大麦β-グルカンおよびアラビノキシラン抽出物の単回投与は腸内発酵を介してセカンドミール時の血糖値を低下させる

-科学雑誌『Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry』掲載-

株式会社はくばく

『主食改革』を提唱する株式会社はくばく(本社:山梨県中央市、代表取締役社長:長澤 重俊)は、大妻女子大学家政学部青江誠一郎教授との共同研究により、動物モデルで初めて大麦由来のβ-グルカン、アラビノキシランの単回摂取によるセカンドミール時の血糖値低下作用について明らかにしました。
なお、本研究成果は科学雑誌『Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry』(Biosci Biotechnol Biochem. 2022 Oct 28; zbac171) に掲載されました。

■研究の背景と目的

 大麦は水溶性食物繊維であるβ-グルカン(1)が豊富で、食後高血糖を抑制する食品(中等度GI食品)として知られている穀物です。さらに大麦を摂取すると、次の食事で大麦を食べていなくても血糖値応答が改善することが知られています。これは「セカンドミール効果」と呼ばれています。

近年、大麦のセカンドミール効果のメカニズムは腸内での発酵が関係していると推定されています。β-グルカンは数時間かけて大腸に到達すると、腸内細菌に発酵され、短鎖脂肪酸(SCFA)(2)が産生されます。SCFAはインスリン分泌を誘導するGLP-1(3)の分泌を増加させ、食後高血糖を抑制します。しかし、これまでの研究はヒトを対象としたものであり、大麦を摂取した際のセカンドミールにおける腸管内でのSCFA濃度やGLP-1分泌濃度については分かっていません。また大麦にはβ-グルカンの他にアラビノキシラン(4)も含まれています。アラビノキシランは腸内細菌によって発酵する食物繊維ですが、大麦由来のアラビノキシランについてはほとんど報告がありません。そのため、β-グルカンとアラビノキシランのどちらがセカンドミール効果に寄与しているかは不明でした。

そこで、本研究では、マウスに大麦由来のβ-グルカン、アラビノキシランを単回投与させ、セカンドミール時の血糖値の変化を調査しました。さらに腸内代謝産物や遺伝子発現量を調べ、大麦の摂取によるセカンドミール効果のメカニズムを明らかにすることを目的としました。


■研究方法

実験1: 4週齢の雄のC57BL/6Jマウスに大麦由来のβ-グルカン抽出物(BG)、あるいはアラビノキシラン抽出物(AX)を2%含む20%の澱粉溶液を単回投与し、0、15、30、60、120分後の血糖値を測定しました。その後、6時間後(セカンドミール)に、20%澱粉溶液を再度投与し、血糖値の測定を行いました。


実験2: 実験1と同様のマウスに大麦由来BG、AXを2%含む20%の澱粉溶液を単回投与しました。6時間後に20%澱粉溶液を再度投与し、30分後に解剖を行い、マウスの回腸、盲腸内容物のSCFA濃度や繊維残存物をGC/MSで測定をしました。

また、回腸、盲腸、結腸組織からRNAを採取し、GLP-1分泌に関わる遺伝子のmRNA発現量の定量を行いました。


■研究結果

①大麦β-グルカンとアラビノキシランを摂取するとセカンドミール時の血糖値が低下する(実験1)。

BG及びAX単回投与後のセカンドミール時の30分後の血糖値は、AX 群が C群に比べ有意に低く、BG群も低下する傾向が見られました。AUC(5)はBG群およびAX群共にC群と比較して有意に低下しました。

 p < 0.05 * p < 0.01

図1.大麦β-グルカンおよびアラビノキシラン抽出物摂取後のセカンドミール時の血糖値変化


②GLP-1濃度、SCFA濃度はBG、AXの単回投与で増加する(実験2)。

 セカンドミール時の門脈血の総GLP-1濃度は、BG群はC群に比べ有意に増加し、AX群でも増加傾向になりました。また盲腸内容物中の酢酸濃度はAXで有意に増加し、酪酸濃度はBG群で増加傾向を示しました。加えて回腸内容物において、C群では飼料由来の未消化のグルコースが残存していましたが、BG群ではグルコースが増加し、未消化のβ-グルカンの分解物によるものと考えられました。AX群ではアラビノキシラン画分であるアラビノースとキシロースが確認されました。盲腸内容物では、BG群でのみグルコースが確認されたことから、β-グルカンの一部は未消化のまま盲腸に到達することが示唆されました。

