【岡山大学】キウイフルーツのゲノム解読が「性染色体進化の定説」を覆す

国立大学法人岡山大学

2023(令和5)年 3月 21日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
 



<発表のポイント>
  • 様々なキウイフルーツの全ゲノム情報を解読しました。
  • キウイフルーツは進化の中で何度も「新しいY染色体」を生み出したことを発見しました。
  • 「Y染色体はオスに有利な状況を作るよう進化する」という定説を覆す新説を提唱しました。


◆概 要
 「性別」は性染色体によって決定しており、例えば私たちヒトを含む哺乳類ではY染色体を持つものがオスになります。Y染色体は対となるX染色体と全く異なる構造をしており、これは「オスらしさ」を作り出すようY染色体が進化するためであるというのが従来の定説でした。

 一方、植物も哺乳類と同様にXY型の性別を持つ種が多く、100年前に植物で初めてのY染色体が発見されましたが、その進化過程は長年謎に包まれていました。

 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:槇野博史)学術研究院環境生命科学学域(農)の赤木剛士 研究教授は、これまで柿やキウイフルーツを材料として植物の性別の研究に取り組んでおり、世界に先駆けて植物の性を決定する遺伝子群やその進化を解明してきました。

 このたび赤木研究教授は、様々なキウイフルーツの全ゲノム配列を解読し、進化の過程でキウイフルーツが何度も新しいY染色体を重複して生み出しており、これには従来の定説を覆す新しい進化メカニズムが関与している可能性があることを提唱しました。

 キウイフルーツのオスは花が多い・花が早く咲くといった「オスらしさ(オスに有利な特徴)」を有していますが、赤木研究教授らは、この特徴が従来の説のようにY染色体が作られる過程で生み出されたものではなく、性別決定遺伝子そのものが本来持つ機能であることを明らかにしました。これは、植物における性染色体の進化過程やその役割を世界で初めて明らかにしたものであると同時に、作物の性表現に関わる重要な知見として、食物の安定的生産や新しい育種を可能にする技術に発展していくと期待できます。

 本研究成果は、日本時間 2023年3月7 日午前1 時(英国時間:3月6日午後4時)、英国の科学雑誌「Nature Plants」に掲載されました。

 本研究は、香川大学農学部、かずさDNA研究所、ニュージーランドPlant & Food Research研究所、カリフォルニア大学デービス校、エディンバラ大学との共同研究として行われました。

 

 



◆赤木剛士研究教授からのひとこと
 国内に生息するキウイフルーツの仲間(マタタビ属)は固有の多様性を持っており、全国にサルナシやシマサルナシ、マタタビなどが自生しています。マタタビ属にはオスとメス(見た目上は両性花)がいるはずですが、もし「両性かも!?」という個体を見かけましたら是非お知らせください。
 

赤木剛士 研究教授赤木剛士 研究教授



◆論文情報
 論 文 名:Recurrent neo-sex chromosome evolution in kiwifruit
 掲 載 紙:Nature Plants
 著  者:Takashi Akagi*, Erika Varkonyi-Gasic, Kenta Shirasawa, Andrew Catanach, Isabelle M. Henry, Daniel Mertten, Paul Datson, Kanae Masuda, Naoko Fujita, Eriko Kuwada, Koichiro Ushijima, Kenji Beppu, Andrew C. Allan, Deborah Charlesworth, Ikuo Kataoka
 D O I:10.1038/s41477-023-01361-9
 U R L:https://www.nature.com/articles/s41477-023-01361-9


◆研究資金
 本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「フィールドにおける植物の生命現象の制御に向けた次世代基盤技術の創出(研究総括:岡田清孝)」における研究課題「カキ属をモデルとした環境応答性の性表現多様化機構の解明(JPMJPR15Q1)」(研究者:赤木剛士、研究期間:2015年12月〜2019年3月)、さきがけ「植物分子の機能と制御(研究総括:西谷 和彦)」における研究課題「ゲノム・遺伝子倍化が駆動する植物分子の新機能の探索とデザイン(JPMJPR20D1)」(研究者:赤木剛士、研究期間:2020年12月〜2024年3月)、学術変革領域 (A)「挑戦的両性花原理(22H05172)」(領域代表:赤木剛士)における「植物の「可塑的な性」を駆動するゲノム動態原理(22H05173)」(研究者:赤木剛士、研究期間:2022年7月~2027 年3月)の支援を受けて実施しました。


◆詳しい研究内容について
 キウイフルーツのゲノム解読が「性染色体進化の定説」を覆す
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20230307-1.pdf


◆参 考
・岡山大学農学部
 https://www.okayama-u.ac.jp/user/agr/
・岡山大学大学院環境生命科学研究科
 https://www.gels.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学 農学部 赤木研究室
 https://www.okayama-u.ac.jp/user/ushijima/phlab/index.html
・【岡山大学】赤木剛士研究教授(農)が「令和4年度学術変革領域研究(A)」に領域代表として採択
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000831.000072793.html


◆参考情報
・キウイフルーツが紐解く「植物が性別を手に入れた進化の仕組み」
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id652.html
・AIが見抜く「柿」の内情~「人工的なプロ」から学ぶ果実選びのコツ
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id788.html
・「柿」の全ゲノム解読 ~ 植物における「性の進化」のヒント
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id701.html
・赤木剛士准教授(農)が文部科学大臣表彰を受賞
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id8529.html
・大学院環境生命科学研究科の赤木剛士 准教授が「日本農学進歩賞」を受賞
 https://www.okayama-u.ac.jp/user/agr/release/release_id46.html
・【岡山大学】赤木剛士准教授に岡山大学「研究教授」の称号を付与しました
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000393.000072793.html
・【岡山大学】AIが覗き込むトマトゲノム:果実の遺伝子の動きを見抜く~果実が「熟れる」仕組みの緻密なデザイン~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000560.000072793.html
・【岡山大学】柿の花が解き明かす「植物の揺らぐ性」の進化 ~作物の性別を制御して効率的な作物生産や品種改良につながる技術へ~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000580.000072793.html

 

岡山大学農学部が所在する岡山大学津島キャンパス(岡山市北区)岡山大学農学部が所在する岡山大学津島キャンパス(岡山市北区)



◆本件お問い合わせ先
<研究に関すること>
 岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域(農) 研究教授 赤木剛士
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス
 E-mail:takashia◎okayama-u.ac.jp
      ※◎を@に置き換えて下さい
 https://www.gels.okayama-u.ac.jp/profile/kouza/areas05_plant.html

<JSTの事業に関すること>
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 TEL:03-3512-3524
 FAX:03-3222-2064

<報道担当>
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 FAX:03-5214-8432

<岡山大学の産学官連携等に関すること>
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 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
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国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています

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代表者名
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上場
未上場
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設立
1949年05月