【イベントレポート】「WIG(Women In Gastronomy)~食の世界の女性たちの会~」創設6周年記念ガストロノミーフォーラムを10月1日(水)に開催

WIG食の世界の女性たちの会

非営利団体「Women In Gastronomy ~食の世界の女性たちの会~」(略称:WIG、主宰:渡辺万里)は、創設6周年を記念し、10月1日(水)に第2回ガストロノミーフォーラムを開催いたしました。

当日は、WIG会員をはじめとるすお客様やメディアなど、計98名が参加。スペインの1つ星女性シェフ ルシア・フレイタスによる講演、WIGに所属する料理人や生産者によるビュッフェ、5名の日本人トップシェフによる座談会を実施し、食の世界での女性の現状や未来を語り合い、交流を深める場となりました。

WIG創設6周年記念ガストロノミーフォーラム
開催日:2025年10月1日(水)

会場:エネコ東京

内容:

11:00〜 ルシア・フレイタス講演「大地の女性たち」

12:00〜 ビュッフェパーティー(WIG 会員料理人・生産者多数協力)

14:00〜 女性シェフ座談会「私の今日、私の明日」音羽明日香、加藤峰子、木村藍、桑木野恵子、山本結以

■ルシア・フレイタス講演「大地の女性たち」

スペインで、ガストロノミーを陰で支える女性の伝統と仕事を守るための取り組み“Amas da Terra(大地の女性たち)”を行う、「A Tafona」オーナーシェフ ルシア・フレイタスは講演で以下のようにコメントしました。

ガストロノミーの世界での女性の地位について
ガストロノミーは、ピラミッドの形をしていると考えている。その頂点がミシュランを取るようなレストランだが、その中で女性は非常に少ない。そしてピラミッドの土台になる部分に女性が多い。彼女達が子供を育てながら働き、伝統の料理を伝えてきたことによって、今のガストロノミーが成り立っている。シェフのエゴが強かったガストロノミーの世界に、“Amas da Terra がインパクトを与えていきたいと考えている。

“Amas da Terra” について
2018年に志摩を訪れ、海女の女性達と交流した際、彼女達の存在に感銘を受け、大きなインスピレーションを受けた。スペイン語の amar(愛する)amo(土地の所有者)”  などの意味も込めて、活動をAmas da Terraと名付けた。活動を始めて4年経つが、賛同してくれる人達のビデオを作り、インタビューをし、ポッドキャストで発信することなどで、世界中に運動を知ってもらうことが大事だと考えている。より早く、より深く活動を広めたい。

日本について
日本はまだ、女性達の力や声が小さいと感じている。WIGも、Amas da Terraと同じように、縦の糸と横の糸を紡ぎながら大きな網になって欲しい。そしていつか、“Amas da Terra”とWIGが交流を深め、WIGのメンバーにはガリシアに来て欲しいし、ガリシアの女性達にも日本に来て欲しいと思っている。女性の才能を女性同士で高めあい、助けが必要な時には女性同士で手を差し伸べてほしいと考えている。

■女性シェフ座談会「私の今日、私の明日」

5名のトップシェフによる座談会では、女性として料理の世界で修業してきた中での壁や課題、女性ならではの視点でのチーム作り、今後のビジョンなどについて意見が交わされました。 

登壇者

音羽 明日香(「オトワレストラン」シェフパティシエ)、加藤 峰子(東京都・銀座「FARO」シェフパティシエ)、木村 藍(千葉県「五氣里」シェフ)、桑木野 恵子(新潟県「里山十帖」料理長)、山本 結以(東京・銀座「エスキス」料理長) 

Q.女性料理人として、料理の世界で修業してきた中で感じた壁や課題は 

山本 結以:以前の職場では、「女性料理人」として、「料理人」の前に性別が付くことに違和感を抱いていた。例えば、誰かが早上がりできるとなると真っ先に自分が呼ばれ、それは優しさゆえではあるが、女性ということで特別扱いされることに疑問を感じていた。現在は、エグゼクティブシェフであるリオネル氏が、一度も性別で自分を見ず、料理人として出来ることを見てくれている。そう実感できることが、今も料理を続けられる大きな理由になっている。

