【アワード受賞】しんきん地域創生ネットワーク×T3デザインの協同による地域活性化プロジェクト

1. プロジェクト概要

本プロジェクトは、しんきん地域創生ネットワーク株式会社(しんきん地域ネット)と株式会社T3デザインが協同し、2022年にスタートしました。

しんきん地域ネットは、地域商社事業やコンサルティング事業を通じて事業者や地域の課題解決をサポート。

またT3デザインは、長年培われたブランディングやパッケージデザインのノウハウをもって、商品の魅力を最大限に引き出すという役割を担っています。 

これまでも、しんきん地域ネットとT3デザインで、多くの事業者における商品開発・リブランディングを実践し、デザインを通じて地域産品の価値を高め、新たな販路開拓を支援してきました。

今回、しんきん地域ネットが受託した、下田市の「令和5年度下田市競争力強化販路拡大支援業務」において、市内企業が取り扱う商品のブラッシュアップから販路拡大までをサポート。その取り組みの一環として「金目鯛ごはんの素」が誕生しました。

2. 最高金賞を受賞した「金目鯛ごはんの素 パッケージデザイン」について

2-1. 「金目鯛ごはんの素」アワード受賞

この度、しんきん地域ネットとT3デザインが商品ブラッシュアップに取り組んだ、有限会社渡辺水産の商品「金目鯛ごはんの素」が静岡県主催「ふじのくに新商品セレクション2024」にて最高金賞を受賞しました。


2-2. ふじのくに新商品セレクション

「ふじのくに新商品セレクション」は、静岡県産の農林水産物を活かした新しい加工品を選定し、その魅力を広めることを目的とした表彰制度です。多数の応募の中から、特に優れた品質やデザイン、地域性が評価された商品が選ばれます。「金目鯛ごはんの素」は、静岡の自然の恵みを感じさせる商品として、その魅力が高く評価され、受賞に至りました。

2-3. 渡辺水産様の紹介

渡辺水産は、伊豆近海で獲れる新鮮な水産物を中心に、地元の海の幸を取り扱う企業です。特に、金目鯛をはじめとした地域特産の魚に対して、長年にわたり品質管理と鮮度保持にこだわり、安定した供給を行っています。伊豆の豊かな海の恵みを最大限に生かし、消費者に「新鮮で美味しい」魚を届けることを企業理念に、地元の食文化を支える重要な役割を果たしています。また、渡辺水産は水産物の販売だけでなく、地域観光や食文化の発信にも取り組んでおり、地域経済の活性化にも貢献しています。


3. 【アワード受賞記念対談】デザインの力が開いた新しい扉

登場人物:

渡辺水産 ご担当者様(渡辺さん)

しんきん地域ネット 片柳

T3デザイン デザイナー(伊藤)

—今回のこのプロジェクトへご参加いただいたきっかけについて教えてください。

渡辺:地元の三島信用金庫さんと商工会から、こんなプロジェクトの募集があるんですけど、というお知らせいただいて、応募したという形です。

片柳:下田市や三島信用金庫をはじめとした地元の関係者の方と協力して、プロジェクトの周知に取り組みました。

—プロジェクトの最初の印象はどんなものでしたか?

渡辺:実は毎年、こういった地域活性化に関する企画のお声がけはいただいているんです。なので「今年はこういう感じか」というのが最初の正直な印象ですね(笑)。市が事業者のためにいろいろ考えてくれているのは本当にありがたいことだなと思っています。デザインが関わるというのも今までの弊社からすると未知の領域なので、そこに対する興味もあって、ぜひよろしくお願いしますと。

—最初からこの「金目鯛ごはんの素」を作りたい、という思いがあったんですか?

渡辺:最初は、弊社で取り扱っている金目鯛の濃縮出汁を使った商品開発を考えていたんです。まずはしんきん地域ネットの片柳さんにその思いを伝えて、実際に弊社の商品も見て、ヒアリングしていただくことから始まりました。

片柳:実際に商品をいろいろ見せていただいた時に、金目鯛の濃縮出汁を使って「金目鯛炊き込みごはんの素」という商品が作られているのを知りました。今回受賞した商品の元となるものですね。これがそもそもロングセラーであると。

渡辺:東京駅のようなターミナル駅でも販売させていただいていて、おかげさまでご好評いただいてました。

片柳:食べてみたら、すごくおいしかったんです。これはまだまだ伸びる余地のある商品だなと感じまして、これをブラッシュアップさせるのはどうですかという提案をさせていただきました。

—それはパッケージデザインだけではなく、商品自体も新たに企画するという形ですか?

