日本企業の1on1は「ぬるま湯」化している?心理的安全性ブームの裏で進行する「実行なき対話」と「組織の停滞」
~“指示命令による管理”を捨てた日本企業が、“自律的な実行”を作れなかった構造的理由~
対話を軸とした組織開発・人材開発を行うアンドア株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役:堀井 悠)は、日本企業勤務者2,062名を対象に「職場の対話実態調査」を実施いたしました。

本調査の結果、対話を必要とする人が79.7%であるのに対し、満足している人は38.4%のみ。理想と現実に約40ポイントの大きな開きがあることが判明しました。
対話の最大の不満要因が「話し合っても(上司や組織が)何も実行してくれない」ことにあると判明しました。
かつての日本企業は「上司や組織からの外的な圧力(指示命令・叱責等)」によって実行力を担保していましたが、ハラスメント対策等でその強制力を失いました。
その結果、新たな実行のエンジン(自律)を搭載できないまま「心理的安全性」だけを取り入れ、「居心地はいいが、何も決まらない・変わらない(ぬるま湯)」状態に陥っている実態が浮き彫りとなりました。

【調査結果サマリー】
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現状:対話満足度は38.4%。広がる「静かなる退職(あきらめ)」
対話の必要性を8割が感じる一方、満足している人は4割未満。
満足度で最も多い「どちらでもない」層は、不満層以上に対話への期待を捨てており、「どうせ話しても無駄」という学習性無力感が蔓延している。 -
課題の中心:不満の1位は「実行されない(45.5%)」
対話への不満理由の圧倒的1位は「話し合っても結果が実行されない」。
ここで言う「実行」とは部下の行動だけでなく、
上司側の「約束の履行」や「組織的な解決」が含まれる。 -
背景:日本企業の「変革・成果(イノベーション)ゾーン」への移行失敗
かつての「強制(やらされ)ゾーン」から脱却しようとした結果、
対極にある「快適(ぬるま湯)ゾーン」に振り子が振れてしまい、
本来目指していた「変革・成果(イノベーション)ゾーン」に到達できていない。
■ 【解説】なぜ日本企業は「ぬるま湯(快適ゾーン)」に陥ったのか?
組織行動学(エイミー・エドモンドソン教授ら)の理論において、組織は「心理的安全性(話しやすさ)」と「仕事の基準・責任(実行力)」の2軸で4つのゾーンに分類されます。
今回の調査データは、多くの日本企業が「強制(やらされ)ゾーン」から「変革・成果(イノベーション)ゾーン」へ移行しようとして失敗し、「快適(ぬるま湯)ゾーン」に迷い込んでいることを示唆しています。
▼ 組織の4象限と日本企業の現在地

かつての日本企業は、心理的安全性は低くとも、「上司の命令は絶対」「同調圧力」といった外圧的な強制力によって、右下の「強制(やらされ)ゾーン」で高い実行力を維持していました。
しかし、働き方改革やハラスメント意識の高まりにより、この「厳しさで強制する管理」は否定されました。
本来であれば、恐怖に代わる新しいエンジンとして「個人のプロフェッショナルとしての責任(自律)」をセットで導入し、右上の「変革・成果(イノベーション)ゾーン」へ向かうべきでした。
しかし、多くの組織が「厳しさ(恐怖)」を取り除いただけで、「実行責任」が置き去りになってしまいました。その結果、左上の「快適(ぬるま湯)ゾーン」へと極端に振れてしまっています。
■ 調査データから見る3つの「組織の病」
1. 「学習性無力感」の蔓延 ~アリバイ作りの対話が生む静かなる退職(あきらめ)~
対話への不満理由として「結果が実行されない」が45.5%で1位となりました。
ここで重要なのは、メンバーが実行しないだけでなく、「上司に相談して『何とかする』と言われたのに放置された」「組織的な課題として提案したが、うやむやにされた」というケースが多発している点です。

