「配置・異動とキャリア支援施策に関する実態調査」の分析結果を発表

キャリア自律の尊重と組織主導の異動は両立できるのか。約7割が感じるジレンマ、「異動の目的を語り、キャリアを支援する仕組み」が両立を後押し

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

 企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、企業における配置・異動の課題とキャリア自律支援の実態を明らかにすることを目的に、人事業務に従事する管理職を対象として「配置・異動とキャリア支援施策に関する実態調査」を実施しました。

 近年、事業環境の変化やAI・技術革新への対応に伴い、企業には戦略的なリソースシフトや柔軟な人材配置が求められています。一方で、従業員の希望やキャリア志向を尊重する必要性も高まっており、組織主導の配置・異動と個人のキャリア自律をどのように両立するかが、多くの企業にとって重要なテーマとなっています。

 調査の結果、配置・異動における課題として「経営・事業戦略に沿った中期的な要員計画の策定」や「適材適所の配置」を挙げる企業が多く、戦略的な人材配置の難しさが確認されました。加えて、約9割の企業が従業員のキャリア自律を期待している中、「自律的・主体的なキャリア形成の尊重」と「組織主導の人事施策の推進」の両立についても約7割が「難しい」と回答しており、組織ニーズと個人意向の調整が課題として浮上していることが明らかになりました。

 一方、キャリア自律支援を戦略的・統合的に推進している企業ほど、配置・異動の目的やキャリア展望を丁寧に共有するなど、個人意向を踏まえた配置運用が進んでいる傾向が確認されました。両立の難しさは所与のものではなく、キャリア支援の設計・運用のあり方によって変わりうることが示唆されます。

 個人のキャリア自律と組織のリソースシフトを対立的に捉えるのではなく、配置・異動とキャリア支援を一体で設計・運用することを通じて、変化に対応できる柔軟な組織づくりを進めていくことが求められると考えられます。本調査が、今後の人材マネジメントやキャリア支援施策の検討における一助となれば幸いです。

【エグゼクティブサマリ】

・配置・異動における最大の課題は「中期的な要員計画の策定」と「適材適所の実現」。事業環境変化に応じた戦略的人材配置ニーズの高さが浮き彫りに。一方で、「本人の意向や事情を尊重する必要が高まり、適時適切な配置が難しい」も上位に。組織ニーズと個人意向の調整が新たな課題として浮上。(図表1) 

・約7割が「自律的・主体的なキャリア形成の尊重」と「組織主導の人事施策の推進」の両立に難しさを実感。組織都合優先の文化や経営層の理解不足など組織要因が背景に。(図表2・3・4) 約9割の企業が従業員のキャリア自律を「期待している」と回答。一方、企業と従業員でキャリア自律の捉え方に違いがあることも示唆。(図表5・6) 

・キャリア自律支援の目的は『エンゲージメント・意欲向上』が最多。一方、目的は多様で各社の認識に違いがあることも示唆。(図表7) 

・管理職のキャリア支援は日常業務を通じた育成の延長として捉えられている場合が多く、中長期的なキャリア支援への期待は限定的。(図表8・9・10) 

・キャリア自律支援を戦略的・統合的に推進している企業ほど、個人意向を踏まえた配置運用が進んでいる傾向。両立の難しさは所与のものではなく、支援の設計・運用のあり方で変わりうることが示唆。(図表11・12・13・14)

1.調査担当のコメント

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

組織行動研究所 

主任研究員 藤村直子(ふじむらなおこ)

 弊社機関誌RMS Message vol.82(2026年5月発行)の特集「企業の変化適応とキャリア自律の接点」において、調査を実施しました。今回設定した「キャリア支援推進度」(キャリア支援の目的の明確化、経営層の理解、人事制度全体における位置づけなど、従業員支援を戦略的・統合的に推進している程度)が高い企業では、異動の目的や意図を本人・異動先上司に丁寧に説明するといった工夫が多く見られ、人材の柔軟な再配置との関連が示唆されました。

