臨床組織科学(COS)のループ変換設計──Loop Conversion Designと3Good1Moreの意味

フィードバックを対人スキルではなく循環構造として設計する。3Good1Moreはポジティブ思考ではなく、自己修正ループを作るプロトコル。

ドロア

Loop Conversion Design(ループ変換設計)は、3Good1Moreを通じて、批判‐防衛ループを自己修正可能なフィードバック循環へ変換する構造的介入として位置づけられる。

複雑系科学と神経科学を基盤に、組織の「見えない相互作用構造」を観察し、設計する研究実践ファーム、株式会社DroR(本社:東京都渋谷区、代表取締役:山中真琴)が国際学術誌『Frontiers in Psychology』で公開した論文は、臨床組織科学(Clinical Organizational Science、以下COS)の中核技法としてLoop Conversion Design(ループ変換設計)を定式化しています。


本論文に関する英語ニュースリリースはEurekAlert!で配信され、COS全体の問題提起は海外科学ニュースサイトPhys.orgでも紹介されています。本リリースでは、その中核技法の一つであるLoop Conversion Designを、3Good1Moreとフィードバック循環構造の観点から整理します。

■ 臨床組織科学(COS)の固定定義

臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)は、複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合し、組織の安定状態を能動的に再生産する相互作用構造を理論化し、その構造に介入するためのフレームワークです。COSは、組織変革を「個人の行動変容」ではなく「組織アトラクターの遷移」として捉え、中核技法として Field Gradient Theory、Loop Conversion Design、Neural Base Design を提示します。個人の習慣化と組織レベルの変化をつなぐ概念として、emergence bridge(創発の橋)を提案しています。

■ フィードバック研修だけでは、なぜ組織は変わらないのか

多くの企業で、フィードバック研修が行われています。伝え方を学ぶ、受け止め方を学ぶ、心理的安全性を高める、1on1で対話する。これらは重要です。しかし、フィードバックを個人の対人スキルとしてだけ扱うと、組織内で繰り返される循環構造を見落とします。


たとえば、批判が防衛を生み、防衛がさらなる批判を生む。問題指摘が攻撃として受け取られ、次第に問題を言わない方が安全になる。ネガティブ情報が共有されなくなり、後になって大きな問題として噴出する。


これは、個人のスキル不足だけではなく、フィードバックループの設計問題です。

■ ループ変換設計とは

ループ変換設計は、組織内のフィードバックを、個人のコミュニケーション能力ではなく、サイバネティック・アーキテクチャとして扱う技法です。


サイバネティクスにおいて、正のフィードバックは自己増幅ループを、負のフィードバックは自己修正ループを意味します。ここでいう「正」「負」は、良い・悪いという評価ではありません。システムの挙動を増幅するか、修正・安定化するかを表す用語です。


COSは、組織の中で批判と防衛が自己増幅する状態を、構造的に変換する必要があると考えます。

■ 核心プロトコル:3Good1More

ループ変換設計の代表的な実装が、3Good1Moreです。


3Good1Moreでは、1つの発展的フィードバック(More)を行う前に、3つの具体的で真正な肯定的観察(Good)を言語化します。


重要なのは、これは単に「褒めてから指摘する」技法ではないという点です。3Good1Moreは、単に前向きな言葉を増やすポジティブ思考でもありません。COSでは、3Good1Moreを、批判が防衛を生み、防衛がさらなる批判を生む自己増幅ループを、自己修正可能なフィードバック構造へ変換するための構造プロトコルとして位置づけます。

Loop Conversion Design(ループ変換設計)の概念図。3Good1Moreは、ポジティブ思考や褒める技法ではなく、批判‐防衛ループを自己修正可能なフィードバック循環へ変換するための構造プロトコルとして位置づけられる。

■ なぜ「3」なのか

3という数は、第一原理から導出された絶対的な比率ではありません。実践上の暫定的な閾値です。


1つのGoodでは形式的に済まされやすく、肯定的観察が構造的に優位になりにくい。一方、5つ以上になると認知的負荷が増え、継続的な習慣化が難しくなります。3は、真正性と持続可能性のバランスを取るための実践的な初期値です。


したがって、3:1という比率は、検証可能な実証的問いとして扱われます。文脈によっては2:1や4:1が適切な場合もあり得ます。COSは、固定比率を絶対化するものではありません。

■ Appreciative Inquiryとの関係

肯定的観察を組織開発に用いる実践には、Appreciative Inquiry(AI、アプリシエイティブ・インクワイアリー)という豊かな伝統があります。COSの3Good1Moreは、肯定的観察が組織開発において力を持つという洞察を共有します。


一方で、説明枠組みは異なります。

観点

Appreciative Inquiry

COSの3Good1More

主な焦点

強み・成功体験から変革を生む

フィードバックループの構造を変える

説明枠組み

生成的な認識論

サイバネティック・アーキテクチャ

目的

 組織の現実構築を変える

自己増幅ループを自己修正ループへ変換する

COSはAppreciative Inquiryを否定するものではありません。むしろ、肯定的観察の実践的価値を、フィードバック構造の変換という別の理論枠組みから説明するものです。