「良かれと思って導入した1on1」であっても、「話した結果、何も変わらなかった」という経験を繰り返すと、社員は「話しても結果は変わらない」と学習してしまいます(学習性無力感)。
これが起きると、社員は「言われたことだけやる」「余計な提案はしない」ようになります。
形式だけの1on1が、逆に社員の主体性を低下させ、「静かなる退職(あきらめ)」を加速させる装置になってしまっている点が最大の問題です。
2. 「心理的安全性」の誤解と「優しさ」の副作用
影響度を測る詳細な統計分析の結果、心理的安全性が成果(やりがい・組織への愛着)に与える直接的な影響は「ほぼゼロ」であることが判明しました。
昨今の心理的安全性とハラスメント対策のブームにより、多くの上司が「部下に嫌われたくない」と萎縮しています。
その結果、対話が「傾聴(うんうん、と聞くだけ)」や「共感(大変だね)」に終始し、ビジネスとして必要な「要求(ここまではやってほしい)」や「合意(次はこれをやろう)」という厳しい側面が抜け落ちています。

「話しやすいけれど、仕事が進まない」「仲はいいけれど、成長しない」。心理的安全性が「目的」になってしまい、成果を出すための「土台」として機能していないことが、データからも明らかになりました。
3. 「30代中間管理職」の機能不全 ~ケアの搾取と孤立~
年代別に見ると、20代の対話満足度(56.4%)に対し、30代以降は30%台へと急落します。
組織構造上、20代は「手厚くケアされる対象」ですが、30代はプレイングマネジャーとして「成果」を求められつつ、部下の「ケア」も求められます。
しかし、30代自身をケアし、対話してくれる存在がいません。彼らは「上からは数字を詰められ、下からは配慮を求められる」状態で孤立しています。
組織の結節点である30代が疲弊して「対話の余裕」を失うと、経営層のメッセージは現場に届かず、現場の課題は経営層に届かなくなります。これが「組織の停滞」を招き、全体の停滞につながっています。

■ なぜ「実行責任」が弱くなったのか?(構造的背景)
なぜ日本企業では、時間をかけて対話したはずのことが実行に移されないのでしょうか。
その核心は、対話が責任を回避するための「アリバイ作りの合意」になってしまっている構造にあります。
この「アリバイづくりの合意」は、失敗を許容しない「減点方式」の組織風土で起こります。
失敗すると記録が残り、責任の所在が追及される。だから、話し合いでは具体的な役割や期限を避け、「一丸となって取り組む」といった抽象的なスローガンの確認に終始します。
肝心の「誰が、いつまでに、何をやるか」は先送りされます。
さらに深刻なのは、「波風を立てない意識」です。「みんなも賛成だから賛成と言っておこう」と本音を隠し、リーダーも異論を恐れて引き出そうとしません。
話し合いの場では全員が賛成、その後になって「実は違和感があった」と言い出す現象が起きます。
結果として、誰も責任を持って動かない「無責任の空白地帯」が組織に広がっていくのです。
■ アンドア株式会社からの提言
「ぬるま湯」から「変革・成果(イノベーション)ゾーン」へ。
本調査は、心理的安全性が不要であることを示すものではありません。
むしろ、心理的安全性(土台)の上に、「実行責任」という規律を取り戻す必要性を強く示しています。
「話しやすい」だけでなく「動きやすい」組織へ。 組織開発において、以下の4ステップの循環を作ることが、「ぬるま湯」から脱却する唯一の道です。
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目的の合意(何のために話すか)
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傾聴・相互理解(相手の言いたいことの背景や想いは何か)
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決定・合意(何をするか決める/誰がやるか握る)
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実行責任(決めたことを必ず実行する)
弊社では、この「実行責任」にフォーカスしたマネジメント研修・組織開発支援を通じ、対話を成果に変えるサポートを行っています。
▼本調査の詳細レポート(PDF)
本リリース情報をまとめた「対話白書」を発刊しております。
より詳細な情報はそちらからご確認いただけます。
https://www.and-or.jp/download/taiwahakusyo2026/
※本調査を引用いただく際は、出所として「アンドア株式会社」と明記してください。
■ 調査概要
調査名:職場の対話実態調査
対象者:日本企業に勤務するビジネスパーソン 2,062名
調査時期:2025年12月末
調査方法:Webアンケート調査
■ アンドア株式会社について
対話を軸とした組織開発・人材開発を専門とする企業です。「心理的安全性」に留まらない、成果に繋がる対話の技術を、研修やワークショップを通じて提供しています。
代表取締役:堀井 悠
所在地:神奈川県横浜市西区北幸1-1-8 エキニア横浜5階 HamaPort
事業内容:人材開発研修、組織開発ワークショップ、組織診断、コーチング
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