調査名 :レストランテックに関する意識調査
調査方法:インターネット調査
調査期間:(飲食店)2022年10月17日~19日 (ユーザー)2022年11月8日~12日
調査対象:(飲食店) 全国20~50代の飲食店勤務の男女511名 (ユーザー) 全国20~60代の男女1110名
※本リリースに関する内容をご掲載の際は、「レストランテック協会、ファンくる共同調査」と明記してください。
飲食店
- 無関心層と否定派で6割近くに
DXへの期待感薄く、取り組みまでのハードル山積
- 最もDXが進んでいるのは「会計・決済」
全カテゴリーで50%を下回る結果に
- 効果実感組、「業務効率化」だけでなく「売上向上」に効果
取り組みへのハードルは「コスト」「選定のむずかしさ」「DX人材」
ユーザー
- 飲食DX「進んでいる」「進んでいない」ほぼ同数で約3割
過半数がDXの普及を希望。否定派はわずか2%台
- すべてのサービスカテゴリ―で望まれるDX
否定派はおおむね3%以下、「ロボット」に若干の抵抗感
飲食DXにより実現できる社会
人の創造的価値を高め、食産業全体に連なるイノベーションを
当会で今年から開始した「飲食DX動向調査」の結果から、日本における飲食業界のDX進捗度を10点中2点と評価した。コロナ下、売上激減、深刻な人手不足、コスト高騰など前例のない苦境に陥った飲食業界。これまでその多くを人の手に頼ってきた店舗運営や経営は、この苦境を乗り切るためにテクノロジーの活用を余儀なくされている。デリバリープラットフォームの急拡大、モバイルオーダー、ネット予約や配膳ロボットや調理ロボットなど、飲食店に向けられた様々なサービスが登場し、注目を集めた。だが、調査結果から判明したのは、その関心の高まりも、取組もかなり限定的な動きにとどまっているということだ。DXにより飲食業界が目指しうる実像とは、飲食企業、消費者双方がDXによるメリットを享受することを前提とし、企業においてはそれぞれが掲げる目標や理念を実現させ、消費者においては体験・価値が向上していると実感できる社会である。テクノロジーを活用することで、人にしかできない価値創造に集中し、飲食店が提供できる価値を高め、外食産業から連なる食産業全体に向けてイノベーションを連続的に起こしていける社会である。
ー調査結果詳細 飲食店編ー
- 無関心層と否定派で6割近くに
DXへの期待感薄く、取り組みまでのハードル山積
ここからは飲食店勤務の人たちに尋ねた回答結果を解説していく。まず、飲食業界のDXが必要かどうか尋ねた設問では、「あてはまるものはない」が33.9%といわゆる無関心層が最も多く、3割以上も存在することが明らかになった。さらに「重要ではなく、取り組まなくていい」、「重要だが、必要をあまり感じていない」の否定派を合わせると56.4%と6割近くにまでのぼった。コロナ下でDXに関心が高まっているといわれているが、喫緊の課題としてうけとめているのは「非常に重要で、すぐにでも取り組むべきだ」と回答した16.6%程度に限られるのが実情だ。その背景には、DX化による得られるメリットが曖昧で、期待感が薄いということも見て取れる。DXの取り組み状況を尋ねた設問では、取り組んでいて効果を実感している層は、わずか4.5%にとどまり、無関心層は半数を超えている。DX化によって得られるメリットの理解が進んでいないことに加えて、後述する取り組みまでのハードルの高さも、飲食DXが進んでいない大きな要因になっていると考えられる。
- 飲食DXに対する認識ない層が最多で3割超、「業務効率化」「コスト削減」が上位に
人手不足や原材料費高騰など苦しい状況を反映
飲食業界のDXに対するイメージについて尋ねた設問では、「特にない」と回答した人が35.4%と最多となった。前述の設問に引き続き無関心層の多さを物語っている。次いで、「業務効率化」「コスト削減」が上位を占め、昨今の深刻な人手不足や原材料費高騰でテクノロジーに頼らざるを得ない実情が見え隠れする。当会が提唱する「飲食DX」とは、企業それぞれの目標や理念を実現するために、手段としてのテクノロジーを導入し、人にしかできない業務の創造的価値を高めていくことである。そういった「ビジネスモデルの改善」や「経営改革」など一歩踏み込んだイメージを持っている層は、1割前後とまだまだ少ない。現段階では、ITツール導入による部分的な業務の自動化にとどまっていると思われる。「業務効率化」しなければ、人手不足で店がまわらない、「コスト削減」しなければ、原材料費などの高騰で利益が出なくなる、といった対処療法的な手段にとどまっている企業がほとんどではないだろうか。
