“孤独な課長”はもう限界?「課長のやりがい実態調査」結果発表

~課長のやりがい、鍵を握るのは“相談できる環境”~

株式会社タバネル

株式会社タバネル(本社:大阪府大阪市、代表取締役:奥田和広)は、従業員100人以上の企業に勤める部下のいる課長(有効回答数435人)に「課長のやりがい実態調査」を実施しました。

調査結果トピックス

  1. 仕事にやりがいを感じていない課長は53%

  2. 上司や他部署に相談できる環境が、課長のやりがいを高める

  3. 仕事の要求、負担が大きくても、相談できる環境が整っていれば課長のやりがいが高まる

  4. 経営者のコミュニケーション、マネジメントの仕組みが課長のやりがいに影響する

  5. 部下の育成、コミュニケーションへの苦手意識を持つ課長に対して、前向きに取り組める環境整備が重要

仕事にやりがいを感じていない課長は53%

「仕事にやりがいを感じている」について、「あてはまる+ややあてはまる」と回答した割合は47%、「どちらとも言えない+あまりあてはまらない+あてはまらない」と回答した割合は53%となりました。

図1課長のやりがい実態

また、「仕事のやりがい」を、「ワーク・エンゲージメント(仕事に対して前向きで、熱心に取り組み、エネルギーを感じながら働いている状態)」の要素とされる「活力」、「熱意」、「没頭」を参考にした6つの設問の平均と比較したところ、相関係数は0.83となり強い相関があることが分かりました。※1

この結果に基づき、本調査では「課長の仕事のやりがい」を「課長のワーク・エンゲージメント」で計測できると考え、以下の3つに分類をします。

  • やりがい 上位 =活力、熱意、没頭の計6問の設問の平均値 上位(n=147)

  • やりがい 中位 =活力、熱意、没頭の計6問の設問の平均値 中位(n=143)

  • やりがい 下位 =活力、熱意、没頭の計6問の設問の平均値 下位(n=145)

この分類に基づき、「課長の仕事のやりがい」と関係する要素について分析しました。

上司や他部署に相談できる環境が、課長のやりがいを高める

仕事のやりがいに影響を与えるとされている3つの要素「仕事の資源」、「個人の資源」、「仕事の要求度」※2について分析しました。

まず、「仕事の資源」とは、仕事をする上で活用できる資源のことで、裁量権、上司のフィードバック、周囲の支援などが挙げられます。課長のやりがい上位と下位の差が大きい項目は、「上司の支援、相談」、「他部署への相談」であることが分かりました。

図2仕事の資源とやりがい

一方で、仕事の裁量権やコントロールについても課長のやりがい上位と下位の差はありますが、上記項目よりは大きくありませんでした。

また、「個人の資源」とは「心理的資本(前向きに行動を起こすことにつながるポジティブな心理的状態)」であり、自己効力感、希望、レジリエンス、楽観性で構成されます。※3

課長のやりがい上位と下位の差が大きい項目は、「自己効力感」、「希望」、「楽観性」であることが分かりました。ただし、「仕事の資源」の上位項目よりは差が小さいです。

図3個人の資源とやりがい

「個人の資源(心理的資本)」の各要素は、上司や周囲の介入などによって開発可能であることが分かっています。相談しやすい環境によってポジティブさ(個人の資源)が高まり、そのことでより前向きに相談できるようになっていくことで、「仕事の資源」が高まり、やりがいを高める効果が高まっていると考えられます。

一方で、相談できる環境がない「孤独な課長」はやりがいが低いだけでなく、相談できないことで前向きさや強い意思が持てない状態に陥り、結果的に仕事への意欲、やりがいが低下し続ける“

「負のスパイラル」に陥る可能性があります。

仕事の要求、負担が大きくても、相談できる環境が整っていれば課長のやりがいが高まる

「仕事の要求度」とは仕事に関する様々な要求、負担、プレッシャーのことです。課長のやりがい上位と下位において、大きな差は見られませんでした。また多くの項目で、やりがい上位、下位の層が高く、中位層が低くなる傾向が見られました。