 一方、約7割の企業が個人のキャリア自律の尊重と組織主導の人事施策の推進の両立に難しさを感じており、その背景は各社の考え方や組織文化によってさまざまでした。企業が求めるキャリア自律の内容や支援の目的も多様であり、企業と個人のあいだの認識ギャップも示唆されました。自社における定義や目的を明確にすることの意義があらためて確認された結果といえます。

 また、管理職による部下へのキャリア形成支援への期待は高い一方、役割が曖昧なまま現場に委ねられ、管理職自身が十分に支えられていない実態も浮き彫りになりました。期待する役割の明確化や管理職自身への支援、他の人事施策との連携、専門家による支援体制といった環境整備が、管理職の負荷低減や、個人の意向と組織ニーズとのすり合わせを図るうえで欠かせない視点といえそうです。

戦略人事の視点を中心に調査を実施しましたが、現場で向き合うのは一人ひとりの多様なライフキャリアです。制度や仕組みの整備に加え、個別支援のあり方についても検討を深める必要があるでしょう。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

組織行動研究所

主幹研究員 古野庸一(ふるのよういち)

 私たちを取り巻く環境の変化は常態化しています。人口動態の変化や技術革新、コロナ禍がもたらした働き方の変容など、組織にも個人にも、変化への適応が継続的に求められる時代となっています。組織には、衰退していく事業から繁栄していく事業へヒト・モノ・カネをシフトする能力や、深化だけでなく探索も行う「両利きの経営」の実践が求められます。

 一方、個人もまた、組織の要請に従うだけでは中長期的に適応できない時代になっています。「この組織において自分は十分に生かされているか」「持続的なキャリア形成ができるか」という問いを自らに向け、組織の立場と未来の視点から、今の仕事の意味とこの先の方向性を考える必要があります。

 こうした組織と個人の適応はしばしば対立するものとして語られますが、中長期的には両立しうると考えます。1つは「キャリア自律の促進」です。その本質は単に個人の希望を優先することではなく、広い視野と未来への視座をもちながら組織との対話を重ねることにあります。組織側もまた、対話の機会を設けることで、やりがいをもって健全に働く人を増やすことができます。もう1つは「変化適応能力の向上」です。多様な選択肢を用意し変化の経験を積み重ねることが重要であり、多様な異動経験が個人の変化対応能力を高めることにつながります。

 組織と個人の適応を統合するためには、互いの立場を理解し、協力し合える関係性を築くことが肝要です。キャリア自律施策は経営戦略の一部として設計されるべきであり、同時に個人にとっても持続的なキャリア形成を支える基盤となるものです。変化の時代だからこそ、組織と個人が共に適応していくための対話と仕組みづくりが、これまで以上に重要になっていると感じています。

2.調査の結果

  • 配置・異動における課題は「中期的な要員計画」と「適材適所の実現」が中心

・配置・異動における課題として最も多かったのは、「1.経営・事業戦略に沿った中期的な要員計画の策定が難しい」(43.0%)であり、次いで「2.職務要件や人材の能力・適性に関する情報が不足しており、適材適所の配置が難しい」(41.2%)が続いた。

・また、「6.本人の意向や事情を尊重する必要が高まり、適時適切な配置が難しい」(37.9%)も上位に挙げられており、組織ニーズと個人意向の調整に難しさを感じる企業が多い。

⇒変化に応じた柔軟な配置・異動が求められる中で、戦略的な人員配置と個人のキャリア志向を両立させることが、多くの企業にとって課題となっている状況がうかがえる。

 

図表1:配置・異動に関する課題

  • 約7割が個人のキャリア自律と組織主導の人事施策の両立に難しさを実感

・自律的・主体的なキャリア形成の尊重と組織主導の人事施策の両立について、約7割が「難しい」と回答しており、多くの企業が課題として認識している。

・両立が困難な理由として、組織都合の優先や短期業績中心の評価、経営層の理解不足といった「組織要因」と、従業員のキャリア観や希望との間に生じるズレが、両立を難しくしている要因として挙げられた。

