、更に改善が進んでいくと考えられます。また他の充電ネットワークの公共充電インフラの拡大と充電器の充電速度向上も進んできており、米国では今後も公共充電の満足度の改善が進んでいくと考えられます。
一方で日本でも公共充電インフラの継続的な改善は進んでおり、90-150kwの高性能充電器の設置も高速道路を中心に拡大しています。これらの改善により日本の公共充電の満足度が改善されると共に、中国や米国に遅れながらもEV市場の拡大が進んでいくと考えています。
J.D. パワー 2024年米国電気自動車エクスペリエンス公共充電設備調査No.1を発表
総合満足度ランキングは下記の通り。
【AC普通充電(レベル2)】
第1位:Tesla Destination(658ポイント)
第2位:Volta(645ポイント)
第3位:ChargePoint (626ポイント)
【DC急速充電】
第1位:Tesla Supercharger(731ポイント)
《J.D. パワー 2024年米国電気自動車エクスペリエンス(EVX)公共充電調査℠概要》
年に一回、バッテリー式電気自動車(BEV)またはプラグインハイブリッド車(PHEV)の所有者を対象に、
「AC普通充電(レベル2)」と「DC急速充電」の2タイプの公共充電サービスに対する満足度を聴取した調査。
公共充電設備に対する消費者の意識や行動についても調べている。
本調査は、米国で業界をリードするEVドライバーアプリブランド兼調査会社であるPlugShareの協力を得て実施
している。今年で4回目の実施。
■実施期間:2024年1月~6月
■調査対象:バッテリー式電気自動車(BEV)またはプラグインハイブリッド車(PHEV)の所有者
■調査回答者数:9,605人
顧客満足度を構成する10ファクターは下記の通り:
ease of charging(充電のしやすさ)、speed of charging(充電速度)、physical condition of charging station(充電ステーションの設備の状態)、availability of charger(充電器の充足度)、convenience of this location(設置場所の利便性)、things to do while charging(充電中の時間つぶし)、how safe you feel at this location(設置場所の安全性)、ease of finding this location(設置場所の見つけやすさ)、cost of charging
(充電コスト)、ease of payment(支払いのしやすさ)
*本報道資料は現地時間 2024年8月14日に米国で発表されたリリースを要約したものです。
原文リリースはこちら
*J.D. パワーが調査結果を公表する全ての調査は、J.D. パワーが第三者機関として自主企画し実施したものです。
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J.D. パワーについて:
米国に本社を置くJ.D. パワーは自動車に関するデータと分析の国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。自動車業界及び一部の関連企業に、業界インテリジェンスや消費者インサイト、アドバイザリー、ソリューションを提供しています。
独自の広範なデータセットとソフトウェア機能を高度な分析および人工知能ツールと組み合わせて活用し、クライアントのビジネスパフォーマンスの最適化を支援しています。
J.D. パワーは 1968 年に設立され、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋にオフィスを構えています。事業内容の詳細については、https://japan.jdpower.com/jaをご覧ください。
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