NPOサポートセンター、NPOの代表810名に聞いた「NPO代表者白書」を発表
NPO代表者の交代準備が遅れ、候補者不足が深刻な課題に

特定非営利活動法人NPOサポートセンター(所在地・東京都港区、代表理事・松本 祐一)は、全国のNPO代表者810名を対象に実施した調査をもとに、「NPO代表者白書」を発表しました。本調査では、NPOの代表者交代に関する実態と課題が明らかになりました。
【主な調査結果】
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半数以上(56.3%)のNPOが5年以内の代表交代を想定しているが、34.2%は具体的な時期を決められていない。
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交代理由のトップは「高齢化」(58.3%)。次いで健康状態(2位)、組織の活性化(3位)。
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代表交代を予定している団体の47.8%が「準備はまだ進んでいない」と回答。
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交代が進まない最大の理由は「適切な候補者が見つからない」(50.9%)。特に70代以上では58.1%と深刻。
【業界の課題:NPOの代表交代の遅れがもたらすリスク】
本調査で明らかになったのは、多くのNPOが代表交代を計画しながらも、具体的な準備が進んでいない現状です。候補者不足や引継ぎの準備不足は、組織の持続可能性にとどまらず、地域や社会全体への影響も懸念されます。NPOは企業のように“事業の継続”を目的とするのではなく、活動が次世代へと受け継がれ、地域社会に根付いていくことが求められます。そのため、代表交代の準備不足は、社会全体の継続性にも関わる重要な課題です。
■ 調査結果まとめ
【調査団体の概要】
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回答団体の代表者は、男女比約55:45、年齢は40代以下、50代、60代、70代以上の4カテゴリーで分けられたため、分析の軸とした。最も多いのは60代で28.4%、続いて50代22.8%、70代19.1%で50〜70代が中心といえる。
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他の調査(※)によると、全国の女性社長比率は8.4%であるのに対し、ソーシャルセクターの女性代表の割合はそれを大きく上回り、女性が活躍する分野であることが明らかになった。
※参考 : 全国「女性社長」分析調査(2024年)|株式会社 帝国データバンク[TDB] https://www.tdb.co.jp/report/economic/20241128-womanpres2024/ 2025年4月1日アクセス確認
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NPOの活動分野を代表者の属性別にみると、代表が「非常勤」「報酬なし」「男性」「70代以上」の比率が高いのが「環境の保全を図る活動」の団体であった。また、女性の代表の比率が高いのは、「子どもの健全育成を図る活動」(30.5%)であり、この活動は50代以下の代表の団体でも高い傾向にあった。
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収入の割合を組織の属性別にみると、収入「〜100万円未満」の団体は「会費」5割超が17.9%で、会費や補助金・助成金に頼る団体は1000万円未満が多いことが分かった。収入規模が大きくなるほど自主事業5割超の割合が増えた。また収入「〜5000万円未満」の団体は公的機関からの委託事業5割超が約4割となった。活動期間でみると、新しい団体ほど「補助金・助成金」に頼り、歴史が長い団体ほど「自主事業収入」の比率が高い傾向となった。
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直近3年のNPO団体の収入の増減傾向を代表者の属性別にみると、「報酬なし」「70代以上」の団体のみ、減少傾向で、組織属性別にみると、収入「~100万円未満」「任意団体」活動期間「20年超」の団体が減少傾向となった。
【NPO代表者の「横顔」】
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就業形態と報酬について、代表者属性別にみると、初代の65.1%が常勤で、2代目以降の約半分が非常勤である。また、若い方が常勤の比率が高まる。70代以上は、54.0%が非常勤の代表で、36.9%が報酬を受け取っていない非常勤である。また、常勤でも報酬を受け取っていない比率は18.2%となった。
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代表者が団体から得た収入(役員報酬・給与・謝金・委託費など)は「なし(0円)」が42.6%で第1位、50万円未満で約6割を占める。日本全体の平均給与である400万円台以上の収入を得ている代表者は13.1%に過ぎないことが明らかになった。さらに、代表者属性をみると、非常勤代表は50万円未満の収入が83.4%を占めた。年齢別にみると、50万円未満は70代で79.1%、その他の世代も50%台であった。400万円以上の収入を得ているのは40代で18.3%となりこの世代が最も多いことが分かった。
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常勤代表は副業なしが42.4%と全体傾向よりも高く、逆に非常勤代表は副業なしが少なく、経営者である比率が高い。同じように報酬ありの代表は副業なしの割合が高く、報酬なし代表は非正規社員・職員と企業の正規社員比率が高い。また年代では50代は経営者である比率が高く、70代以上は副業なしが55.6%を占めていた。
【NPO団体の運営に関する認識】
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複数年にわたる中期計画を策定している団体は43.8%で、半分以上の団体がつくっていないことが明らかになった。一方、年度計画は89.5%と約9割の団体が策定している。
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代表者属性別にみると、中期計画を策定していないが6割を超える層は、「非常勤」「70代以上」の代表者の団体であった。一方、年度計画を策定していない最も多い層は「報酬なし」で14.2%となった。
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運営上の課題については、「活動を担う人材の確保」「活動を担う人材の若返り(後継者育成)という人に関する課題が上位2つを占め、続いて「収入源の多様化」「会員や支援者の確保」という項目が高い傾向となった。
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代表が活動・事業運営について心掛けていることは、「自主事業収入の増加」「新しい活動や新規事業の企画・開発」といった事業開発関係が上位2項目、「行政との連携」「地域社会とのコミュニケーション」といったステークホルダーとの関係づくりに関するものが続く結果となった。
【事業承継の現状】
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今後5年間で代表者交代を想定している団体は56.3%で、そのうちの65.3%が5年以内と考えているが、34.2%は具体的な時期が決まっているわけではないことが分かった。
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代表者属性別にみると、「初代」と50代以下の団体は交代を想定しない比率が高く、2代目以降で69.1%、70代以上で84.0%が交代予定である。組織属性では、活動期間が長い方が交代を想定しており、収入「〜100万円未満」や「任意団体」は交代しないが5割を超えた。
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代表者属性別にみると、70代以上は「3年以内」が46.5%と1年以内も含めると6割がこの1〜3年で交代を想定しているが、22.3%は具体的な時期が決まっていないことが明らかになった。組織属性別にみると、活動期間「〜5年の団体」でも5年以内の交代を想定しているのが約4割という結果となった。
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交代を想定している代表の交代の理由のトップは「自身の高齢化」で58.3%と突出している。続いて自身の健康状態で、3番目に組織の活性化・継続のためにという理由が上がった。
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交代予定者はどのような準備をしているかについては、47.8%という約半数が「準備はまだ進んでいない」と回答。続いて、候補者未定だが準備をしているが23.0%、続いて、複数の候補者に絞り込んでいるが14.5%、すでに次の代表者が決まっているのは10.7%となった。
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交代予定者で「準備はまだ進んでいない」という団体を母数に、交代の準備が進んでいない理由を聴取すると、「適切な候補者が見つからない」が50.9%で最も多く、続いて準備のための人と時間がとれないという理由が明らかになった。
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代表者属性別にみると、候補者が見つからないの比率が最も高いのは、「70代以上」で58.1%であった。「40代以下」だと準備のための人や時間だけでなく何をしたらよいかわからないという項目も2割を占めた。
■ 調査概要
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調査期間 : 2023年8月7日~9月5日
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調査方法 : Webでの自入力式のアンケート調査
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調査協力 : 全国31の中間支援組織
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調査対象 : 全国の社会課題解決に取り組むNPO、市民活動団体の代表者、運営者。法人格はNPO法人だけでなく、一般社団法人や公益法人、地域の任意団体や自助グループ等まで含む
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回答者数 : 810人
※複数回答の場合は、回答者数を100%として算出しています
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはなりません
NPOの代表者の「横顔」
Q.代表者であるあなた自身の性別と年代についてお答えください。

