FZ法を用いたr-GeO₂バルク結晶の育成に世界で初めて成功
2025/10/31
Patentix株式会社
Patentix株式会社(以下「当社」)は、浮遊帯域溶融法(Floating Zone Method:FZ法)を用いて、ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO₂)バルク結晶の育成に世界で初めて成功しました。
[背景]
ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO₂)は、ワイドバンドギャップ半導体である炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)よりもさらに大きなバンドギャップ(4.68 eV)をもち、p型とn型の両導電性の制御が可能であると理論的に予測されていることから、高耐圧・高出力・高効率なパワー半導体デバイスの実現の鍵となる、次世代の半導体材料として注目されています。
r-GeO₂のポテンシャルを最大限に引き出すには、結晶欠陥が少ない高品質なバルク基板の実現が求められます。当社はこれまでに、Flux法を用いたバルク結晶の合成を報告しており、そのサイズは最大で約15×2.5×2.5 mmでした[1]。r-GeO₂を用いたパワー半導体デバイス実現のためには、より高品質でより大きなバルクが必要です。
[成果]
従来のFlux法で合成したr-GeO₂バルク結晶を種結晶として、FZ法によりr-GeO₂の結晶育成に世界で初めて成功しました。図1に示す結晶の左側黒色部分がFZ法によって育成された結晶で、約5mmの大きさを実現しています。育成された結晶部分は、添加物によって黒色を呈していますが、その側面にはファセット面(結晶面)が確認でき、高い結晶性が示唆されます。側面のファセット面をX線回折測定法で評価したところ、ファセット面はr-GeO₂の(110)面であることが確認されました(図2)。また、黒色の育成部を粉末にし、X線回折測定で評価したところr-GeO₂の結晶ピークを確認できました。一方で、ルチル型とは異なる結晶相であるtrigonal型GeO₂の結晶ピークも確認されており、育成された結晶にはルチル型とは異なる結晶相が一部含まれることが分かりました(図3)。
[将来展望]
今回、種結晶を用いてFZ法によりr-GeO₂の結晶育成を世界で初めて実現しました。引き続き、結晶のさらなる大型化と高品質化、特にルチル型GeO₂のみからなるバルク単結晶の実現を目指して研究開発を進め、早期にハーフインチサイズのr-GeO₂バルク基板を実現することを目指します。将来的には、ハーフインチサイズのr-GeO₂バルク基板とミニマルファブシステム[2]を活用することで、従来の半導体材料では不可能だった超高性能なパワーデバイスの実現を目指していきます。
[1] 川西 健太郎, 他., 「r-GeO₂ バルク結晶の物性評価」 第86回応用物理学会秋季学術講演会, (2025) 7a-N322-11.
[2] 原史朗, 他., 「ミニマルファブシステムの構想と実現に向けて」 精密工学会誌 77巻.3号 (2011): 249-253頁.

                                    図1 FZ法で育成されたr-GeO₂バルク結晶の写真
           (左側の黒い部分がFZ法で育成した結晶、右側の白い部分はFlux法で合成された種結晶)

図2 ファセット面のX線2θ/θ 回折測定プロファイル

図3 粉末にした結晶のX線2θ/θ 回折測定プロファイル
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