このことから、「仕事の要求度」の高さが、課長のやりがいに必ずしも直結しないことが分かりました。つまり、高い要求、大きな負担がある中でも、「上司の支援、相談」、「他部署への相談」に代表される「仕事の資源」や「個人の資源」が充実していると高いやりがいを感じていると言えるでしょう。一方で、同様に高い要求、負担がある中で、「仕事の資源」や「個人の資源」が不足していると、やりがいは低下してしまうと言えます。

※回帰分析では、「精神的な負担」はやりがいを下げる要因、「常に高い成果」と「長時間労働」はやりがいを上げる要因として統計的に有意な結果でした。

経営者のコミュニケーション、マネジメントの仕組みが課長のやりがいに影響する

会社のマネジメントの仕組みや取り組みによって、課長のやりがいに影響があることが分かりました。特に課長のやりがい上位と下位の差は、「課の目標への課長の意思」、「経営者のコミュニケーション」、「意思決定のサポート(データ、基準)」などの項目で特に大きいことが分かりました。

図5会社の仕組み、取り組みとやりがい

経営と現場のコミュニケーションが不足し、課長の意思が込められていない上意下達の目標設定やあいまいな意思決定の下では、課長は前向きな意思決定ができず、やりがいを失ってしまいます。

経営者が率先して現場との双方向のコミュニケーションを行い、課長が前向きに課の目標に取り組めるようマネジメントの仕組みを整備することで、「仕事の資源」、「個人の資源」が高まり、その結果として課長のやりがいが高まると言えるでしょう。

部下の育成、コミュニケーションへの苦手意識を持つ課長に対して、前向きに取り組める環境整備が重要

部下の育成や部下とのコミュニケーションは課長の重要な役割の一つですが、苦手意識を持つ課長も少なくありません。

「部下の育成やコミュニケーションに苦手意識」は、やりがい上位層・下位層のどちらにも一定数存在することが分かりました。

一方で、「部下との関係性や協力の度合い」では、やりがい上位層と下位層の間に大きな差が見られました。

図6部下との関係とやりがい

このことから、部下の育成やコミュニケーションに苦手意識があっても、上司や周囲の支援を受けながら、前向きに関係性構築に取り組むことができれば、高いやりがいを感じることができると考えられます。

本調査からの示唆と提言

管理職の負担が増大し、「罰ゲーム化」とも言われるほど、問題視されています。しかし、本調査では 「負担の大きさだけで課長のやりがいが下がるわけではない」ことが明らかになりました。

課長がやりがいを感じ、前向きに働くための鍵を握るのは、「相談できる環境」の有無です。「上司の支援、相談」、「他部署への相談」ができる環境が整っていれば、課長は高い仕事の要求や苦手な部下の育成にも積極的に向き合い、成長していきます。

一方、相談できる環境がない「孤独な課長」は、重い負担と高い要求に耐え続けることで、前向きさや強い意志が持てない状態に陥り、結果的に仕事への意欲、やりがいが低下し続ける「負のスパイラル」に陥る可能性があります。

「孤独な課長」を生まない組織づくりが、企業経営には必要

課長は組織の要であり、彼らが前向きに目標設定や意思決定に挑める環境を整えることは、企業経営において極めて重要な課題です。

「課長のやりがいを高めるための鍵を握るのは、相談できる環境」 です。

経営者は積極的に現場と対話を重ね、課長が相談しやすい組織風土を醸成することが求められます。そのためには、組織全体のマネジメントの仕組みを見直し、課長が負担を抱え込まずに活躍できる環境を整えることが必要です。

具体的には以下の取り組みを進めると良いでしょう。

  • 組織の目的や目標を共有し続ける仕組みを作る

  • 経営と現場が双方向で対話する機会を増やす

  • 仕事の要件を適正に設定する

  • 課長が自ら目標設定や業務の取捨選択を行えるよう、権限を拡大する

  • 課長が業務効率化や部下育成を進めやすいよう、組織として支援を行う

これらの対策は、課長だけでなく、組織全体の柔軟性と適応力を高めるためにも不可欠です。

変化の激しい環境の中で、課長を含む社員全員が活躍できる組織を作ることが、企業の持続的な成長を支える鍵となります。

課長自身も「孤独な課長」にならない行動を

また、課長自身も「重い負担に押しつぶされる」のではなく、「高い要求を自分の意思で受け止め、前向きに取り組む」 という視点を持つことが大切です。

ただし、「すべて自分でやらなければならない」という完璧主義が、結果的に自分を追い込んでしまう要因になります。

完璧を求めすぎるあまり、部下のアウトプットに満足できず、「自分でやったほうが早い」と権限委譲を避けてしまうと、業務が自分に集中し、負担が増加します。 それだけでなく、部下の成長機会を奪い、「上司に信頼されていない」と部下のモチベーションが低下し、チーム全体のパフォーマンスも低迷する可能性があります。

