キャップジェミニのワールド・インシュアランス・レポート2020 : 既存の保険会社はオープンなエコシステムに参加し、パートナーを活用することが不可欠
既存の保険会社はビッグテック参入者からマーケットシェアを守るためには、オープンなエコシステムに参加し、パートナーを活用することが不可欠
消費者は、エージェントやブローカーを介さずに新規参入者と直接取引できるパワーを手にしたように感じられるようになるなど、ビッグテックの保険提供者にとって有利なシフトが消費行動に起こりつつある
【2020年5月14日、パリ発】
キャップジェミニとEfmaは本日、ワールド・インシュアランス・レポート2020をリリースしました。あらゆる年代の消費者が「ミレニアルな心構え」を採り入れ、各種のチャネルを通じて自分で調査した結果をより信用しながら情報を入手し、自ら保険商品を購入している事実が、本レポートで明らかになりました。消費者は、洗練された顧客体験 (CX) を伴い、斬新かつ個別化された提案を求めて、ビッグテック や製品メーカー等の新興プレーヤーに関心を向けています。更に、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、デジタルチャネルへの依存度が一層高まりつつあります。
既存の保険会社は、マーケットにおける存在意義を失わないよう、自社のポートフォリオを見直し、パートナーの力を利用して「創意ある保険会社」となるための行動を起こすべきです。そこには、既存の商品を急速に進化する顧客のニーズや好みに合わせて作り変えていくことも含まれます。
ミレニアルな心構えは年代を超越する
デジタルを採り入れることは、もはや年齢に関係ありません。ウェブやソーシャルメディアにアクセスできる人にとって、オンラインで保険商品を調べて直接購入することが、全ての世代を通じて主流になりました。今回のレポートによると、買い物や請求書の支払い等の取引をオンラインやモバイルで日常的に行っているX世代以上の顧客(*2)の数が倍増しました。具体的には、2018年はX世代以上の回答者の30%に過ぎませんでしたが、2020年には64%まで上昇したのです。新型コロナウイルスによる自粛要請で、この流れは更に強まるでしょう。消費者は年齢やハイテク知識の多寡にかかわらず、日々の用事を済ませるのにデジタルチャネルを使わざるを得ないからです。
保険業界の新たな動き:信用の均衡
ワールド・インシュアランス・レポート2020は、今日の保険の客層を社会行動と買い物の好みに基づいて、4つのカテゴリー(パイオニア(*3)、探究的(*4)、実験的(*5)、フォロワー(*6))に分けて捉えています。今日の顧客は、買う決断をする際に1つのチャネルだけに頼ることはしません。レビュー評を含むオンラインでの調査、家族や友人の口コミ、ブローカーやエージェントの助言等を多かれ少なかれ信用しながら、保険契約の購入判断を自力で行えるパワーを手にしたように感じるのです。これから保険に加入しようとしている顧客は利便性を求めており、デジタルかつアジャイルなビッグテックや製品メーカー等の非従来型プレーヤーは、比類なき顧客体験を提供することで、ますます多くの顧客に「新興プロバイダーに賭けてみよう」とする気を起こさせています。ビッグテック保険に対する関心は急加速しています。ワールド・インシュアランス・レポート2016では、ビッグテックからの保険購入を検討する、とした調査回答者は17%でしたが、その数は2020年までに倍増しました (36%)。
超個別化がカギ
保険会社が顧客にとっての存在意義を失わないよう、超個別化(一人ひとりのニーズや好みに合わせてカスタマイズすること)や経験に裏打ちされたお付き合いを提供することで、契約者とより良いつながりを持つ必要がある点を、本レポートは提言しています。簡単に言えば、保険会社は適切な商品を、適切なタイミングかつ適切なチャネルを通じて提供する必要があります。また、顧客の嗜好はこれまで以上に速いペースで進化しているため、消費者のニーズや要望に従って顧客体験も進化できるよう、リアルタイムのデータ管理を通じて継続的に評価することが必要です。
消費者が保険提供者を調べる際は、柔軟性と容易さを求めます。例えば、50%以上が利用度ベースの保険を求めています。超個別化やお金に見合う価値を提供してくれるからですが、そうしたオプションを用意している保険会社は、全体の半分しかありません。従来の保険会社は、適切なタイミングで消費者と向き合う重要性を理解していながら、そのことに関するアクションを取っていないのです。適切な商品をプッシュすべき時期を予測できるツールや手法を持っていないことがあるため、正しい時に行動を起こす機能が低下しています。結婚・子供の誕生・自宅の購入等、契約者のライフイベント判断に役立つデジタルツールをエージェントに提供している保険会社は、全体の35%に留まっています。実際、外部データのトラッキングが役に立つと回答したのは4分の1です。
