パーソル総合研究所、職場のハラスメントに関する調査結果を発表
ハラスメントによる離職は年間約87万人、うち約57万人が会社に伝えず 一方でハラスメントを回避する上司マネジメントが部下成長を妨げる
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、職場のハラスメントに関する調査結果を発表いたします。本調査は、職場のハラスメントに関する実態・課題について定量的なデータで把握し、経営・人事に資する提言を行うことを目的に、全国の20~69歳男女の就業者28,135人を対象に実施しました。
■要旨
① 2021年(令和3年)の年間における、ハラスメントを理由とした離職者数を簡易推計(※1)した結果は、約 86.5万人。そのうち57.3万人が会社に伝えられず「暗数化(※2)」している。業種別には、宿泊業、飲食サービス業で離職者が多い。
※1 簡易推計方法については、報告書内(https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/harassment.pdf)のp.61をご参照ください。
※2 実際にはハラスメントが発生しているが、会社からはハラスメントの発生件数として把握されなくなること
② 全就業者の34.6%が、職場で過去にハラスメントを受けた経験がある。被害内容としては、「自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される(65.1%)」が最も多い。
③ 被害者が認識したハラスメントに対して、会社側の対応まで至った割合は17.6%であり、82.4%のハラスメントは未対応のまま。
④ ハラスメントに対する被害者自身の対応について、「特に何もしなかった」が4分の1を占める。周囲の目撃者についても4割が「特に何もしない」。
⑤ 「会議で誰が提案者かによって通り方が異なる」「トラブルの原因が何かよりも誰の責任かを優先する」などの属人思考の風土が強い組織にハラスメントは発生しやすい。また、相談しても無駄だと予期する「相談無力感」も高い。
⑥ 上司は、ハラスメント回避的なマネジメントをしている傾向が極めて高い。「飲み会やランチに誘わないようにしている」が75.3%、「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」が81.7%。上司とのこうした距離感を感じている部下ほど、成長実感を得られていない。
■ 調査結果概要
① 2021年(令和3年)の年間における、ハラスメントを理由とした離職者数を簡易推計した結果は、約86.5万人。そのうち57.3万人が会社に伝えられず「暗数化」している。業種別には、宿泊業、飲食サービス業で離職者が多い。
本調査の結果とオープンデータを基に、2021年の1年間において、ハラスメントを理由に離職した人を簡易推計したところ、約86.5万人であった。そのうち、57.3万人が退職理由としてハラスメントがあったことを会社に伝えられておらず、会社が把握できていない(暗数化している)。業種別に見ると、「宿泊業・飲食サービス業」でハラスメントを理由とした離職者が多い。
図表1. 全国のハラスメント離職者数(簡易推計)
② 全就業者の34.6%が、職場で過去にハラスメントを受けた経験がある。被害内容としては、「自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される(65.1%)」が最も多い。
調査対象者である全就業者に対し、過去にハラスメントを受けた経験があるかを聞くと、34.6%が「ある」と回答した。また、過去5年以内にハラスメントの被害を経験した3,000人に対し、被害の実態について聞いたところ、「自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される」(65.1%)が最も多かった。2位以下は、「乱暴な言葉遣いで命令・𠮟責される」(60.8%)、「小さな失敗やミスに対して、必要以上に厳しく罰せられる」(58.8%)が続く。
図表2.ハラスメント被害の「経験」と「実態(上位15位抜粋)」
③ 被害者が認識したハラスメントに対して、会社側の対応まで至った割合は17.6%であり、82.4%のハラスメントは未対応のまま。
被害者が受けたと認識したハラスメントに対して、会社側が何らかの対応をするまでに至った割合は17.6%であり、82.4%のハラスメントは未対応となっている。会社側の対応に至った場合の具体的な対応内容を見ると、「被害者の要望を聞いたり、相談にのってくれた」(40.8%)や、「被害者に事実確認のためのヒアリングを行った」(40.2%)、「加害者に事実確認を行った」(38.1%)などの割合が高い。