・一方、両立が難しくない状況として、「施策を通じて両立している」「そもそもコンフリクトするものではない」という2つの捉え方が確認された。十分な対話とすり合わせなど施策実施により両立しているケースや、キャリア自律を組織と整合したものと定義しているケース、組織主導が前提のためコンフリクトは生じていないケースがうかがえた。

⇒背景には、従来のように組織都合を優先した配置・異動だけでなく、近年は従業員の希望やキャリア意向を尊重する必要性が高まっていることがある。両立に関する認識は多様であり、その背景には、組織がキャリア自律をどのように捉え、どの程度期待しているかという違いがあると考えられる。

図表2:キャリア自律尊重と組織主導人事施策の両立の難しさ

図表3:キャリア自律尊重と組織主導人事施策の両立困難の理由<そう思う>

※図表2(両立が難しい)の回答が1-3(そう思う)選択者の自由記述より抜粋

「自律的・主体的なキャリア形成の尊重と、組織主導の人事施策の推進の両立は難しい」とお答えになった方に伺います。人事として、具体的にどのような点で難しさを感じていますか。

図表4:キャリア自律尊重と組織主導人事施策の両立困難の理由<そう思わない>

※図表2(両立が難しい)の回答が4-6(そう思わない)選択者の自由記述より抜粋

「自律的・主体的なキャリア形成の尊重と、組織主導の人事施策の推進の両立は難しくない」とお答えになった方に伺います。そのようにお答えになった理由について、お教えください。また、両立するために行っている施策や工夫があれば、教えてください。

  • 約9割の企業が従業員のキャリア自律を期待

・従業員に対する「自律的・主体的なキャリア形成」への期待について、約9割の企業が「期待している」と回答しており、多くの企業がキャリア自律の必要性を認識している。

・企業が従業員に期待する内容としては、「1.自分の価値観に基づいて、自分でキャリアを選択すること」(48.7%)が上位に挙げられた。

・一方で、「10.自分に合った働き方を主体的に選択すること」(16.9%)はそれほど多く選ばれなかった。弊社で以前実施した個人調査「若手・中堅社員の自律的・主体的なキャリア形成に関する意識調査」(2021)では半数弱(48.5%)が働き方の主体的選択をキャリア自律の内容として挙げていた。

⇒単純な比較はできないが、企業と従業員のあいだでキャリア自律の捉え方に違いがあることがうかがえる。

図表5:従業員へのキャリア自律の期待

 

図表6:会社が従業員に求めているキャリア自律の内容

  • キャリア自律支援の目的は「仕事への意欲向上」が最多だが、目的は多様で多岐にわたる

・キャリア自律支援の目的として最も多かったのは、「1.従業員のエンゲージメントや仕事への意欲向上」(52.5%)であり、次いで「2.従業員の自律的な学習・挑戦行動の促進」(37.6%)「3.優秀な人材の採用・定着」(36.7%)が続いた。

・一方で、「4.従業員の変化対応力の向上」(31.9%)「5.組織の柔軟性・変化対応力の向上」(25.7%)も一定数選択されている。

⇒キャリア自律支援の目的は実際には多様であることがうかがえる。

図表7:キャリア自律支援の目的

  • 管理職のキャリア支援は日常業務の延長が中心。中長期的な支援への期待は限定的

・管理職に部下のキャリア支援を「1.制度・方針として明確に求めている」(37.0%)のは4割弱。「2.制度・方針として明文化していないが、実態として求めている」(36.1%)を合わせると約7割に達する。

・最も多かったのは、「1.部下が目の前の仕事にモチベーション高く取り組めるよう支援する」(54.7%)であり、次いで「2.部下が自律的に業務を推進できるよう支援する」(52.2%)が続いた。