保険契約者のデータは、さまざまなソースを利用して(データプライバシー規制の範囲内で)取得できます。保険会社は、オープンAPIエコシステムへの参加を通じ、消費者が新しい商品を必要とするタイミングについての理解を深められる、と本レポートは示唆しています。
また、消費者は保険契約の情報収集に比較ウェブサイトや企業ウェブサイトを利用していますが、「自社のウェブサイトが契約情報の共有に有用性がある」と考える保険会社は30%未満であり、「比較ウェブサイトが顧客の教育に役立つ」と答えたのはわずか37%です。保険会社は、顧客がボタンをクリックすれば意思決定できるようなオンラインチャネルへの投資を検討すべきでしょう。シームレスかつオムニチャネルのエンゲージオプションがないと、従来の保険会社は敗退の危機に直面することになります。保険契約のサービス提供が全チャネルを通じてシームレスになされない場合、75%の顧客が保険会社を乗り換えるものと思われます。
既存プレーヤーは「独創的な保険会社」へと変容しなければならない
保険会社は、フリーサイズの商品から契約者に特有の個人的な嗜好に合わせた体験を提供することへ、迅速に進化すべきです。ビッグテックが音声アシスタント、ウェアラブル等のIoTデバイス、双方向型のチャットボットを介してリアルタイムデータを収集している一方で、リアルタイムIoTデバイスからデータをキャプチャしている保険会社は38%、自然言語処理ベースのサポートシステム(例:チャットボット)を介してデータマイニングを行っているのは33%に留まっています。
本レポートは、「独創的な保険会社」、すなわち顧客のニーズや好みを理解し、入手できるエコシステムのデータを活用して、個別化されたタイムリーな商品を実際に提供できる既存プレーヤーこそが、今の新しい現実下で勝ち組になれる、と結論付けています。
キャップジェミニの金融サービス戦略ビジネスユニットCEOで、グループ常務理事会メンバーでもあるアニルバン・ボーズは、次のように述べています:「競争が激しく変化の速い今日の環境は、新型コロナウイルスの感染拡大によって後戻りできない変化を迎えています。世代を超えたデジタルの普及と、前例のないパンデミックの影響に目を向ければ、既存の保険会社は運営モデルを変革すべき十分な理由をそこに見出すでしょう。最終的な目標は、超個別な体験を提供して、ビッグテックと真っ向勝負できるような保険会社へ脱皮することです。消費者が保険会社に留まることを選ぶには相応の理由があるべきで、超個別化はその理由になれるでしょう。」
EfmaのCEOであるジョン・バリー氏は、次のように述べています:「戦略を心得たフロントランナーの保険会社は、成熟したインシュアテック企業との提携・協業を強化しつつ、革新的なソリューションを開発しています。将来勝ち組となるための決定的な差別要因は、これまでにも増してまさに今こそ、顧客体験だからです。」
レポート手法
ワールド・インシュアランス・レポート2020は、2020Global Insurance Voice of the Customer Survey、および2020 Global Insurance Executive Interviews という、2つの主要データソースからの洞察に基づいています。このリサーチは、下記32のマーケットから得られた知見をカバーしています:アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、コロンビア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、香港、ハンガリー、インド、イタリア、日本、マレーシア、メキシコ、モロッコ、オランダ、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、ポルトガル、サウジアラビア、シンガポール、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国。
2020 Global Insurance Voice of the Customer Survey
