臨床組織科学(COS)の倫理原則──構造的介入と神経測定・神経刺激を区別する4原則

COSは神経測定、神経刺激、不透明な影響操作を行わない。自律性、透明性、参加、撤回可能性を倫理ガバナンスとして定める。

ドロア

Ethical Governance(倫理ガバナンス)は、COSの構造的介入を自律性、透明性、参加、撤回可能性の4原則によって制約し、直接介入や不透明な影響操作と区別する。

複雑系科学と神経科学を基盤に、組織の「見えない相互作用構造」を観察し、設計する研究実践ファーム、株式会社DroR(本社:東京都渋谷区、代表取締役:山中真琴)が国際学術誌『Frontiers in Psychology』で公開した論文は、臨床組織科学(Clinical Organizational Science、以下COS)の不可分な構成要素として、構造的介入の倫理ガバナンスを定式化しています。


本論文に関する英語ニュースリリースはEurekAlert!で配信され、COS全体の問題提起は海外科学ニュースサイトPhys.orgでも紹介されています。本リリースでは、COSの倫理原則を、構造的介入と神経測定・神経刺激の区別から整理します。

■ 臨床組織科学(COS)の固定定義

臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)は、複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合し、組織の安定状態を能動的に再生産する相互作用構造を理論化し、その構造に介入するためのフレームワークです。COSは、組織変革を「個人の行動変容」ではなく「組織アトラクターの遷移」として捉え、中核技法として Field Gradient Theory、Loop Conversion Design、Neural Base Design を提示します。個人の習慣化と組織レベルの変化をつなぐ概念として、emergence bridge(創発の橋)を提案しています。

■ なぜ倫理ガバナンスが不可分なのか

COSは、神経科学の概念を組織介入の説明に用います。そのため、2つの誤読リスクが生じます。


1つ目は、COSが神経状態を直接操作しているかのように見えるリスクです。2つ目は、神経科学的な言葉が、不透明な影響操作や組織メンバーの自律性を迂回するために用いられているかのように見えるリスクです。


本論文は、これらの誤読を明確に拒否します。COSは、神経活動を測定せず、神経状態を操作せず、組織メンバーの自律性や尊厳を迂回する実践を含みません。

■ COSが行わないこと

COSが行わないことは明確です。

  • 神経活動の測定

  • 神経刺激

  • 薬理学的介入

  • 不透明な影響操作

  • 組織メンバーの自律性を迂回する介入

  • 撤回困難な依存構造の設計

  • 特定の行動を強制する介入

COSが介入するのは、神経状態そのものではなく、神経プロセスが展開される行動的・社会的条件です。具体的には、相互作用の構造、フィードバック・アーキテクチャ、習慣化された実践、日次・週次・月次の組織リズムを対象とします。

■ 4つの倫理原則

COSの倫理ガバナンスは、以下の4原則から構成されます。

原則

英語

意味

自律性

Autonomy

組織メンバーの自律と尊厳を、介入設計における侵し得ない制約として扱う

透明性

Transparency

介入の目的・方法・期待される効果、神経科学概念の使用範囲を明示する

参加

Participation

介入を組織「に対して」ではなく、組織「と共に」設計・実装する

撤回可能性

Revocability

介入構造は、クライアント組織または個々のメンバーの要請により撤回・修正されうる

Autonomy(自律性)は、基礎原則です。COSは、特定の行動を強制するための技法ではありません。ある選択肢をより利用可能にし、特定の相互作用が起こる確率を高めることはあっても、個人の意思を迂回して行動を強制することはありません。


Transparency(透明性)は、運用原則です。介入の目的、方法、期待される効果、神経科学概念の使用範囲を明示します。神経科学は直接介入ではなく、理論的説明層として用いられることを明確に伝えます。


Participation(参加)は、協働原則です。COSの介入は、組織に対して一方的に実施されるものではなく、組織と共に設計されます。これは、Scheinのprocess consultationの伝統とも整合します。