図表3.ハラスメントに対する会社側の対応
④ ハラスメントに対する被害者自身の対応について、「特に何もしなかった」が4分の1を占める。周囲の目撃者についても4割が「特に何もしない」。
ハラスメントに対する被害者自身の対応については、「特に何もしなかった」が4分の1を占める。また、周囲の人がハラスメントを目撃した後の対応としても、「特に何もしなかった」(=傍観行動をとる)人が最も多く41.4%、次いで「被害者の相談にのった/声をかけた」が40.7%となっている。
図表4.ハラスメントに対する被害者や目撃者の対応
⑤ 「会議で誰が提案者かによって通り方が異なる」「トラブルの原因が何かよりも誰の責任かを優先する」などの属人思考の風土が強い組織にハラスメントは発生しやすい。また、相談しても無駄だと予期する「相談無力感」も高い。
「会議やミーティングでは、同じ案でも、誰が提案者かによってその案の通り方が異なることがある」、「トラブルが生じた場合、『原因が何か』よりも『誰の責任か』を優先する雰囲気がある」といったような属人思考の風土が強い組織では、ハラスメントが発生しやすい。また、会社の対応率は低く、被害者が「相談しても無駄だろう」と予期する相談無力感も高い。
図表5.属人思考の風土が強い組織と、ハラスメント発生率や会社・被害者の対応との関係
⑥ 上司は、ハラスメント回避的なマネジメントをしている傾向が極めて高い。「飲み会やランチに誘わないようにしている」が75.3%、「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」が81.7%。上司とのこうした距離感を感じている部下ほど、成長実感を得られていない。
上司のマネジメントとハラスメントの関係を見ると、上司の多くは「飲み会やランチに誘わないようにしている」(75.3%)や「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」(81.7%)など、ハラスメントを回避するような行動を多くとっている【図表6】。一方、こうした上司の行動は、部下に上司との心理的な距離感を感じさせ、上司との距離感を感じている部下ほど、過去1年間の成長実感を得られていない【図表7】。
図表6.上司のハラスメント回避的なマネジメントの実態
「防衛」的なハラスメント施策だけでは成長を阻害している。「育成」的な施策の両輪が必要。
ハラスメントの多くが暗数化=潜在化してしまう大きな要因として、「好き嫌いで人を評価する」といった組織の「属人思考」の風土が広く見られた。ハラスメントの多い企業や業界では、成果偏重主義の是正や脱・年功的な人材マネジメントを通じ、この属人思考を低減させ、潜在化を予防することがまず必要だ。
一方で、ハラスメントを見る目が厳しくなるとともに、現場ではハラスメントを回避する上司マネジメントが常態化している。そうした行動が上司-部下間の心理的距離感を生み、部下の成長を妨げてしまっている。
ハラスメント防止と部下の成長を両立させている一部のマネジャーは、回避的なマネジメントではなく、メンバーの話を丁寧に聞き切るような「傾聴行動」を多く行っている。
ハラスメント予防と対処は必要だが、防衛的な施策だけでは不十分だ。職場での対話的コミュニケーションを促進するようなマネジメントの訓練や、その余地を生み出せるような就業環境整備などによる「育成志向のハラスメント対策」が今まさに検討されるべきである。
● 本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。
● 調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/harassment.html
● 報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。凡例の括弧内数値はサンプル数を表します。
■調査概要
■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について
パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、ITアウトソーシングや設計開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開しています。グループの経営理念・サステナビリティ方針に沿って事業活動を推進することで、持続可能な社会の実現とSDGsの達成に貢献していきます。また、人材サービスとテクノロジーの融合による、次世代のイノベーション開発にも積極的に取り組み、市場価値を見いだす転職サービス「ミイダス」、テクノロジー人材のエンパワーメントと企業のDX組織構築支援を行う「TECH PLAY」、クラウド型モバイルPOSレジ「POS+(ポスタス)」などのサービスも展開しています。
