トポロジーで紐解くアモルファスの硬さが決まるメカニズム-柔らかさの鍵は階層構造-〔大阪大学, 産業技術総合研究所, 岡山大学,東京大学〕

大阪大学と産業技術総合研究所、岡山大学、東京大学との共同研究成果プレスリリースです
2025(令和7)年 10月 15日
国立大学法人岡山大学
<研究成果のポイント>
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ガラスなどのアモルファス材料において、ゆがみやすく柔らかい箇所に何らかの構造的特徴があるかどうかは、既存手法では複雑なネットワーク構造特徴の抽出が困難なため長年の謎であった。
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トポロジーを応用したパーシステントホモロジーという解析方法によって、材料の柔らかい領域は原子の並び方に規則性と乱れが共存するような階層構造を持っていることを明らかにした。
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この知見は今後、割れにくいガラスなど、しなやかで丈夫なアモルファス材料の設計に役立つ可能性を有する
◆概 要
大阪大学産業科学研究所の南谷英美教授、産業技術総合研究所マテリアルDX研究センターの中村壮伸主任研究員、岡山大学学術研究院異分野融合教育研究領域(AI・数理)の大林一平教授、東京大学大学院総合文化研究科の水野英如助教からなる研究グループは、アモルファスにおける力学応答の構造的要因を、数学のトポロジーを応用した手法によって明らかにしました。
アモルファス構造を持つ材料は、結晶とは異なる電気伝導特性や機械特性を持っており、太陽電池やコーティング材料など幅広く応用されています。アモルファスにひずみを加えると、ひずみに沿った変位以外に、不均一な原子の変位が生じます。これは非アフィン変形と呼ばれ、アモルファスにおける特徴的な力学応答です。非アフィン変形が大きい部分はゆがみやすく柔らかいと考えられますが、そこに構造的特徴があるかどうかは長らく未解明でした。その原因は、アモルファスの複雑な構造を特徴づけるために必要な、中距離秩序と呼ばれる多数の原子配置の絡み合いを抽出することが、結合距離や結合角度を解析する通常の手法では、困難だったためです。
今回、研究グループは、トポロジカルデータ解析の一つであるパーシステントホモロジーを応用して、アモルファス構造内の中距離秩序に対応する原子が作る様々な大きさの「環」の情報を抽出し、それらと非アフィン変形の相関を調べました。その結果、非アフィン変形が起きやすい場所は、大きな環の中に辺の長さが乱れた小さな環が内包される、規則性と乱れが共存するような入れ子状の階層構造を持っていることが判明しました。
この成果により、どのような原子の配置がアモルファス材料の力学応答に重要なのかを、トポロジーから説明する道筋が示されました。今後、割れにくいガラスやしなやかで丈夫なアモルファス材料の設計に向けた、分かりやすい指針づくりに役立つことが期待されます。
本研究成果は、英国科学誌『Nature Communications』に、2025年9月25日(木)18時(日本時間)に公開されました。

◆南谷教授のコメント
大きく動くためには何らかの制約も有用という結果は、人の活動にも通じる部分があるような気がして面白く感じています。多元素系のガラスなどへの拡張に加え、さらにいろいろな材料での汎用性を調べていきたいです。
◆論文情報
タイトル:“Persistent homology elucidates hierarchical structures responsible for mechanical properties in covalent amorphous solids”
著者名:Emi Minamitani, Takenobu Nakamura, Ippei Obayashi, Hideyuki Mizuno
掲載誌:Nature Communications
DOI:10.1038/s41467-025-63424-z
URL:https://www.nature.com/articles/s41467-025-63424-z
◆謝辞
なお、本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「力学機能のナノエンジニアリング」領域(課題番号:JPMJPR2198)、同 創発的研究支援事業「データ・数理・因果で紐解く非晶質物質科学」(課題番号:JPMJFR236Q)、科学研究費補助金(課題番号:21H01816,23H04470, 22K03543,23H04495,19KK0068,20H05884,22H05106)、稲盛財団研究助成の助成を受けて実施されました。
また、分子動力学シミュレーションや構造解析については産業技術総合研究所の森下徹也主任研究員にご助言いただきました。
◆詳しい研究内容について
トポロジーで紐解くアモルファスの硬さが決まるメカニズム-柔らかさの鍵は階層構造-
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20250925-1.pdf

◆本件お問い合わせ先
<研究に関するお問い合わせ>
大阪大学 産業科学研究所 教授 南谷英美(みなみたに えみ)
TEL: 06-6879-4302
<広報に関するお問い合わせ>
大阪大学 産業科学研究所 広報室
TEL: 06-6879-8524
産業技術総合研究所 ブランディング・広報部 報道室
TEL: 029-862-6216
岡山大学 総務部 広報課
TEL: 086-251-7292
東京大学 大学院総合文化研究科 広報室
TEL: 03-5454-6306
科学技術振興機構 広報課
TEL: 03-5214-8404
<JST事業に関すること>
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ 安藤裕輔(あんどう ゆうすけ)
TEL: 03-3512-3526
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8463
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
<岡山大学の研究機器共用(コアファシリティ)などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究機器の共用の体制・整備等の強化促進に関するタスクフォース(略称:チーム共用)
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8705
FAX:086-251-7114
E-mail:cfp◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://corefacility-potal.fsp.okayama-u.ac.jp/
<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部
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