浮世絵を彩った技法を現代に。お米を塗布した紙素材「kome-kami 浮世絵ホワイト」開発に成功 ~鮮やかな発色と脱炭素に貢献~
江戸時代、浮世絵の発色を良くするためにも紙にお米が使われました。この技法に着想を得て、現代の印刷・加工に活かせる素材の開発に挑戦。試行錯誤を重ね、表面に塗工する原料の一部にお米を使うことに成功しました
株式会社ペーパル(本社:奈良市、代表取締役:矢田武博) は、2024年2月に、お米を使った塗工液「コメグロス」を表面に施した「kome-kami 浮世絵ホワイト」の開発に成功。2024年3月より販売します。薬品を減らしCO2削減と資源循環に貢献します。
※kome-kamiとは?
・加工・流通段階や一般家庭で食べられなくなったお米、廃棄される災害用備蓄米などを活用し、機能性を付与した紙
・売上の1%をフードバンクに寄付し、「CO2とフードロスを削減し、困りごとを抱える方をサポートする」ことが目標
・2021年2月にパルプと米を一体化させたkome-kami(ナチュラル色)を開発し発売。2023年11月には、パルプを繋げる接着剤に米糊に代替することにも成功し、さらに環境に優しく進化。今回新しく浮世絵ホワイトを開発しました。
「kome-kami 浮世絵ホワイト」の特徴
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浮世絵の伝統を受け継ぎ、現代の印刷や加工に合った形で再発明した紙素材
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表面に、お米を原料の一部に使った塗工液「コメグロス」を施すことで、CO2削減と資源循環に貢献
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風合いのある表面なのに、印刷面の鮮やかな発色とキラメキを実現
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強度のある厚い規格もラインナップ。冊子だけでなく多様なパッケージに対応
米の力を引き出した技術と、CO2排出削減の仕組み
通常、紙の表面には、強度と発色を向上させるために薬品が塗られています。今回、この一部の薬品をお米に代替した「コメグロス」の塗工に成功。その結果、1ロット(6トン)製造時の排出量を、約104kg(杉の木約12本が1年間に吸収する量)削減させることができました。
また、お米をパルプと一体化させることで約328kg(杉の木約37本が1年間に吸収する量)のCO2を固定化しています。(※1)
kome-kami浮世絵ホワイトとは? 〜名前の由来〜
江戸時代の浮世絵は、鮮やかな色彩で人々を魅了し、世界的な流行となりました。この現象は「ジャポニズム」と呼ばれ、モネやゴッホなど、数多くの芸術家にインスピレーションを与えました。
実は、浮世絵の発色を良くするために、お米が使われることもありました。(※2)「浮世絵ホワイト」は、この伝統を受け継ぎ、現代の印刷や加工に合った形で再発明した素材です。はっきりとした白さと美しい発色を実現したことから、その名を付けました。
日本発の温故知新な素材として、サステナブル時代の「ジャポニズム」を起こし、未来のデザインに新たな表現力と可能性を広げたいという願いを込めています。
量産化までの道のり
「お米を表面に使えないか?」2020年から構想していたアイデア。お米を塗るという前例のない挑戦には多くの課題がありましたが、テストを繰り返すことにより最適な手法を編み出し、量産化に成功しました。
お米とパルプを一体化させた原料を、薄く引き伸ばします。その表面に、お米を原料に使った塗工液「コメグロス」を均一に塗ることで、耐久性や印刷性を付与します。最後にカットして紙が完成します。印刷面に鮮やかな発色と上品なきらめきが見られる、これまでにない紙が誕生しました。
製造の流れ
鮮やかな発色と光沢のある印刷面
kome-kami 浮世絵ホワイトの規格
強度のある厚い規格もラインナップしていますので、冊子だけでなく多様なパッケージに対応しています。
寸法 |
流れ目 |
連量 |
坪量 |
厚み |
---|---|---|---|---|
キク判 |
Y目 |
93.5kg |
157g/㎡ |
0.23mm |
L判 |
Y目 |
215.5kg |
245g/㎡ |
0.35mm |
L判 |
Y目 |
290.5kg |
330g/㎡ |
0.47mm |
L判 |
Y目 |
310kg |
350g/㎡ |
受注生産 |
L判 |
Y目 |
350kg |
