スローフードの”食の世界遺産”「味の箱船」。日本にて新たに10食材登録で国内全74品目へ。

各地方の伝統的かつ固有な在来品種や加工食品、伝統漁法による魚介類などのなかには、このままでは消えてしまうかもしれない、小規模な生産者による希少な食材がたくさんあります。こうした食材を世界共通のガイドラインで選定し、様々な支援策によって、その生産や消費を守り、地域における食の多様性を守ろうというスローフードのプロジェクトが「味の箱船」です。1996年のプロジェクト開始から、現在5,500以上の世界中の動物、果物、野菜の品種と加工食品などが登録され、”食の世界遺産”とも呼ばれる国際カタログとなりました。
今回は、国際的な食のプロたちの集まる「ルレ・エ・シャトー」、世界農業遺産(GIAHS)を軸につながりが生まれた「徳島大学」、この2つの連携がきっかけで、10の味の箱船が登録され、未来につないでいくための活動を行うこととなりました。
※現在の日本の味の箱船一覧 (https://slowfood-nippon.jp/what-we-do/ark-of-taste/)


 

味の箱船_Slow Food Nippon味の箱船_Slow Food Nippon

【今回登録された食材】
  1. 天龍村の柚餅子
  2. 丹後地域のうご
  3. 八代オクラ
  4. 赤花蕎麦
  5. ヤツマタ
  6. 祖谷のヒエ
  7. 祖谷のタカキビ
  8. 祖谷のコキビ
  9. 祖谷のアワ
  10. 祖谷のソバ

【味の箱船登録を実現した連携その①】

● ルレ・エ・シャトーとの国際的なコラボレーションから生まれた、味の箱船5食材
今回の登録の背景のひとつには、国際的な食のプロたちが集まるルレ・エ・シャトーとの国際的な協働があります。世界約160か国以上で展開するネットワークであるスローフードが展開する国際的プロジェクト
「Food for Change」に、ルレ・エ・シャトーが参画。ルレ・エ・シャトーに加盟している日本国内屈指の旅館・ホテルやレストランのシェフより、次世代に残したいけれど絶滅の恐れのある果物や野菜といった食材、動物などの情報を推薦していただき、味の箱船へ登録しました。

※ルレ・エ・シャトーとは?
ルレ・エ・シャトーとは、1954年に設立以来、ホテルオーナーやシェフによる個人・家族経営の魅力的な高級ホテルや旅館、一流レストランが世界に約580軒加盟する協会です。ルレ・エ・シャトーのメンバーは、世界各国・地域のホスピタリティや食文化の多様性と豊かさを大切に守り、次世代へ提唱してくことを理念として共有し、2014年11月にユネスコで宣言したルレ・エ・シャトーのヴィジョン「その土地の伝統や環境を守りつづける」を、日々実践しています。

◎ ルレ・エ・シャトー シェフ達から推薦された食材(味の箱船)
  • ① 天龍村の柚餅子 (推薦人:ヒカリヤ ニシ 田邉 真宏シェフ)
柚餅子とは、保存食の一つで、柚子の中身をくり抜き、皮の器の中に、砂糖やクルミ、胡麻等を混ぜ合わせた「練り味噌」を詰め込み蒸した後、自然乾燥で約3ヶ月かけて一つ一つ丹念に仕上げた、独特の風味と香りを持つ珍味です。 

天龍村の柚餅子天龍村の柚餅子

 

ヒカリヤ ニシ 田邉 真宏シェフヒカリヤ ニシ 田邉 真宏シェフ

 
  • ② 丹後地域のうご(推薦人:要庵 西富家 泉英次氏)

丹後地域では海藻のエゴノリが「うご」と呼ばれています。豊凶の差が激しいエゴノリは、たくさんとれた年に乾燥させて保存しておき、トコロテンのように煮固めて寒天状にして食べます。祝い事や仏事には欠かせない料理です。

