【レポート】物価高時代の新常識!『節約疲れ』が生んだ消費革命 普段は節約し、本当に欲しいものにはお金を使う「メリハリ消費」が加速 「節約と消費の二刀流」で賢く生き抜く新戦略とは

株式会社ミンテルジャパン

 市場調査会社「Mintel Group」の日本法人である株式会社ミンテルジャパン(東京都千代田区)は、2024年11月に発刊したミンテルジャパンレポート「インフレと消費者 –日本– 2024年」の中で、インフレーション(以下、インフレ)下で消費者は何を重視しているのか、そして消費者は商品・サービスが提供する「価値」をどのように捉えているかについて明らかにしました。
 2021年半ばより世界を席巻した大規模なインフレは緩和傾向にありますが、物価高の継続により、今後も世界各国で生活費の逼迫が続くことが予想されます。本リリースでは、日本における「節約疲れ」による消費行動の変化や、出費に慎重な消費者の心と財布に訴えるビジネスチャンスについて解説します。

※ミンテルは、ロンドン本社を含め13か国にオフィスを構え、美容やライフスタイル、食品・飲料分野における消費者調査に強みを持つ市場調査会社。2021年より日本市場向けにミンテルジャパンレポートを発刊。

※本リリースの調査結果をご利用いただく際には、必ず【ミンテルジャパンレポート『インフレと消費者 –日本– 2024年』より】とご明記ください。

ミンテルジャパンレポートについて詳しくはこちら:https://bit.ly/4gmHxYP

 2月から3月にかけては、寒さのピークや年度末の出費が重なり、多くの家庭が家計管理に苦労する時期です。加えて、長期的に物価高が続く中で、消費者の「節約疲れ」が顕在化しています。

 特に女性を中心に、支出抑制によるストレスが増加傾向にあります。この状況下で、日常生活では可能な限り節約を心がけながらも、自身が価値を感じる商品やサービスには選択的に投資をする「メリハリ消費」が新たなトレンドとして台頭しています。生活必需品では節約を徹底する一方、趣味や娯楽など自身の充実感につながる分野では積極的な消費を行うなど、オン・オフの使い分けがより鮮明になり、節約と消費をうまく使い分ける「節約と消費の二刀流」が流行しています。こうした背景から、商品やサービスの本質的な価値を見極めたうえで購入を決める「吟味消費」の傾向も強まっています。

世界経済は安定化の兆しも物価は高止まり
2022-24年の間で経済的に逼迫している消費者の割合は増加

 2021年半ばより大規模なインフレが世界を席巻しました。背景には、コロナ禍の収束と共に消費需要が急拡大した一方で、世界的なサプライチェーンの乱れやウクライナでの紛争に起因する原油や一部の穀物の不足により、物資の供給不備が発生したことがあります。その結果、2022年には世界各国で過去数十年間で最大のインフレ率を記録しました。エネルギーをはじめとする物価の高騰は、世界中の消費者の生活を圧迫し、日々の消費行動に直接的な影響を及ぼしました。

 一方、2023年以降はインフレ率は緩和傾向へシフトしています。国際通貨基金(IMF)のデータによると、世界の総合インフレ率* は2022年に8.73%でピークを迎えたのを境に、2023年には6.8%、2024年には5.9%、2025年には4.5%と鈍化を続ける見通しです。これは、インフレ率が世界各国におけるターゲット範囲内に近づいており、物価が安定傾向に入っていることを示しています。

*物価全体(食品価格、エネルギー価格を含む)の上昇率を指す

出典:International Monetary Fund(IMF) Global Economic Outlook, April 2024

 このように、世界経済の安定化の兆しは見られますが、物価は依然として高水準にとどまっており、生活費危機は終わっていません。世界銀行(World Bank)によると、2024-25年の一次産品の平均価格は、2015-19年の平均に比べて約40%上昇しているといいます。つまり、物価の高止まりと変動により、今後も世界各国でcost-of-living crisis(生活費危機)が続くことが予想されています。
 実際に、多くの国々で消費者の生活・家計状況の悪化が顕著です。ヨーロッパの国々は、ウクライナでの紛争によるエネルギー価格高騰の影響を大々的に受けました。ミンテルのグローバル消費者調査によると、フランス、ドイツ、イタリアなどの国では、2022-24年の間で経済的に逼迫している消費者の割合が増加しています(グラフ参照)。また、オーストラリアや韓国でも同様の傾向が見られます。一方、アメリカは経済的に逼迫している消費者の割合は比較的低いですが、負債を抱える家庭の多さに鑑みると、金利引き上げの継続により、今後家計状況が悪化する人の増加が懸念されます。

*「きつい:生活はしていけるが、ぎりぎりだ」「困窮している:請求書の支払いができない可能性があったり、ローン返済に困っている」「かなり困窮:ローン返済ができない、または請求書の支払いができない」のいずれかを選んだ回答者

