株式会社フェリシモは、 海外レアチョコレートの専門サイト・カタログ「幸福（しあわせ）のチョコレート®」を展開しています。“チョコレートバイヤーみり”こと木野内 美里（きのうち みさと）が、世界中から集めたストーリー溢れるレアな海外ローカルチョコレートを多数掲載。自分では今すぐ行くことができない国、食べたことがない、ほかでは手に入らない日本初上陸などの珍しいチョコが購入できる、1年に1度の贅沢が味わえる、チョコ好きのバイブルとも言える専門カタログ＆ウェブサイトです。

幸福のチョコレート

世界各国でコロナ禍のストレス解消に、チョコレートが大活躍！

26年目を迎えた「幸福(しあわせ)のチョコレート」が目指すチョコレートの未来

―はじめに

チョコレートバイヤー みりが紹介する、フェリシモ「幸福（しあわせ）のチョコレート®」は、2023年で26年目を迎えます。2022年3月までに約500ブランド・約2,700種類のチョコレートを輸入販売した実績を持ち、日本に初上陸させたチョコレートは約290ブランドに上ります。チョコレートバイヤー みりはバイヤーとしての経験を生かした著書も出版し、メディアにも多数出演しています。『幸福のチョコレート 2023』では、過去最多となる35の国と地域から96ブランド・165点が集結。日本初上陸ブランドの中には、ウクライナのチョコもウェブ限定でラインナップしています。世界のショコラティエとの絆を繋いできたチョコレートバイヤー みりに、ブランドの成り立ちから、自身の仕事への取り組み方、「幸福(しあわせ)のチョコレート」が目指す未来についてインタビューしました。

バイヤー歴26年目を迎える“チョコレートバイヤーみり”こと木野内美里（きのうちみさと）

名もなき仕事から、みんなの幸福(しあわせ)をみつけだすバイヤーへ

世界中と日本を繋げ続けるバイヤーの仕事とチョコを通じた思い

―「幸福（しあわせ）のチョコレート」のはじまりと、“チョコレートバイヤーみり”になった経緯を教えてください。

“チョコレートバイヤーみり”こと木野内美里(以下みり)：私はフェリシモには経験者採用で入社したのですが、はじめに配属されたのが食品部門で、食品全般のお仕事をしていました。取り扱っていた食品の中のひとつにチョコレートがありました。はじめの10年ぐらいは、チョコレートに関する本もネットも多くなかったので珍しいチョコレートを出せば出すほど売れました。「幸福(しあわせ)のチョコレート」というブランド名も当時はなくて、今と比べると内容が薄い仕事をしていたと思います。そのうち日本でもチョコレートブームが来て、次第に世界中の有名なチョコレートが、年中いつでも手に入るようになっていきました。そのとき、「私は仕事で、何をすればいいの？」と悩みました。

カタログ『幸福のチョコレート 2023』を手に話す“チョコレートバイヤーみり”

そんな状況でたどり着いたのが、“世界のローカルで人気なチョコレートを集めるのをミッションにすること”でした。私自身神戸に住んでいて、ローカルな生活をしている中で、知名度があって全国どこでも手に入れられる商品よりも、地元の人だけで賑わっていて、数量が作れなくてデパートには出店できないような商品こそ、本当の贅沢だなって思ったのです。そこで、きらびやかではないけれど、地元の人を大事にしているローカルなチョコレートを世界で探して、日本で紹介する人になろうと決めました。

そうして世界中のローカルチョコレートを紹介していくうちに、「幸福(しあわせ)のチョコレート」というブランド名でカタログづくりを行うことにしました。フェリシモという社名は、「最大級で最上級のしあわせ」を意味しています。簡単に言うと「めちゃめちゃハッピー」です。“幸福”ってついていたら、みんなHAPPYでしょう！とあるときひらめいて、「幸福(しあわせ)」にしました。今では「買う人にとっても、作る人にとっても、幸福(しあわせ)のチョコレートたれ」という思いが、私の中でスローガンになりました。

フェリシモの社名について（カンパニープロフィール）

―買う人も作る人にも幸福 (しあわせ)を届けるチョコレートバイヤーとしての、仕事内容を教えてください。

みり：私の仕事は、世界中（28カ国/2023年1月現在）を旅して、家族経営でやっているようなローカルなチョコレートを、日本で販売するための商談をまとめることです。その中でも、ひとりひとりのショコラティエを大事にしたいので、そのチョコレートが今まで紹介してきたチョコレートと被らない唯一無二の個性を持っているかどうかを見極めることを大事にしています。

チョコ旅（海外出張）で訪れたショコラティエのチョコレート

たくさんのチョコレートを見ているうちに、どの国のチョコレートなのか、ショコラティエが何を作りたいのか形、断面を見るだけで分かるようになりました。チョコレートはその国の文化を完全に背負っていて、職人さんの個性とその国の価値観が顕著に現れます。なので、海外出張に行くようになってからは、その国の現地の臨場感だとかも伝えたくって、電車からの風景やホテルの部屋の色や雰囲気を絵に描いたりして、とにかく観察をしていました。そして、これだ！と思うチョコレートを見つけたら、その場で5分もかからないうちに決めて、交渉をします。