丹後地域のうご丹後地域のうご

要庵 西富家 泉英治氏要庵 西富家 泉英治氏

  • ③ 八代オクラ(推薦人:神戸北野ホテル 山口浩シェフ)
​八代おくらは、兵庫県豊岡市八代地区で古くから栽培されてきた在来種のおくらです。伝統野菜で、一般的なオクラの多くが5角形なのに対し、八代オクラは10角ほどあり、肉厚で粘りが強く、ゴツゴツした見た目ながら加熱すると皮はやわらかくなり、味わいも濃厚です。

八代オクラ八代オクラ

神戸北野ホテル 山口浩シェフ神戸北野ホテル 山口浩シェフ

  • ④ 赤花蕎麦 (推薦人:さんぽう西村屋 本店 中安伸一 料理長)
但馬地方で古くから食されてきた赤花在来種のそばです。収穫は10月~11月頃。そばの花は通常白ですが、少し赤が混じって咲きます。赤花そばの特徴は、①そば粉だけで打てる品質 ②粘りが強く良い風味 ③小粒で高い歩留まり ④自然環境が厳しいほど収穫が少なく凝縮した味 にあります。これらを活かすため、つなぎは一切使わないそば粉100%の十割そばで、好評を得ています。

赤花蕎麦赤花蕎麦

 

 
  • ハタハタのしょっつる ※2006年登録済 (推薦人:レフェルヴェソンス 生江シェフ)

すでに2006年に登録済みの食材ですが、今回、改めて未来につないでいきたい食材として推薦いただきました。ハタハタのしょっつるは、秋田県の県魚であるハタハタ100%を熟成させて作るしょっつる(=魚醤)です。乱獲や気候変動の影響により、秋田県の海域でのハタハタの漁獲量は不安定な状態が続いています。過去、禁漁などの措置を経て一度回復したものの、近年再び漁獲量が落ち込んでいます。

 ハタハタのしょっつる ハタハタのしょっつる

 

レフェルヴェソンス 生江シェフレフェルヴェソンス 生江シェフ


【味の箱船登録を実現した連携その②】
登録の背景にあるもうひとつの連携は、徳島大学とのつながりから。日本スローフード協会は、2020年から2021年にかけ、徳島大学の内藤直樹氏(大学院社会産業理工学研究部 准教授)を筆頭に、徳島県三好市東祖谷地域の生産組合や周辺の行政・高校などと連携して、東祖谷の雑穀生産とその食文化が発展しながら次世代に継承されていく方法などについて検討を重ね、その一つの手法として、地域の在来雑穀の味の箱船への登録が進められました。その結果、2018年に世界農業遺産に登録された徳島県西部(にし阿波)から、祖谷の在来雑穀6種が味の箱船に登録されました。
この地域の山間集落では、山の急斜面を利用した農業技術が発展しており、それが「にし阿波の傾斜地農耕システム」として世界農業遺産(GIAHS)に登録されています。20世紀以降に激減したものの、現在も小規模な自家消費用の生産は続けられており、この地域固有の雑穀が栽培され、食文化としても受け継がれています。
引き続き、徳島大学や地域の生産者の方々と連携を深め、食の保全継承を行っていきます。


◎ 徳島大学から推薦された食材(味の箱船)

東祖谷の地域は少子高齢化が進み、住民もだんだんと減少しており、世界農業遺産にも登録されたこの地域特有の急傾斜地を利用した農業も担い手が減少し、雑穀生産そのものが衰退しています。

  • ⑤ ヤツマタ

穂が複数に分かれていて他のシコクビエよりも穂が軽いヤツマタ。穂が複数に分かれている特徴を捉え、祖谷の地域で「ヤツマタ」と呼ばれています。食べるものが少ない時代に、腹持ちが良い食べ物として重宝されていたと言います。ヤツマタ団子にして食べるのが伝統の食し方ですが、かたくてざらざらした食感で、時間が経つとすぐに固くなります。