** Mintelグローバル消費者調査より

調査対象: 16歳以上のインターネットユーザー1,000人(英国、イタリア、スペイン、ドイツ、フランス、ブラジル);18歳以上のインターネットユーザー1,000人(米国、オーストラリア、タイ、日本、韓国)

出典: Kantar Profiles/Mintel, 2022年3月,;2023年3月2024年3月

物価高が続く日本では「節約疲れ」
特に女性は節約に対してストレスを感じている傾向に

 日本でも海外諸国と同様にインフレ率は下降の傾向にあり、消費者物価指数(生鮮食品・エネルギーを除く)は2023年にピークの+3.9%に達した後、2024年度と2025年度には+1.9%に落ち着くと予想されています。

 インフレが和らいでいるとはいえ、20年以上も前年比の物価上昇率が0%台から-1%台が継続する緩やかなデフレが続いてきた日本では、未だに物価は高水準にあると言えます。帝国データバンクの調査によると、2024年4月に値上げされる食品は価格を変えずに内容量を減らす「実質値上げ」を含めて2,806品目で、消費者の家計への負担が懸念されます。

 ミンテルが本レポートのために行った「インフレに対する懸念の度合い」調査によると、買い物をする際にインフレを実感している割合は、昨年と同様で約4割。インフレの長期化に備えて節約を心がけている消費者も昨年同様で約3割と、多くの消費者がインフレの影響を日々感じていることがうかがえます。

調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人 ; 18歳以上のインターネットユーザー2,000人

出典: 楽天インサイト/Mintel、2023年3月 ; 2024年5月 

 「消費行動における重視点」調査では、日常の買い物では、昨年同様、安価な商品の選択を重視している消費者が最も多くみられます。一方、昨年に比べて、出費の切り詰めにストレスを感じている人が僅かに増え、必需品でない商品を購入する人がわずかに増加しています。この背景には、長引く物価高による「節約疲れ」が垣間見えます。

*昨年から選択肢を一部変更した
調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人
出典: 楽天インサイト/Mintel、2024年5月

 中でも、女性が節約にストレスを感じる傾向は、昨年よりもさらに強くなっています。ミンテルの調査によると、40-50代の女性は普段の買い物で安価を求めることがストレスになっている様子。節約意識が薄い20代女性の中には、節約がストレスになるためやらない、という人も多いでしょう。必要に迫られて節約を意識している20-30代男性に関しては、節約にストレスを感じる傾向が薄いのは特筆すべき結果です。

調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人 ; 18歳以上のインターネットユーザー2,000人

出典: 楽天インサイト/Mintel、2023年3月 ; 2024年5月

節約疲れの中で生まれる新しい消費トレンド「節約と消費の二刀流」
価値のあるものを見極めて購入する「吟味消費」の台頭

 総務省による家計調査では、2人以上の世帯の消費支出(生活費)の金額は、四半期連続で減少しており、消費者は節約に徹していることがうかがえます。特に20-30代の若年層を中心に、将来的な経済的不安により、消費を控えて貯蓄に勤しむ傾向が強くあります

 一方で、最近ではコスパと類似したキーワードとして「メリハリ消費」が台頭しています。これは、普段は節約して、本当に欲しい物や価値を感じられる物には思い切って出費する消費行動のことを指します。

 デロイトトーマツグループが行なった調査(2024年4月 実施)によると、この数年で変化した価値観として、約30%が「節約とぜいたくのメリハリをつけるようになった」「コストパフォーマンス(コスパ、費用対効果)を重視するようになった」を挙げています。消費の対象となっているカテゴリーや商品に関しては、「Yahoo!ショッピング」が自社サイトの販売実績に基づき発表した「2024年上半期の7大トレンド」によると、「VR(バーチャルリアリティ)」「電動キックボード」を筆頭に、「スマート家電」や「メンズコスメ」などが挙がっています。この結果から、日々の生活や余暇の時間の楽しさ、利便性、充実度を向上するための出費は、積極的に行なわれていることがうかがえます。

調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー1,000人

出典: Kantar profiles/Mintel, 2024年3月

 消費者が商品やサービスに求める価値として、最も多く挙がっているのは、コスパや実用性に直結する「長持ちする・耐久性がある」こと。他には、日々の生活に楽しみ・幸せをもたらしてくれることが多く挙がっており、日常生活における余暇や気晴らしの重要性がうかがえます。また、身体と心の健康を重視する傾向も引き続きみられます。