- 最もDXが進んでいるのは「会計・決済」
全カテゴリーで50%を下回る結果に
サービスごとにDXの進捗について尋ねた設問では、「かなり進んでいる」「やや進んでいる」を合わせたDXが進んでいると感じているのは、最も多くて48.4%でキャッシュレスサービスを含む「会計・決済」だった。次いで、ネット予約サービスなどを含む「予約管理」が46.6%で2番目につけた。一方、「調理ロボット」や「配膳ロボット」といったロボットによるDXは、もっとも低い順位につけ、進んでいると回答したのは、「配膳ロボット」が18.0%、「調理ロボット」が9.7%にとどまった。飲食店向けのロボットは、導入コストの高さや、プロダクトとして各店舗に合わせた最適化がまだ開発途上段階にあることが要因として考えられる。また、ここでもう1つ注目したいのは、「顧客管理」のDXの進捗だ。進んでいると回答したのは、28.0%にとどまり、いまだ顧客管理のDXが進んでいない状況が浮き彫りになった。コロナ下でほとんどの飲食企業が厳しい経営状況に陥ったことで、広告宣伝費を絞り、顧客管理の強化によりリピーターの獲得・育成の重要性を痛感したはずだ。しかし、顧客管理には、メールアドレス、電話番号などの連絡先情報に加え、注文履歴、利用金額、来店頻度などの顧客データの収集が必要になってくる。コロナ前から顧客データをしっかり蓄積している必要があるため、すぐに取り組んで効果を出すのは難しい領域だ。近年は「モバイルオーダー」や「ネット予約」などを通じて、詳細な顧客データを自動的に収集できるサービスも多数ある。自店舗にあったサービス活用で、ぜひともDXに取り組んでほしい領域だ。
- 効果実感組、「業務効率化」だけでなく「売上向上」に効果
取り組みへのハードルは「コスト」「選定のむずかしさ」「DX人材」
「DXの効果を実感している」と回答した4.5%の人に、どんな効果を実感しているかを尋ねたところ、「業務効率化」に次いで、「売上向上」と回答した人が2番目に多かった。「売上向上」に直接的につながる可能性のあるサービスカテゴリーでは、キャッシュレスなどの会計・決済、SNSなどの販促ツール、モバイルオーダーやネット予約による顧客管理強化といった可能性が考えられる。いずれにしても店舗にあったサービスの選定、導入後のオペレーションへの適切な組み込み、顧客満足度の向上があって、はじめて売上向上、ひいては利益率の向上につながっていく。こういったITツールを適切に活用して効果を出せる人材の確保は喫緊の課題だ。DXにまだ取り組めていないと回答した56.4%の人たちに、そのハードルとなっていることを尋ねると、「コスト」「選定のむずかしさ」「DX人材不足」が上位3位を占めた。コスト面では、店舗規模にあったものをうまく活用すれば、逆にほかのコストを下げ、利益率を上げられる可能性もある。ただ、「DX人材の確保・育成ができない」場合は、自社・自店舗にあったサービス選定も難しくなり、DXに取り組めない状況を打破できず、大きな課題となっている。現段階では、レストランテック企業側からの丁寧なフォローや情報発信が不可欠だろう。
- DX予算、月10万円以下が3割で最多、増額予定は3割強
長期的な目標達成できるITツール導入でDX化を
最後に、1店舗当たりに割いているDX予算について尋ねた設問では、現状の予算が「月10万円以下」と回答したのが約3割で最多。次いで「11~20万円」(14.8%)、「21~30万円」(12.3%)が続き、それ以上はいずれも5%以下だった。これまで見てきた通り、DX化に取り組んでいない、もしくは無関心層が過半数を占めるのに対し、予算額を聞くと、毎月一定額の予算を割り当てていることから、多くは会計・決済、グルメサイトなどの販促費が占めていると推測される。さらに今後の予算増減の予定を聞いたところ、最多は「現状維持」で48.1%だったものの、次いで増額予定が36.5%と多かった。DX予算を増額する際に、必ず企業としての目的を設定してほしい。人手不足の穴を単純に埋めたり、オペレーションを部分的に自動化することは「目的」にはなり得ず、企業を前進させるようなDX化はあり得ない。テクノロジーを活用することで、どんな企業課題を解決したいのか、どんな企業・飲食店になりたいのか、DXに取り組む目的を明確にし、全社で共有したうえでDXに取り組んでほしい。IT化とDXは似て非なるものである。テクノロジーを活用することで、従業員に対しても、顧客に対しても、より高い価値提供が可能になり、企業としての魅力を高めていってほしいと願う。