Q. 自身が女性であるという点も含めて、チーム作りで大切にしていることや心に留めていることは

桑木野 恵子:日本料理のレストランは、働きたくてもなかなか門戸を開いてくれないという話を聞く。里山十帖では、多様性を大切にし、インターンシップ生も積極的に採用している。また、地域に深く根付くことで、グローバルに発信できると感じている。スタッフも「世界からどう見られているか」を意識することで、自分たちが何を発信できるかを考え、目的意識が変わってくる。

木村 藍:入社後のこの一年半は、地元採用を呼びかけ続けてきた。その結果、今のメンバーはほとんどが地域とつながりを持つ人材。誰かの知り合いだったり、地元の生産者を知っていたりと、横のつながりでゆるやかに地域と結ばれているスタッフが集まった。レストランというより、むしろ「地元愛」で成り立っているようなチーム。こういうチームワークの作り方があるんだなという新しい発見があった。

音羽 明日香:嫁いだ先が、家族経営でありながらも、勤続年数の長いスタッフや若いスタッフも含めて20数名いるような大きな組織だった。もし小さなレストランを自分一人で経営していたら、今のように子供を育てながら自分の表現を続けるのが難しかったかもしれないと感じる。

Q.先日のシュランの発表の壇上に女性がほとんどいなかったことについて、どのように感じているか

加藤 峰子:最近気づいたことは、女性シェフの中に、オーナーシェフ(実業家)として0から1を作る人がまだあまりいないということ。男性シェフと女性シェフがまだ、日本では同じ土俵にいないと感じている。日本の女性の在り方は「おしとやか」「しなやか」と言われる一方、お金を作ったり投資を受けたりすることは、少し品がないと思われがち。その文化的要素が、人を動かしにくい理由かもしれないと感じている。

桑木野 恵子:色々な問題が絡んでいると思う。まず、女性は20〜30代のうちに結婚をして子供が欲しいと思うと、その時期に事業を始め、さらに料理人として働き続けるというところまで、志を持って進んでいけるかというと難しい部分もある。何かを始める時のパワーという点でも、女性は男性と同じ土俵には全く立ててないと感じる。

木村 藍:ルシアのピラミッドの話が印象深かったが、女性は家事などの大前提がありつつ、それに加えて男性と同じかそれ以上のことを成し遂げるとなると、同じ時間の中で出来ることには限界ある。以前レストランを経営していた際は、経営は夫が担当し、自身は料理に集中出来た。今は会社に雇われているので料理に集中でき、制約もあるが有難い部分もある。 

Q.今後についてどのようなビジョンや課題を持っているか

山本 結以:目標は自分がオーナーシェフになること。自分の思いをレストランの中心に置くためには、自分がトップに立たなければいけないと感じている。今は、「女性が男性とスタート地点がそもそも違う」という状況が当たり前だが、今発言権を持っている私達が、その状況を変えていく変革をしていくべきであると考えている。

Q.具体的に業界を変えていく働きかけについて

加藤 峰子:女性パティシエの働き方を考える自身の活動「Think Me」は、業界や政府に対する不満を語りがちなところを「まずは自分達の理想や意見をまとめて誰かに伝えよう」という目的を持った会。その中で飲食業界の女性の一番大きい不安はキャリアプラン。そもそもこの業界の働き方はマジョリティ向けに作られたシステムで、女性のようなマイノリティ向けには構築されていない。そのような中でも自身の考えやキャリアプランをしっかり持って、自分を変えていこうということを今働きかけている。

Q.スタッフや若い人に対して、伝えたいことは

桑木野 恵子:それぞれの人生なので、良い意味で期待せず、やりたいことをやるように伝えている。人生は短いので、どう生きるかは自分で考えた方が良いよという話をしている。

山本 結以:若いが故に失敗を恐れて一歩踏み出せない人多いが、ミスをしても良いから失敗を恐れるな、と伝えている。人員不足の中で、優れた料理人に入社して欲しいと言う思いはあるが、優れた料理人は誰かが育てたから優れているわけで、自分達が求めている未来に行くためには、人の育成に力を入れていく必要があると感じている。

Q.女性がリーダーになることによって料理界がどのように変わると考えるか

音羽 明日香:今の若い人達は、料理人ですら、幼少期に日本の食文化に触れてきていないことが多い。自身は子供がいるため、母親の視点も出てきて、スタッフを自宅に招き料理をふるまうことがある。その際には「本来料理は、みんなで食べておいしいねって言いながら食べるんだよね」「そういう瞬間を提供したくてこの業界に入ったんだよね」という想いを伝えている。