2020年1月から2月にPhronesis社と共同で実施した包括的なVoice of the Customer Surveyでは、22か国の8,000人を超える保険顧客から回答を得ました。この調査を通じて、顧客の一般的な行動や嗜好、それが保険に対する彼らの態度にどう影響するか、について深い洞察を得ようと試みました。調査では、ライフスタイル、教育、仕事、社会的行動、ファイナンス行動、買い物の好み、テクノロジーとの親和性等、パーソナリティーの各次元について顧客に質問しました。また、保険商品の購入行動と、彼らの商品・チャネル・タイミングの嗜好についても伺いました。更に、今の保険会社からの乗り換え判断に影響を及ぼし得る要因、新しい保険モデルを採り入れることへの興味、新興保険会社から保険商品を購入する意欲等にかかわる質問を尋ねました。
2020 Global Insurance Executive Interviews
本レポートには、29のマーケットにおける主な保険会社の上級幹部150人超のインタビューから得られた知見も含まれます。これらのマーケットは、米州 (北米・ラテンアメリカ), EMEA (ヨーロッパ・中東・アフリカ), アジア太平洋 (日本を含む) 3つの地域の傾向を全体として表しています。
ワールド・インシュアランス・レポート2020の詳細は、http://www.worldinsurancereport.com/ を参照してください。
キャップジェミニについて
キャップジェミニは、コンサルティング、デジタルトランスフォーメーション、テクノロジー&エンジニアリングサービスのグローバルリーダーです。キャップジェミニ・グループはイノベーションの最前線に立ち、進化を続けるクラウド、デジタル及び各種プラットフォーム分野で、顧客のあらゆるビジネス機会に対応致します。キャップジェミニは、50年以上にわたり蓄積してきた優れた実績と業界固有の専門知識を基に、戦略から運用まで、弊社の一連のサービスを通じて、顧客企業が目指すビジネスビジョンの実現をご支援致します。キャップジェミニの信念は、「テクノロジーに関わるビジネス価値は人を通じて具現化される」ことであり、この信念こそが弊社の原動力となっています。キャップジェミニは、世界約50ケ国27万人に及ぶチームメンバーで構成される多文化企業です。Altranを含むグループ全体の2019年度売上は、170億ユーロです。
キャップジェミニ株式会社については、以下をご覧ください。
https://www.capgemini.com/jp-jp/
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Twitter: https://twitter.com/CapgeminiJapan
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Efmaについて
1971年に銀行および保険会社によって設立されたグローバルな非営利団体であるEfmaは、意思決定者間のネットワーキングを促進します。そして、銀行や保険会社がイノベーションを促進し、組織変革を推進するための正しい決定を下すのに役立つ、質の高い見識を提供します。 130カ国の3,300以上のブランドがEfmaのメンバーです。
本部:パリ オフィス:ロンドン、ブリュッセル、アンドラ、ストックホルム、ブラチスラバ、ドバイ、ミラノ、モントリオール、イスタンブール、北京、東京、シンガポール
参考:www.efma.com
- ビッグテックとは、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、アリババ等、巨大かつ多国籍のテクノロジー企業をいう。
- X世代以上の顧客とは、1980年以前に生まれた人をいう。
- パイオニアは、商品の購入に先立ってオンラインのレビュー評を通して積極的に情報を探し、友人や家族に相談します。新しい保険商品のオファーを歓迎し、購入後に高品質なサポートを体感できるのであれば、より多くの支出も厭わない意向を持っています。
- 探求的な顧客は、ソーシャルメディアに詳しく、オンラインのレビュー評を求めるものの、新商品や有料の追加サービスは、そうすることに価値を見いだせる場合にのみ、トライする用意があります。
- 実験的な顧客は、ソーシャルメディアであまり活動せず、家族や友人の助言にもそれほど興味を持ちませんが、新商品にトライする用意はあります。
- フォロワーは、自ら進んで商品やサービスの情報にアクセスする・オンラインのレビュー評を探す・家族や友人にアドバイスを求める・新商品にトライする・有料サービスにお金を追加で払う 等のアクションは行いません。
- 一部の自動車メーカー等の製造業者は、自社商品にオプションとして保険を追加しています。
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