渡辺:そうです。そこで片柳さんのヒアリングを通して、あらためてこの「炊き込みごはんの素」に感じている課題を掘り下げてみました。そこであがったのが添加物の問題だったんです。物販している時に手に取ってくださるお客様が、高確率でパッケージの裏面を確認されるんですよね。添加物を気にされている方が非常に多いということですよね。

片柳:添加物を抜いたら、金目鯛そのままの魅力をもっとアピールできます。そのために、金目鯛の身を増量し、価格も上げて、よりハイエンドな商品として売り出してはどうか、という方向性になりました。

—旧商品にも一定のファンがついていますから、そちらも大切にしたいですよね。

渡辺:そうなんです。なので、まったく別の商品として立ち上げました。

片柳:旧商品はロングセラーですから、ファンはやはり大切にしないといけません。それらを踏まえ、今回の商品と旧商品との差別化をしっかりしたい。そのひとつの手段として、新たなデザインを取り入れることになりました。

—別商品としてリブランディングしたということで、価格面に関しても再考されたそうですが。

渡辺:価格は上げました。利益確保の部分でもご指導いただいて。

片柳:作るからには、儲からないといけないですから。値段を下げるのは簡単ですが、いいものを作って、適正な価格をつけて、ちゃんとお金が入るようにすることがとても大切だと考えています。量販品では難しいことですが、この「ごはんの素」のような「渡辺水産さんじゃないと作れない」商品は、基本的に価格設定は高くすべきです。近年、原材料のコストは何でも上がっていますし、包材価格に至っては倍以上です。なので、今回のようなハイエンドな商品をどうやって作るのかを一緒に考えたいと思って取り組みました。そこでしっかり利益を取りながら、還元していくっていうのが重要だと捉えています。

伊藤:包材のコストが、見積り当初よりもだいぶかかってしまったなと思っていたんです。もしかしたら実現が難しくなるのかなと不安だったんですが、そういうふうに考えてくださったから商品ができたんですね。

渡辺:片柳さんに価格の相談をした時、僕の感覚よりもかなり高い値段を言ってくださって。正直不安もあったんですが、実際商品が動いてるのを見ると、全然大丈夫だったんだなと。今後の売上でどんどん回収できていくといいなと思っています。

—パッケージをデザイン会社に依頼するにあたって、ご不安などはありませんでしたか?

渡辺:弊社はいわゆる「魚屋」です。「魚」という物自体に価値がつく商売をしています。「この金目鯛は脂が乗ってるから、いい値段で売れるな」とか、自分の目で見てすぐに価値がわかるという世界です。

でもデザインって、正直どこをどう評価していいのかわからない。私がそういうことにとても疎いということもあるんですが、自分に正しい判断ができるのか、という部分は不安でしたね。その割に、いざデザインを決めていく段階になったら、伊藤さんに無理難題言って困らせましたけど。

伊藤:決して無理難題ではありませんでしたよ(笑)。

—デザインに関するやり取りはいかがでしたか?

伊藤:確か、最初に2パターンのパッケージを提案したんですよね。角箱で、伝統と歴史を意識したものと、最終的に採用されたデザインの原型となるもの。デザインを考える上では、単なる表現違いではなく、伝え方の切り口や世界観が異なる2案にすることを意識しました。一つは、既存の角箱を使い、安心感のある提案。もう一つは、構造自体を変え、新しい体験を生む挑戦的な提案でした。通常の提案でも、クライアントが選びやすいよう、安心感のある案と少し冒険的な案を用意することが多いですね。

渡辺:後者のパッケージは衝撃でした。こういうデザインは、僕らじゃ絶対に作れないと。もしこっちでいくなら、今までの僕の感覚とか、価値観とか、一回全部リセットしないといけないなと思いました。もちろん前者の、既存のものに近いような形でも売れるだろうけど、あんまり面白くない。じゃあもうチャレンジしよう!と思って飛び込んだのが、今のパッケージにつながっています。

伊藤:デザイン自体の方向性が決まって、そこから形状や機構はかなり試行錯誤になりましたよね。

渡辺:僕が無理難題を伊藤さんに言い出したのがここからです(笑)。マチをなくしてくれだの、2ミリ寄せてくれだの…。陳列や輸送も考慮に入れて考えなければならないので、考えることは無数にありました。

本当は外装はマチなしにしたかったんです。そのほうが風呂敷っぽくなって、より手土産感が出るよなー、と思ってたんですけど、そんなに薄いと陳列に問題が出てしまうので、「ぎりぎり薄いけど自立する」を調整してもらって。

