【レポート】日本人は環境問題に対して悲観的で無気力?「自らの行動が環境にポジティブな影響を与える」と回答したのはわずか19% 企業が日本の消費者に伝えるべきサステナビリティのメッセージとは?
政府と企業による消費者への「サステナビリティの啓蒙活動」が急務ー最新版ミンテルサステナビリティレポートよりー
ロンドン本社を含め13か国にオフィスを構える市場調査会社「Mintel Group」の日本法人であり、美容やライフスタイル、食品・飲料分野におけるグローバル調査に強みを持つ、株式会社ミンテルジャパン(東京都千代田区)は、2024年9月3日(火)に『サステナビリティの世界的展望 2024-25』と題した、日本を含む世界10ヵ国の消費者10,000人を対象にした調査レポートを発刊しました。本レポートでは、ミンテルが独自に行ったサステナビリティに関する消費者の意識調査や外部データなどを基に、各企業が取り組むべき「サステナビリティ」の取り組みについてインサイトを提供しています。
また、本年は「食品・飲料」、「家庭用品」、「美容・パーソナルケア」と業界別レポートも発刊し、日用消費財(CPG)業界におけるサステナビリティに焦点を当てています。
レポートの詳細はこちら:https://japan.mintel.com//sustainability-report-prtimes-1024
著者のリチャード・コープは『消費者』に焦点を当ててビジネスを展開し、主に『日用消費財業界のビジネスサポート』を行う市場調査会社であるミンテルが、本レポートを発刊する意義を次のように説明しています。
「私たちの暮らす地球は産業革命以前の時代と比べて1.5度も温暖化し(*1)、深刻な気象現象が人々や経済に大きな損害を与えています。世界保健機関(WHO)はこの問題を『人類が直面する最大の健康リスク』と表現しています(*2)。サステナブルな企業活動の緊急性を認識することは、サプライチェーンの混乱や制裁的な法律を回避するだけでなく、消費者の期待と需要を満たすことで、収益性の高いビジネス戦略につながります。この深刻化する脅威に対応して、消費者や企業は環境や社会的な優先事項を見直し、健康や経済、そして人類全体に利益をもたらす持続可能な解決策を求めています。」
また、リチャードは「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると(*3)、世界の温室効果ガス排出量の60~70%が家庭での消費に由来しています。このデータから、サステナビリティにおける問題と解決策は消費者とBtoC企業にあると言えます。」とも述べました。
*2世界保健機関(WHO)https://www.who.int/news/item/02-11-2023-climate-change-and-noncommunicable-diseases-connections
*3 IPCC: https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg3/
本リリースのトピック
●環境問題に関心がありながらも、悲観的で無気力な日本人:
自然災害を体験しながらも環境保護活動への関心が低く、行動を起こさない理由とは?
●消費者の意識とは対照的に、サステナビリティへの取り組みに熱心な日本企業:
飲料新商品の「エシカル/環境保護」訴求は10ヵ国中トップ、家庭用品におけるリフィル商品の割合も高水準
●各企業が消費者との信頼を築くためにできる活動とは?
消費者に企業のサステナブルな活動を意識してもらうために必要なこと
環境問題に関心がありながらも、悲観的で無気力な日本人:
災害を体験しながらも環境保護活動への関心が低く、行動を起こさない理由とは?
2024年の調査では、日本人は「気候変動否定論者」の割合が他国よりもはるかに低いことが分かりました。「人間の活動が地球温暖化/気候変動に大きな影響を及ぼしているとは思わない」という記述に「同意する」と回答したのはわずか18%で、調査対象10ヵ国の中では最低、また同記述に「同意しない」と回答したのは43%で、中国に次いで2番目に高い数値でした。
さらに、日本は2024年の調査対象の10ヵ国の中では「気候変動/地球温暖化」を関心事のトップ3に挙げた割合が一番高く、57%でした(2021年の51%から6ポイント上昇)。ここ数年、日本列島では台風や異常気象による甚大な被害が続いており、日本人が「気候変動」を身近に捉えていることが伺えます。
しかし、世界では「住んでいる国で起こる異常気象(洪水や熱波など)は、個人的に環境保護活動をするきっかけになる」と回答した人が大多数(58%:2021年比で4ポイント増)であったにもかかわらず、日本では2022年の調査では52%、2024年には47%と低下しています。
また、2021年には世界の55%が地球を救うための活動に関して「今、行動すればまだ間に合う」と信じていましたが、2024年には48%にまで減少しています。この傾向は日本ではさらに顕著に見られ、今回の調査対象国の中で最も低い35%にとどまっています。なお、日本は2021年の調査でも同じく35%という結果が出ており、元々地球を救うための環境問題への取り組みに悲観的であることが分かります。
さらに、自らの行動が「環境にポジティブな影響を与える」と回答した割合が日本では、他の調査対象国と比べると2021年で15%、2024年では19%と著しく低い結果になっています(世界の平均は2021年:51%、2024年:47%)。
今回の調査では、日本では世界と比べても多くの消費者が「気候変動/地球温暖化」に高い関心を持ちながらも、その対応に関しては悲観的でサステナブルな行動を起こすことに無気力であることが浮き彫りになりました。これは、日本ではこういった環境への取り組みが消費者個人個人ではなく、政府や企業などによってなされるべきだと思われているからかもしれません。今後、政府や各企業がサステナブルな取り組みの重要性を消費者に伝え、啓蒙する余地が大いに残されていることを示しています。
消費者意識とは対照的に、サステナビリティへの取り組みに熱心な日本企業:
飲料新商品の「エシカル/環境保護」訴求は10ヵ国中トップ、家庭用品におけるリフィル商品の割合も高水準