ー調査結果詳細 ユーザー編ー
- 飲食DX「進んでいる」「進んでいない」ほぼ同数で約3割
過半数がDXの普及を希望。否定派はわずか2%台
ここからはユーザーに対して行った調査結果を解説していく。飲食業界においてDXが進んでいると思うかを問うた設問では、「まったく進んでいない」「あまり進んでいない」を合わせたDXが進んでいないと感じている層が30.4% 、「かなり進んでいる」「やや進んでいる」を合わせた進んでいると感じている層が30.7%とほぼ同じ割合存在していることが分かった。年代別の回答をみると、20代で進んでいないと感じている層が10%近くほかの年代より低いこともわかった。若年層においては飲食店検索から店内やその後の体験にいたるまで、ITツールを自ら積極的に活用し、飲食店のDXを感じる機会が多いことがその理由として考えられる。また、DXが普及してほしいかを尋ねたところ、「まったく普及してほしくない」と「あまり普及してほしくない」を合わせた否定派は、わずか2.6%だった。この回答結果には年代別にたいした差はみられず、ほとんどのユーザーが飲食業界のDXを望んでいることが分かった。
- 飲食DXに「利便性」求めるユーザー
人同士のコミュニケーション不足に懸念
さらに、普及を望む層と望まない層にそれぞれその理由を尋ねたところ、望む層の理由として「便利だから」が50.5%でトップだった。現状においても、DX化することでさらなる利便性向上を求められているということだ。自分好みの飲食店を検索したり、店内での注文や会計時、食事が提供されるまでの時間など改善して顧客満足度を向上させられる余地はまだ多く残されている。一方、DXの普及に対して否定派にその理由を尋ねたところ、トップは「お店との距離が遠くなる」(23.4%)だった。ITツール導入による画一的な自動化で、スタッフとのコミュニケーションが減少し、飲食店ならではの魅力も減じてしまうのではないか、という危惧があることが見えてくる。そのほか、操作性やオペレーションに不安があったり、体験価値が下がるという意見もあった。飲食店のDXは、常に顧客満足度の向上も視野に入れながら行うべきである。
- すべてのサービスカテゴリ―で望まれるDX
否定派はおおむね3%以下、「ロボット」に若干の抵抗感
最後にサービスカテゴリーごとに普及を望むかどうかを尋ねたところ、すべてのサービスカテゴリーでDXを望む層が多数派であることも分かった。「調理」「配膳ロボット」「調理ロボット」を除くサービスカテゴリーでは、「普及してほしくない」と回答した否定派はわずか3%以下にとどまった。最も普及が望まれたのは「デリバリー・テイクアウト」で66.2%、次いで「モバイルオーダー」で59.9%だった。「デリバリー・テイクアウト」においては、コロナ下で急速に普及しており、さらに広い範囲での対応が希望されているのではないかと推察される。「モバイルオーダー」もコロナ下で利用され始めたサービスであるが、大手チェーン店以外で利用できる店舗はまだ少ないといえるだろう。大手チェーン店でモバイルオーダーの注文を体験し、好印象をもち、さらなる普及が望まれているのではないだろうか。DXに対して否定派と無関心層が多数派だった飲食店の回答に対して、ユーザーは先行して自ら体験し、DX化による飲食店での体験向上を望んでいるようだ。
「ファンくる」は、株式会社ROIが運営する、累計 3,000 社の利用実績を持つ国内最大級の顧客満足度向上プラットフォーム。全国 130 万人の会員が実際に店舗やご自宅でモニターとなり、その体験と声を収集して精緻に分析し企業にフィードバックすることで、より顧客の声を反映したサービス構築をサポートしている。「ファンくる」は現在、飲食店だけでなく、美容室、食品・飲料メーカーなどの幅広い事業者が利用している。
コーポレートサイト:
https://www.j-roi.com/
「テクノロジーの力で、飲食業界を幸せにする」をミッションに、テクノロジー企業を中心とした賛助会員の皆様をはじめ、業界企業や団体の皆様と共に、数多くのイベントやコミュニティ運営を通じて、飲食DXの普及活動を行なっております。
2022年10月末時点で、賛助会員31社、協力団体7社のご協力のもと、日本最大のレストランテックコミュニティを形成しています。「テクノロジーの創出は、人の繋がりが源泉である」と私達は考え、「人」を繋ぐことで生み出されたオープンイノベーションが「価値あるアイディア」となり、飲食業界の持続的な発展に繋がると確信しています。