伊藤:この最終形態にたどり着くまで、何回もやりとりしましたもんね(笑)。

渡辺:印刷会社さんにも箱を閉じる機構のアイデアをたくさん出していただいて、試作も何度もしていただきました。デザインのことなんてわからないと思っていましたが、最終的にはこだわりを持って作ることができました。0から1を生み出すのがデザインなんですね。

伊藤:そんなふうに言っていただいて光栄です。

片柳:T3さんみたいなデザイン会社は珍しいと思います。クリエイティブの方はもっと主張が強くて、ある程度自分の考えで、多少強引にでも進めていく印象なんですけど、真逆なんですよね。クライアントのお話をしっかり聞いた上でデザインを作ってくれる。多少ふわっとしていても、お客様に寄り添ってエッセンスを引き出していってくれる、そういう安心感があります。

—チームの努力の甲斐あって、今回この「金目鯛ごはんの素」が「ふじのくに新商品セレクション」において最高金賞を獲得するに至りました。率直な感想を教えてください。

渡辺:びっくりした、というのが率直な感想です。プレゼンしたときの感触が、決していいものではなかったんですよ。「陳列しづらいんじゃないか」とか「過包装じゃないか」っていうようなことを審査員に言われていたんで、これは厳しいのかなって。そしたら受賞、しかも金賞ですから。


—もう反響などは届いているんでしょうか。

渡辺:聞きつけた方からは問い合わせいただいてますが、まだちらほらという感じですね。表彰式が2月にあるので、そのあたりからメディアに出たりしていくんじゃないかと。

片柳:授賞式が終了したあたりから、イベント参加なども増えると思いますので、広がるのはこれからですね。


—パッケージデザインに対する反応もありますか?

渡辺:いろんな所へ持っていくと「かわいいね」「すごいね」って言ってもらえます。そういう声って、今までの商品ではなかったことなんですよ。食べて「おいしい」っていう声は頂いていたんですけど、ビジュアルだけで素晴らしい商品だって言っていただくことはなくて。そこですごくデザインの力を感じました。プロジェクトの最初の頃は微妙な顔してた社長も、「もっと作ってよ」とか言ってますから(笑)。それぐらい、デザインには力があるんです。それを実感しました。

伊藤:何よりの励みになる言葉です。

渡辺:あと、これをきっかけに、デザインにお金をかけられるようになりました。デザインというものに対して価値を見出せるようになったというか。そうすると販路も変わるんです。もともと販路はがらっと変えたいと思って取り組んだというのもありますが、高級量販店や高級スーパーなど、よりアッパーな層をターゲットにしたお店に置いてもらえるようになりました。金目鯛はそもそも高級魚なので、冷凍品は需要があったんですが、そこに常温品として食い込めるというのはさらに大きな力です。これもひとえにデザインのおかげだと思ってます。

片柳:デザインにお金をかけるということは、大企業は当然のようにやっていますが、地域の企業かつ規模の大きくない企業でそこを理解いただいてる所は本当に少ないんです。今回はデザインの力を渡辺水産さんが示してくれたので、これをきっかけにもっといろんな方にデザインの持つ可能性を感じていただきたいなと思います。経営の観点でも、デザインの力を理解し、うまく活用できているかはとても重要です。デザインにお金をかけることで、売上に大きな影響を与え、経営状況も大きく変わる可能性があるからです。渡辺さんにはそこを理解いただき、T3デザインさんに丁寧に対応していただいた結果「ふじのくに新商品セレクション」で金賞を受賞できた。本当によかったです。

渡辺:せっかくいただいたものですから。でも1万個売るのと100万個売るのでは全然印象が違います。これから100万個売って「デザインってこうなんだぞ!」っていうのが見せられたら、完璧ですね。


—次の挑戦ということに関して、何かお考えはありますか?

渡辺:発売してからいろいろなお声をいただくんですけど、面白かったのは「シリーズ化してほしい」というものですね。例えば四季で味を変えて、パッケージの色も変えて。夏は山椒、冬は煮付け、みたいな。このパッケージ、すごくかわいいと言われるので、色を変えてシリーズにしたらもっとかわいいんじゃないかって。

片柳:季節限定商品を開発するのも面白いですね。できれば、下田市や伊豆ならではの特産品とコラボして味変したいところです。また、それらの商品を詰め合わせて、外箱つけてギフト仕様にするのも楽しそうです。

