少子化時代、保育の「受け皿」をどう守るか保育人材確保と運営体制整備が問われる2026年へ
〜明日香、「保育業界に関する2025年総括と2026年展望レポート」を発表〜
株式会社明日香(本社:東京都文京区、代表取締役:萩野 吉俗、https://www.g-asuka.co.jp/)が運営する子どもと未来、そしてすべての人がConnect(繋がり、結びつき)する保育研究プロジェクト「子ねくとラボ(https://konnect-labo.jp/)」は、「保育業界に関する2025年総括と2026年展望レポート」を発表いたしました。

◾️日本の保育環境の現状
日本の保育環境は、大きな転換点を迎えています。
こども家庭庁の発表によると、2025年4月1日時点の待機児童数は2,254人で、前年から313人減少しました※1。しかし、保育所等の利用定員は303万人、利用児童数は268万人と、ともに前年から減少しています※1。定員充足率は88.4%となり、需給バランスは変化しつつあります※1。
この数字が示すのは、「保育施設を増やして待機児童を減らす」という局面から、「子どもが減る時代に、必要なサービスを必要な場所で提供する」という局面への移行です。
一方で、保育士の有効求人倍率は2025年4月時点で2.58倍と、全職種平均(1.18倍)を大きく上回っています※2。人材確保の難しさは、引き続き業界全体の課題として残っています。
◾️2025年総括:子育て支援ニーズの多様化
2025年は、家庭の働き方や生活の形が多様化していることが、改めて浮き彫りになった年でした。
保育園への通園だけでなく、「一時的に預けたい」「子育ての相談先がほしい」「地域でつながりたい」といった支援ニーズが広がっています。
当社が実施した調査(0〜15歳の子どもを持つ保護者111名対象)では、子どもの「幸福」について相談できる人や場所が「いない/ない」と答えた保護者が20.7%でした※7。
家庭の中だけで抱え込みやすいテーマだからこそ、相談先や支援拠点の整備が、これまで以上に問われています。
◾️2025年総括:人材確保の構造的課題
保育の運営は人で成り立っています。その前提のもとで、人材確保の難しさは2025年も強い課題として残りました。
養成校の減少と学生の進路選択
当社の独自調査(保育系学科の学生84名対象)では、85.7%が「卒業後、保育・幼児教育関連の仕事に就きたい」と回答しました※5。
しかし、養成課程の廃止・停止を知ることで、57.7%が「就職先確保への不安が増した」、30.8%が「他の職業への興味が高まった」と回答しています※5。
「なりたい」という気持ちがあっても、将来像や働く環境が見えにくいと、迷いが生まれやすいことが示唆されます。
現場の配置と処遇への課題認識
現役保育士108名を対象とした調査では、勤務先の「配置数」または「処遇」が不十分と感じる人が70.4%でした※6。
配置基準見直しへの期待は63.0%に達しており、「保育士の精神的・身体的負担軽減」や「子ども一人ひとりに十分な目が行き届く」ことへの期待が寄せられています※6。
保育の質を守るためにも、現場の負担を減らし、働き続けられる環境を整える取り組みが欠かせません。
2025年も、不適切保育に関する報道は続きました。個々の事案の背景は異なりますが、人員に余裕がないことや、職員同士で保育を振り返る時間が取りにくいことが、ミスや不適切な対応につながるおそれがあります。
不適切保育をなくしていくには、保育者一人ひとりの倫理観と専門性に加えて、安心して働ける勤務体制や、園全体で子どもを見守り合う仕組みを整えることが重要だと考えています。
◾️2026年展望:「こども誰でも通園制度」と受け入れ体制
2026年度から、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる「こども誰でも通園制度」が、全国の自治体で本格実施される予定です※3。
地域の子育て支援の入口が広がる一方で、現場の受け入れ体制が追いつかなければ、制度が意図した支援の実感が届きにくくなります。
2026年は以下の点が特に重要になると考えています。
ポイント①:安全・安心の担保と人員計画
一時預かり等の利用が増えることで、柔軟性のある運営が行える人員計画の重要性が高まります。安全・安心を担保しながら、柔軟な受け入れを実現するための体制づくりが求められます。
ポイント②:運用ルールの整備
予約・定員管理・他機関との連携など、一時預かり等の運用ルール整備が必要です。現場の混乱を防ぎ、保護者にとっても利用しやすい仕組みづくりが課題となります。
ポイント③:情報提供と相談体制
保護者への情報提供と、相談を受け止める体制づくりも重要です。制度の存在を知らせるだけでなく、個々の家庭の状況に応じた案内ができる体制が求められます。
◾️2026年展望:園と職場の「見える化」
制度面でも、施設・事業者の運営状況の情報が社会に共有されやすくなる流れがあります。