① 2021年(令和3年)の年間における、ハラスメントを理由とした離職者数を簡易推計(※1)した結果は、約 86.5万人。そのうち57.3万人が会社に伝えられず「暗数化(※2)」している。業種別には、宿泊業、飲食サービス業で離職者が多い。
※1 簡易推計方法については、報告書内(https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/harassment.pdf)のp.61をご参照ください。
※2 実際にはハラスメントが発生しているが、会社からはハラスメントの発生件数として把握されなくなること
② 全就業者の34.6%が、職場で過去にハラスメントを受けた経験がある。被害内容としては、「自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される(65.1%)」が最も多い。
③ 被害者が認識したハラスメントに対して、会社側の対応まで至った割合は17.6%であり、82.4%のハラスメントは未対応のまま。
④ ハラスメントに対する被害者自身の対応について、「特に何もしなかった」が4分の1を占める。周囲の目撃者についても4割が「特に何もしない」。
⑤ 「会議で誰が提案者かによって通り方が異なる」「トラブルの原因が何かよりも誰の責任かを優先する」などの属人思考の風土が強い組織にハラスメントは発生しやすい。また、相談しても無駄だと予期する「相談無力感」も高い。
⑥ 上司は、ハラスメント回避的なマネジメントをしている傾向が極めて高い。「飲み会やランチに誘わないようにしている」が75.3%、「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」が81.7%。上司とのこうした距離感を感じている部下ほど、成長実感を得られていない。
■ 調査結果概要
① 2021年(令和3年)の年間における、ハラスメントを理由とした離職者数を簡易推計した結果は、約86.5万人。そのうち57.3万人が会社に伝えられず「暗数化」している。業種別には、宿泊業、飲食サービス業で離職者が多い。
本調査の結果とオープンデータを基に、2021年の1年間において、ハラスメントを理由に離職した人を簡易推計したところ、約86.5万人であった。そのうち、57.3万人が退職理由としてハラスメントがあったことを会社に伝えられておらず、会社が把握できていない(暗数化している)。業種別に見ると、「宿泊業・飲食サービス業」でハラスメントを理由とした離職者が多い。
図表1. 全国のハラスメント離職者数(簡易推計)
② 全就業者の34.6%が、職場で過去にハラスメントを受けた経験がある。被害内容としては、「自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される(65.1%)」が最も多い。
調査対象者である全就業者に対し、過去にハラスメントを受けた経験があるかを聞くと、34.6%が「ある」と回答した。また、過去5年以内にハラスメントの被害を経験した3,000人に対し、被害の実態について聞いたところ、「自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される」(65.1%)が最も多かった。2位以下は、「乱暴な言葉遣いで命令・𠮟責される」(60.8%)、「小さな失敗やミスに対して、必要以上に厳しく罰せられる」(58.8%)が続く。
図表2.ハラスメント被害の「経験」と「実態(上位15位抜粋)」
③ 被害者が認識したハラスメントに対して、会社側の対応まで至った割合は17.6%であり、82.4%のハラスメントは未対応のまま。
被害者が受けたと認識したハラスメントに対して、会社側が何らかの対応をするまでに至った割合は17.6%であり、82.4%のハラスメントは未対応となっている。会社側の対応に至った場合の具体的な対応内容を見ると、「被害者の要望を聞いたり、相談にのってくれた」(40.8%)や、「被害者に事実確認のためのヒアリングを行った」(40.2%)、「加害者に事実確認を行った」(38.1%)などの割合が高い。
図表3.ハラスメントに対する会社側の対応
④ ハラスメントに対する被害者自身の対応について、「特に何もしなかった」が4分の1を占める。周囲の目撃者についても4割が「特に何もしない」。
ハラスメントに対する被害者自身の対応については、「特に何もしなかった」が4分の1を占める。また、周囲の人がハラスメントを目撃した後の対応としても、「特に何もしなかった」(=傍観行動をとる)人が最も多く41.4%、次いで「被害者の相談にのった/声をかけた」が40.7%となっている。
