【レポート】米国では調理済み食品の利用経験は8割越え タイパ重視時代に求められる“食の時短”と“心の満足”の二刀流
家族の絆を深める「共創型」調理体験とは
市場調査会社Mintel Groupの日本法人であるミンテルジャパン(東京都千代田区)が発表した「内食・中食・外食のトレンド ‐ 日本 ‐ 2025年」では、共働き世帯の増加やライフスタイルの多様化により、料理や家事に十分な時間を割けない家庭が増えていることから、世界中で食における“利便性・効率性”志向が一層強まっていることを明らかにしました。さらに「満足感」や「人とのつながり」といった心理的・感情的価値へのニーズも、合わせて高まっていることが示されています。
※ミンテル、ロンドン本社を含め13か国にオフィスを構え、美容やライフスタイル、食品・飲料分野における消費者調査に強みを持つ市場調査会社。2021年より日本市場向けにミンテルジャパンレポートを発刊。

アメリカでは消費者の87%が調理済み食品を利用した経験があり、若年層の約4割が以前より利用頻度を増やしています。ミールキット(簡単調理セット)や冷凍食品といった時短食品は忙しい暮らしを支える選択肢として定着し、アメリカにおける調理済み食品の総売上高が197億ドル規模に拡大しています。日本でも同様に、失敗が少なく、時間を短縮できる「お助け食材」の利用が広がっています。その背景として、子育てと仕事を両立する家庭の増加、未婚者・高齢者による単身世帯の増加といった社会構造の変化があります。さらに健康志向の消費者に向けた時短と栄養バランスのよい食事を実現する商品も台頭しており、時短商品市場にも新たな付加価値が求められています。
日々の食事作りを負担に感じている消費者が多い一方で、自宅で食事を作って食べる時間はリラックスできる時間であり、家族とコミュニケーションを取る大切な時間であるとも考えられています。こうした背景を受け、子どもと一緒に「ひと手間」を楽しめる商品や、家族の絆を深める食卓体験など、「効率性」と「心理的・感情的価値」の両立を実現する商品開発が新たなビジネス機会を創出すると分析しています。

※本リリースの調査結果をご利用いただく際には、必ず【ミンテルジャパンレポート『内食・中食・外食のトレンド ‐ 日本 ‐ 2025年』より】とご明記ください。
ミンテルジャパンレポートについて詳しくはこちら:https://www.mintel.com/jp/jr-Jul-2025-1
多忙社会が加速させた世界の調理済み食品トレンド
中食・外食でも高まる“健康志向”ニーズ
世界のどの地域でも忙しいライフスタイルが当たり前となり、利便性や効率化を求める動きが加速しています。食事においても利便性と効率化を求める流れは、テイクアウトや惣菜、調理済み食品の市場拡大につながっています。特にミールキット(簡単調理セット)や冷凍食品は消費者にとって欠かせない選択肢となっており、イギリスではほとんどの消費者が何らかの調理済み食品を利用しています。
ミンテルのレポート「Prepared Meals – US – 2024」によると、2024年のアメリカの調理済み食品の総売上高は197億ドルでした。2023年と比較すると1%減少していますが、2029年までの売上高は11%の成長が予測されています。このように調理済み食品の利用が広がっている一方で、一人の消費者が利用している調理済み食品の種類はかなり限定的であり、まだまだ開拓の余地があると言えるでしょう。また調理済み食品利用者の利用頻度について、「以前より増えた」と回答した人のほうが「以前より減った」と回答した人に比べると多く、特に若い世代では約4割が以前より多く利用しています。

調査対象: 過去3か月間にパッケージ化された調理済み食品または副菜を食べた18歳以上のインターネットユーザー1,731人 出典: Mintel、2024年4月
食事における利便性や効率性への関心が高まると同時に、 コロナ禍を経て世界中で健康意識が向上し、健康志向は一時的なトレンドを超えて大きな潮流となっています。外食においても健康的なメニューオプションのあるレストランが人気を集めており、ベジタリアンやフレキシタリアンをターゲットとした調理済み食品も増加しています。調理済み食品やミールキットの商品展開を見ると、ヴィーガン製品は減少傾向にあるものの、ベジタリアン向けの商品は一定の発売数を維持しています。肉の摂取量は減らしたいが乳製品やチーズなどは諦めたくないというフレキシタリアンの消費者を、ブランドがターゲットにしていることがうかがえます。

