単結晶ダイヤモンドを用いた世界最大級の革新的な放射線検出器、医療と科学に新たな可能性
Orbray株式会社は独自技術である高品質大口径単結晶ダイヤモンドを用いた放射線検出器を開発しました。ダイヤモンドはその優れた物性に加え、放射線に対する高い耐性を持つため、他の材料で作られた放射線検出器では壊れてしまう高線量場でも使用可能です。また、生体組織に等価な材料であるため放射線による診断や治療計画立案時の計測など医療用途に適しています。これらの特徴を活用し、低エネルギーの診断用放射線から高エネルギーの治療用放射線まで高い精度で計測可能であることを実証いたしました。
ダイヤモンドは、高い熱的・化学的安定性、高速応答性など、放射線検出器にとって理想的な物性を持つ半導体材料です。さらに、ダイヤモンドは原子番号が6の炭素からなり、生体組織に等価な*1材料です。これらの特徴から、ダイヤモンドは原子力工学、核融合、高エネルギー物理学、放射線治療分野の放射線検出器として研究されてきました。1990年代までは、天然ダイヤモンドを選別して用いた研究が行われていましたが、2000年代以降は化学気相成長(CVD)によって高純度のダイヤモンド合成技術が確立され、検出器特性が大幅に向上しました。ホモエピタキシャル成長法*2で作製された単結晶CVDダイヤモンドは、感度が高く、分光特性にも優れています。一方で、有感面積を増やすために大面積化して高い感度を得たい場合には、多結晶CVDダイヤモンドが用いられてきましたが、単結晶ダイヤモンドに比べて感度や分光特性に劣ります。

Orbray株式会社は、独自のステップフロー成長法*3を用いて直径2インチの高品質(100)ダイヤモンド自立基板(商品名:KENZAN Diamond™)を開発したことを、2021年9月9日にプレスリリース*4で発表しました。このダイヤモンドを用い、東京都立大学、東北大学、東北工業大学、大阪大学と共同で図1に示すダイヤモンド放射線検出器を開発しました。医療現場で使用される放射線照射装置を用いて評価を行い、放射線検出器感度が高く、分光特性にも優れることを実証しました。また、図2の世界最大級の20mm角の大面積ダイヤモンドを用いた超高感度検出器を試作しました。今後はユーザーの評価を進めながら製品開発を進めます。

2025年4月10-13日に開催される日本医学物理学会学術大会ではダイヤモンドの製造方法や検出器の評価結果の招待講演を予定しています。また、併設の国際医用画像総合展では放射線検出器の実機を展示予定です。
研究成果の公表媒体
2025年4月10 - 13日 第129回日本医学物理学会学術大会
4月12日 「Charge Collection Characteristics of Heteroepitaxial Diamond Solid-State Ionization Chambers in the Diagnostic X-Ray Region」東京都立大学 眞正浄光 教授
4月13日 「The Cutting Edge and Future of Lab-Grown Diamond」Orbray株式会社 金聖祐 執行役員
4月13日 「The promise of large-diameter diamond detectors」東北大学 人見啓太朗 准教授
2025年4月10 - 13日 国際医用画像総合展(ITEM2025)にて放射線検出器の実機を展示
<用語説明>
*1 生体組織に等価な材料
ダイヤモンドが原子番号6の炭素から成り、生体組織の平均原子量(7.2-7.4)と等価であるため、生体の被ばく線量を正確に算出することができる。原子番号14のシリコンや原子番号32のゲルマニウムを用いた検出器が現在は主流。
*2 ホモエピタキシャル成長法
ダイヤモンドを種としてその上にダイヤモンドを成長させる方法。種のサイズ以上に面積を大きくすることは極めて困難である。これに対してダイヤモンド以外の材料を種として、その上にダイヤモンドを成長させる方法をヘテロエピタキシャル成長法といい、原理的には大口径の種を用いることで、大口径ダイヤモンドを得ることができる。
*3 ステップフロー成長法
基板表面を微傾斜させることで、原子レベルで階段構造にした基板をダイヤモンド成長に用いる結晶成長方法。
*4 プレスリリース
直径2インチ ダイヤモンド基板の量産技術開発に成功 パワー半導体デバイスの企業研究開発に拍車(https://www.orbray.com/magazine/archives/3022)
<Orbray株式会社の概要>
本社住所:東京都足立区新田3丁目8番22号
設 立:1953年8月28日 資 本 金:1億円 従業員数:1000名(2025年1月1日現在)
1939年創業。電気メーターの軸受宝石の製造からスタート。
宝石の加工技術(切る・削る・磨く)をコア技術とし、常に先端技術を融合させ時代を先取りした様々な製品を生み出し、現在は 精密宝石部品、光通信部品、小型DCモーター、医療機器等を製造販売。https://www.orbray.com/
【本件に関するお問い合わせ先】
Orbray株式会社 ダイヤモンド事業統括本部 基板営業本部
TEL:03-3919-0101 E-mail:diamond-sales@orbray.com
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