・一方で、キャリアの「中期的支援」の項目はおおむね3割前後、ライフイベント発生時の「ライフキャリア支援」は2割未満にとどまっている。

⇒管理職のキャリア支援は、中長期的なキャリア形成やライフキャリア支援というよりも、日常業務を通じた育成の延長として捉えられている場合が多いと考えられる。

 

図表8:管理職による部下のキャリア形成支援の位置づけ

図表9:部下のキャリア形成支援に関して管理職に期待する行動・役割

  • 4割が管理職には部下のキャリア支援をする余裕がないと感じている

・管理職による部下のキャリア形成支援についての課題として最も多く選ばれていたのは「1.管理職には、キャリア支援に割ける時間的余裕がない」(42.1%)であった。「2.管理職自身がキャリア不安や将来不透明感を抱えている」(34.0%)「3.管理職のキャリア支援に対する問題意識・優先度が低い」(31.6%)が続く。

・期待役割の不明確さ、配置・異動・挑戦機会への展開の難しさ、管理職に対する支援の不足も課題として認識されている。

⇒管理職がキャリア支援の担い手として期待されている一方で、その役割を果たすための環境や支援が十分とはいえない実態も見えてくる。背景にある会社としてのキャリア支援の位置づけとの関係が推察される。

 

図表10:管理職による部下のキャリア形成支援に関する課題

  • 戦略的・統合的なキャリア支援は、配置・異動と個人尊重の両立につながる

※本調査では、従業員のキャリア形成支援を戦略的・統合的に推進できている程度を示す指標として「キャリア支援推進度」を設定した。この指標は、キャリア支援の目的の明確化、経営層の理解、人事制度全体における位置づけ、相談活動などを通じた課題の把握と共有、人事や上司から独立した相談機能の存在など、厚生労働省のガイドラインや先行研究を参考に作成した7項目から構成される。

・キャリア支援推進度・高群は低群に比べて、配置・異動を円滑に機能させるための工夫を行っていた。

・人事施策の活用度(「制度対象者に一定以上活用されている」割合)にもキャリア支援推進度別に差が見られた。

・キャリア支援推進度が高いほど、外部環境の変化や事業戦略の方向性に応じて、配置・異動が戦略的に行われていることが確認された。配置や異動において個人の尊重がなされている一方で、組織主導の配置や異動が従業員に当然のものとして受け止められている状況も見てとれた。

・環境変化や戦略転換に対応できる組織の特徴とされる「HRMの柔軟性」についても、キャリア支援推進度の高さは、現在とは異なる業務への従業員の配置を動機づけ、活躍を促すことと関連していた。

⇒戦略的・統合的なキャリア支援と配置・異動の実態とのあいだに一定の関連がうかがえた。戦略的人材配置とキャリア支援を一体として設計・運用することの意義が示唆される。

 

図表11:キャリア支援推進度 項目一覧

図表12:配置・異動を円滑に機能させるための工夫(キャリア支援推進度別)

図表13:人事施策の活用度(キャリア支援推進度別)

図表14:配置・異動の実態、HRMの柔軟性(キャリア支援推進度別)

リクルートマネジメントソリューションズについて

ブランドスローガンに「個と組織を生かす」を掲げ、クライアントの経営・人事課題の解決と、事業・ 戦略推進する、リクルートグループのプロフェッショナルファームです。日本における業界のリーディングカンパニーとして、1963年の創業以来、領域の広さと知見の深さを強みに、人と組織のさまざまな課題に向き合い続けています。

●事業領域:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築
●ソリューション手法:アセスメント、トレーニング、コンサルティング、HRアナリティクス

また、社内に専門機関である「組織行動研究所」「測定技術研究所」を有し、理論と実践を元にした研究・開発・情報発信を行っております。

※WEBサイト:https://www.recruit-ms.co.jp

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会社概要

URL
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業種
サービス業
本社所在地
東京都港区芝浦3-16-16 住友不動産田町ビル東館 4F
電話番号
0120-878-300
代表者名
山﨑 淳
上場
未上場
資本金
1億5000万円
設立
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