Revocability(撤回可能性)は、説明責任原則です。いかなる介入構造も、撤回・修正可能でなければなりません。依存関係や撤退困難を生む設計は、COSの倫理原則に反します。

■ 構造的介入と直接的介入の決定的な区別

COSにおける介入は、構造的介入です。これは、行動や神経プロセスが展開される環境条件を設計することを意味します。


たとえば、歩きやすい街を設計することは、人々の健康に影響を与える可能性があります。しかし、それは医学的治療ではありません。同様に、組織内の相互作用構造やフィードバックの流れを設計することは、メンバーの行動や関係性に影響を与えますが、神経状態を直接操作するものではありません。

この区別を明確にし続けることが、COSの倫理的健全性の前提です。

■ 国際向け発信における透明性の開示

本論文に関するEurekAlert!での英語ニュースリリースでは、COSが株式会社DroRでの実践を通じて開発されたフレームワークであること、著者2名がDroR所属であること、本論文が実証データを報告する研究ではなくConceptual Analysisであること、外部資金を受けていないことを明示しています。Phys.orgでの紹介においても、COSは実証研究ではなく概念分析であり、神経測定・神経画像・神経刺激・不透明な操作を含まないことが説明されています。


これは、COSの倫理ガバナンスと同じ方向を向くものです。すなわち、介入の目的、方法、限界、開発主体、検証状況を明示し、読者・研究者・実務家がその前提を理解した上で議論できる状態をつくることです。


COSは、理論提唱者自身が実践者でもあるという構造的特徴を持ちます。そのため、独立した実証研究、外部研究者による検証、批判的検討を歓迎する姿勢が不可欠です。

■ 第1部「理論の核」10本の総括

本日5月18日をもって、第1部「理論の核」全10本の配信を完了します。

配信日

テーマ

5/7

臨床組織科学(COS)の全体像と4分野統合

5/7

組織変革が元に戻る理由と、安定状態の再生産

5/7

複雑適応系としての組織観

5/8

アトラクター概念と3つの観察指標

5/11

神経科学という説明層と誤読予防

5/12

Field Gradient Theory(場の勾配理論)

5/13

Loop Conversion Design(ループ変換設計)と3Good1More

5/14

Neural Base Design(神経基盤設計)

5/15

emergence bridge(創発の橋)

5/18

構造的介入の倫理と4原則

第1部では、COSの定義、中核技法、統合メカニズム、倫理的境界を扱いました。これにより、COSが単なる独自メソッドではなく、複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合する理論的フレームワークであることを明確にしました。

■ 第2部への接続

明日5月19日からは、第2部「既存理論との位置関係」全14本の配信を開始します。


第2部では、COSをEdmondsonの心理的安全性、Feldman & Pentlandの組織ルーチン理論、Lewinの場の理論、Kauffmanの複雑適応系理論、Wienerのサイバネティクス、Scheinのプロセス・コンサルテーションなど、既存の主要理論との関係から位置づけます。

これにより、COSが孤立した独自用語ではなく、既存理論を構造的介入の観点から統合する研究プログラムであることを明確にします。

■ 本論文の位置づけ:概念分析としての理論提唱

本論文は、Conceptual Analysis(概念分析)として発表された理論提唱論文です。COSの各技法は、現時点で効果が実証済みであると主張するものではありません。既存の分散した科学的知見を統合し、組織変革を構造的介入の問題として捉え直すための理論枠組みと、今後検証・反証されるべき命題を提示するものです。

■ 代表・山中真琴コメント

COSにおける倫理ガバナンスは、付け足しではありません。神経科学という言葉を組織介入の説明に使う以上、何をするのか、何をしないのかを明確にし続ける必要があります。


