高品質大口径(111)単結晶ダイヤモンド自立基板の量産に目途
ダイヤモンド半導体の実用化に向けたn型ダイヤモンド開発も視野
報道関係者各位
プレスリリース
2025年3月4日
Orbray株式会社
世界最大となる20mm×20mmサイズの双晶のない(111)単結晶ダイヤモンド自立基板の生産技術を開発しました。これにより、ダイヤモンドを用いた量子デバイスやパワーデバイスのさらなる高度化に貢献します。今後は、大型(111)ダイヤモンド基板の2026年内の製品化を目指すとともに、ダイヤモンドデバイスの実用化において鍵となるn型ダイヤモンド自立基板開発にも取り組みます。
ダイヤモンド半導体は、その優れた特性から様々な応用に向けたデバイス開発が進められており、近年では、それに対応するダイヤモンド基板の大型化や高品質化に向けた開発が活発化しています。特に、NV中心を利用したダイヤモンド量子デバイス*1の開発において、高品質な(111)ダイヤモンド基板が注目を集めています。さらに、量子デバイスだけでなく、パワーデバイスなどを含むn型*2を用いた高性能デバイスの実現に(111)ダイヤモンド基板が必要不可欠とされています。しかし、これまで入手可能な(111)ダイヤモンド結晶は3mm角程度であり、また双晶*3と呼ばれる結晶欠陥が発生しやすく、大口径の単結晶ダイヤモンド基板の実現は困難でした。
Orbray株式会社は、独自のステップフロー成長法*4を用いて直径2インチの高品質(100)ダイヤモンド自立基板(商品名:KENZAN Diamond™)を開発したことを、2021年9月9日にプレスリリース*5で発表しました。このダイヤモンド結晶成長技術と自社製の特殊サファイア基板を活用し、(111)単結晶ダイヤモンド自立基板の開発を進めてきました。そしてこの度、双晶のない結晶成長に成功し、20mm角サイズの(111)単結晶ダイヤモンド自立基板の生産技術を開発しました。

今後は、2026年内に(111)ダイヤモンド自立基板の製品化を予定しています。Orbray株式会社は、これにより、ダイヤモンド半導体デバイスの開発加速に貢献します。
<研究成果の公表媒体>
2025年3月15日 応用物理学会春季学術講演会「大口径(111)面ダイヤモンド自立結晶成長」
2025年5月11-15日 International Conference on New Diamond and Nano Carbons 「World-first free-standing (111) heteroepitaxial diamond without twin grown on Sapphire substrate」
<用語説明>
*1 量子デバイス
原子レベルの磁気(スピン)を有するダイヤモンド中のNV中心という結晶欠陥を利用したデバイス。量子コンピュータや磁場、温度、圧力などの高感度センサの開発競争が世界的に加速している。
*2 n型ダイヤモンド
ダイヤモンドを用いたパワーデバイスや量子デバイスの高性能化の鍵となるのが、リンをドーピングした半導体ダイヤモンドです。p型とn型の半導体ダイヤモンドの両方が揃うことで、信頼性の高い半導体デバイスの実現が可能となります。しかし、(100)単結晶ダイヤモンドではリンは取り込まれにくく、さらに補償しにくいため、n型ダイヤモンドの作製は困難です。一方、(111)面を用いることで、n型ダイヤモンドを形成しやすくなります。
*3 双晶
2つ以上の同種の結晶が結晶内のある面を境に,回転対称になったり鏡像対称になったり、原子配列が規則的に変わったもの。(111)ダイヤモンド結晶では180度回転した双晶が発生しやすい。
*4 ステップフロー成長法
基板表面を微傾斜させることで、原子レベルで階段構造にした基板をダイヤモンド成長に用いる結晶成長方法。
*5 プレスリリース
直径2インチ ダイヤモンド基板の量産技術開発に成功 パワー半導体デバイスの企業研究開発に拍車(https://www.orbray.com/magazine/archives/3022)
【Orbray株式会社の概要】
本社住所:東京都足立区新田3丁目8番22号
設 立:1953年8月28日 資 本 金:1億円 従業員数:1000名(2025年1月1日現在)
1939年創業。電気メーターの軸受宝石の製造からスタート。
宝石の加工技術(切る・削る・磨く)をコア技術とし、常に先端技術を融合させ時代を先取りした様々な製品を生み出し、現在は 精密宝石部品、光通信部品、小型DCモーター、医療機器等を製造販売。
【本件に関するお問い合わせ先】
Orbray株式会社 ダイヤモンド事業統括本部 基板営業本部
TEL:03-3919-0101 E-mail:diamond-sales
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