ヤツマタヤツマタ

  • ⑥ 祖谷のヒエ

地域で代々種継ぎされてきた「ヒエ祖谷系」。ヒエとは、寒さ(ヒエ)に強い特徴をとらえて呼ばれている名称です。黄色〜淡茶色の小粒で軽い実が房を形成しています。かつては、ひえを主食とする家が多かったそうです。ひえと米とトウキビを炊いたものは「サンミトウ」といい、お祝いごとなどに炊かれていました。甘味があって美味しい行事食です。食べるものが少ない時代に、腹持ちが良い食べ物として重宝されていました。

祖谷のヒエ祖谷のヒエ

  • ⑦ 祖谷のタカキビ

細い筋状の穂に、他の雑穀と比べてやや大粒の茶褐色の実がつきます。タカキビとは、背が高い特徴を捉えて呼ばれている名称です。現在は常畑で栽培されていますが、かつては焼畑で栽培されていました。食べるものが少ない時代に、正月などの特別なときの食べものとされていました。

祖谷のタカキビ祖谷のタカキビ

  • ⑧ 祖谷のコキビ

長くたれさがった筋状の穂に、小粒の黄色い実がつきます。コキビとは、黄色い実の色および、タカキビに比べて背が低いことから呼ばれている名称です。正月のお餅に使われます。また、旧暦10月亥の日に、病気予防や子孫繁栄を願って各家がおこなうオイノコサンというお祝いでも、このコキビを使った餅をつくって食べます。

祖谷のコキビ祖谷のコキビ

  • ⑨ 祖谷のアワ

地域で代々種継ぎされてきた「アワ祖谷系」。他の地域のものとは形状や大きさが異なる品種です。小粒の茶色い実が房を形成します。正月のお餅に使われます。また、旧暦10月亥の日に、病気予防や子孫繁栄を願って各家がおこなうオイノコサンというお祝いでも、このアワを使った餅をつくって食べます。

 

祖谷のアワ祖谷のアワ

 

  • ⑩ 祖谷のソバ

地域で代々種継ぎされてきた在来種のソバ。他の地域のものに比べると小ぶりで、丸みの強い形状をしています。白い花が咲く品種と赤い花が咲く品種とがあり、実は茶褐色をしています。徳島では、脱穀したソバの実を粒のまま塩水で煮て干した「そば米」で、そば米雑炊という汁物が食べられています。また、祖谷そばという、麺の太さが太いソバも、この地に特徴的な食です。

祖谷のソバ祖谷のソバ

  • 【祖谷で登録証書の贈呈式を行います】

徳島県三好市祖谷地域より雑穀6種が同時登録となったことについて、登録証書の贈呈式を下記の日程で行います。

日時 11月22日 15:00-
場所 三好市東祖谷総合支所
出席者 東祖谷総合支所長、祖谷雑穀生産組合、徳島大学 内藤准教授、日本スローフード協会(リモート) など
取材をご希望の方はお問い合わせよりご連絡ください。

●味の箱船のこれから
今回登録された『味の箱船』はまだまだほんの一部です。ひとつの食材がなくなるということは、そのまわりにある様々な生態系や文化そのものがなくなるということに繋がります。毎日とても身近にある食を通して、私たちと自然との関係性を考えるきっかけをつくる。味の箱船の活動は日本のみならず、世界で今日も歩み続けていきます。

● 日本スローフード協会とは

日本スローフード協会日本スローフード協会

スローフードとは、私たちの食とそれを取り巻くシステムをより良いものにするための世界的な草の根運動です。郷土に根付いた農産物や文化を失うことを始め、ファストライフ・ファストフードの台頭、食への関心の薄れを憂い、1989 年にイタリアで始まり、現在160カ国以上に広まっており、国際組織でもあります。​「おいしい、きれい、ただしい(Good, Clean, Fair)食べ物をすべての人が享受できるように」をスローガンに、食を真ん中に置いた様々なプロジェクトを数々持っています​。日本スローフード協会は、スローフード国際本部から正式な承認を受けた国内運営機関として2016年3月に発足しました。日本各地に草の根活動をする支部を持ち、団体の国際化・活性化を、産官学民連携しながら行っています。

◎団体概要
一般社団法人 日本スローフード協会 
https://slowfood-nippon.jp/

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