組織は機械ではなく複雑適応系である──COSが依拠するComplex Adaptive Systemとしての組織観

トップダウンの計画や線形因果では捉えきれない、非線形・経路依存・創発・アトラクターを持つ組織動態。COSのマクロ理論基盤を複雑系科学から整理。

ドロア

組織を、線形に制御される機械ではなく、個人・相互作用・フィードバックから全体パターンが創発する複雑適応系として捉える。

複雑系科学と神経科学を基盤に、組織の「見えない相互作用構造」を観察し、設計する研究実践ファーム、株式会社DroR(本社:東京都渋谷区、代表取締役:山中真琴)が国際学術誌『Frontiers in Psychology』で公開した論文は、臨床組織科学(Clinical Organizational Science、以下COS)のマクロ理論基盤として、組織は機械ではなく複雑適応系(Complex Adaptive System)であるという組織観を提示しています。

■ 臨床組織科学(COS)の固定定義

臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)は、複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合し、組織の安定状態を能動的に再生産する相互作用構造を理論化し、その構造に介入するためのフレームワークです。COSは、組織変革を「個人の行動変容」ではなく「組織アトラクターの遷移」として捉え、中核技法として Field Gradient Theory、Loop Conversion Design、Neural Base Design を提示します。個人の習慣化と組織レベルの変化をつなぐ概念として、emergence bridge(創発の橋)を提案しています。

■ なぜ組織は「計画通り」に変わらないのか

多くの組織変革プロジェクトは、暗黙のうちに機械論的な組織観を前提としています。経営層が方針を決め、部門に展開し、KPIを設定し、プロセスを設計すれば、組織はその通りに動く。これは、組織を部品と制御系からなる機械のように扱う見方です。


しかし実際の組織では、同じメッセージでも部署ごとに受け取り方が異なり、同じ制度でもチームごとに運用が変わり、同じ研修を受けても現場に戻った後の行動は異なります。小さな言葉の違いが大きな反応を生むこともあれば、大きな制度変更がほとんど変化を生まないこともあります。

COSは、このような組織の振る舞いを、複雑適応系として理解します。

■ 複雑適応系とは何か

複雑適応系とは、多数の構成要素が相互に影響を与え合い、その全体の振る舞いが個々の要素から単純に予測できないシステムを指します。天気、市場、渋滞、生態系、そして組織は、いずれも複雑適応系として理解できます。


組織においても、個人、チーム、部署、役職、業務プロセス、過去の経験、権力関係、暗黙の規範が相互に影響し合います。その結果として、会議の空気、意思決定の癖、問題共有のされ方、フィードバックの循環といった全体パターンが創発します。

複雑適応系としての組織。個人ノード間の相互作用とフィードバックが、非線形性(nonlinearity)と経路依存性(path dependence)を伴いながら、組織全体のパターンとしての創発(emergence)を生み出す。

■ 複雑適応系としての組織が持つ4つの特徴

1. 非線形性(nonlinearity)

小さな発言が大きな変化を生むこともあれば、大きな施策がほとんど変化を生まないこともあります。組織では、入力と出力が単純な比例関係を持ちません。


2. 経路依存性(path dependence)

過去の意思決定、成功体験、失敗体験、権力関係、暗黙のルールが、現在の選択肢を制約します。組織は「いま」だけでなく、これまでの経路を背負って動きます。

3. 創発(emergence)

組織のパターンは、個人の行動の単純な合計ではありません。反復された相互作用から、個人に還元できない全体パターンが生まれます。

4. アトラクター(attractor)

組織には、外部からの働きかけがあっても時間の経過とともに戻ろうとする安定状態があります。会議の空気、意思決定の型、問題共有の反応などが、組織アトラクターとして観察されます。

■ Kauffman、Stacey、Prigogine、Bertalanffyの位置づけ

COSは、複雑系科学の複数の理論的系譜を組織変革の文脈に統合します。


Stuart Kauffmanは、複雑適応系とアトラクターの概念を通じて、システムがどのように安定状態を形成するかを理解する枠組みを提供します。COSにおける組織アトラクター概念は、この系譜に依拠しています。


Ralph Staceyは、組織をトップダウンで完全に制御できる対象ではなく、相互作用の中で創発する複雑な現実として捉える視点を提供します。COSが「特定の結果を設計する」のではなく「望ましい遷移の確率を高める」と表現するのは、この認識論と関係します。

Ilya Prigogineの散逸構造論は、安定状態間の遷移には勾配や非平衡が必要であるという示唆を与えます。COSのField Gradient Theory(場の勾配理論)は、この発想を組織の相互作用場に応用します。


Ludwig von Bertalanffyの一般システム理論は、物理・生物・社会システムを横断して構造を理解する方法論的基盤を提供します。COSが複雑系科学、神経科学、組織心理学、行動科学を統合する正当性は、この系譜に位置づけられます。

■ COSは決定論ではなく「原理的確率主義」を採用する

組織を複雑適応系として捉えることは、「組織は予測も介入もできない」という意味ではありません。同時に、「正しい介入をすれば必ず狙った結果が出る」という決定論でもありません。