子ども・子育て支援法改正により「継続的な経営情報の見える化」が2025年4月1日に施行され、「ここdeサーチ」を通じた報告・公表等の仕組み整備が進められています※4。
保護者にとっても、働く人にとっても、園を選ぶ判断材料が重要になります。2026年は、園の魅力や働きやすさを、誤解が生じにくい形で説明し、必要な情報を積み重ねる動きが強まると見込まれます。
こうした変化のなかで、国や自治体の新たな支援策だけを待つのではなく、民間事業者が自ら工夫し、情報技術(ICT)や生成AIなどの技術も活用しながら、事務負担の軽減や情報提供の質の向上を図ることが求められます。
限られた人材で保育の質と安全を守るためには、現場の課題をよく知る民間側からの改善の積み重ねが、今後ますます重要になると考えています。
◾️終わりに
少子化の進行、子育てニーズの多様化、人材確保の難しさという複合的な課題の中で、保育の「受け皿」を守り続けることは容易ではありません。
しかし、2025年の調査結果が示すように、保育の仕事に就きたいという学生は85.7%に達しており、現場の保育士も配置基準見直しに63.0%が期待を寄せています。課題は大きいものの、改善への意欲と期待は確かに存在しています。
2026年は、「こども誰でも通園制度」の本格実施を機に、保育の在り方が問い直される年になることが予想されます。業界全体で、子どもと家庭を支える体制づくりが進むことを期待します。
◾️参考情報
※1|こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/torimatome/r7
※2|こども家庭庁「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/b9651e22/20250806_policies_hoiku_151.pdf
※3|こども家庭庁「こども誰でも通園制度について」https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/daredemo-tsuen
※4|こども家庭庁「保育所等における継続的な見える化について」https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d47e249d-e99b-4bfc-b964-0368ac07cb2a/6996167b/20250324_councils_kokoseido-keizokutekimieruka_03.pdf
※5|子ねくとラボ「保育系学科学生の進路選択実態調査」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000163.000043389.html
※6|子ねくとラボ「保育士配置基準見直しと保育の質向上に関する定点調査」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000144.000043389.html
※7|子ねくとラボ「子どもの幸福に関する保護者の意識調査」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000154.000043389.html
◾️「子ねくとラボ」について

「子ねくとラボ」は、「子ども+Nursery(保育)+Education(教育)・Entertainment(エンターテインメント)+Creation(創造)+Trend(トレンド)」の要素から構成された、子どもと未来、そしてすべての人がConnect(繋がり、結びつき)する保育研究プロジェクトです。
子育てや保育に関する「調査レポート」や「ニュース/記事」、また「子ねくとラボ」が提供しているサービスについて発信しております。
事業名 :子ねくとラボ
事業責任者 :末廣 剛
サービス内容:・選ばれる園づくりコンサルティングサービス
・保育施設向け研修&巡回サービス
・保育専門実証実験 コーディネートサービス
・スタートアップ支援サービス
■会社概要
会社名 :株式会社 明日香
設立 :1994年8月30日
代表取締役:萩野 吉俗
所在地 :東京都文京区小石川5丁目2番2号 明日香ビル3F
事業内容 :■保育室の設置・運営(院内保育室、企業内保育室、認可保育所)
■地方自治体と連携した子育て支援事業
(児童館、放課後児童クラブ、子育て支援拠点、こども広場等の運営)
■保育に関わる人材の派遣・紹介
(保育士・幼稚園教諭・看護師・栄養士など)
■訪問型子育て支援
(ベビー・キッズシッターサービス、家事代行サービス、地方自治体の委託業務)
■保育施設向け研修・巡回支援
■新規保育事業の開発及びコンサルティング
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