日本で初めて、国産の肉用鶏の生産実態を明らかにした内部調査を公開
肉用に飼育される鶏メイちゃんの50日の一生を記録
認定NPO法人アニマルライツセンター(東京渋谷区)は、これまで明らかにされてこなかった、国内の若鶏、つまりブロイラー養鶏の実態を初めて明らかにました。また、それを消費者に知らせるべく、2020年8月18日から10月7日にかけて、肉用鶏の50日の一生を成長に合わせて観察した映像、およびレポートを「50DAYS」のサイト(https://50days.jp)にまとめて公開しました。
今日はその最終日であり、肉用鶏の飼育期間である50日のすべてが明らかになった日です。
今日はその最終日であり、肉用鶏の飼育期間である50日のすべてが明らかになった日です。
ブロイラーと呼ばれる肉用鶏に生まれたメイが見た世界
「肉用鶏の赤ちゃんのメイは孵化場で生まれ、トラックで農場に運ばれた。メイたちは鶏舎の床に乱暴に放り投げられた。給水管にぶつかって地面に落とされたメイは、驚いて起き上がった。これがメイたちの生まれた日。赤ちゃんのメイたちは何かをつつきたいという欲求がある。つつくものが何一つ用意されていない鶏舎の中でこのような欲求は全く満たすことができなかった。
従業員は毎日数回、この鶏舎の中を往復して死体や弱ったヒナを探す。そのたびに、メイたちは逃げ惑う。ときに従業員はヒナを踏みつぶす。踏まれた雛はお尻から内臓が飛び出し、羽をばたつかせて這っていく。そして傷ついた内臓を引きずったまま死んだ。」
・・・屠畜の日までの様子を毎日50日間レポートしています。
内部調査の出どころと意図
この50DAYSの情報は、全て事実に基づいています。国内養鶏場で働いた元従業員からの緻密なレポートが元になっています。真実を知ることは解決の第1歩であるとこの方も、私達も信じています。この調査には一つの農場や企業を批判する意図はなく、農場名も情報提供者も匿名です。なぜなら、レポートされた養鶏場はやや大規模ではありますが、ここに映されたものは、国内の一般的な飼育密度、飼育方法の養鶏場であるからです。
動物を経済利用することの問題
日本の肉用鶏の生産の実態は、これまで明らかにされてきませんでした。50日育てられ、出荷される雛たちがどのような状況に置かれているのかが明らかになったことで、人々の消費行動、そして生産方法も改善せざるを得ないことに気がついてほしいと考えています。
ブロイラーの苦しみを直に見てきた元従業員の方は、「結局の所、この養鶏というシステムがある限り問題は解決はしない。」と言い放ちます。
養鶏場で働く人は悪人ではありません。しかし1羽500円という価格で、1人が数万の雛を管理しようとすれば、ひどい状況にならざるを得ないのです。事実、従業員の方は「限られた業務時間のなか、どんなに気をつけても雛を蹴らずには前に進めなかった」と述べています。急激に太るように品種改良された雛は、たとえ良い環境で飼育したとしても苦しみ死んでしまいます。
今の養鶏はそういうシステムです。このようなシステムが今許されているのは、鶏なら苦しめてもよいとする差別意識があるからです。経済動物だからと苦しみをなかったことのように扱うからです。
私達は動物をこんなにも苦しめることなく、おいしい食べ物を得る技術をすでに獲得しています。消費を植物性タンパク質(代替肉)に切り替え、飼育数を減らすことは、アニマルウェルフェアよりはるかに簡単な解決への道です。その上でようやく取引価格を上げ、アニマルウェルフェアも引き上げられる一歩を踏み出せるのです。
■日本でも話題の植物性タンパク質(代替肉)への移行を加速
世界ではじめてつくられた培養肉(クリーンミート)に資金提供したのはGoogleの共同創業者で、推定純資産は306億ドルと言われているルゲイ・ブリンです。彼はクリーンミートに投資した理由はアニマルウェルフェアのためでした。鶏肉は未だに消費量が増え続けていますが、これ以上の負担を動物に強いることは倫理的に許されないことです。
今世界は動物性タンパク質から植物性タンパク質に移行を始めています。日本の食肉企業、食品企業も後に続いています。
■ベターチキンへの取り組み、進む海外、動きのない日本
欧米、ブラジルやタイなどと比較して日本の飼育環境が劣悪であることが明白です。国内のブロイラー生産の平均的な飼育密度は50kg~56kg/㎡(1㎡のスペースに50~56kg分の雛がいる状態)ですが、EUが規定する飼育密度は33kg/㎡、ブラジルの平均飼育密度は28kg/㎡、タイ最大であり日本にも多く輸出する食肉企業CF foodsの飼育密度は33kg/㎡です。
また、欧米では現在ゆっくり成長する鶏種(slow-growing)への切り替えが始まっており、例えばオランダ市場の30-35%、フランスで市場の36%の鶏肉がゆっくり成長する種であるとされています。
また、飼育密度を30kg/㎡にさげ、ゆっくり成長する種に切り替え、とまり木やつつく素材などエンリッチメントを導入し、屠畜の方法もガススタニングに切り替える「ベターチキンコミットメント」には、すでに欧米の345社の企業が同意し、2026年までに切り替えることになっています。
ベターチキンについて: https://www.hopeforanimals.org/better-chicken/
日本は改善の見込みが全く立っていません。
■薬剤耐性菌と深い関わり
アニマルウェルフェアは抗菌剤の薬剤耐性菌の発生防止にも直結しています。EUは2018年10月25日に「アニマルウェルフェア、抗菌物質の使用、及び工業型ブロイラー畜産が環境に与える影響等」を決議、アニマルウェルフェア自体が薬剤耐性菌の予防につながると明記しています。
日本の鶏肉は既に薬剤耐性菌検出率が外国産のものよりも高いことが厚生労働省の調査により判明しています。市場で売られる国産鶏肉の半数以上から、薬剤耐性菌が検出されるという状況にまで来ています。
https://www.hopeforanimals.org/AMR/
薬剤耐性菌により2050年には1000万人が死亡することが予測される今、畜産におけるアニマルウェルフェアを向上させ、動物自身が免疫を保てる環境で育てることは社会の持続可能性のために必須のことになっています。
■ブロイラー養鶏の改善を求める
このような残酷な飼育を強い、また過酷な育種改変を継続するブロイラー養鶏に一刻も早く終止符を打ち、企業を代替肉に移行させ、また同時にアニマルウェルフェアに配慮されたベターチキンに移行させることを求めています。
ベターチキンに完全には届かないものの、地鶏は飼育面積の規定があるため私達が推奨するものの一つです(銘柄鶏ではない)。
このキャンペーンは50日続きました。その短い一生を見た方からは、「早く殺してあげてほしい」という言葉も聞かれました。しかし同じような飼育下にある雛が、日本国内で毎年6億9500万羽生まれ、殺されています。
一刻も早く、彼らの状況が改善されることを切望します。
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