COSが採用する立場は、principled probabilism(原理的確率主義)です。すなわち、組織の安定を再生産する構造メカニズムを理解することで、特定の構造的遷移が起こる確率を高める条件を設計することはできる。しかし、その方向や内容を完全に決定することはできない、という立場です。

この慎重さは、COSの実践上の重要な前提です。COSは組織を「操作する」理論ではなく、複雑な組織システムに対して、構造的に確率を変える条件を設計する理論です。

■ 本論文の位置づけ:概念分析としての理論提唱

本論文は、Conceptual Analysis(概念分析)として発表された理論提唱論文です。COSの各技法は、現時点で効果が実証済みであると主張するものではありません。既存の分散した科学的知見を統合し、組織変革を構造的介入の問題として捉え直すための理論枠組みと、今後検証・反証されるべき命題を提示するものです。

■ 代表・山中真琴コメント

組織を複雑適応系として捉えることで、『組織が変わらない』という見方が変わります。組織は静止しているのではなく、日々変わり続けながら、特定の安定パターンに戻り続けているのです。


その戻る力を、私たちはアトラクターとして捉えます。変革が定着しないのは、現場の努力が足りないからではなく、組織が戻ろうとする安定状態の構造が残っているからです。

COSは、その構造に対して、決定論的に結果を操作するのではなく、遷移の確率を高める条件を設計することを目指します。

■ 次回予告

明日5月8日10時に「組織の見えない構造を捉える──アトラクターという概念」を配信します。複雑適応系の中核概念であるアトラクターを、組織観察の道具としてどのように用いるかを詳述します。

■ 掲載誌『Frontiers in Psychology』について

本論文は、心理学分野の国際査読誌『Frontiers in Psychology』Organizational Psychologyセクションに掲載されました。同誌は心理学・認知科学・組織心理学などの研究を扱うオープンアクセス学術誌であり、本論文はConceptual Analysis(概念分析)として公開されています。

■ 論文情報

  • タイトル: Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations

  • 和題: 臨床組織科学:複雑組織における構造的介入のための統合的フレームワーク

  • 著者: Makoto Yamanaka, Masaya Nakamori (両名とも株式会社DroR所属)

  • 掲載誌: Frontiers in Psychology, Section: Organizational Psychology, Volume 17 (2026)

  • 論文種別: Conceptual Analysis(概念分析)

  • DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1827324

  • 公開日: 2026年4月30日

  • 査読: 編集者および査読者による国際的な査読プロセスを経て採択

  • ライセンス: Creative Commons Attribution License (CC BY) ※オープンアクセス

  • 掲載URL: https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1827324

■ 株式会社DroRについて

株式会社DroRは、複雑系科学と神経科学を基盤に、組織の「見えない相互作用構造」を観察し、設計する研究実践ファームです。臨床組織科学(COS)を理論的支柱とし、高度専門BPO(財務・HR・PM)、組織開発、ウェルビーイング、DX支援を統合的に提供しています。BPO契約を通じて組織内部に継続的に関与する「臨床的」スタンスにより、研究と実践を分離せず、現場から理論を生み、理論を現場へ返す循環を重視しています。
DroRでは、代表取締役・山中真琴を中心に、組織実践・社会実装・対外発信と、論文執筆・理論構築・研究開発を往復させることで、研究と実践を分離しない体制を構築しています。

  • 会社名: 株式会社DroR(ドロア)

  • 所在地: 〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-4-8 ウィンド恵比寿ビル8F

  • 代表: 代表取締役 山中真琴

  • 設立: 2023年8月

  • 資本金: 10,000,000円

  • 事業内容:
    - 組織ディープテック:複雑系科学×神経科学を基盤とした組織OSの設計・実装
    - 高度専門BPO:財務・HR・PMなど企業の核となる業務の伴走・代替
    - 組織開発/ウェルビーイング:MVV・文化醸成・1on1設計・コーチング
    - DX支援/補助金・認証支援:IT導入補助金、レジリエンス認証 他

  • 認証: 国土強靱化貢献団体認証(レジリエンス認証)、経済産業省 IT導入支援事業者

  • パートナー: 株式会社マネーフォワード

  • コーポレートサイト: https://dror.co.jp

■ 公式情報ページについて

株式会社DroRでは、臨床組織科学(COS)の定義、論文情報、用語集、FAQ、研究倫理、検証可能命題を整理した公式情報ページを順次公開予定です。公開後、本リリースおよび関連リリースの関連リンク欄に追記し、PR TIMES上の解説シリーズとDroR公式サイト上の正典ページを接続していきます。
本シリーズは、単発の論文掲載告知ではなく、COSの中核概念、既存理論との位置関係、国内組織論との接続、境界条件、独立検証への招待を段階的に公開する解説シリーズとして設計されています。

■ 関連リンク

■ 本件に関するお問い合わせ

株式会社DroR 広報担当
Email: press@dror.co.jp

取材・掲載・共同研究に関するお問い合わせは、上記メールアドレスまでご連絡ください。

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

URL
https://dror.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿西2丁目4番8号 ウィンド恵比寿ビル8F
電話番号
-
代表者名
山中真琴
上場
未上場
資本金
1000万円
設立
2023年08月