図表4.ハラスメントに対する被害者や目撃者の対応
⑤ 「会議で誰が提案者かによって通り方が異なる」「トラブルの原因が何かよりも誰の責任かを優先する」などの属人思考の風土が強い組織にハラスメントは発生しやすい。また、相談しても無駄だと予期する「相談無力感」も高い。
「会議やミーティングでは、同じ案でも、誰が提案者かによってその案の通り方が異なることがある」、「トラブルが生じた場合、『原因が何か』よりも『誰の責任か』を優先する雰囲気がある」といったような属人思考の風土が強い組織では、ハラスメントが発生しやすい。また、会社の対応率は低く、被害者が「相談しても無駄だろう」と予期する相談無力感も高い。
図表5.属人思考の風土が強い組織と、ハラスメント発生率や会社・被害者の対応との関係
⑥ 上司は、ハラスメント回避的なマネジメントをしている傾向が極めて高い。「飲み会やランチに誘わないようにしている」が75.3%、「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」が81.7%。上司とのこうした距離感を感じている部下ほど、成長実感を得られていない。
上司のマネジメントとハラスメントの関係を見ると、上司の多くは「飲み会やランチに誘わないようにしている」(75.3%)や「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」(81.7%)など、ハラスメントを回避するような行動を多くとっている【図表6】。一方、こうした上司の行動は、部下に上司との心理的な距離感を感じさせ、上司との距離感を感じている部下ほど、過去1年間の成長実感を得られていない【図表7】。
図表6.上司のハラスメント回避的なマネジメントの実態
図表7.距離感と部下の成長実感
■分析コメント
「防衛」的なハラスメント施策だけでは成長を阻害している。「育成」的な施策の両輪が必要。
ハラスメントへの社会的意識が高まっている昨今だが、日本で年間おおよそ87万人もの退職者がでており、その半数以上が会社から把握されていない(暗数化している)実態が明らかになった。
ハラスメントの多くが暗数化=潜在化してしまう大きな要因として、「好き嫌いで人を評価する」といった組織の「属人思考」の風土が広く見られた。ハラスメントの多い企業や業界では、成果偏重主義の是正や脱・年功的な人材マネジメントを通じ、この属人思考を低減させ、潜在化を予防することがまず必要だ。
一方で、ハラスメントを見る目が厳しくなるとともに、現場ではハラスメントを回避する上司マネジメントが常態化している。そうした行動が上司-部下間の心理的距離感を生み、部下の成長を妨げてしまっている。
ハラスメント防止と部下の成長を両立させている一部のマネジャーは、回避的なマネジメントではなく、メンバーの話を丁寧に聞き切るような「傾聴行動」を多く行っている。
ハラスメント予防と対処は必要だが、防衛的な施策だけでは不十分だ。職場での対話的コミュニケーションを促進するようなマネジメントの訓練や、その余地を生み出せるような就業環境整備などによる「育成志向のハラスメント対策」が今まさに検討されるべきである。
● 本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。
● 調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/harassment.html
● 報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。凡例の括弧内数値はサンプル数を表します。
■調査概要
■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について
パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、ITアウトソーシングや設計開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開しています。グループの経営理念・サステナビリティ方針に沿って事業活動を推進することで、持続可能な社会の実現とSDGsの達成に貢献していきます。また、人材サービスとテクノロジーの融合による、次世代のイノベーション開発にも積極的に取り組み、市場価値を見いだす転職サービス「ミイダス」、テクノロジー人材のエンパワーメントと企業のDX組織構築支援を行う「TECH PLAY」、クラウド型モバイルPOSレジ「POS+(ポスタス)」などのサービスも展開しています。
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