チョコ旅（海外出張）ホテルに戻りサンプルチョコレートと一緒に

―5分！速いですね。海外とのやりとりをする上で大事なことなどはありますか？

みり：世界のショコラティエとやりとりするにあたって大事なのは、“その場で決めてくる”ことです。日本だと情報量や確認事項が多いのですが、会社に戻って後日連絡する（時間をかける）ことは海外のショコラティエは好まないので、海外ではNGです。やりとりもなるべくシンプルにしないと決まらない。余計なことは一切言わない、それが一番の成功の秘訣ですね。あと、ショコラティエは、基本無口で何にも言わない方もいます。その代わりにお互いチョコレートを通じて会話をします。お店ごとの打ち合わせスタイルに合わせて、なるべくお仕事を邪魔しないようにチョコレートを選びながら、ショコラティエの人となりを観察しコミュニケーションをとっています。

チョコ旅（海外出張）でのショコラティエとの打ち合わせの様子

―コミュニケーションの方法も流儀があるのですね。日本でも、メディア出演だけでなく、インスタライブや、チョコセミナー、インターネットラジオなど、多彩な発信に力を入れている理由を教えてください。

みり：「幸福(しあわせ)のチョコレート」で取り扱っているチョコレートは、話を聞いて食べてもらわないと意味がないのです。長くやってきた中で、それぞれのチョコレートは比べようがないと思っています。例えば私が、賞だとか、甲乙をつけることは無理ですね。“美味しい”には上下はなく、“美味しい”の判断も人の経験から生まれることです。私自身チョコレートバイヤーとして、ショコラティエの個性が出る面白いチョコレートも真面目で愚直なチョコレートも、全部が面白いので、ありのままを尊敬しています。

インターネットラジオ「拝啓！おチョコさま　～チョコレートバイヤーみりの“ききチョコの旅”～』収録の様子

そのような国の背景やショコラティエの思いを知ると、美味しさが5倍10倍変わります。それがないと好みや価格のみが判断材料になり、チョコレートはただのカカオと砂糖とミルクの集合体になってしまいます。だから、そのチョコレートが持つストーリーを聞いて味わって欲しくて全力でYoutubeやチョコレートセミナーで発信しています。また、私の話を聞いてそれを誰かに話しながら一緒に食べてみて欲しいとも思っています。

―チョコレート業界について、コロナ禍を経ての仕事の変化などがありますか？

みり：コロナ禍では、個人店のショコラティエは、自転車で配達に行っていたくらい忙しかったそうです。特に「幸福のチョコレート」で取り扱っているブランドは、地元に愛されているお店ですし、外に出られないストレスをチョコレートは世界中で癒していたのです。

私の仕事でいうと、海外出張に行けなくなったので、今はオンライン会議で海外とやりとりをしています。最初は大変でしたが、今は、例えば現地の方が散歩しながら街の様子を中継して見せてくれたり、やり方も上手になりましたね。距離はあってもダイレクトにショコラティエと喋れるようになったことは便利になったと感じます。実際に行った時の臨場感や街の雰囲気はやはり伝わらないことはありますが、仕事自体がまったくできないわけではありません。

元々、私は毎年「今年で最後かもしれない！」と思って、必死でやってきていました。それこそ、ブランド名がついたときも来年はなくなるかもしれない。と思っていましたし、だからこそ今やれることを最大限やろうという気持ちでいつも取り組んでいます。そういった緊迫感と仕事に取り組む姿勢は、コロナ禍になる前も今も変わりません。

オンライン会議の様子

―海外のショコラティエとのやりとりで、大変だったことなどありましたら、教えてください。

みり：ヨーロッパは紹介文化なので、基本飛び込みNGなのですが海外出張をはじめた当初は飛び込んでいっていました。現地のホテルの方にオススメを聞いて訪れて……。最初はけんもほろろだったけれど、カタログを見せると「こんなにていねいに紹介してくれるなら」と、OKをもらえるのです。通信販売・カタログのフェリシモが作っているカタログの力が大きくて、評価してもらえることが多かったですね。今は、実績がたくさんありますので私のSNSなどを見ていただくとOKをもらえるので、ずいぶん楽になったと思います。

あとは、お客さまにお届けするまでが仕事なのですが、実際は小さなお店を相手にしているので、ありとあらゆるトラブルがあります。落ち込むこともありますが、お客さまが待っていてくださっているから、また元気に頑張れます。忘れてはいけないのが、社内外のスタッフさんたちです。私が落ち込んでいても、はい次！という感じで、海外に引っ張って行ってくれるのです（笑）。そうやって、チームのみんなにも支えてもらっています。