そのため、「すべてを自分で完璧にこなそうとする」のではなく、「何に力を注ぐべきか」を意思をもって決めることが重要です。

具体的には、「やらない仕事を決める」「部下に仕事を任せる」「部下と協力する」「他部署と協力する」ことで、負担を適切に分散させ、集中すべき仕事に注力することが求められます。

また、「自分で解決しなければならない」と完璧主義で抱え込まず、「相談を躊躇せずに行うことが大切です。

そして、相談することは特別なことではなく、仕事の一部であると認識し、上司や他部署と早い段階で対話することが重要です。「まだ整理しきれていないが、意見を聞いてみたい」「途中の段階でもフィードバックをもらいたい」と早めに相談すれば、必要な協力やアドバイスを得られ、結果的にやりがいにつながります。

課の目標に自らの意思を込め、周囲に相談しながら成し遂げることで得られる「達成経験」は、課長の自己効力感を高め、やりがいにつながります。

そのためにも、課長自身が「相談できる環境を自ら作る」という意識を持ち、周囲のサポートを活用しながら、挑戦し続けることが重要です。

調査概要

1. 調査の方法:インターネット調査

2. 調査対象者:35-59歳の課長クラス、従業員100人以上の会社に勤務、部下が1人以上いる

3. 有効回答数:435名(男性363人 女性72人)

4. 調査実施日:2025年3月7日

(注釈)

※1 ワーク・エンゲージメントと活力、熱意、没頭について

ワーク・エンゲージメントとは、仕事に対して前向きで、熱心に取り組み、エネルギーを感じながら働いている状態を指し、仕事のやりがい、働きがいなどを表す概念。「活力」「熱意」「没頭」の3要素で構成される。ワーク・エンゲージメントの対極に「バーンアウト(燃え尽き症候群)」がある。

本調査では、下記の「活力」「熱意」「没頭」の計6問で計測しました。分析に当たって、下記の6問の平均値の上位、中位、下位で課長のやりがいを分類しました。

表1やりがいと活力・熱意・没頭

※2 JD-Rモデルについて

JD-Rモデル(Job Demands-Resource model=仕事の要求度―資源モデル)とは、「仕事の要求度(負担やプレッシャー)」と「資源(仕事の資源と個人の資源)」のバランスによって、ワーク・エンゲージメントが決まるとする理論。「仕事の資源(仕事の裁量、上司の支援、フィードバック、など)」と「個人の資源(心理的資本:自己効力感や楽観性など)」は、それぞれ独立しながらも相互に作用し、ワーク・エンゲージメントを高める。「仕事の要求度」と「資源」のバランスが崩れると、ワーク・エンゲージメントが低下しやすい。ワーク・エンゲージメントが高まることで、個人の成長や組織の業績向上などポジティブな成果につながる。

※3 心理的資本について

心理的資本とは、前向きに行動を起こすことにつながるポジティブな心理的状態のことであり、自己効力感、希望、レジリエンス、楽観性で構成されます。個人のパーソナリティや一時的なモチベーションと異なり、適切な介入、訓練で開発が可能であることが分かっています。

(参考)

厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での『働き方』をめぐる課題について-」、「組織行動論の考え方・使い方-第2版(服部泰宏 著)」、「Q&Aで学ぶワーク・エンゲイジメント(島津明人 編集代表)」

※調査結果の詳細は株式会社タバネルHP(https://tabanel-japan.com/blog-news/news/5449/)で公開しています

現在、当調査結果のリリースを記念して、組織マネジメントの仕組みづくり、管理職の支援、育成について無料相談を実施しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

(お問い合わせ先)
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【会社概要】

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業種
サービス業
本社所在地
大阪府大阪市北区本庄西2-7-7 誠和ビル4階
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代表者名
奥田和広
上場
未上場
資本金
100万円
設立
2018年06月