Q.代表者であるあなた自身の最終学歴についてお答えください。

Q.あなたは何代目の代表者ですか?

Q.在任年数についてお答えください。

Q.就業形態と報酬(役員報酬・給与・謝金・委託費など)についてお答えください。

Q.団体から得た収入(2022年度) についてお答えください。※役員報酬・給与・謝金・委託費などの合計

NPO代表者の男女比は約55:45で、50〜70代が中心。最終学歴は大卒以上が65.2%。初代の65.1%が常勤だが、70代以上は非常勤が54.0%で、無報酬の割合も高い。役員報酬ゼロの代表は42.6%、50万円未満が約6割に上ります。400万円以上の収入を得る代表者は13.1%にとどまり、40代が最多の18.3%。常勤代表は副業なしが42.4%と多く、非常勤代表は副業者や経営者が多い。50代の副業は経営者の割合が高く、70代以上は55.6%が副業なしという結果がでました。若い世代のNPO代表者ほど常勤の割合が高く、本業として関与しているケースが多いことが読み取れます。
事業承継の現状
Q.今後5年間の代表者交代についてお答えください。

Q.代表者交代の時期についてお答えください。

Q.代表者交代の理由についてお答えください。

Q.代表者交代の準備についてお答えください。

Q.代表者交代への準備が進んでいない理由についてお答えください。

今後5年間で代表者交代を想定している団体は56.3%で、そのうち65.3%が5年以内と考えているが、34.2%は具体的な時期を決めていない。初代や50代以下は交代を想定しにくい一方、2代目以降や70代以上では交代予定が高い。交代理由のトップは「自身の高齢化」(58.3%)で、次いで健康状態や組織の活性化。準備状況では47.8%が「まだ進んでいない」と回答し、候補者未定も多い。準備が進まない理由は「適切な候補者が見つからない」(50.9%)が最多で、特に70代以上で58.1%を占めた結果となりました。後継者不足の解消と人材育成の仕組みづくりが、今後のソーシャルセクター全体の持続性にとって重要な課題となることが読み取れます。
本調査結果を踏まえ、NPOサポートセンターは、「代表者」という存在を通して、NPO・市民活動のあり方を考える議論を促進し、ソーシャルセクターの持続性の確保と、弊団体がビジョンに掲げる「どんな課題も放置されず、解決への希望が持てる社会」の実現に向けた活動を推進します。今後は、NPO代表者の活動環境を改善するための制度や支援策を提案し、リスクを負いながらも挑戦を続ける代表者を支援する取り組みを進めてまいります。
本白書に関するお問合せ
特定非営利活動法人 NPOサポートセンター(NPO代表者白書担当)
TEL : 03-6453-7498 (受付時間 : 平日 10:00-18:00)
Mail : mcn@npo-sc.org
Web : https://research-2023.npo-sc.org
NPOサポートセンターの法人概要
法人名:特定非営利活動法人NPOサポートセンター
所在地:東京都港区芝4-7-1 西山ビル4階
設立 : 1993年
理事長:松本 祐一
Web : https://npo-sc.org/
TEL : 03-6453-7498
事業内容 :
・NPOの団体支援と人材育成
・企業との連携やCSRに関するコンサルティング
・自治体の協働に関する研修とコンサルティング
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