出典: Mintel GNPD(世界新商品データベース)、2020年2月-2025年1月
共働き世帯の増加に伴い、変化する従来の食事スタイル
手間をかけずに料理を楽しめる外食ですらも面倒と感じる中食利用者の実態
日本の食品消費市場は内食・中食・外食いずれも上向き基調で推移しており、世界市場と同様に、ライフスタイルの変化と社会環境の影響を受けています。内食については、消費者は節約傾向で購入量が減少しているものの、食料品値上げによる購入額の増加が影響していると見られます。2024年からは米も高騰し始めたため、同様の傾向が続くと予想されます。中食市場は、時短や利便性を重視する共働きや単身世帯の増加により、ニーズが拡大しています。外食市場はコロナ後のインバウンド需要の拡大と価格改定による客単価値アップの影響を受け、2024年の売上高は前年比108.4%と3年連続前年を上回っています。
内食:食材を購入し、家庭で調理して食べること。
中食:内食と外食の中間にあたる食事スタイル。惣菜(そうざい)や弁当などの調理済み食品を購入して自宅や職場などで食べるスタイル。またカフェやレストランのテイクアウト、外食店のデリバリー(ピザ、中華料理、寿司など)もこれに含まれる。
外食:飲食店で食事と食事の場の提供を受けて食事をすること。

内食の小売市場規模=(世帯平均食料支出-世帯平均調理食品支出)×世帯数
出典: 総務省統計局「家計調査」の家計収支と国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(内食);一般社団法人日本惣菜協会「2024年版 惣菜白書 拡大編集版」(中食);一般社団法人日本フードサービス協会(外食)を基にミンテルで作成
子育てをしながら働く女性の増加や、未婚者や高齢者の増加による単身世帯の増加といった社会構造の変化は、従来の食事スタイルに変化をもたらしています。はぐくみプラスの調査によると、働く母親たちが仕事と家事・育児を両立する上で悩んでいることのトップが、「満足に家事(料理や掃除など)ができない」ことでした。またAntwayの調査では、共働き世帯が理想とする食生活において「食事の栄養バランス」を最優先したいと答えています。家事における負担が未だに女性に偏っている現状では、素材を一から調理するような従来の食事スタイルは負担が大きいため、簡単に時間をかけずに調理でき、かつ健康面も意識した冷凍食品や惣菜、デリバリーなどが忙しい共働き層を支えています。今後も共働き世帯の増加が続くと見られることから、こうした需要はさらに拡大していくと考えられます。

出典: 総務省統計局「労働力調査」を基にミンテルで作成
多忙な毎日を送る消費者が多い中で、料理をすることや食事のためにわざわざ外出することを煩わしく感じている消費者の姿も垣間見えます。ミンテルの行なった消費者調査によると「外出するのが面倒」という理由で自宅で料理を作る消費者が全体の約2割を占め、惣菜を利用する消費者でも一定数が「家で料理をしたくないし、外食もしたくないから」という理由を挙げています。

調査対象: 過去3か月に調理済みの食事をとった18歳以上のインターネットユーザー1,265人
出典: Mintel、2024年12月
効率化時代に再注目される“共に食べる”体験
食卓で生まれるつながりが創出する感情価値とは
消費者は毎日の食事の準備を負担に感じていると述べましたが、もちろん負担に感じているだけではありません。自宅で食事を作って食べる時間はリラックスできる時間であり、家族とコミュニケーションを取る大切な時間でもあると考えています。

調査対象: 過去3か月に自宅で一から作った食事を自宅でとった18歳以上のインターネットユーザー1,762人
出典: Mintel、2024年12月
さらに外食においては「誰かとの時間を共有するため」に、より多くのお金を使う傾向があると考えられます。実際に、高価格帯の飲食店を利用する理由として、気分転換やリフレッシュといった自分自身の目的より、友人との時間を楽しむためや、特別な日・お祝いのために利用するケースが多く見られます。