渡辺:そういう売り方、目指したいです。高単価という所も外さずに、しっかりと利益を取れる売り方をしたいですね。

伊藤:楽しいですね。それは色やデザインを考えるのも楽しいです。

ー売れ行きとしての結果はもう出始めているんですよね。

渡辺:はい。初回生産分はもうほぼはけていて、増産も決まってますので、これからさらに販路を作っていければ、もっと増やしていけるかなと。面白いのが、道の駅に今、旧商品と新商品を並べて置いてるんですけど、両方とも売上が増加してるんです。


ーどっちも売れてるんですか。売り上げの奪い合いにはなってないんですね。

渡辺:そうなんです。新しい方を買うのは、富裕層や下田に観光に来る人、あとは若い女性が多いですね。旧商品は家族連れがお土産で買うことが多い感じです。

片柳:アイキャッチをしっかり取れているんだと思います。どちらに興味を持つのかは、年齢や性別などで違いますが、テイストの違う商品が並ぶことで、明らかに違う層を同時に惹きつけている。手に取ってみてあらためてもう片方を買っていく、ということもあるかもしれない。いい相乗効果になっているみたいですね。

渡辺:パッケージを白にしたのが正解だなと思ってます。うちの商品、基本的に目にうるさいじゃないですか。

伊藤:赤が多いですね。金目鯛の赤。勢いがあって目を引きやすいですよね。

渡辺:うるさいじゃないですか(笑)。でもそこに白がぽんっとあるだけで、目立つんだなって。これもかなり効果あったのではと思ってます。

ー今回の一番の成功ポイントはどこだと思いますか?

渡辺:これは全ての基本なんですけど、やっぱり「人」なんだなと思います。この商品に関わって下さった、片柳さん、伊藤さん、印刷所さん、下田市の方など、本当に人に恵まれました。それがなかったら、きっとうまくいかなかったと思います。あとはこれから、具体的な成果に変えていくのは私の仕事なので、私ががんばる番なのかなと思います。


ー今後、ブランドをどのように発展させていきたいと思っていらっしゃいますか?

渡辺:さっきもちょっと話題に出ましたけど「下田の金目鯛」って言ったら「渡辺水産」と当たり前に出てくるくらいに、もっともっと強化していきたいですね。

片柳:渡辺水産さんの成功は、下田の地域に大きな影響を与えるのではないかと思っています。地域の中核を担う企業が成功する姿は、他の企業の励みにもなりますし、そういう企業が地域にどんどん増えてくると地域自体が盛り上がる。そうすると、当然、下田市に来るお客さんも増える。もしかしたらその流れで、下田市にUターンしてくる若い人が出るかもしれない。そうやって広がって、循環することで、下田市がもっと元気になればいいですよね。


ー本日はどうもありがとうございました!



4. しんきん地域ネットとT3デザインが協同する地域創生と事業者支援の魅力

今回の「金目鯛ごはんの素」の事業者支援プロジェクトは、しんきん地域ネットの「事業者の強みを引き出すヒアリング力」と、T3デザインの「商品の付加価値を高めるデザイン戦略」が成功の鍵となりました。

渡辺水産が持つ「金目鯛の濃縮出汁」が持つポテンシャルに注目し、新商品の方向性を決定。商品の価値を最大化する新たなブランド戦略を打ち立て、高価格帯でも売れるパッケージへと昇華させることができました。

デザイン分野に初めて本格的に取り組む渡辺水産とは、密なコミュニケーションを取ることで、最終的に双方がしっかりと納得できるデザインにブラッシュアップすることができました。

また、適正な価格設定を見極め、「質の高さを正当に評価する」価格戦略を推進。

利益をしっかりと確保することで事業の持続可能性を支援し、この先も、息の長いブランドとして成長しながら歩んでいけるものになったと確信しています。

このように、事業者との対話を通して「二人三脚のものづくり」を実現するのがしんきん地域創生ネット×T3デザインの協同プロジェクトです。

今後も地域創生と事業者支援に貢献していければと思っています。

しんきん地域創生ネットワーク株式会社 https://shinkin-chiiki-net.co.jp/

株式会社T3デザイン https://t3design.co.jp/



他、しんきん地域ネット×T3デザインの協同プロジェクト実績はこちら

▲ 有限会社三幸様 TOKYO ACRYL SHOP CARD


▲ 株式会社ワタトー様 五家宝

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会社概要

URL
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業種
サービス業
本社所在地
東京都中央区日本橋本町4-12-20 PMO日本橋本町 9階
電話番号
03-5652-3939
代表者名
小宮啓二朗
上場
未上場
資本金
1億円
設立
2021年07月