OBCのデファクトスタンダードへ!高電力密度の新型SiCモジュールを開発
SiCモールドタイプモジュール「HSDIP20」
要旨
ローム株式会社(本社:京都市)は、xEV(電動車)用オンボードチャージャー(以下、OBC)のPFC(*1)やLLCコンバータ(*2)に最適な4in1及び6in1構成のSiCモールドタイプモジュール「HSDIP20」を開発しました。HSDIP20は、750V耐圧品で6品番(BSTxxx1P4K01)、1,200V耐圧品で7品番(BSTxxx2P4K01)をラインアップ。様々なハイパワーアプリケーションの電力変換回路で求められる基本回路を小型のモジュールパッケージに内蔵しているため、メーカーの設計工数削減とOBC等における電力変換回路の小型化に貢献します。

HSDIP20は、高い放熱性能の絶縁基板を内蔵しているため、大電力動作時でもチップ温度の上昇が抑制されます。実際に、OBCで一般的に採用されるPFC回路(SiC MOSFETを6点使用)において、上面放熱タイプのディスクリート6点と6in1構成のHSDIP20、1点を同条件で比較すると、HSDIP20が約38℃低い温度であることが確認されました(25W動作時)。また、この高い放熱性能により、小型パッケージでありながら大電流対応を実現。上面放熱タイプのディスクリートと比べて3倍以上、同じDIPタイプモジュールと比較しても1.4倍以上となる業界トップクラス(※)の電力密度を達成しています。これにより、上述したPFC回路において、HSDIP20は上面放熱タイプのディスクリートよりも実装面積を約52%削減できるため、OBC等における電力変換回路の小型化に大きく貢献します。

新製品は、2025年4月より当面月産10万個の体制で量産(サンプル価格:15,000円/個:税抜)を開始しており、生産拠点は前工程がローム・アポロ筑後工場(福岡県)及びラピスセミコンダクタ宮崎工場(宮崎県)、後工程がROHM Integrated Systems (Thailand)Co., Ltd.(タイ)です。サンプルについては、担当営業もしくは、ロームWebのお問い合わせ先よりお問い合わせください。
※2025年4月24日現在 ローム調べ
背景
近年、脱炭素社会の実現に向けて自動車の電動化が急速に進んでいます。また、電動車においては、走行距離の延伸や充電速度の向上を目的としてバッテリーの高電圧化が進んでおり、それに伴いOBCやDC-DCにも出力向上が求められています。一方市場からは、これらのアプリケーションに対して小型化や軽量化も求められており、そのカギとなる電力密度向上と、それを阻害する放熱性能改善への技術的ブレイクスルーが求められていました。ロームが開発したHSDIP20は、まさにディスクリート構成では難しくなりつつあったこの技術課題をクリアするものであり、電動パワートレインの高出力化と小型化に貢献します。今後ロームは、小型化と高効率化を両立するSiCモジュールの製品開発を進めるとともに、さらなる小型化や高信頼化が可能となる車載向けSiC IPMの開発にも注力します。
製品ラインアップ

アプリケーション例
PFCやLLCコンバータ等の電力変換回路は、産業機器分野の一次側回路においても多く存在しているため、HSDIP20は、産業機器分野や民生機器分野においてもアプリケーションの小型化に貢献可能です。
車載機器
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オンボードチャージャー(OBC)
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DC-DCコンバータ
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電動コンプレッサ など
産業機器
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EV充電ステーション
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V2Xシステム
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ACサーボ
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サーバー電源
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PVインバータ
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パワーコンディショナ など
サポート情報
ロームは、自社内にモーター試験装置を備えるなど、アプリケーションレベルのサポートに注力しています。HSDIP20の製品を素早く評価・導入していただくための各種サポートコンテンツも準備しており、シミュレーションや熱設計まで含めて、豊富なソリューションで迅速な採用をサポートします。また、ダブルパルステスト用と3相フルブリッジ用に2種類の評価キットを用意しており、実際の回路条件に近い状態で評価することが可能です。
詳細につきましては、担当営業もしくは、ロームWebのお問い合わせ先よりお問い合わせください。

「EcoSiC™(エコエスアイシー)」ブランドについて
EcoSiC™は、パワーデバイス分野においてシリコン(Si)を上回る性能で注目されている、シリコンカーバイド(SiC)素材を採用したデバイスのブランドです。ロームは、ウエハ製造から製造プロセス、パッケージング、品質管理方法に至るまで、SiCの進化に不可欠な技術を独自で開発しています。また、製造工程においても一貫生産体制を採用しており、SiC分野のリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。

EcoSiC™は、ローム株式会社の商標または登録商標です。
用語説明
*1)PFC(Power Factor Correction) / 力率改善
電源回路において入力電力の波形を改善し、力率を向上させる回路。PFC回路を用いることで、入力電力を正弦波(力率=1)に近づけ、電力変換効率を向上する。PFC回路は、ダイオードで整流を行う回路が基本的な構成であるが、OBCにおいては、整流にMOSFETを使用したアクティブブリッジ整流、あるいはブリッジレスPFCが採用されることが多い。これは、MOSFETの方がスイッチング時の損失が低く、特にハイパワーのPFCにおいてはSiC MOSFETを使用することで発熱の低減や電力損失の削減が可能となるためである。
*2)LLCコンバータ
高効率かつ低ノイズの電力変換を実現する共振型DC-DCコンバータの一種。回路内にインダクタ(L)2つとキャパシタ(C)を組み合わせる構成が基本的な構成であることから、LLCコンバータと呼ばれている。共振回路を形成することで、スイッチング損失を大幅に低減できるため、OBCや産業機器向け電源、サーバー電源などの高効率が求められるアプリケーションで使用される。
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