高価格帯とは、ランチの場合一人当たり5,000円以上、ディナーの場合一人当たり10,000円以上
調査対象: 過去3か月に外食をした18歳以上のインターネットユーザー868人
出典: Mintel、2024年12月
ビジネスチャンス
生活者にとって「食」には栄養摂取という生理的役割のほか、満足感や充足感という心理的役割や、人と人とを結びつける社会的役割があります。消費者の感情に寄り添い、心の充足に資すること、つまり共感が、メーカーやサービス提供者への信頼や絆を強め、より長期的な関係性の構築につながります。
そこで、あえて「ひと手間」の共創体験を演出する「共創型」調理体験がビジネスチャンスになるでしょう。
料理は「作ってあげたい」「一緒に楽しみたい」という感情に根ざしています。そんな人にとって、例えば、ただ電子レンジで温めるだけといったような完結型の調理済み食品は少し味気ないと感じるかもしれません。調理済み食品の次の進化形として、調理体験そのものを「共創型」に変える提案は有効でしょう。
具材を完全に調理済みにするのではなく、「調理済みではあるが最後に少し焼く」「混ぜる」「盛りつける」など、あえて軽い作業を子どもと一緒にすることで、家族間で会話が生まれたり、子どもの食への関心を育んだりという効果が期待できます。
また、焼くだけ、炒めるだけの冷凍食品も失敗することはあります。電子レンジで温めるだけの調理済み食品でもムラができたり食品が破裂してしまったりすることもあります。スーパーやモールなどでこういった食品の調理体験イベントを開き、家族みんなでよりおいしく食べるためのコツを習得してもらうと、消費者の購買意欲は高まるでしょう。メーカーにとっても狙ったとおりにおいしく食べてもらえることは継続的な売り上げアップにもつながるはずです。

■ミンテル ジャパンレポートについて
新製品開発のヒントになるグローバルトレンドと日本におけるその意味について理解を促し、日本市場における商機を探るレポートシリーズ。「美容・化粧品」、「ライフスタイル」、「食品・飲料」分野のレポートをサブスクリプション方式でご提供しています。グローバルと日本、双方の視点でトレンドを捉えることが可能です。
■ミンテル 世界新商品データベース(Mintel GNPD)について
世界86ヵ国の日用消費財の新商品を、原料や訴求内容から検索することができるデータベースです。世界各国に配置されたミンテルの調査員が、日々新商品の収集を行うことで、毎月約4万点の商品パッケージ情報をデータベース化し、GNPDを構築しています。商品のあらゆる情報を掲載しているため、様々な視点から世界の製品トレンド分析を行うことが可能です。
■市場調査会社ミンテルの強み
ミンテルに在籍する各分野の専門家であるアナリストは、 ミンテルグローバル消費者調査のデータや各国で独自に行う消費者調査、外部データなどを組み合わせて、消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測を行い、レポートを執筆しています。ミンテルは常に「消費者」に焦点を当て各サービスを展開しており、「消費者が何をなぜ求めているかを探るエキスパート(Experts in what consumers want and why.)」をコーポレートスローガンとしています。
■株式会社Mintel Japan(ミンテルジャパン)
ミンテルジャパンは、ロンドンに本社を置く大手市場調査会社「Mintel Group」の日本法人です。専門分野のアナリストと新商品の調査員を世界各国に配置し、独自の消費者調査や新商品情報の収集を行っております。
その独自のデータを基にした消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測に強みがあります。日本では主に「美容・化粧品」「食品・飲料」「ライフスタイル」の3分野に注力し、サービスを展開しています。
≪ご利用条件≫
情報の出典元として【ミンテルジャパンレポート『内食・中食・外食のトレンド ‐ 日本 ‐ 2025年』】の明記をお願いいたします。
■会社概要
企業名 :株式会社ミンテルジャパン
本社所在地 :東京都千代田区丸の内二丁目4番1号
丸の内ビルディング18階
代表 :リチャード・カー
設立日 :2008年03月
事業概要 :トレンドレポートの販売、市場調査、市場分析等
WEBサイト:https://japan.mintel.com/

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