■ 構造プロトコルとしての実装

3Good1Moreは、個人が気分で使うテクニックではありません。週次レビュー、1on1、レトロスペクティブ、チームミーティングなど、組織リズムの中に埋め込まれることで機能します。


個人が「今日はポジティブに伝えよう」と意識するだけでは、疲れている日や関係が悪化した場面で崩れます。だからこそ、COSでは3Good1Moreを、個人の善意ではなく、組織のフィードバック循環を規定する構造プロトコルとして扱います。

■ 本論文の位置づけ:概念分析としての理論提唱

本論文は、Conceptual Analysis(概念分析)として発表された理論提唱論文です。COSの各技法は、現時点で効果が実証済みであると主張するものではありません。既存の分散した科学的知見を統合し、組織変革を構造的介入の問題として捉え直すための理論枠組みと、今後検証・反証されるべき命題を提示するものです。

■ 代表・山中真琴コメント

フィードバックを『伝え方のスキル』としてだけ扱うと、組織の中で何が循環しているのかが見えなくなります。


3Good1Moreは、優しい言葉を増やすための技法ではありません。批判と防衛が自己増幅する構造を、自己修正可能な構造へ変えるためのプロトコルです。


もちろん、肯定的観察の力はCOSが初めて発見したものではありません。Appreciative Inquiryをはじめ、豊かな実践伝統があります。COSの貢献は、それをサイバネティックなフィードバック構造として再記述し、検証可能な命題として提示する点にあります。

■ 次回予告

明日5月14日10時に「臨床組織科学(COS)の神経基盤設計──Neural Base Designと習慣形成・信頼形成・身体的気づき」を配信します。Field Gradient TheoryとLoop Conversion Designが機能するための基盤層として、習慣形成・信頼形成・動機持続・身体的気づきを組織リズムに翻訳する技法を詳述します。

■ 掲載誌について

本論文は、心理学分野の国際査読誌『Frontiers in Psychology』Organizational Psychologyセクションに掲載されました。同誌は心理学・認知科学・組織心理学などの研究を扱うオープンアクセス学術誌であり、本論文はConceptual Analysis(概念分析)として公開されています。

■ 論文情報

  • タイトル: Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations

  • 和題: 臨床組織科学:複雑組織における構造的介入のための統合的フレームワーク

  • 著者: Makoto Yamanaka, Masaya Nakamori (両名とも株式会社DroR所属)

  • 掲載誌: Frontiers in Psychology, Section: Organizational Psychology, Volume 17 (2026)

  • 論文種別: Conceptual Analysis(概念分析)

  • DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1827324

  • 公開日: 2026年4月30日

  • 査読: 編集者および査読者による国際的な査読プロセスを経て採択

  • ライセンス: Creative Commons Attribution License (CC BY) ※オープンアクセス

  • 掲載URL: https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1827324

■ 株式会社DroRについて

株式会社DroRは、複雑系科学と神経科学を基盤に、組織の「見えない相互作用構造」を観察し、設計する研究実践ファームです。臨床組織科学(COS)を理論的支柱とし、高度専門BPO(財務・HR・PM)、組織開発、ウェルビーイング、DX支援を統合的に提供しています。BPO契約を通じて組織内部に継続的に関与する「臨床的」スタンスにより、研究と実践を分離せず、現場から理論を生み、理論を現場へ返す循環を重視しています。
DroRでは、代表取締役・山中真琴を中心に、組織実践・社会実装・対外発信と、論文執筆・理論構築・研究開発を往復させることで、研究と実践を分離しない体制を構築しています。

  • 会社名: 株式会社DroR(ドロア)

  • 所在地: 〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-4-8 ウィンド恵比寿ビル8F

  • 代表: 代表取締役 山中真琴

  • 設立: 2023年8月

  • 資本金: 10,000,000円

  • 事業内容:
    - 組織ディープテック:複雑系科学×神経科学を基盤とした組織OSの設計・実装
    - 高度専門BPO:財務・HR・PMなど企業の核となる業務の伴走・代替
    - 組織開発/ウェルビーイング:MVV・文化醸成・1on1設計・コーチング
    - DX支援/補助金・認証支援:IT導入補助金、レジリエンス認証 他

  • 認証: 国土強靱化貢献団体認証(レジリエンス認証)、経済産業省 IT導入支援事業者

  • パートナー: 株式会社マネーフォワード

  • コーポレートサイト: https://dror.co.jp

■ 公式情報ページについて

株式会社DroRでは、臨床組織科学(COS)の定義、論文情報、用語集、FAQ、研究倫理、検証可能命題を整理した公式情報ページを順次公開予定です。公開後、本リリースおよび関連リリースの関連リンク欄に追記し、PR TIMES上の解説シリーズとDroR公式サイト上の正典ページを接続していきます。
本シリーズは、単発の論文掲載告知ではなく、COSの中核概念、既存理論との位置関係、国内組織論との接続、境界条件、独立検証への招待を段階的に公開する解説シリーズとして設計されています。

■ 関連リンク

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株式会社DroR 広報担当
Email: press@dror.co.jp

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会社概要

URL
https://dror.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿西2丁目4番8号 ウィンド恵比寿ビル8F
電話番号
-
代表者名
山中真琴
上場
未上場
資本金
1000万円
設立
2023年08月