【働く人の実態調査】部下のパフォーマンスは、上司のコミュニケーション力で決まる<コーチング研究所調査報告>
パフォーマンスや意欲の自己評価が低い部下の約半数は、直属の上司と「当たり障りのないコミュニケーション」
組織変革を実現するエグゼクティブ・コーチング・ファーム、株式会社コーチ・エィ(東証スタンダード9339)の研究開発部門「コーチング研究所」は、組織で働くビジネスパーソンを対象に「上司部下間のコミュニケーション形態と組織のパフォーマンス」に関する調査を実施しました(回答数404名)。調査の結果、上司と部下との間の「共創的なコミュニケーション」が、部下自身のパフォーマンスやモチベーション、自己効力感の向上、さらにはキャリア発展、そして会社全体のイノベーションやパフォーマンスの向上に寄与することが示されました。
調査の背景
VUCAの時代といわれるようになって久しい現代、仕事を進めるために異なる価値観や意見を理解し調整する組織内コミュニケーションの重要性はますます高まり、近年は「対話」に注目が集まっています。特に今の時期は、新年度で新たに部下をもって数か月経ち、部下とのコミュニケーションに悩みを抱え始める方も出はじめる時期ではないでしょうか。今回は、「対話(共創的なコミュニケーション)」が部下と組織全体に実際どのような影響を与えているのかを明らかにしたうえで、「対話」の前提となる信頼関係を築く要素や上司の振る舞いまで踏み込んだ調査を行い、ビジネスパーソンの方向けの対話の参考となる考察を行っています。
サマリー
● 上司との間のコミュニケーション形態によって、部下と組織のパフォーマンスに大きな開き
◎ パフォーマンスや成長意欲への自己評価が低いグループ(以下、否定群)の半数以上が、「直属の上司と当たり障りのないコミュニケーションを取っている」
◎ パフォーマンスや成長意欲への自己評価が高い部下グループ(以下、肯定群)の3人に1人が、直属の上司と「共創的なコミュニケーション」をとっている
◎ 部下個人だけでなく会社全体のパフォーマンスにおいても、肯定・否定群ごとのコミュニケーション形態の割合は、同様の傾向
● 共創的コミュニケーションの鍵は、部下が「上司が自分を理解・支援しようとしてくれている」と感じられる信頼関係と、その安心感に基づく日頃の多様な話題の投げかけ
◎ 共創的なコミュニケーションを取っている層は、より多様なコミュニケーションテーマを選択している
◎ 「直属の上司は仕事における私(部下)の目標を明確にしようとしているか」の質問に対して、共創的なコミュニケーションを取る層の約7割が肯定的だったのに対して、当たり障りのないコミュニケーションをする層は2割以下
上司との間のコミュニケーション形態によって、部下と組織のパフォーマンスに大きな開き
以下の図3-4は部下自身のパフォーマンスと上司との間のコミュニケーション形態の関係を調べたものです。パフォーマンスや成長意欲への自己評価が高いグループ(肯定群)では、3人に1人の割合で「共創的コミュニケーション」を取っていることがわかります。
逆に、パフォーマンスや成長意欲への自己評価が低いグループ(否定群)で5割以上を占めたのが「日ごろ上司と当たり障りのないコミュニケーションを取っている」という回答でした。
このように、上司との間のコミュニケーション形態によって、部下自身のパフォーマンスの認識に大きな開きがあることが分ります。
また、図4-1のように、この「コミュニケーション形態とパフォーマンスの肯定度合い」の関係性は、部下自身だけでなく所属する組織全体のパフォーマンスに関する設問でも同様であることが分りました。
上司との「共創的なコミュニケーション」により、部下は自分の仕事の目的と組織の繋がりを見出し、積極的に業務に取り組む意欲を増す機会となっていることが推察されます。それは、積極的に意見を交換し協力し合う文化の醸成につながり、結果として会社全体のイノベーションやパフォーマンスの向上がもたらされているのではないでしょうか。このことから、共創的なコミュニケーションは、部下と会社全体のパフォーマンス向上につながっていると言えます。
共創的コミュニケーションの鍵は、部下が「上司が自分を理解・支援しようとしてくれている」と感じる信頼関係と、その安心感に基づく日頃の多様な話題の投げかけ
ここまでの結果で、部下と上司の間での共創的なコミュニケーションが重要であり、またそれは、部下と会社のパフォーマンスにも影響があることが分りました。では、共創的なコミュニケーションを実行しようとするとき、重要なことは何でしょうか。
以下の図5は、4つのコミュニケーション形態ごとに、「上司とのコミュニケーションのなかで扱うテーマ」の割合を調べたものです。
共創的なコミュニケーション群は、全体と比較して「自分の業務」「雑談や日常会話」「挨拶」「自分自身」「相手の業務」「相手自身」を選んだ回答者の割合が高くなっています。挨拶や雑談といった、何気ない日常のやりとりにとどまらず、よりお互いを理解するためのテーマを広く選択していることが分ります。
部下が自分の業務について上司に話すことで、上司は部下の業務の進捗状況や直面している課題などを理解した上で部下と関わることができます。上司とのそのような関係性は、部下に安心感と上司への信頼感を与え、お互いの距離を縮めたり、それによってコミュニケーションの頻度が増えたり、テーマが多様化する傾向があると考えられます。
共創的なコミュニケーション群の話題第2位(61%)に「部署の短期的な課題」が挙げられているのも、こうした互いに理解し合う問いを上司が投げかけられていることの表れと言えます。部下についての質問を通して日頃の信頼関係を築いたうえで、部署の短期的な課題を話すと、部下は会社や部署の目標と自分自身の業務を結び付けやすくなり、より自己効力感を感じながら業務に意欲的に取り組むことができるようになるのではないでしょうか。