 p < 0.05 * p < 0.01

図2.セカンドミール時のGLP-1濃度、残存する単糖濃度の変化


③GLP-1分泌、機能に関わる遺伝子発現量はBG群とAX群で共に増加する(実験2)。

次にGLP-1分泌、機能に関わる遺伝子を測定しました。AX群では、回腸におけるNgn3(6)のmRNA発現量がC群に比べ有意に増加しました。同様にBG 群でもNgn3 の発現量が有意に増加しました。盲腸ではNgn3のmRNA発現量がAX群で有意に増加し、Gpr43はBG群で増加しました。大腸では、Ngn3のmRNA発現量がBG群で有意に増加しました。

 p < 0.05 * p < 0.01

図3. セカンドミール時の腸内でのGLP-1分泌、機能に関わるmRNA発現量の変化


■今後の展望

この研究により、動物モデルで初めて大麦由来のβ-グルカン、アラビノキシランの単回摂取によるセカンドミール効果が初めて証明されました。また、セカンドミール時の血糖値上昇抑制効果のメカニズムとして、腸管での水溶性食物繊維の発酵に伴うSCFAの産生を介したGLP-1の分泌の増加が寄与している事が示唆されました。


■用語解説

(1)β-グルカン:グルコースがβ-グリコシド結合でつながった多糖類で、穀類や菌類、キノコ類に多く含まれる。

(2)短鎖脂肪酸(SCFA):炭素数6未満の脂肪酸で、生体内では多くの場合腸内細菌の発酵によって生成され、腸内細胞のエネルギー源となる。最近では受容体を介して全身の臓器で生体調整に関与することが報告されている。

(3)GLP-1:消化管ホルモンの1種で、小腸下部のL細胞から分泌される。GLP-1が分泌されると、血糖値の上昇に依存してインスリン分泌が亢進し、血糖値が調節される。

(4)アラビノキシラン:ヘミセルロースの1種で、一般的には不溶性だが、調理加工や腸内細菌によって水溶化する。

(5)曲線化面積(AUC):食負荷試験の血糖値の変動曲線とX軸の間の面積。食負荷試験での血糖値の変化を表す指標。

(6)Ngn3:腸内分泌(GLP-1分泌)細胞の生成に関与する遺伝子


  • はくばくについて

当社の社名「はくばく」は白い大麦という意味です。創業社長である祖父が「もっと麦ご飯を喜んで食べてもらいたい。」という思いから、大麦を一粒一粒半分に割って黒い筋を目立たなくした製品を開発しました。

以来、我々はくばくは穀物とともに歩み、精麦の他、雑穀、和麺、麦茶、穀粉、米を事業として手がけるようになりました。

人類を太古から支えてきた大切な「穀物」を、現代の食卓へもっと多く登場させ、もっと楽しんで食べてもらうこと。それは家族の笑顔が増えること。またそれは家族が健康になることだと考えています。これを実現するために、我々はくばくは主食であるごはんの「質」を見直す「主食改革」を、社員一丸となって本気で目指して参ります。


 社名    : 株式会社はくばく
 所在地   : 〒409-3843 山梨県中央市西花輪4629
 代表    : 代表取締役社長 長澤 重俊
 設立    : 昭和16年4月15日
 資本金   : 98,000,000円
 事業内容: 食品製造および販売
 URL : https://www.hakubaku.co.jp/

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会社概要

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業種
製造業
本社所在地
山梨県中央市西花輪4629
電話番号
055-274-8989
代表者名
長澤重俊
上場
未上場
資本金
9800万円
設立
1941年04月