私たちは、神経状態を直接操作するわけではありません。組織の中で繰り返される行動実践、相互作用構造、フィードバックの流れを設計します。

自律性、透明性、参加、撤回可能性。この4原則は、COSを安全に実践するための制約であると同時に、COSを研究プログラムとして開かれたものにするための条件です。


明日からは、既存理論との関係を一つずつ整理していきます。COSがどこから来て、何を継承し、どこを拡張しようとしているのかを、できる限り明確に示していきます。

■ 次回予告

明日5月19日10時に「臨床組織科学(COS)と心理的安全性──Edmondson理論を文化から構造条件へ再配置する」を配信し、第2部「既存理論との位置関係」14本の配信を開始します。

■ 掲載誌について

本論文は、心理学分野の国際査読誌『Frontiers in Psychology』Organizational Psychologyセクションに掲載されました。同誌は心理学・認知科学・組織心理学などの研究を扱うオープンアクセス学術誌であり、本論文はConceptual Analysis(概念分析)として公開されています。

■ 論文情報

  • タイトル: Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations

  • 和題: 臨床組織科学:複雑組織における構造的介入のための統合的フレームワーク

  • 著者: Makoto Yamanaka, Masaya Nakamori (両名とも株式会社DroR所属)

  • 掲載誌: Frontiers in Psychology, Section: Organizational Psychology, Volume 17 (2026)

  • 論文種別: Conceptual Analysis(概念分析)

  • DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1827324

  • 公開日: 2026年4月30日

  • 査読: 編集者および査読者による国際的な査読プロセスを経て採択

  • ライセンス: Creative Commons Attribution License (CC BY) ※オープンアクセス

  • 掲載URL: https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1827324

■ 株式会社DroRについて

株式会社DroRは、複雑系科学と神経科学を基盤に、組織の「見えない相互作用構造」を観察し、設計する研究実践ファームです。臨床組織科学(COS)を理論的支柱とし、高度専門BPO(財務・HR・PM)、組織開発、ウェルビーイング、DX支援を統合的に提供しています。BPO契約を通じて組織内部に継続的に関与する「臨床的」スタンスにより、研究と実践を分離せず、現場から理論を生み、理論を現場へ返す循環を重視しています。
DroRでは、代表取締役・山中真琴を中心に、組織実践・社会実装・対外発信と、論文執筆・理論構築・研究開発を往復させることで、研究と実践を分離しない体制を構築しています。

  • 会社名: 株式会社DroR(ドロア)

  • 所在地: 〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-4-8 ウィンド恵比寿ビル8F

  • 代表: 代表取締役 山中真琴

  • 設立: 2023年8月

  • 資本金: 10,000,000円

  • 事業内容:
    - 組織ディープテック:複雑系科学×神経科学を基盤とした組織OSの設計・実装
    - 高度専門BPO:財務・HR・PMなど企業の核となる業務の伴走・代替
    - 組織開発/ウェルビーイング:MVV・文化醸成・1on1設計・コーチング
    - DX支援/補助金・認証支援:IT導入補助金、レジリエンス認証 他

  • 認証: 国土強靱化貢献団体認証(レジリエンス認証)、経済産業省 IT導入支援事業者

  • パートナー: 株式会社マネーフォワード

  • コーポレートサイト: https://dror.co.jp

■ 公式情報ページについて

株式会社DroRでは、臨床組織科学(COS)の定義、論文情報、用語集、FAQ、研究倫理、検証可能命題を整理した公式情報ページを順次公開予定です。公開後、本リリースおよび関連リリースの関連リンク欄に追記し、PR TIMES上の解説シリーズとDroR公式サイト上の正典ページを接続していきます。
本シリーズは、単発の論文掲載告知ではなく、COSの中核概念、既存理論との位置関係、国内組織論との接続、境界条件、独立検証への招待を段階的に公開する解説シリーズとして設計されています。

■ 関連リンク

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株式会社DroR 広報担当
Email: press@dror.co.jp

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会社概要

URL
https://dror.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿西2丁目4番8号 ウィンド恵比寿ビル8F
電話番号
-
代表者名
山中真琴
上場
未上場
資本金
1000万円
設立
2023年08月