母乳中の脂質分の成分比率は、個人間差が大きいことを論文発表~油脂産業に関する先進的技術論文の典拠である学術誌「Journal of Oleo Science」に掲載されました~
江崎グリコ株式会社は、母乳中の脂質分に着目した研究において、1回の授乳中に母乳中の脂質分の量は増えていきますが、個人内の脂質分の成分比率の変化は小さく、個人間差の方が大きいことを論文にて発表しました。この成果が、油脂産業に関する先進的技術論文の典拠である学術誌「Journal of Oleo Science」7月号に掲載されました。今後も、妊娠期・授乳期・離乳期・幼児期の母子に着目して、社会課題の解決につながる研究を進めてまいります。
- 【掲載概要】
・掲 載 URL :https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos/71/7/71_ess21449/_pdf/-char/en
・論文タイトル:The comprehensive analysis of the lipid composition in human foremilk and hindmilk
・著者:宅見央子1、加藤和子1、中西広樹2、大戸貴代2、田村舞子2、廣瀬潤子3、長尾早枝子4
1 江崎グリコ(株)
2 (株)リピドームラボ
3 滋賀県立大学 人間文化学部 生活栄養学科(現所属:京都女子大学 家政学部 食物栄養学科)
4 長尾助産院
- 【研究概要】
近年は個人の食環境、腸内細菌、生活習慣、遺伝子情報、既往歴、家族歴などの現在の個人の状態を反映し、疾病予防や健康の維持・増進に向けて個人に合わせて最適な栄養を摂取するというプレシジョン栄養学(個別化栄養)が重要視されています。母乳で育っている乳児にとって、母乳は唯一の栄養源である為、母乳成分は乳児の健全な発育において極めて重要です。しかし、母乳成分の個人差に着目した報告は少なく、母乳成分が個人ごとに異なることは一般の方には十分に認知されていません。
<目的>
プレシジョン栄養学(個別化栄養)の観点から、あるタイミングで採取した母乳の脂質分析結果が、個人の母乳の特徴を示しているかどうか検討することです。
<方法>
6名の日本人の授乳婦を対象に、1回の授乳中に最も大きく含有量が変化する脂質分に着目して前乳(1回の授乳において早いタイミングの母乳)と後乳(1回の授乳において遅いタイミングの母乳)を網羅的に分析。個人の母乳中の脂質分の量と成分比率の変化を確認するとともに、個人間の脂質分の量と成分比率の違いを検討しました。母乳成分の分析は、(株)リピドームラボ*¹の協力を得て、LC/ESI-MS/MS*²を用いて分析を実施しました。
<考察>
母乳成分の詳細な分析により527種の成分が分析できました。その結果、授乳中に母乳中の脂質分の量は増加しても、その成分比率は保持されており、個人内の変化は小さく、個人間差の方が大きいという結果が得られました。母乳成分の分析結果は、個人の母乳の特徴を反映していますので、個別栄養の観点から、個々の乳児の栄養摂取状態の改善に役立つとともに、母親の食事内容を改善し、より質の良い母乳を出すための情報として役立つ可能性があることが示されました。
*¹ ㈱リピドームラボ(秋田県秋田市)は機能性脂質を始めとした脂質網羅解析を得意とするリピドーム解析の受託・研究開発会社である
*² 液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析法。低分子化合物を高い精度で定性、定量分析する分析方法で、医薬品や食品中の生理活性低分子をはじめ、様々な分子の分析に用いられる。
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