加藤 峰子:料理業界は、フランスで始まった時から、シェフ、スーシェフ、コミというピラミッド型の社会構成「ブリゲード」で成り立っている。これは元々は戦場で効率よく人を動かす方法で、今の社会には合っていないと考えている。女性には、人を支え、困った時に最良の選択が出来るような素質があり、そうした力を生かすことで、現代に合ったしなやかなリーダーシップが可能になると思う。

山本 結以:女性がリーダーになることのメリットについて答えるのは本来女性ではない。現状、リーダーの多くは男性であり、彼らが女性を正当に評価し、引き上げてくれなければ、女性はいつまで経ってもリーダーにはなれない。男性社会を否定するつもりはなく、対立も望んでいない。「男性の協力がなければ自分達は先に進むことができない」ということを提示し、女性が正当に評価され、選択肢が増えることを求めている。

■ビュッフェパーティー

イベントの間には、WIG会員として活動する料理人や生産者による料理やドリンクの提供を行い、参加者による交流の場となりました。

参加シェフ・生産者

ルシア・フレイタス(A Tafona)、木村藍(五氣里)、音羽明日香(オトワレストラン)、道野祐子(ミチノ・ル・トゥールビヨン)、営間一貴(アンティカ・オステリア・デル・ポンテ)、松島朋宣(キュイジーヌ・フランコ・ジャポネーズ・マツシマ)、臼田雅(日本料理うすだ)、中村篤(ビシガリ~BiXiGARRi~)、服部光一(アメッツ〜Amets~)、西本竜一(Mano)、山崎純(和海味処いっぷく)、藤原伸彦(ジャンポン・ド・ヒメキ)、平井宗助(柿の葉すし 平宗)、柴田千代(チーズ工房【千】sen)、高橋ゆかり(大田原チーズステーション)、平井久美(平井農園)、馬場祐治(ユニオン・リカーズ)、多戸綾(¡ANIMO!)、三島理香(AITANA WINE HOUSE)、岩間忠(ウミネコ醸造)、槇村洋志(MARCOMAR JAPON)

※敬称略、五十音順

【「WIG〜食の世界の女性たちの会〜」について】

2019年、スペイン1つ星女性シェフ ルシア・フレイタス氏が来日して行われた「ガストロノミーフォーラム」を機に、スペイン料理研究家 渡辺万里により創設。美食イベントやワークショップ、オンライン食材販売、マルシェなどの活動を通じて、食の分野で働く女性が出会い、繋がり、未来について語り合うためのプラットフォームを提供しています。活動を通じて、女性ならではの視点で食を取り巻く環境の持続及び向上を考え、女性の活躍の認知向上と環境整備を図ることを目的としています。現在は、食の分野で働く女性や、その賛同者から構成され、現在約500名の会員が所属。長野県、千葉県、奈良県、兵庫県などの地域に会員グループを有し、地域ごとに会合やイベントを行っています。今後は、企業や外部機関等との連携を通じて、さらに活動の輪を広げることを目指しています。

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WIG 主宰  渡辺 万里

大学時代にスペインに関心を持ち、1975年よりスペインで食文化の研究に取り組む。1989年「スペイン料理文化アカデミー」開設。早稲田大学非常勤講師、本の執筆、講演などの活動を通じてスペインの食文化を日本に紹介してきた。世界のガストロノミーシーンを動かしたスペインのレストラン「エルブジ」を日本に初めて紹介したジャーナリストとして、スペインでも高い知名度を持つ。2017年、食の力で地方を応援することを目的に「軽井沢ガストロノミープロジェクト」を創設。2019年には、スペインの食の分野で活動する女性団体からヒントを得て、「WIG」を創設。両プロジェクト共に、東北・能登など被災地の支援活動を通して「食で出来ること」を模索してきた。今後も地方の生産者支援を軸としながら、特にWIGでは、日本各地の食に関わる女性たちと繋がり、彼女たちに新たな活躍の場を生み出すことを目標として活動を展開している。

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会社概要

WIG食の世界の女性たちの会

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URL
https://wig-japan.com
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都世田谷区北沢 1-33-18-301 「有限会社イスパニカ」内
電話番号
03-5544-8335
代表者名
渡辺万里
上場
未上場
資本金
-
設立
2019年09月