実際、「上司が仕事における自分の目標を明確にしようとしていると思うか」という問いに対して、共創的なコミュニケーション群は肯定的回答が65%に対して、当たり障りのないコミュニケーション群はわずか17%にとどまるなど、上司の自分への向き合い方に対する印象に大きな開きが見てとれました。
上司が部下を理解・業務状況を把握しようと問いかけることで、共創的コミュニケーションの基礎となる信頼関係が築かれると言えます。
コーチング研究所のコメント
今回の調査から、上司と部下との間の「共創的なコミュニケーション」は、部下と会社全体のパフォーマンス向上に寄与することが分りました。また、共創的なコミュニケーションの基盤は、上司が日頃から部下の目標や考えに寄り添い、個性に合わせたコミュニケーションを取りながら率直なフィードバックや支援を提供し成長を促進する、いわゆる「コーチ的な関わり」によって築かれる日頃の信頼関係であることも明らかになりました。
相手に対して一方的に何かを教えるのではなく、相手の主体的な選択に向けて双方向のコミュニケーションを交わす技術は、今後ますます上司・リーダーに求められるスキルになるのではないでしょうか。
コーチ・エィでは、組織のリーダーへのコーチングを通して、主体化したリーダーからの「対話」による組織改革を支援する「システミック・コーチング™」を提供しています。リーダーの変革と開発を通じて組織内に対話・共創的コミュニケーションを生み出すことで、これからも企業のイノベーションと事業成長を支援していきたいと考えています。
調査について
コーチ・エィのコーチング研究所は、2023年に組織で働くビジネスパーソンに対する調査を実施しました。その調査(回答者数404名)のデータをもとに、上司と部下の間の4つのコミュニケーション形態が組織にどのような価値をもたらしているかについて考察しています。
◎調査期間
2023年9月25日~9月27日
◎調査対象
組織で働くビジネスパーソン644名のうち、役職:経営層と「直属の上司がいない」「直属の上司とコミュニケーションを取っていない」と回答した人を除く404名
◎設問概要
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上司とのコミュニケーション形態に関する設問
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部下自身のパフォーマンスに関する設問
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所属する会社全体のパフォーマンスに関する設問
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上司とのコミュニケーションの中で扱うテーマに関する設問
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上司の関わりの程度に関する設問
調査レポートではさらに、詳細な設問ごとの回答結果や、信頼関係の築かれ方とコミュニケーション形態の関係についても調査・分析を行っており、具体的なコミュニケーションサンプルとして有用です。上司としての信頼関係の築き方、振る舞い、問いかけについてヒントを得たい方は、こちらをご確認ください。
※ 「対話」は、「向かい合って話すこと。相対して話すこと。二人の人が言葉をかわすこと。」(広辞苑第7版)と定義さ
れていますが、人が言葉をかわして他者と関わるコミュニケーションには実に多様な形態が存在します。
今回の調査では、形態を4つにグルーピングし、そのうち「共創的なコミュニケーション」を「対話」と定義しています。
※ いずれも設問に対する回答を、肯定群・中立群・否定群の3グループに分け、各調査ごとのグラフを作成しています。
「部下自身のパフォーマンス」と「上司の関わり方の程度」に関する設問:肯定群(とてもよくあてはまる/あてはまる
/ややあてはまる)・中立群(どちらともいえない)・否定群(ややあてはまらない/あてはまらない/全くあてはまら
ない)
「所属する会社全体のパフォーマンス」に関する設問:肯定群(あてはまる/ややあてはまる)・中立群(どちらとも言
えない)・否定群(あまりあてはまらない・あてはまらない)
コーチング研究所とは
コーチング研究所は、株式会社コーチ・エィの研究開発部門です。コーチ・エィが長年培ってきた「組織開発に向けたコーチング」の豊富な経験とリサーチ実績をもとに、人と組織の状態を可視化し、コーチングの可能性を科学的な視点から読み解く活動をしています。また、コーチング研究所のリサーチデータは新商品の開発や既存のサービスの品質向上に活用されています。
株式会社コーチ・エィ
コーチ・エィは、組織変革を実現するエグゼクティブ・コーチング・ファームです。
人と人との関係性に焦点をあて、システミック・コーチング™というアプローチで、組織全体の変革を支援する対話を通じた組織開発を推進しています。
1997年の創業(当時はコーチ・トゥエンティワン)以来、パイオニアとして日本におけるコーチングの普及・拡大に貢献してきました。クライアントの約8割がプライム市場に上場している大企業です。また、コーチ人材の開発にも力を入れており、今まで1万人以上のコーチを輩出してきました。
2008年にはコーチング研究所というリサーチ専門の部署を構え、世界に先駆けてエビデンス・ベーストのコーチングサービスを提供してきました。豊富なコーチング実績の分析データをもとに、コーチングに関する学術研究や成果の可視化に向けた研究に取り組んでいます。
東京のほか、ニューヨーク、上海、香港、バンコクに拠点を構え、日本企業の海外拠点はもとより、海外現地企業にもコーチングを提供しています。世界的なコーチ養成機関の草分けであるCoach Uを2019年に子会社化するなど、さらなるグローバルネットワークの拡大を図っています。
■本件に関するお問合せ
株式会社コーチ・エィ IR・広報部 広報グループ
こちらのフォームよりお問い合わせください。
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