マスク着用啓発に対するコンピュータゲームの効果を明らかに

感染症拡大防止の為に　シリアスゲームにおけるフレーミング効果の活用

独立行政法人国立高等専門学校機構

2023年1月11日 09時00分

鹿児島工業高等専門学校（鹿児島県霧島市　校長：氷室昭三　以下「鹿児島高専」）情報工学科の中才恵太朗助教と近畿大学情報学部情報学科の角田雅照准教授らの研究グループは、マスク着用啓発に対するコンピュータゲームの効果を明らかにしました。空気感染や飛沫感染をするCOVID-19などの感染症が拡大することを防ぐためには、マスク着用の重要性を啓発することが重要となります。研究では、マスク着用の啓発効果を高めるには、シリアスゲームとフレーミング効果の活用が重要となることを明らかにしました。

研究紹介画像

研究のポイント

・現実社会の問題を学習するシリアスゲームとして、マスク着用啓発ゲームを開発した。
・フレーミング効果を活用してゲーム結果を示すことにより、啓発効果が高まることを明らかにした。
・シリアスゲームとフレーミング効果の活用は、今後の感染症対策の啓発の鍵となる。

研究の背景

　COVID-19に対する社会的な関心は世界的にも非常に高く、COVID-19 の感染拡大を防止するために、シリアスゲームを用いてユーザに感染予防を啓発する試みも多く実施されています。シリアスゲームとは、現実社会の問題を学習するために開発されたコンピュータゲームを指します。本研究では、シリアスゲームを通じてユーザに対し、空気感染や飛沫感染をするCOVID-19などの感染症に対するマスクの重要性を啓発することを目的としています。

研究の内容

　マスク着用の啓発効果を高めるために、本研究ではフレーミング効果に着目しました。フレーミング効果とは、同じ問題を、表現を変えて示すことにより受け手の意思決定が変化することを指します。これまで、シリアスゲームおけるフレーミング効果は十分に研究されていませんでした。
　マスク非着用のキャラクターを制限時間内に多くクリックする（マスク着用させる）ことを目指すシリアスゲームを作成しました。被験者18人にゲームをプレイしてもらい、結果を以下の2種類の表現のうち一方を用いて示しました。

●　肯定的表現（ポジティブフレーム）例: 10人にマスクをさせて50人への感染を防いだ
●　否定的表現（ネガティブフレーム）例: 10人がマスクをしなかったため50人に感染が広がった

　ゲーム終了後に「マスク非着用による感染拡大の危険性が伝わったか」などをアンケートしました。その結果、「否定的表現（ネガティブフレーム）」によりゲーム結果を示された被験者のほうが、より強く「マスク非着用による感染拡大の危険性」が伝わる傾向が見られました。
　なお、マスク着用に肯定的態度をとっている被験者においても、ネガティブフレームによる啓発効果が見られました。

今後の課題・展望

　COVID-19に限らず、今後も空気感染や飛沫感染をする感染症が拡大する危険性があります。それらへの対策の啓発手段として、シリアスゲームを活用できる余地は大きく、さらにネガティブフレーム（対策を十分に行わないことによる感染拡大の危険性）を用いてゲーム結果を提示することにより、啓発効果を高められることが期待できます。

論文掲載

掲載誌：“教育システム情報学会誌, Vol.40, No.1“　（発行：教育システム情報学会）
論文名：マスク着用啓発に向けたシリアスゲームにおけるフレーミング効果の評価
著　者：近畿大学理工学部情報学科4年（当時）野端秀亮、近畿大学情報学部情報学科准教授　角田雅照、鹿児島工業高等専門学校助教中才恵太朗

研究担当者

中才　恵太朗：鹿児島工業高等専門学校情報工学科助教／博士（工学）
教育研究分野：ソフトウエア工学
主な担当科目：言語処理系、情報基礎

【学校概要】

学校名：独立行政法人国立高等専門学校機構　鹿児島工業高等専門学校
所在地：鹿児島県霧島市隼人町真孝1460-1校長：氷室　昭三
設立：昭和３８年４月１日
URL：https://www.kagoshima-ct.ac.jp/
事業内容：高等専門学校・高等教育機関
教育理念：幅広い人間性を培い、豊かな未来を創造しうる開発型技術者を育成する。教育内容を学術の進展に対応させるため、また、実践的技術の発展のため、必要な研究を行う。

【問い合わせ先】
《鹿児島高専総務課企画係》
TEL：0995-42-9038
e-mail：kikaku@kagoshima-ct.ac.jp