消費者の環境保護活動への意識の低さとは対照的に、日本の企業は「サステナビリティ」という観点において様々な努力を行っていることが、業界別レポートの調査で明らかになっています。日本の消費者は企業が提供している、サステナブル訴求の商品を意識せずに購入し、結果的にサステナブルな行動をとっている可能性もあります。
本年の業界別レポートの食品・飲料編では、世界の大半の市場で「エシカル/環境保護を訴求した飲料」の発売が大幅に増加していることに言及しています。2024年*に日本では83%、英国では75%と新商品の大半がこの訴求をしています。特に日本では2019年から7割以上をキープし、調査対象国の中でトップとなっています。
なお、日本の食品分野における同訴求の2024年*の割合は41%でした。飲料に比べると低水準ではありますが、2019年の15%から段階的に上昇していることを考慮すると、意識的にサステナビリティに取り組んでいる日本企業の姿勢がうかがえます。
家庭用品編でも同訴求の推移に触れており、日本では2019年の17%から2024年には31%まで上昇していますが、2024年*にイギリスは85%、ドイツでは84%の新商品がこの「エシカル/環境保護」を訴求しているため、まだ日本企業に取り組める余地があることを示唆しています。一方で世界の他市場ではまだあまり一般的ではない「詰め替え用」の訴求が日本では最も一般的で、2024年*に発売された家庭用品の28%が詰め替え用でした。
著者のリチャードは、本レポートの中で次のように解説しています。
「日本では、ゴミの分別、詰め替え用の購入、レジ袋を買わないといったサステナブルな行動が社会規範として定着しており、平均60~70%の消費者が実施しています。」
美容・パーソナルケア編では、新商品の「エシカル/環境保護」訴求が2019年の15%から2024年*には43%に上昇していることを提示しており、他業界と同様に日本企業の意識が高まっていることがうかがえます。また、世界的な気温の上昇により、消費者ニーズに変化が起きていることにも触れています。異常気象の増加により、冷却効果や消臭効果のある商品などへの関心が高まっていることの例として日本製品からは、花王株式会社の「ビオレ 冷ハンディミスト サボンの香り」をご紹介しています(同セクションでご紹介している海外製品は消臭効果のあるもの)。
体温を下げる効果
『ビオレ 冷ハンディミスト サボンの香り』は、肌の表面温度を瞬時に10℃下げるミスト。暑い夏には欠かせないと謳っている(日本製品)。
画像出典:ミンテル世界新商品データベース(Mintel GNPD)
*2024年は1月~6月のデータ(出典元:ミンテル世界新商品データベース)
各企業が消費者との信頼を築くためにできる活動とは?
消費者に企業のサステナブルな活動を意識してもらうために必要なこと
著者のリチャード・コープは次のように述べています。
「各企業は、消費者がよりサステナブルな選択を行うために、分かりやすい情報や指標を活用することが重要です。消費者の購買決定に影響を与える持続可能性に関するラベルの中で、世界の消費者の30%が選んでいるのは、製品の環境への影響を示す、Nutriscore形式のシンプルな評価基準(1~5段階や赤・黄・緑で色分けなど)です。このような評価基準は、オーガニックやフェアトレードなどの多様で混乱しがちな情報から、消費者を解放し、単一の指標で判断できる利便性を提供します。
さらに、世界の消費者の27%は、製品が人々に与える社会的影響、たとえば『貧困から抜け出した農業従事者の人数』などの情報を重視しています。このことは、気候危機に対して人間的な視点での解決策を求める声が高まっていることを示しています。
気候変動が殺人的な熱波や公害といった公衆衛生の危機へと発展している現在、『個人の健康』が、サステナブルな製品の利点としてより強調されるべきです。各企業のサステナビリティに関するキャンペーンの効果を高めるためには、環境全体への貢献だけでなく、消費者にとっての具体的なメリット、たとえば効率性、コスト削減、個人の健康といった要素にフォーカスすることが求められます。」
特に日本では、企業の行っているサステナブルな取り組みが消費者に意図したようには伝わっていない可能性があるため、こういったメッセージをどのように消費者に伝えていくかは今後も非常に重要になると思われます。
レポートの詳細はこちら:https://japan.mintel.com//sustainability-report-prtimes-1024
■市場調査会社ミンテルの強み
ミンテルに在籍する各分野の専門家であるアナリストは、GNPDに蓄積されたデータや独自の消費者調査、外部データなどを組み合わせて、消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測を行い、レポートを執筆しています。ミンテルは常に「消費者」に焦点を当て各サービスを展開しており、「消費者が何をなぜ求めているかを探るエキスパート(Experts in what consumers want and why.)」をコーポレートスローガンとしています。
■株式会社Mintel Japan(ミンテルジャパン)
ミンテルジャパンは、ロンドンに本社を置く大手市場調査会社「Mintel Group」の日本法人です。専門分野のアナリストと新商品の調査員を世界各国に配置し、独自の消費者調査や新商品情報の収集を行っております。
その独自のデータを基にした消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測に強みがあります。日本では主に「美容・化粧品」「食品・飲料」「ライフスタイル」の3分野に注力し、サービスを展開しています。
≪ご利用条件≫
情報の出典元として【ミンテル『 サステナビリティの世界的展望 2024-25』より】の明記をお願いいたします。
■会社概要
企業名 :株式会社ミンテルジャパン
本社所在地 :東京都千代田区丸の内二丁目4番1号 丸の内ビルディング18階
代表 :リチャード・カー
設立日 :2008年03月
事業概要 :トレンドレポートの販売、市場調査、市場分析等
WEBサイト:https://japan.mintel.com/
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