【岡山大学】捕食者との同居は死んだふりを長くする~5世代で見られた迅速な進化反応~

2025(令和7)年 7月 28日
国立大学法人岡山大学
<発表のポイント>
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死んだふりは生物が外部からの刺激を受けた後に突然動かなくなる行動です。哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類・甲殻類・等脚生物などさまざまな動物で死んだふりをすることがわかっています。では死んだふり行動は、野外で本当に進化するのでしょうか?
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今回、私たちは捕食者であるコメグラサシガメと同居させた環境と、同居させない環境で貯穀害虫である甲虫のコクヌストモドキを累代飼育(進化実験)した結果、5世代同居させた甲虫は同居させない甲虫に比べ死んだふりの持続時間が3倍以上も長くなることを確認しました。
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私たちはこれまでも野外から採集したコクヌストモドキについて、野外でサシガメと同居する集団と同居しない集団で死んだふり行動を比較し、同居集団では死んだふり持続時間が長いことを確認していました(Konishi et al. 2020)。今回の実験進化では、捕食者と世代を超えて同居する環境では、餌昆虫の死んだふり持続時間が(野外と同様の環境下で)わずか5世代で長い方向に迅速に進化することを実証しました。
◆概 要
国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の学術研究院環境生命自然科学学域(農)の宮竹貴久教授は、東京大学総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系の松村健太郎助教と、岡山大学農学部の卒業生たちとともに、コクヌストモドキを餌とし、コメグラサシガメを捕食者として、5世代のあいだ同居させたところ、死んだふりの持続時間が有意に長く進化することを確認しました。
一方、死んだふりの生じる頻度や活動量に、捕食者同居による影響はみられませんでした。捕食者が存在する場所で暮らすコクヌストモドキは、存在しない環境のそれより死んだふり持続時間が長いという先行研究の結果(Konishi et al. 2020)と併せ、捕食者の存在によって死んだふり行動が進化することを実証できました。
この研究成果は2025年7月8日午前0時(日本時間)、Springerの日本応用動物昆虫学会誌「Applied Entomology and Zoology」にオンライン掲載されました。

◆宮竹貴久教授からのひとこと
昆虫記を書いたアンリ・ルアール・ファーブルが死んだふり行動の適応に興味を持って以来、野外で死んだふり行動が本当に進化するのか、誰も解明していませんでした。「誰も解明していないことなら自分が挑戦しようという姿勢」を学生と共有できたことが今回の研究成果につながったと思います。

◆論文情報
論文名:Experimental evolution of prey by predation pressure: death-feigning duration becomes longer in the presence of predators
邦題名「捕食圧による餌の実験進化:捕食者の存在によって死んだふり持続時間が長くなる」
掲載誌:Applied Entomology and Zoology
著者:Yuuki Miura, Takii Hayato, Kentarou Matsumura, Takahisa Miyatake
DOI:10.1007/s13355-025-00913-z.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s13355-025-00913-z.
◆研究資金
本研究は独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費」(研究・23K21343,25K09771研究代表:宮竹貴久)の支援を受けて実施しました。
◆詳しい研究内容について
捕食者との同居は死んだふりを長くする~5世代で見られた迅速な進化反応~
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20250708-1.pdf
◆参 考
・岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域 昆虫生態学研究室(宮竹貴久教授)
https://sites.google.com/view/miyatake/home
・岡山大学農学部
https://www.okayama-u.ac.jp/user/agr/index.html
◆参考情報1
・昆虫の細菌感染密度に季節性 世界に先駆けて発見
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id459.html
・“逃げるは恥”ではない!? 戦闘で負けた後に4日間逃げ続ける昆虫について動物の行動様式の進化を数理モデルで解析
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id437.html
・LEDと性フェロモンを用いた環境・生産に負荷の少ない新型の害虫誘殺トラップを開発
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id419.html
・ウォーキング・ブームが少子化を招く?~昆虫からの示唆~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id561.html
・死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id669.html
・歩かない虫のオスは、より多くの子の父となる!~より歩かないオスのほうがメスをめぐる競争に勝つ~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id638.html
・大きな大顎を持つオスは死んだふりをしやすい?甲虫を用いた検証により世界で初めて明らかに
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id802.html
・コーヒーは虫のオスにとって精力剤なのか~カフェインを飲んだオスは、求愛にせっかちになる!~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id774.html
・体内時計のリズムの振幅は北に行くほど小さくなる!昆虫を使った実証で発見
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id806.html
・世界初! 天敵から逃れる戦略を制御するゲノムの特徴を解明 ~死んだふりを操る遺伝子の全貌を突き止めた~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000337.000072793.html
・食われる側も工夫する:異なる天敵には違う捕食回避戦略を使う甲虫~フリーズか、それとも死を装うのか?~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000497.000072793.html
・虫の求愛にもご当地の流儀があった!~婚姻贈呈に見られた地域差~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000721.000072793.html
・死んだふりに見られた緯度クライン ~北の虫は死んだふりをよく行う~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001335.000072793.html
・いつ、死んだふりから目覚めるべきか ~覚醒を早める集合フェロモンの存在を世界に先駆けて発見!~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001663.000072793.html
・サツマイモの大害虫イモゾウムシはイモ苗のある場所に固執する ~環境にやさしい害虫根絶に役立つ世界初の発見!~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002023.000072793.html
・死んだふりしている場合じゃない!~オスは異性のフェロモンにより死んだふりから覚醒する事を世界で初めて発見!~〔琉球大学、岡山大学〕
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002262.000072793.html
・雄間闘争で脚を噛まれて負けた甲虫のオスは、交尾のときに踏ん張れない~ライバルに脚を噛まれたオスは残せる子の数が減る!~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002371.000072793.html
・カフェインの殺虫効果を実証~飲んだ昆虫は死ぬ~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002929.000072793.html
・闘争の代償は精子の量~負けても戦いすぎてもオスはメスに精子を渡せなくなる~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003200.000072793.html
◆参考情報2
・岡山大学広報「いちょう並木」 Vol.107を発行~ファーブルを超えて 世紀の発見を生む「昆虫博士」~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002742.000072793.html
・【岡山大学】宮竹貴久教授が「2025年度日本農学賞・読売農学賞」を受賞
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003048.000072793.html


◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(農) 教授 宮竹貴久
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス
TEL:086-251-8339
FAX:086-251-8388
https://sites.google.com/view/miyatake/home
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1404.html
<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
岡山大学病院 新医療研究開発センター
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/
<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
TEL:086-235-7983
E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
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TEL:086-251-8463
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
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<岡山大学の研究機器共用(コアファシリティ)などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 機器共用推進本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
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FAX:086-251-8748
E-mail:cfp◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://fspp.kikibun.okayama-u.ac.jp/
<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
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※ ◎を@に置き換えて下さい
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