調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人

出典: 楽天インサイト/Mintel、2024年5月

ビジネスチャンス

 長引くインフレにより、消費者は日々節約を意識しながら暮らす中で、出費に気をつけるストレスをたまには忘れ、楽しみと満足感を覚えるような体験を欲するようになると考えられます。これまで紹介したミンテルの調査データもこの予測を裏付けています。レジャーや気晴らしのための消費以外にも、消費者が払うお金以上の満足感やお得感を感じられるような消費体験を提供することで、出費に慎重な消費者の心と財布に訴えることができるでしょう。

家事の時間を気分転換に充てることで、日常のストレス管理に努める

 ミンテルジャパンレポート「ムードマネジメント・トレンドーストレスコントロールー2024」によると、日本人はストレスケア商品に手軽さと楽しさを求めているが、ストレス解消のためにあまり手間や労力をかけたくないと考えている人が6割に上ります。しかし半数は、感情をコントロールする方法を知りたいなどと考えています。このように劇的に何かを変化させるのではなく、日々の暮らしに馴染む方法を消費者が求めていることを踏まえると、掃除などの日々の生活行動をストレス管理やウェルネス習慣に充てるのも一つの方向性です。

 アメリカの掃除・洗濯用品メーカー「Therapy Clean」は、科学的に立証された気分向上効果を持つ香りを配合した洗剤を提供しています。洗剤に配合されている香りは、香りに対する脳の反応(血流の変化)を機能的MRIで検証した研究に基づいて開発されています。ユーザーは自分の好みの気分・感情に合わせて商品選択を行なうことで、家事の時間を気分転換とメンタルウェルビーイング向上に充てることができます。

出典: Tiktok/therapy_clean

コストパフォーマンスと使用体験の満足度向上を重視したサービス

 リーズナブルな価格を求めるニーズを踏まえた上で、消費者個人のニーズに的確性と柔軟性をもって対応してくれる商品・サービスは消費者の心をつかむことができます。価格以上と感じられるサービスを提供することで、若い世代を中心に厚い支持を誇るのが香りのサブスクリプションサービス「カラリア 香りの定期便」です。

 カラリアは、毎月自分の選んだ香水が届くサブスクサービスで、人気の一番の理由はコストパフォーマンスであると考えられます。また、幅広い種類の香りの中から1本ずつ試用しながら自分の好みに合うものを選べるのも魅力的。特にインフレ下で消費者は消費・買い物に「失敗したくない」と考えているからこそ、このような広く自由な選択は価格以上の価値が感じられると言えます。

出典: COLORIA

■ミンテル ジャパンレポートについて

新製品開発のヒントになるグローバルトレンドと日本におけるその意味について理解を促し、日本市場における商機を探るレポートシリーズ。「美容・化粧品」、「ライフスタイル」、「食品・飲料」分野のレポートをサブスクリプション方式でご提供しています。グローバルと日本、双方の視点でトレンドを捉えることが可能です。

■ミンテル グローバル消費者調査(G36)について

世界36市場において、同じ質問項目の消費者調査を行い、各国の消費者動向を定点観測するものです。お客様が海外進出される際のサポートや各市場における新しいニーズの開拓など幅広い用途でご活用いただけます。

■市場調査会社ミンテルの強み

ミンテルに在籍する各分野の専門家であるアナリストは、 ミンテルグローバル消費者調査のデータや各国で独自に行う消費者調査、外部データなどを組み合わせて、消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測を行い、レポートを執筆しています。ミンテルは常に「消費者」に焦点を当て各サービスを展開しており、「消費者が何をなぜ求めているかを探るエキスパート(Experts in what consumers want and why.)」をコーポレートスローガンとしています。

■株式会社Mintel Japan(ミンテルジャパン)

ミンテルジャパンは、ロンドンに本社を置く大手市場調査会社「Mintel Group」の日本法人です。専門分野のアナリストと新商品の調査員を世界各国に配置し、独自の消費者調査や新商品情報の収集を行っております。

その独自のデータを基にした消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測に強みがあります。日本では主に「美容・化粧品」「食品・飲料」「ライフスタイル」の3分野に注力し、サービスを展開しています。

≪ご利用条件≫

情報の出典元として【ミンテルジャパンレポート 『インフレと消費者 –日本– 2024年』より】の明記をお願いいたします。

■会社概要

企業名   :株式会社ミンテルジャパン

本社所在地 :東京都千代田区丸の内二丁目4番1号 
       丸の内ビルディング18階

代表    :リチャード・カー

設立日   :2008年03月

事業概要  :トレンドレポートの販売、市場調査、市場分析等

WEBサイト:https://japan.mintel.com/ 

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会社概要

株式会社ミンテルジャパン

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URL
https://japan.mintel.com/
業種
サービス業
本社所在地
東京都千代田区丸の内二丁目4番1号 丸の内ビルディング18階
電話番号
03-6228-6595
代表者名
リチャード・カー
上場
未上場
資本金
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設立
2008年03月