400g/㎡ |
受注生産 |
kome-kamiが目指すこと
「CO2とフードロスを削減し、困りごとを抱える方をサポートする」新たな循環を広げる。
kome-kamiはアップサイクルして生み出した価値を、フードバンクに寄付し、食べられるものが必要とされる方に届く循環の仕組みを作りました。
今後さらにお米の力を引き出し、この取り組みを広げたいと考えています。
kome-kamiが解決したい社会課題について
①フードロス問題
現在、日本全体で年間523万トン(※3)にもおよぶ食品ロスが問題となっています。これは、国民が毎日ご飯茶碗1杯分を捨てている量です。フードバンクなどの努力にもかかわらず、全てを救うことは難しいのが現状です。
②子供の貧困問題について
現在、日本の子どもの10人に1人が貧困問題に直面しています。(※4)フードバンクは食品を受け取り、困っている人に配る活動をしています。しかし、団体によっては利用者が増え、資金面の課題が出いてます。その一方、寄付金は増えていません。このままでは、人手も資金も不足しています。このような想いを持って活動される方々を支援したいという想いでkome-kamiを通じて応援する仕組みを創り、広げています。
③食用以外でも求められる「お米の需要促進」
国内のお米の需要は年々減少しています。(※5) 食糧自給率の問題だけでなく、耕作放棄地や休耕田の観点からも、食用だけでなく工業用も含めたお米の需要を増やす必要が高まっています。
株式会社ペーパルについて
1890年(明治23年)に奈良で創業して以来、133年に渡り紙の販売を通じて日本の紙文化を支えています。2008年にFSC®/COCを取得して以来、「紙」という循環可能な素材を社会に提供し、脱プラスチックを視野に入れた素材の啓発活動を行うことで、SDGsへの取り組みを推進しています。SDGsの取り組みをさらに拡大させるため、2020年4月より、フードロス問題の解決を目指すための素材「フードロスペーパー」の開発を行うプロジェクトを行っており、これまで「kome-kami」や「クラフトビールペーパー」、「momi-kami コートボール紙」、「vegi-kami にんじん」を開発しました。また、脱炭素に貢献する紙ゼロCO2ペーパーも開発し、販売しています。
【会社概要】
会社名 :株式会社ペーパル
所在地 :奈良県奈良市池田町76-7
代表者 :矢田 武博
資本金 :3,000万円
創業 :1890年(明治23年)
事業内容 :紙や紙製品の開発・販売
WEBサイト : http://www.pepal.co.jp/
【URL】
kome-kamiサイト:https://foodlosspaper.com/kome-kami
浮世絵ホワイト:https://foodlosspaper.com/kome-kami_ukiyo-e_white
Xアカウント:https://twitter.com/kome_kami_paper
instagramアカウント:https://www.instagram.com/kome_kami_paper/
vegi-kamiにんじんサイト:https://foodlosspaper.com/vegi-kami
ZERO CO2 PAPER:https://zeroco2paper.com/
【参考文献・注釈】
※1 林野庁ウェブサイト
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/20141113_topics2_2.html
算出は、特定非営利活動法人 資源リサイクルシステムセンター監修
※2実践女子大学文芸資料研究所 紙のレンズから見た古典籍―高精細デジタルマイクロスコープの世界―
https://www.jissen.ac.jp/bungei/publications/extra_issue/r28lrh0000001tjt-att/sinpojiumu.pdf
※3 農林水産省ウェブサイト
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html
※4 厚生労働省 2022年国民生活基礎調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/14.pdf
※5 農林水産省ウェブサイト 米をめぐる参考資料
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-82.pdf
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