チョコ旅（海外出張）の様子

―チョコレート界の新しい風潮など、感じていることはありますか？

みり：最近は、国ごとのチョコレートの見極めが難しくなってきました。ベルギーのショコラティエでも、フランスタイプのチョコレートを作っていたりして、ミックスされてきました。ネットの普及によって、チョコレートのクオリティ自体も激上がりしてきています。その中でもショコラティエの癖は出てくるので、分かるとニタっと笑ってしまいます。

あと、天才的なショコラティエほど、ローカルにお店を出すようになりました。都心部ではなく、田舎の方が効率も環境も良いからです。ショコラティエは職人なので、自分の人生をかけて仕事をしています。田舎の方が素材も良くて家賃も安い、全ての時間を仕事と家族にかけられる。「食べたい人は自分から来てくれる、あなたも日本から来たでしょ」と言われて納得してしまいました(笑)。今は本当にローカルな時代になりましたね。

チョコ旅（海外出張）の様子（お店の前で）

―チョコレートを通じた、世界との”ともになるしあわせ”について教えてください。

みり：『幸福のチョコレート2023』では、日本初上陸のウクライナのチョコレートも販売します。私のバイヤー人生の中でも一番難航をしました。ショコラティエさんも空襲警報の間や、停電の合間を縫ってチョコレートを作りお店を営業されています。お仕事はオンライン会議で普通にやりとりはできるのですが、停電の影響や、輸入に際して思いもかけないような証明が必要で、ウクライナからEU圏内隣国への移送や日本へ経路が上手く確保できず、連絡をとり合い、祈るような気持ちで待ちバレンタインお届けのリミットぎりぎりでやっと日本に届きました。早速「#ウクライナとチョコでつながりたい」と全国のお客さまがSNS投稿をしてくださって、現地スタッフにも日本のみなさまとのつながりを見てくれていて、お届けすることができて本当にうれしく思います。

世界はチョコで繋がっている

ウクライナ リビウハンドメイドチョコレートの取り組み

ウクライナの〈リビウハンドメイドチョコレート〉のスタッフ、アリーナさんとオンラインでミーティングの様子

・幸福のチョコレートブログ

『チョコでウクライナとつながろう！ その1』

また、全てのチョコレートには、「LOVE&THANKS基金」がついているのですが、元々基金の使い方は子どもたちに必要な栄養をアフリカに贈るものでした。でも、もっとカカオに近づいた支援がしたくて、現地に植林をしに行ったこともあります。今は、認定NPO法人 ACE（エース）さまに、ガーナの児童労働撤廃のために活用してもらっています。一緒に取り組みができるようになって本当に光栄です。買って食べるだけではなく、チョコレート業界自体をしあわせにしていくことができることは、これ以上なく素晴らしく嬉しいことだと思います。家族のたわいない会話の中でも、こういった背景についての会話があればいいなと思うし、すべてのチョコレートにおいて、心置きなく楽しんでいただけるようにしたいです。

LOVE&THANKS基金

「LOVE&THANKS基金」支援先のイメージ：提供[特定非営利活動法人ACE（エース）]

ACE[エース]のウェブページへ

―最後に、新しい社屋「Stage Felissimo」に、フェリシモ チョコレートミュージアムもできました。今後トライしていきたいことや、思い描いている未来を教えてください。

みり：私は神戸の人間なので、自分の根っこに阪神淡路大震災への想いがあります。あの時、何も神戸にできなかったという無力感は、神戸で働く上での原動力になっています。今の夢は、老後に「東遊園地（神戸市内の公園）」で散歩をしていると観光客がいて、「“神戸はチョコの街”だから、どこ行く？」という会話を聞いて、ふふっと自分が笑っている姿を想像しています。

海外だけでなく、日本でも最近お客さまからや社内でも、「みりさんのお仕事がきっかけで、チョコレート界に入りました」と若い方から声をかけていただくことがでてきました。まさか、自分の仕事で、そういった方々に会えるとは思ってもいなかったので、長く続けてきてよかったと思います。チョコレートミュージアムにも若いカップルもデートコースとして来てくれるので、結婚して、思い出してくれるような場所になるのも楽しみですね。

ミュージアムもできましたし、神戸からチョコレート発信を続けることで、神戸がチョコレートの街として、世界中からたくさんの人が楽しみに訪れる場所になることを目指したいです。チョコレートの関わり方や、接点についても、もっとしあわせになるポイントがいっぱいあるので、伝え続けたいですね。リアルイベントも「Stage Felissimo」でも開催できるようになりましたし、どんな形でも思いつく限り、今後も、チョコレートの楽しみをアピールしていきたいと思います。そうやって、チョコレートをきっかけにした、しあわせが広がっていったらいいなと思っています。

関連プレスリリース：『幸福のチョコレート2023』

〈インタビュアー:フェリシモ 広報部 中島健太郎〉